「虹と緑地方自治政策情報センター」の機関紙に
佐藤ひろこが連載をして
います



■シリーズ「中野区がはじめた自治体改革」(1)
 
 区長を変えて、2年間の下準備を経過し、3年目の今年度、田中区長による本格的な改革に中野区は突入する。新しい政策の視察をするなら、ぜひ中野区へ。月2回実施している区民と区長の対話集会の日程に合わせれば、対話の現場を体験することもできる。 改革メニューをあげればたくさんあるが、大きなところを簡単に紹介する。


1.4月から課を廃止し、事業部制を導入した。区民の価値に基づく目標をつくり、それに合わせた組織体系に区の仕事を全面 的に変えたのだ。区の職員の抵抗は大きかったが何度も説明会を設けてがんばった。区長室の旧秘書課に「区民対話」と「自治・市民活動推進担当」の看板が新しく掲げられたのは、その象徴だ。

2.その目標と指標に基づいて行政評価を行い、公募の市民を入れた外部評価委員会で全施策を評価したことは全国的にもめずらしい。予算書も行政評価の手法を取り入れ大幅に変った。私は行政評価のおもしろさにはまった。次回はこのことを報告したい。

3.昨年度は、100人以上の公募区民が基本構想ワークショップでこれからの中野の政策を熱心に議論した。その答申などを受けて今年度、中野区の新しい基本構想と基本計画を策定する。

4.選挙スローガンの一つである「官から民への大転換」に着手。第1回定例会の所信表明では「民間にできるものは民間に」と明確に表明した。この4月から、3園目の区立保育園の民営化と指定管理者制度による2園の区立保育園を民間委託。1園は株式会社が受託した。そして、8館の区立図書館の窓口業務を一斉にすべて民間委託。2つの株式会社と2つのNPOが受託した。高齢者会館も2館を地域団体とNPOに運営委託した。これからもどんどん地域施設やサービスの民営化あるいは民間委託を進める方針である。昨年度は区立保育園の民間委託に対し大きな反対運動がおこり大変だったが、何度も区は説明会を重ねた。批判の矢面 に立った私も大変だった。

 ここまで書くとなんだひどいという方々も多いかと思う。でも、私は市民の力で公共サービスをつくっていく転換策が必要だと思っている。民間委託に対する区民の不安の声の中で、行政として果 たす役割を区民に約束するべきだと思った。指定管理者制度に関する条例の議論で大切な点だ。今回はこのことを報告したい。

(1)指定管理者の指定手続きに関する条例

 保育園に関する指定管理者の手続きに関する条例に関しては、前回の三多摩議員ネットでの講演記録を見ていただきたい。(後ほどアップします)今回の第1回定例会では個別 施設に関わる条例ではなく、全ての施設に通じる通則条例が提案された。提案されると聞いたとき、担当課長と次の点を盛り込むように議論した。

1.指定の透明性を確保するために、「公募」と「情報の公開」を明記すること。
2.選定事業者の基準に、「公平性や平等性」、「個人情報の保護」を明記すること。
3.行政の役割として、「苦情対応」や「第三者評価」の仕組みを盛り込むこと。

 さて、条例案が出てくると、3番目は取り入れておらず、個人情報保護は明記されていなかった。えーひどいじゃないと思ったが、私は、条例を審査する総務委員会にいないので議論することができないし、会派も2人なので、修正提案をすることもできない。それで、総務委員会に所属する公明党や自民党の議員と問題点を議論した。そして、委員会での質疑を踏まえ相談の上、「個人情報保護」にしぼって公明党から修正案を出すことになった。3番目については、区は指定管理者だけの問題ではないので、別 の総合的な条例を検討して対応したいということになった。途中までは指定管理者の条例に反対するつもりだった共産党も賛成にまわり、全会派一致で、原案と修正案が可決した。区長提案の議案の不十分な点を議会側から修正できたことは、良かったと思う。これから、各自治体でもどんどん指定管理者制度が導入されると思う。ぜひ、いい条例をつくってほしい。
 以下は、その時の本会議での私の賛成討論。条例は中野区のホームページに載っている。
 
