高力ボルトについて
「高力ボルト摩擦接合継手の設計・施工・維持管理指針(案)」(土木学会)より
対象とする限界状態は、母材と連結板間のすべりと母材あるいは連結板の降伏である。疲労限界状態については適用範囲外とする。
この指針(案)で規定していない事項については、当該機関の判断と責任により規定。
高力ボルトを継手等で使用する場合のフィラー(隙間埋め鋼材)に要求されるもの
・所要の摩擦抵抗を確保できる表面処理であること。
・応力伝達以外に防錆防食を配慮する。
・フィラーの材質は、高強度鋼に対しても400N/mm2クラスの一般構造用圧延鋼材を用いて良い。
・母材が耐候性鋼材の場合は、防錆防食の点から原則同種とする。
・2mm以下の板厚のフィラーを用いない。
ボルト孔
高力ボルトの孔加工にあたっては、ボルトが無理なく挿入でき、ボルト挿入時にねじ山を傷めないように、また、所定の継手耐力が得られるように、孔あけ精度を確保する。孔あけ加工が材片の密着を阻害することがないように必要に応じて孔周辺の処理を行う。
ボルト・ナット・座金
高力ボルトの摩擦接合は、材片間の接合面での摩擦抵抗により力を伝達。材片間の接触圧力を長期に適切に維持することが重要であるので、以下の品質・性能がセットに要求される。
・必要な摩擦抵抗を生じさせる軸力が導入できる。
・軸力を長期に保持できる。
・腐食への配慮を有する。
・作用力に対し破壊せず安全に使用できる。(脆性破壊、延性破壊、疲労破壊、遅れ破壊に抗すること)
・締め付け方法が簡易で、導入軸力が容易に管理できる。
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接合面処理に応じたすべり係数の推奨値 |
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接合面の処理 |
すべり係数 |
備考 |
| 赤錆状態 | 0.55 | 粗面仕上げの後に、健全な赤錆を発錆させたもの。 |
| 薬剤による発錆 | 0.45 | 化学薬品によって、健全な赤錆を発錆させたもの |
| 粗面状態 | 0.25 | ディスクグラインダーによって粗面とし、錆がないもの |
| 粗面状態 | 0.35(表面粗さの指定無し) 0.40(10μm>Ra≧5μm) 0.45(Ra≧10μm) |
ショットブラストまたはグリッドブラストによって粗面とし、錆がないもの |
| 無機ジンクリッチペイント | 0.40(塗装厚≦65μm) 0.50(塗装厚>65μm) |
塗料中の乾燥亜鉛含有量は80%以上を原則とする。 0.40では合計塗膜厚を90〜250μmとする 0.50では合計塗膜厚を150〜250μmとする |
| 有機ジンクリッチペイント | 個別にすべり試験を行うなど、継手の性能を確認して決定 | |
| 溶融亜鉛めっき | 同上 | |
| 金属溶射 | 同上 | |
| 機械的粗面仕上げ | 同上 | |
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標準ボルト孔径 |
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| ボルトの呼び | 標準ボルト孔径(mm) |
| M20,M22,M24 | 呼び径+2.5 |
| M27,M30,M36 | 呼び径+3.5 |
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ボルトの標準最小中心間隔 |
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ボルトの呼び径 |
最小中心間隔(mm) |
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M36 |
125 |
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M30 |
105 |
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M27 |
95 |
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M24 |
85 |
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M22 |
75 |
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M20 |
65 |
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高力ボルトの標準最大中心間隔 |
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| ボルトの呼び径 |
最大中心間隔(mm) |
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p |
g |
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| M36 | 250 | 12t 千鳥の場合は15t-3g/8 ただし、12t以下 |
24t ただし、300以下 |
| M30 | 210 | ||
| M27 | 190 | ||
| M24 | 170 | ||
| M22 | 150 | ||
| M20 | 130 | ||
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標準最小縁端距離 |
