■内容
Strange Aeonsは、ルールブックの1890年代、1920年代、現代(1990年代)とは異なる年代の、3つのトーナメント・シナリオが収録されたシナリオ集で、それぞれ6名の既成探索者が用意されています。
●怪異なる永劫 - Strange Aeons
「快楽の園」 (p.1 / pdf p.9)
Garden of Earthly Delights
第一シナリオは、フェリペ二世治下の1597年スペインが舞台で、ピレネー山麓で起きた超自然的な事件を異端審問的に調査するというものです。探索者は、いずれも異なる経歴の持ち主ながら、絶頂を極めていた当時のスペイン全土から選りすぐられたエリートであり、優秀な能力を持ちます。
スペインの宗教裁判(異端審問)ときいて、多くの方が思い浮かべるのは、モンティ・パイソンのコントや、エドガー・アラン・ポーの『落とし穴と振り子』とそれを元にしたアメリカの俗悪な映画、あるいはフランス映画の『薔薇の名前』などかもしれませんが、シナリオはそれら娯楽作品とは異なる、史実のスペイン異端審問官を下敷きにしており、いささかイメージ・ギャップが生じるのは否めません。
・キャラクターのサマリー(1600年キャラクターのガイドライン)
・探索者シート
「血染めの月」 (p.17 / pdf p.25)
Blood Moon
“かれが六番目の封印をといて見守るなか、激震が起きた;太陽は喪服のように黒くなり、月は血の色に染まった。そして天の星々が大地に降り注いだ・・・”(ヨハネ黙示録
6:12)
第ニシナリオは、米国NASAを主体とする国際協調により、月探査が強力に推進された架空の近未来、2000年代が舞台です。宗教右翼(キリスト教原理主義者)による宇宙開発への反対運動が先鋭化する2015年、月面基地で起きた科学者二名の失踪事件について、国連の調査官として真相を究明しなければなりません。探索者は世界の主要国から派遣された超エリートであり、非常に優秀な能力を持ちます。
宇宙開発時代の新職業と新技能、月面環境スーツやジャイロ・ガン、各種ヴィークルといった新装備の紹介が付属。
「襤褸とつぎはぎの王」 (p.41 / pdf p.49)
King of Shreds and Patches
最後のシナリオは、17世紀初頭、1603年のエリザベス朝ロンドンが舞台のシナリオ。劇作家ジョン・クロフトの死をはじめ、見たところ連関のない、奇妙な二つの事件を調査しなければなりません。探索者らはロンドン在住の個性的な面々で、技能ロールそれ自体よりも、プレイヤーによる、パーソナリティーのロールプレイに期待したいと思わせる能力値を持ちます。
エリザベス朝の武器、1603年エリザベス朝ロンドンについての紹介(エリザベス朝ロンドン、ロンドンの悪疫、クリストファー・マーロウ、ウィリアム・シェークスピア、ジョン・ディー博士、スキュラとカリュブディス、ジャーゴン、参考文献)が付属。
・エリザベス朝の武器
■結論
"Strange Aeons"は雰囲気重視のシナリオ集で、数多いケイオシアム社のクトゥルフ・サプリメントのなかでも、独特の存在感を持っています。
第一シナリオと第三シナリオは、ロケーションこそ違えど、いずれも16〜17世紀(1600年前後)のアドベンチャーであり、『クトゥルフの呼び声 ホラーロールプレイング』の、スワッシュバックリング(Swashbuckling)
RPGとしての可能性を示しています。かつて社会思想社から訳出されていた『混沌の渦』を思い浮かべる向きもあるのではないでしょうか。
第ニシナリオの「血染めの月」は、Chaosium社『クトゥルフ・ナウ(Cthulhu Now)』やPagan
Publishing社『デルタ・グリーン(Delta Green, 未訳)』の時代と、いよいよ異種族の地球侵略が顕在化し始めるPagan
Publishing社『終末の刻(End Time, 1993, 2001, 未訳)』をつなぐ作品です。月日の経過によって、若干データが古くなったきらいもありますが、大した問題はないでしょう。
各シナリオとも、世界の奥行きを感じさせる、引き込まれるような魅力を備えた、ユニークで凝った舞台設定の作品ぞろいです。それだけに内容の理解や演出に役立つ背景知識が欲しいところ。いやほんと、シェイクスピアとか知らないのですが(喀血)。
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