第11議案 中野区公の施設に係る指定管理者の指定手続に関する条例案原案とその修正案について、賛成討論いたします。

 指定管理者制度の導入は、区民のニーズに合わせた多様なサービスを提供するために、区民の税金を適切により効果 的、効率的に使って、区民福祉の向上をはかることが目的です。指定管理者には従来の区の外郭団体や社会福祉法人の他、株式会社やNPOなども対象に含まれ、行政責任を担保しながら、幅広く民間の力を活用できるし
くみです。中野区では、保育サービス拡充のために、昨年第4回定例会で保育園条例の改正を行ない、保育園運営に指定管理者制度の導入を行なったところです。さらに、3年以内に指定管理者に移行するかどうか検討しなければならない施設が区内に17施設あり、また、来年度区の施設の機能や役割、運営方法の見直しの中で、直営
の施設を新たに指定管理者で運営する方法も検討される予定です。今回提案されている「公の施設に係る指定管理者の指定手続に関する条例案」は保育園以外の中野区の施設に今後指定管理者制度を導入するために必要な手続きを定めた通 則条例ということです。この条例が可決すれば、再来年度民間社会福祉法人へ委託替えを予定している知的障害者更生施設かみさぎこぶし園の円滑な民間法人への移行を図るために、この条例にもとづいて来年度早々事業者選定に入る予定だそうです。事業者選定には透明性、公開性が確保されることはもちろんのこと、保育園と同じ福祉施設であるだけに、選定にあたっての基準は利用者、保護者が安心できるものでなければなりません。保育園の時と違って、個別 条例ではなく、この通則条例で事業者募集に入るわけですから、この通則条例で、利用者や保護者が安心できる選定の原則をきちんと示したものにすることが必要です。これは、かみさぎこぶし園だけではなく、今後、指定管理者制度を導入する全ての施設が、この通 則条例のもとで事業者選定に入ることに
なります。個別条例の改正は事業者選定が行なわれた後になります。したがって、この通 則条例はただ単に手続きを定めるだけではなく、今後の民間委託にあたっての区の基本的な姿勢を示すものにもならなければなりません。

 区立保育園に指定管理者制度を導入したときには、指定管理者になる民間事業者のサービスの質をどう担保するのかが大きな議論になりました。だからこそ、区民が安心し納得できる原則的な選定基準をこの通 則条例に盛り込む必要があります。指定管理者制度導入にあたって区民が安心できる条例になっているかどうか、区民の視点で考えるべきだと思います。公共サービスを民間事業者に委ねるのですから、事業者選定や指定の手続きにあたっては透明性を確保することは絶対条件です。中野区は公募とすることを条例上明記し、規則で指定手続きの経過と結果 を公表することを明記しました。また、事業者の選定の基準として公正性なども条例に明記しました。総務委員会では区民の方々に安心していただける条件として、さらに、個人情報保護を条例に入れるべきであるという意見が出されました。中野区の個人情報保護の姿勢を明確にし、条例をより良いものにするために、公明党の方々から、条例の第4条の(4)として、「申請した団体が個人情報の保護に関し、適切な措置を講じることができると認められるものであること」を追加する修正案が提案され、総務委員会での議論を経て、委員会で一致して出されたこの修正案の意義は大きいと思います。官民とわず、個人情報の流出事件が後をたちません。だからこそ、個人情報の保護に万全を期す姿勢が、議会側から求められたことを区は重く受け止めるべきです。通 則条例に盛り込まなかった、運営の基準などは、個別条例の中で考えていくということです。事業者が情報公開に務めることや、職員の配置や雇用形態の基準なども個別 の条例や協定の中で検討していただきたいと考えます。

 区長は、この議会冒頭の所信表明の中で「公共サービスを民間で出来ることは民間、市場の活力や市民の力に委ねていくことが必要である。委託や民営化、指定管理者への移行は豊かなサービスを実現するための方法として、積極的にすすめたい。」と方針を述べ、「欠かせないのは行政がサービスの質を監視したり、利用者からの苦情相談対応を確立し、第三者評価の仕組みをつくるなど、利用者の権利とサービスの向上を担保する、行政にしかできない働きを的確に行なうことだ。」と行政の役割を明言しています。保育園への指定管理者制度導入の時の議論の中でも、私は行政の役割の重要性を訴えてきました。保育園の苦情対応は苦情担当の設置のほか、福祉オンブズマンという第三者機関が設置されています。しかし、今後、ゼロホールや勤労福祉会館が指定管理者で運営されるときには福祉オンブズマンは適用できません。適用できる苦情解決のしくみをつくる必要があります。また、サービスの質を監視する第三者評価の仕組みもまだ確立されていません。苦情解決や第三者評価は、指定管理者ばかりではなく、民営化や図書館でこれから行なわれるような民間委託など、公共サービスを行なう民間事業者すべてに関わるものでなくてはなりません。サービスの向上と利用者の権利を担保するために、第三者評価の仕組みや苦情解決のしくみを早急に検討され、区民に開かれた指定管理者制度とすることを要望します。公の施設の多様な民間による管理運営を可能にする「指定管理者制度」は、市民と行政の新しい公共のあり方を問題提起しています。手続き条例の制定だけに終らせず、新しい公共のあり方をつくる議論に展開していくことを期待して、討論といたします。

