新劇通信簿

今年の例会(私のコメント付き)


2月3月5月

2000年2001年2002年2003年2004年2005年2006年2007年

5月

題名・・・「評決-昭和三年の陪審裁判-」
作者・・・国弘威雄・齊藤珠緒
演出・・・鈴木完一郎
劇団・・・青年座
主演・・・山野史人

日本にも戦前陪審制度があったそうです。その東京での最初の裁判を舞台に作られた
芝居でした。
日本も1等国になったのだから、欧米同様陪審制度にしようと大正時代から5年をかけて、
国を挙げての運動をし、東京での最初の陪審裁判が執り行われることになりました。
そこで東京中から陪審員の候補者が呼び集められ、12人の男達が選ばれました。
職業はバラバラで、床屋・写真館の主人・蕎麦屋・化粧品外交官・踊りの師匠・退役軍人・
銀行員・古物商・呉服屋・円タク運転手・撮影所所長・百姓でした。
陪審員たちは、どんなに仕事が忙しかろうと、女房が臨月であろうと全てお国のためという
理由で、裁判を優先させられてしまうのでした。その上、裁判が結審するまで外部の接触
を禁じられ、裁判が終了すると裁判所の近くの宿舎に閉じこめられてしまうのでした。
電話なども、内容を確認され許されたものしかつなげてもらえないのでした。
被告は、旦那と姑を焼死させたとの容疑を掛けられた若い女性でした。
東京初の陪審員裁判ということで、衆目監視の元、裁判は始まりました。
戦前が舞台というと観客の私たちは重苦しいものになるのではないかと先入観を持って
しまうのですが、裁判を中心にしたサスペンスドラマを見ているようで、謎解きを一緒に
していくという面白さがありました。
戦前のことなので、女性の権利が確立されているわけではなく、また警察の強引な捜査
で、自白を強要されたようにみえる被告が、裁判で提示された物証や証言から真実を
見つけだすことができるかどうか、そして有罪か無罪かを判定する陪審員たちの心の
動きなどに引き込まれていきました。
上演時間の都合で陪審員たちがどういう人生を経て、どういう考えを持つようになったのか
という部分で、目立った人たちしか取り上げられず、最後まで被告を有罪と主張していた
古物商はなぜそこまで頑ななんだろうかと見ていました。
事件の謎解きの方は、ある物証が警察によってでっちあげられたのでは、ということで
陪審員たちは無罪の結論にいたるということになりました。
さて、私たちの立場に振り返ってみると、来年から裁判員制度が始まるのですが、もし
自分が裁判員に選ばれて、裁判に立ち会ったとき、果たしてこんなグレイな事件が
与えられるのかと思いました。犯人は疑いようもなく有罪で、あとは量刑のみを決める
のが裁判員の役目ではないのかと思えるのですが。
私の評価・・・とてもよかった