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ボルト呼び径 |
せん断縁 |
圧延縁、仕上げ縁 |
| M36 | 65 | 60 |
| M30 | 55 | 50 |
| M27 | 50 | 45 |
| M24 | 42 | 37 |
| M22 | 37 | 32 |
| M20 | 32 | 28 |
| セット | ねじの呼び径 | α | σy (n/mm2) | Abe (mm2) | N (kN) |
| F8T | M20 | 0.85 | 640 | 245 | 133 |
| M22 | 303 | 165 | |||
| M24 | 353 | 192 | |||
| M27 | 459 | 245 | |||
| M30 | 561 | 305 | |||
| M36 | 817 | 444 | |||
| F10T | M20 | 0.75 | 900 | 245 | 165 |
| M22 | 303 | 205 | |||
| M24 | 353 | 238 | |||
| M27 | 459 | 310 | |||
| M30 | 561 | 379 | |||
| M36 | 817 | 551 |
| セット | ねじの呼び | 設計ボルト軸力(kN) | 締付けボルト軸力 (kN) |
| F8T | M20 | 133 | 146 |
| M22 | 165 | 182 | |
| M24 | 192 | 211 | |
| M27 | 245 | 270 | |
| M30 | 305 | 336 | |
| M36 | 444 | 488 | |
| F10T | M20 | 165 | 182 |
| M22 | 205 | 226 | |
| M24 | 238 | 262 | |
| M27 | 310 | 341 | |
| M30 | 379 | 417 | |
| M36 | 551 | 606 |
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高力ボルト最大首下長さと最大締付け厚さの例 |
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| ねじの呼び径 | 最大首下長さ (mm) | 高力六角ボルトの締付け厚さ加算量 (mm) | 最大締付け厚さ (mm) |
| M20 | 140 | 35 | 105 |
| M22 | 160 | 40 | 120 |
| M24 | 180 | 45 | 135 |
| M27 | 200 | 50 | 150 |
| M30 | 220 | 55 | 165 |
| M36 | 260 (推定値) | 65 | 195(推定値) |
| 高力ボルトの締め付け施工で注意すべき点 (1)高力ボルトの品質管理と保管 (2)接合面の処理 (3)締め付ける材片の組み立て精度 (4)接合部材の組み立て (5)締付け方法と締付け軸力の管理 (6)ボルトの締付け機、測定器具等の検定 (7)ボルト締付け時の天候 |
| (1)高力ボルトの品質管理と保管 ボルト、ナット、座金およびセットは工場出荷時に特性や品質を保証する試験・検査を行い、機械的性質、形状寸法、トルク係数値、締付け軸力等が所定の規格に合格していることを確認しなければならない。 現場搬入時には、検査成績書と照合、保証されたセットであることを確認しなければならない。 工場出荷時の品質が施工時まで保たれるように以下に留意する。 1.工場出荷時から施工時までの期間を出来るだけ短くする。 2.出来るだけ工場包装のまま保管庫に収納し、雨、夜露等の湿気が当たらないようにする。 3.ボルト締め付け場所への搬入を計画的に行い、余分な開包は行わない。 4.濡れ、錆、埃・砂等のねじ部への付着を避けるため、包装は出来るだけ施工直前に解く。 |
| (2)接合面の処理 設計で用いたすべり係数が得られるように適切な処理を行う。 接合面の処理は3.1接合面の処理、4.2すべり係数を参照。 |
| (3)締め付ける材片の組み立て精度 部材同士の食い違いや孔ずれ等に監視、部材製作時の精度確保に注意を払う。また、被接合部材間の板厚差によって同様の問題が生じる恐れがあるので十分注意する。特に、部材同士の食い違いは現場で矯正することは困難であり、著しい食い違いが生じないように工場製作時に留意する。 接合面に板厚調整用フィラーを挿入する、母材にテーパー加工を施して段差の影響を緩和するなどの処理方法は有効と考えられる。肌隙の影響は4.7すべり耐力の補正を参考。 現場継手部の隙間から水の侵入が問題になる場合は、止水材を充填する等の防水処理を行う。 |
| (4)接合部材の組み立て 仮締めボルトとドリフトピンの合計は、その箇所の連結ボルト数の1/3程度を標準とする。その内の1/3以上をドリフトピンとするのがよい。大きな架設応力が作用する場合は、その応力に十分耐えるだけの仮締めボルトとドリフトピンを用いる。 ベントの設置が不可能な場合はその数を多くし、ケーブルエレクション工法の場合はその数を減らし部材間の自由度を増すように施工する。 ドリフトピンを合計の1/3とするのは、ドリフトピンは位置決めに使用し、ボルトは肌合わせに使用することを目的とするためである。 |
| (5)締付け方法と締付け軸力の管理 使用するボルトの種類や締付け機器の特性を十分把握した上で、締付け施工および品質管理を行わなければならない。 |