■シリーズ「中野区がはじめた自治体改革」(2

市民参加型の行政評価をめざして

区民参加の外部評価制度を導入
 自治体改革をすすめるにあたって、「行政評価」は行政の説明責任を果たし、手応えのある区民参加と区民に開かれた区政をすすめる手法である。行政評価の目的は「施策の目的の明確化」「区民の視点での評価と成果 の管理」「説明責任の確保」「計画―実施―評価―見直しのサイクルの確立」「職員の意識改革」である。「行政評価」を導入しはじめた自治体は増えてきているが、公募の市民を入れた外部評価委員会を設置して全施策の「外部評価」を実施している自治体はまだ少ないのではないだろうか。
中野区は2000年度から行政評価を一部試行しはじめ、2002年度には区が行なう全施策と事業を対象に内部評価を実施した。事業を所管する部署が第一次評価を行い、全庁的なメンバーで構成した行政評価委員会が第二次評価を行なった。しかし、第一次と第二次の評価はいずれも内部評価で違いが明確ではなく、区長が変った後、2002年秋に「区民の視点で客観的な評価」を行なう「外部評価制度を導入」することにした。2名の公募区民と5名の学識経験者による中野区外部評価委員会を設置し、2003年度には区民にわかりやすく、目標により区の仕事をくくり直し、全施策の外部評価をおこなった。外部評価委員は各部が行なった自己点検結果 を基本として、職員から施策内容についてヒアリングを行い、「目標は適切か」「指標は正しいか」「それに基づく成果 は上がっているか」を視点とした個別施策評価を行ない、12月に報告書をまとめた。そして、その外部評価結果 を受けて、区は施策の見直しの方向など所管部の考え方を3月にまとめた。(詳しくは中野区のホームページを参照)

予算に行政評価の手法を反映
今年度2004年度予算の特徴は、予算説明書補助資料に目標と成果指標が書かれていることだ。事業ごとにその「目標」と複数の「成果 指標」と「目標数値」などが明記されている。事業の目標や年度の到達点がはっきりわかる。全事業を見直し、目標によって組み立てていった職員の努力は大変なものがあったと思う。職員の仕事のための仕事から、区民のための仕事をするという、職員の意識改革に少しでもつながったのではないだろうか。予算委員会の審査の中でも、何がどう改善され今回の予算となったのか見るために、前回の決算の説明資料、昨年末に外部評価委員会から出された「行政評価報告書」と今回の予算説明書補助資料を見比べて質問した。区民の視点に立った目標と指標の設定がこれからの区政運営に大切なことがよくわかる。外部評価の結果 は本来は決算審査に生かされなければならない。今年度からは、外部評価委員会からの報告を9月の決算委員会に出すことをめざす。

予算委員会での質問から
行政評価の手法を取り入れた予算説明資料に基づいた質問例として、今回の予算特別 委員会での私の総括質疑の中から一部を紹介する。

佐藤 「ワンストップの保健福祉相談」は、「保健・福祉・医療の連携による相談援助」の施策の目標に掲げられている。施策の目標は「ワンストップで相談とサービス提供ができる場所として保健福祉センターが整備され、区民への認知度が上がり、保健・福祉・医療に関する相談が受けやすい。」となっている。区民の方々からいただく相談や苦情も、「どこに相談していいかわからない」「相談がたらいまわしになる」といったことが多く、「相談するところが区民に明確に伝わっている」「たらいまわしにせず、その窓口で総合的に相談にのることができること」は施策の目標として当然だ。しかし、何のための相談かという大切な目的が抜けている。「区民の方が必要としているサービスにきちんと結びつけること」が相談援助の目的として必要ではないか。仕事のための目標になっていて、区民のための目標が抜け落ちているのではないか。区民にとっての満足度を考える視点をもつべきだ。「外部評価委員会の評価結果 」で「成果指標が区民の視点からわかりにくい」「何を目的で誰をどのように支援するのかが不明確」との指摘を受けている。今回の予算では、成果 指標が「不満足度」ということから、「保健師活動での支援事例数」に改善されたが、ケースワーカーの支援事例数は指標に入っていない。もっと指標のとり方に工夫すべきだ。福祉サービスは利用者が必要性を切実に感じて窓口にいらっしゃるにもかかわらず、サービスが利用できるまで時間がかかったり、たらいまわしになったりしている。相談・援助を改善する必要がある。利用者満足度アンケートを各窓口でとってみるなど、迅速に的確に相談援助が行なわれたかどうか、評価できる指標をさらに検討するべきだがどうか。