3月

題名・・・「出番を待ちながら」
作者・・・ノエル・カワード
演出・・・末木利文
劇団・・・木山事務所
主演・・・川口敦子

ロンドンの郊外に建つ老人ホームが舞台でした。この老人ホームの住人は身よりのない
元女優達でした。
彼女たちにとって、今一番気になることは、今度入所してくるロッタ・ベインブリッジと
メイ・ダヴェンポートが30年間口を利かないほど仲が悪いことでした。
そしてベランダにサンルームを作ることを委員会が認めてくれるかどうかということでした。
こうして平穏に日々が過ぎていくように見える老人ホームにも色々な波風が立っていくの
です。
サンルームに掛かる費用の見積もりが高かったために、サンルームを認めない委員会と、
老人ホームの住人の間に立って苦悩するペリーは、サンルーム建設費用との交換で、
老人ホームの取材を認めてしまいます。しかし委員会によって取材は禁止されており、
誇り高き元女優達もまた取材されることを拒否します。
しかし新聞に、この老人ホームの元女優達は「出番を待ちながら」日々を暮らしていると
書かれてしまうのでした。
この件でペリーは委員会に叱責を受け辞任させられるところだったのを、元女優達の
懇願によってお咎め無しの処分になるのでした。
認知症を発症していたクラークがテーブルに置いてあったマッチでぼやを起こして
病院に引き取られていったり、クリスマスパーティーの途中みんなで楽しく踊ったり、
歌ったりしているところに心臓発作を起こしてオマレイが亡くなっていったりと死と
隣り合わせの生活をしながらも、どの人達も明るくて生き生きしていてとても素敵
でした。
ロッタとメイが口を利かなくなった理由はメイの恋人をロッタが奪って結婚したことが
きっかけでした。ロッタはそのために自分の夫と息子を捨てていたのでした。
ロッタ役の川口敦子さんは華やかさがあり、恋多き女優だったのだろうなと感じさせ
られました。
他の女優さん達も、宝塚出身の歌手の方がいたり、ピアノの弾き語りをする方が
いたりと実力のある多彩な女優さんが揃っていて、楽しく拝見することができました。
自分の老後も、こんな風に前向きに生きていければ良いなと思いました。
私の評価・・・よかった

2月

題名・・・「ドン・キホーテ」
作者・・・ミゲル・デ・セルバンテス
上演台本・・・岡本矢
演出・・・丹野郁弓
劇団・・・無名塾
主演・・・仲代達矢
男性・とてもよかった=27%・よかった=42%・まあまあ=23%・よくなかった=8%
女性・とてもよかった=36%・よかった=39%・まあまあ=23%・よくなかった=2%
ランキングの目安・・・96位

機関誌の解説によると1605年に前編が、1615年に後編が書かれた「ドン・キホーテ」。
ドン・キホーテという名前は有名ですが、かといってその戯曲を見たことがあるという人は
この日本ではそんなに多くいないのではないでしょうか。
今回無名塾の公演では、仲代達矢のドン・キホーテ、山谷初男のサンチョ・パンサという
二人の名優によって楽しませてもらうことができました。
漫才コンビ風にいえば、ドン・キホーテがボケで、サンチョ・パンサが突っ込みという
役割だったと思います。
スペイン片田舎の領主アロンソ・キハーノは何不自由なく暮らしていけるほどの財産
を持っていました。しかしキハーノは諸国遍歴の騎士物語にのめり込み、自分も
諸国遍歴の騎士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャであるという妄想に取り付かれて
しまいます。
そこで領民のサンチョ・パンサを引き連れて、諸国遍歴の旅に出てしまったのでした。
風車を巨人とみなして戦いを挑み大怪我をし、担ぎ込まれた木賃宿の主人たちを諸国遍歴
の騎士を優遇する城主と思い込んだり、肉屋の娘を姫と思い込んだり、大事な馬を盗まれた
り、ドン・キホーテたちの旅を知り自らの城に招待した金持ちの貴族に騙されたり。
結局ドン・キホーテの親戚の男が決闘を申し込み、キホーテに勝って彼の領地に帰るように
命令して、やっとキホーテは自分の城に戻ってきたのでした。そして臨終の床で正気に戻り
天国に召されるという流れでした。
現代のわれわれの眼から見ると、キホーテの行動は滑稽を通り越して痛々しく、病気として
治療されるのでは無いだろうかと思われました。
天国に召される直前に正気に戻るのは、いかにもキリスト教徒的な結末だと感じました。
妄想に取り付かれたドン・キホーテを演じる仲代さんと、渋々付いて行ってドン・キホーテ
のおかげで散々な目に合わされるサンチョ・パンサの山谷さんの絶妙な掛け合いがとても
面白かったです。
キホーテの馬は、馬の飾り付けをした自転車で、この自転車に乗ったキホーテが登場
したときにはあまりの可愛さに爆笑してしまいました。
私の評価・・・よかった

トップページへ戻る