| (6)ボルトの締付け機、測定器具等の検定 器具の検定は定期検定を示す。 締め付け機、測定器具等の検定は適切な時期に行い、制度を確認する。 1.ボルト軸力計:恒に規定された精度内で使用できるようにしておかねばならない。施工に先立ち現場搬入直前に1回、その後定期的に検定。定期検定は3ヶ月に1回を標準とする。 2.トルクレンチ:現場搬入時に1回、搬入後は1ヶ月に1回を標準とする。使用頻度によっては定期検定の期間を別に定める。 3.ボルト締付け機:現場搬入時に1回、搬入後は3ヶ月に1回を標準とする。インパクトレンチは微調整が困難であり締め付け精度の持続性に問題があるので本締めには使用しない方がよい。予備締めにはトルク制御式インパクトレンチを用いても良い。 4.トルシア形高力ボルト締付け機:ピンテールが有るので検定の必要はなく、整備点検を行えばよい。 |
| (7)ボルト締付け時の天候 降雨の際のボルト締め付けは行わないことを原則とする。 水に濡れた状態で高力ボルトを締め付けた場合、トルク係数値が変化し、軸力のバラツキが増大する。 接合部材や高力ボルトが湿った状態で施工すると、防錆処理に影響を及ぼす可能性がある。 |
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種類 |
ボルト |
ナット |
座金 |
呼び径 |
規格・基準 |
| 高力六角ボルト | F8T | F10 | F35 | M12,M16,M20,M22,M24,M27,M30 | JIS B 1186 |
| 〃 | F10T | F10 | F35 | M27,M30,M36 | 本州四国連絡橋公団 |
| トルシア形高力ボルト | S10T | F10 | F35 | M20,M22,M24 | 日本道路公団 |
| 〃 | S10T | F10 | F35 | M16,M20,M22,M24 | 日本鋼構造協会 |
| 溶融亜鉛めっき高力ボルト | F8T | F10 | F35 | M12,M16,M20,M22,M24,M27,M30 | JIS B 1186相当 |
表2-基準類
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種類 |
準拠する基準類または承認機関 |
| 高力六角ボルト | JIS B 1186 「摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット」 HBS B 1101 本州四国連絡橋公団 「摩擦接合用太径高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット規格(案)」 |
| トルシア形高力ボルト | 日本道路協会 「道路橋示方書・同解説」「摩擦接合用トルシア形高力ボルト・六角ナット・平座金のセット」 日本鋼構造協会「JSS U 09」「構造用トルシア形高力ボルト・六角ナット・平座金のセット」 |
| 溶融亜鉛めっき高力ボルト | JIS B 1186「摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット」F8T相当の機械的性質 JIS H 8641 「溶融亜鉛めっき」2種 HDZ 55 に溶融亜鉛めっき性能 |
| 防錆処理 | HBS B 1102 本州四国連絡橋公団 「摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金セット暫定規格」 |
| 耐候性 | JIS B 1186「摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット」 日本道路協会 「道路橋示方書・同解説」「摩擦接合用トルシア形高力ボルト・六角ナット・平座金のセット」 日本鋼構造協会「JSS U 09」「構造用トルシア形高力ボルト・六角ナット・平座金のセット」に機械的性質準拠 |
| 超高力 | トルシア形は大臣認定を取得 |
| 耐火鋼(FR鋼) | 常温時の機械的性質 JIS B 1186「摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット」 日本鋼構造協会「JSS U 09」「構造用トルシア形高力ボルト・六角ナット・平座金のセット」 国土交通省、日本建築センターにおいて、建築基準法、建築基準法施工令を遵守し耐火設計 |
| ステンレス | JIS B 1186「摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット」に機械的性質 SSBS 301 ステンレス構造建築協会規格「構造用ステンレス鋼高力六角ボルト」 |
| 取り外し可能な仮設用 トルシア形高力ボルト |
大臣認定または機械的性質は日本道路協会、日本鋼構造協会の規格に準拠 |
| ワンサイドボルト | 大臣認定を取得 |
*表-1、2は土木学会の「高力ボルト摩擦接合継手の設計・施工・維持管理指針(案)」を参照
高力ボルトの遅れ破壊
高力ボルトは、常時高い軸力が作用しているために特有の損傷がある。高強度鋼に一定の引張荷重を加えているとき、ある時間経過した後に突然脆性的に破壊する「遅れ破壊」である。
この原因は、
a)水素脆性
鋼材中の水素は鉄と化合物を作らずに鋼材の不連続部にガス状またはイオン状態で存在する。この不連続部を起点として発生する割れが水素脆性で、負荷応力が増えるに従い短時間で発生する。
発生には下限応力がある。また、ベーキング処理により感受性が低下する。
b)応力腐食割れ
鋼表面で局部電池が形成され、アノード側では鋼が溶解してピットが生じ応力集中を受けて亀裂発生点となる。カソード側では水素が発生し水素脆性割れを誘発する。