保健福祉センター長 この成果指標については現在のもので十分であると思っていない。評価委員会のヒアリングにおいても、利用者の満足度について反映させてはどうか、直接的に利用者にアンケートをという提案も受けている。こういったアンケート結果 も反映できるように今後工夫してまいりたい。(ちょっとはっきりしない答弁だった。職員は成果 指標の設定に相当悩んでいるようだ。)

「市民参加型の行政評価」について予算総括質疑の中から一部を紹介する。

佐藤 行政評価は区民に行政を評価していただく、区民の価値を実現する区政をつくることが目標。外部評価委員に公募区民を入れていることは評価できる。区民意見を求める仕掛けと、仕組みの工夫など、外部評価委員も指摘しているが、「行政評価」について区民から意見をもらう場としてのフォーラムや説明会の開催、区報などで興味を引く公表の仕方、これからどのようなことを考えていくのか。経営改革推進担当課長 行政評価は、区民の視点で区の仕事を見直すものであり、評価結果 に多くの区民が関心を持つことが重要であると考えている。これまで区報、ホームページに見やすさを工夫し公表してきているが、区民の声を求める工夫などさらに検討を重ねていく。

佐藤 札幌市の14年間も生活援護の職に携わっている職員の方が作っている「行政評価」のホームページのメッセージがすてきだった。以下少し引用「人の意識や行動は,一朝一夕には変わらない。悲観せず,改革の種を蓄えることが今は大切である。…最後に,私の好きな言葉を添えたい。 思いは、かなう。 」地方自治体の一職員が国を変える動きをつくっている。地域での一つ一つの実践が大きく国を変えていく。中野区の職員の方もぜひがんばっていただきたい。

オンリーワンの評価制度を
 これからは事務事業評価から施策の評価と政策の評価にバージョンアップしていくことが課題だ。「市民参加型の行政評価」はこれから踏み込む新しくて、奥深い領域だと思う。目標や評価指標の設定は自治体ごとにことなるわけだから、モデルがあるわけではない。それぞれの自治体がオンリーワンの政策目標や評価指標をそれぞれの住民の視点で生み出していくことが、自治体改革の一つの鍵だと思う。

前回報告した「中野区の指定管理者制度」は何人かの方から問い合わせをいただいたり、視察にいらしていただいたりした。今、中野区は基本構想策定の真っ最中で、0ベースからの施設配置の見直しも平行して検討している。学校の再編と空いた学校施設を他の公共サービスに転用する、また地域施設の運営を区民団体に委託するなどの提案が出されている。何回にもわたる「区民と区長の対話集会」やパブリックコメント制度を重ね11月議会に議案として提案予定だ。地方分権と少子高齢化がすすむ中で持続可能な自治体のあり方を作っていくための基本構想になる。次回は基本構想の改定についてお伝えできればと考えている。


シリーズ「中野区がはじめた自治体改革」(3)
区民参加で基本構想づくり

 新しい時代に対応する基本構想を策定した、あるいは検討中の自治体も多いと思う。中野区では、今、基本構想の策定の真っ最中である。

五つの公約
2年前の区長選挙にあたって、区長を押し出した私たち「区民参加で中野を変える会」が、候補者といっしょに考えた「主張」、すなわち公約は以下の5点だった。

1.「出来ないことはやらない!」―赤字を断って未来を展望―財政の裏づけのない大きなハコ物建設計画をすべて廃止。(実現)

2.「区民参加で先を見据えて」中野区基本構想を、激動する時代の状況に合わせて、実現性や計画性を重視した新たな行政の指針となるように区民参加で見直すこと。(実現中)
基本構想見直しとあわせ、今ある施設のサービスのあり方や運営方法、配置などを区民参加で総合的に見直すこと。(実現中)

