アーカイブ「困ったもんだ!ケニアのセカンダリースクール事情2」
2002.1.13
前回はセカンダリースクールに行くことの困難さについてのレポートをしましたが、ここのところまたいろいろと動きがあって、そのへんの速報をお知らせしたく思います。
これまでも、ケニア政府(・・・・というより、大統領だけなんですけど)の数々の「困った発言」についてはお知らせしてきましたが、今回もまた
・・・・・事の起こりは、2001年も残りあと数日という年末のことです。大統領が突然、言いました。
「新年から、ケニアの小学校は義務教育とする。子供を学校に行かせない親は懲役四年および罰金四万シリングの刑に処する。」
・・・・・これにはケニア国民みんながのけぞりました。だって、義務教育って学費が無料になってこそ可能なんではないですか? そりゃ、ケニアの親御さんたちみんな、子供たちを学校に行かせたいのはやまやまなんですよ。でも、学費が捻出できないほど生活が困窮しているし、働きたくてもまともな仕事だってないんだから、みんな学費をどうやって作ろうかと常に頭を悩ましているんです。
これまで何とか牛や田畑を売ってしのいできたけど、それももうない、そもそも、干ばつで家畜がみんな死んじゃったトゥルカナ地方などの人々は、命をつないでいくだけで必死なんです。「義務教育化するってことは、すなわち、これからは学費が無料になるってことですよね?」
という質問をあびせられて、大統領は事も無げに言ってのけました。「国にはそんなお金はない。なので、学費を何とかすることはそれぞれの親の責任だ」
そんな無茶な!
政府からは何の改善案も出されないまま、新学期に突入しました。ケニアでは1月が年度始めなので、新学年に進級の時期です。学費は無料にならないけど、子供が学校に行っていない親は逮捕されるという大統領命令はそのままで、1月7日から学校がはじまりました。
しかし、当然のことながら、みんな簡単に学校に行かせられるならこれまでこんなに路上に子供たちが溢れるような状況にはなっていないわけです。大統領はまた発言しました。
「学校側が学費を無料にするべきである。それは学校側の責任だ。学費は無料にして、設備などにかかるお金はそれぞれ学校側が親と共に何とかすること」
学校への国からのサポートについての具体案は一切なしで、こんなこと言われても、学校側だって困ります。
そもそも、これまでも国には学校を建てたり設備充実させたりする予算はないとされて、どの学校も親御さんにbuilding fundという名目でお金を払わせています。
これを払わなければ、入学もできないし、払えない子供は学校を追い出されます。このbuilding fundは、ようするにハランベーなのですが、強制的なハランベーなのです。その金額は学校によって違いますが、入学時にいくら、それから年度はじめに毎年いくら、というふうに決まっています。
ナイロビの学校も、地方の学校も、この事情は同じです。ナイロビの学校のほうがこのbuilding fundの金額は高く、地方のほうが安くなりますが、それはそのまま設備の度合いに反映します。地方の学校は窓ガラスも、窓枠さえもない学校も多いのはそのためです。
もともと、学費としてチャージされる金額はそんなに高くなく、何が最も高いかといえばこのbuilding fundなわけです。
大統領の言い分としては、学費は無料にするが、建物にかかる経費や、消耗品などにかかる経費は、親の責任として学校側が父兄に払わせるように、ということです。しかし、それでは今までと何にも変わっていないではないか!
この大統領発言によって、現在、ケニア中の小学校や親御さんたちが混乱しています。
キベラにも学齢期になった子供を経済的な理由で学校に行かせられない親はたくさんいますし、そもそも、すでに何十万人いるかもはっきりと把握されていないストリートの子供たちをケニア政府はどうするつもりなのか。「小学校を義務教育化するというのなら、まずはこの路上の子供たちを保護して学校に行かせてあげられるようにするのが第一ではないのか」と、国民の間からそんな声があがっています。
余談ですが、一昨年は、トゥルカナ地方の一部の学校で体育の授業が禁止になりました。それは、干ばつの影響で栄養状態が悪化している子供たちが、体育の授業のときに突然倒れてそのまま死亡するという痛ましい事件が起こったからです。その子供は、あとで周りの人に事情を聞いたところ、もう七日間も何も食べていなかったといいます。昨年は、トゥルカナ地方のセカンダリースクール数校が閉鎖になって、子供たちが家に帰されました。
セカンダリースクールの多くは、歩いて通える範囲にないため、寄宿制になっているのですが、学校がもう子供たちに出せる食糧を確保できないから、ということが学校閉鎖の理由でした。トゥルカナは極端な例ではあるけれども、しかしいずれにしてもケニアの各地方の生活苦はひどくなるばかりです。無理をしてなんとか小学校に入学させても、お金が続かなかったり、子供たちの手を借りなければ畑も家畜の世話もまかなえないほどの生活苦で、八年生までを終えることができない子供たちがいかに多いことか。
学校に行きたいのは子供たちみんなの願いであるし、親だってどんなに子供たちを学校に行かせたいと願っているかしれません。
新学期がはじまって1週間になりますが、私の周辺でも、学費が払えずに子供たちが学校から戻されてしまい、途方に暮れている親御さんがたくさんいて、他に頼るところはどこにもなく、「お金を貸してはもらえないか」と願い出てくる人々がここ数日でたくさんいます。しかし、借りるとはいえ、それを返しおせる前にもう次の学費納入期がやってくる、というかんじで、泥沼状態。みんな真面目に、日々一生懸命働いている人々なんです。それなのに、これほどの学費地獄は、あまりにもあんまりです。さて、どうしたものか、と、私も頭を悩ましている今日この頃です。
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