3.「官の勝手をシャットアウト」―見える、聞こえる、語れる区政―
自治と参加の理念・手続きを定める自治基本条例の制定。(実現中)
区民と区長との直接対話を全地域で定例化。(実現)

4.「知恵もパワーも協働で」―支え合いの主役は区民―
自主団体活動支援条例の制定。(実現中)
自主団体・NPOなど区民による公益活動を地域の中で生かし、支援すること。(実現中)

5.「多選はNO!2期8年」(現在1期3年目に入る)
以上、5つの公約は、実現または実現中だ。その中でも、もっとも大きな課題「新しい基本構想」制定の年に今年はなる。

公募区民全員参加のワークショップ
2002年、区長が就任直後の6月議会で、私は「これからの中野の地域社会のあり方を、幅広い区民の力でつくっていく作業が基本構想の改定作業だ。ワークショップ方式も含めた幅広い参加の方法や電子会議室の設置など、新たな市民参加の手法を考えるべきだ。」と質問。区長は「区民参加の方式については、ワークショップのような方法やメーリングリストなどITを活用する方法など、幅広く多くの区民の意見を集められる方法を検討する。」と約束した。さっそく、基本構想改定に向けての職員プロジェクトメンバーを広く募集した。様々な所属、階層の区職員約80人が「21世紀の中野を考え実践する」職員プロジェクトチームを発足、検討を開始した。それに続き、公募区民による検討会を設けようとしたが、議会から条例設置の審議会を設置するべきであるという意見が出た。それで、審議会を設置し、そのもとに区民参加のワークショップをつくって基本構想改定の議論をはじめることになった。基本構想審議会条例が12月議会で可決。翌2003年2月末に審議会(学識経験者5人・区民団体代表10人・公募区民5人)を発足。また、区報で区民ワークショップメンバーの公募を行い、応募した145人の区民全員をメンバーにした「基本構想を描く区民ワークショップ」が3月から発足した。区民ワークショップには職員プロジェクトチームのメンバーや審議会のメンバーも参加した。4つの分科会に分かれ、約1年間にわたり真摯な議論が重ねられてきた。審議会もワークショップも傍聴でき、そこでの議論の内容は、ホームページやメールマガジンなどで逐一公開された。2003年7月末に職員プロジェクトチームの「基本構想改定に向けた提案書」がまとめられた。2003年10月末になわれた「基本構想を描く区民ワークショップ」の全体会を傍聴した。12月の中間報告に向けての各分科会からのパワーポイントを使った発表は、8か月間の議論の熱意と苦労が伝わってきた。ワークショップのメンバーは無報酬のボランティアだが、予定された日数以上に自主的に何回も集まり、台風の日にもめげずに議論を重ねてきた。

@持続可能な活力あるまちづくり
A自立してともに成長する人づくり
B支えあい安心して暮らせるまち
C新しい自治のあり方

という4つの分科会に分かれて議論してきた。これから10年間の中野区をどうしていくのか、真剣に議論し、考え合ってきたことが感じられた。「意見が分かれてまとまらない。」という話しもきかれたが、考え方の違う人たちが集まってよかったと思った。違う考えを持っているのが区民だ。違うからこそ議論する価値があるし、おもしろい。第4分野(新しい自治のあり方)では共通 概念として「小さな区役所」と「地域ガバメント」が提案されていた。まちづくり、教育や福祉の分科会で議論されていることとどうかみ合わせ区政の方向性をつくっていくのか、多様な区民が集まれば集まるほど、そこでの合意作りはたいへんむずかしい。今年2004年3月、約1年かけて議論されたワークショップのまとめと基本構想審議会の答申が出された。

検討段階からの情報の共有と区民参加
今までの区政の計画作りは、「素案」を作って区民の意見を聞いたら、次は本計画というやり方だった。区長が変って、検討段階からの徹底した区民参加をすすめようということで、まだ「素案」になる前から、何度もたたき台をつくりその都度、議会や区民の意見を聞くやり方に変えた。審議会の答申を受けて、「基本構想の構成案」と「基本構想の基礎となる考え方」、平行して検討されている「施設配置の基本方針案」のそれぞれ「検討素材NO.1」が4月末に出された。今年度から、議会に基本構想調査特別 委員会が設けられ、議会での議論も始まった。議会の意見を聞き、5月末には「検討素材NO.2」が出され、区民と区長の対話集会が全部長出席のもと各地域で5回にわたって開かれた。それをもとに7月には「検討素材NO.3」が出され、さらに15の地域センターで意見交換会が実施される予定だ。もちろん、それ以外にも各団体などとも意見交換会がされている途中である。区民とキャッチボールをしながら、「検討素材」を何度もバージョンアップし、8月に「基本構想素案」として提案される予定である。そして、「素案」に対して、また各地域での説明・意見交換会を重ね、パブリックコメントの手続きを行ない、11月議会に基本構想の議決を求める議案として「基本構想案」が提案される予定である。

基本構想をなぜ変えるのか
中野区においても、地域でさまざまなNPOや自主活動団体が公益的な活動を多様に展開し始めている。その区民の力を生かして地域社会をつくっていくことが、基本構想の改定に求められる新しい重要な視点の一つだと私は思う。また、いままでの基本構想は、右肩上がりの財政状況を想定し、財源の裏付けを考えず、また、目標達成期間も設定しない構想だった。新しい基本構想は10年間という目標達成期間で、財源の裏付けや実現性、計画性を重視した形のものに改定する。地方分権と少子高齢化がすすむ中で21世紀の区政の目指すべき「持続可能な自治体のあり方」を作っていくための基本構想になる。今までの営みの上にたって、さらに新しい時代や区民のニーズに対応するための、区政の進め方の基本的な合意づくりを区民参加で行なう。

基本構想の基礎となる考え方
構成案で、「人々の自由と尊厳を守り大切にする」ことが基本理念の一番にあげられている。新しい基本構想が今までの基本構想と大きく違う点は、「市民への分権」を実現する道筋を描くことだと考える。「地域のことは地域で決めたい」と政策の決定権や財源の移譲を求め、自治体は地方分権の道を歩みはじめている。福祉政策も措置から選択へと大きく変わってきている。行政が用意した枠だけに人々の生活をはめるのではなく、人々の多様な生き方に合わせて支援するための制度やしくみを整えていくことが、これからの行政の役割だと思う。行政サービスの受け手として市民が位 置づけられていた現在の基本構想から、公共サービスを生み出し実践する市民の力を大きく広げていくことが新たな基本構想に託されている大きな役割だと考える。構成案の「区民が発想し区民が選択する新しい自治」に出てきている考え方だ。基本構想の議論の中で基本となる言葉については、きちんと共通 認識を持っておくべきだ。「自己決定・自己責任」という言葉もその一つ。だれもが自由で尊厳を守られるということは、自分のことをだれかに決められたりしないで、自分で決められ、自分で責任を取れるようになることだ。しかし一方で「自己決定・自己責任」が最近変な風に使われたので、「自分で勝手にしろと行政責任をほうりだしている」という反応もかえってきている。基本構想の基礎となる考え方の中に「補完性の原理」という言葉もある。個人が出来ないことは地域が補完し、地域が出来ないことは自治体が補完する、小さな単位 ができることは大きな単位は口を出さない、決定権をできるだけ小さな単位に移していくという、自治のあり方を示す大切な考え方だ。これからの自治のあり方のキーワードについてはきちんと議論し、合意をつくる必要がある。

新しい公共づくり
「公共」についてもその言葉の持つ意味や概念を明確にしないと、使い方がまちまちなので、話や議論が混乱している場面 がたびたび見受けられる。「公共」も行政だけを指す言葉ではない。JRや私鉄などを公共交通 機関というように、企業をはじめとする民間も「公共」の担い手だ。新しい基本構想では、市民もNPOも民間企業も「公共」を担う体になる。「新しい公共」の概念について共通 認識を区民・職員が共有するべきだ。大きな改革のためには、徹底した情報の公開と共有、徹底した区民参加が必要だ。情報の公開も区民参加もやればやるほど、まだまだ足りないと言う意見も区民からたくさん出されるようになる。公開されればされるほど、もっと知りたくなり、参加がすすめばすすむほど、多様な意見が出されて、合意がむずかしくなる。自分の意見が取り入れられないと参加したとは思えなくなる今までよりもはるかに、区民参加の場は広がったと思うが、「区民参加が足りない」との声も大きくなっていく。ほんとうに区民参加はむずかしい、合意づくりはむずかしいと感じるこの頃である。中野区の現在の問題点は、説明責任の場、議論の場は設定しても、区民を巻き込むための呼びかけが効果 的にできていない、PI(パブリック・インボルブメント)が欠けているという点である。今後それをどう克服して新しい基本構想策定が出来るのか、また報告できればと思う。
(中野区のホームページの区政案内の「あたらしい基本構想の検討について」を参照)

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