― 70年代の4畳半フォーク時代を「第一次ルームシェアブーム」とするなら、00年代のIT時代は「第二次ルームシェアブーム」といえる。時代が変わり、男女のあり方もまた様変わりした。その実態に迫る ―

 僕は今、男友達とルームシェアをしている。もちろんやましいことなど何もない。単純にお金がないからだ。探せば安い物件もあるんだろうけど、どうせひどくボロいか不便な物件なのは目に見えている。それなら少し大きめな部屋を借りて、家賃をワリカンした方がいいって考えるのは、自然な発想だ。そんな風に家賃を浮かせるために、ルームシェアをする人間が増えてるとしても、なんら不思議はない。

 でも、最近では男女でルームシェアをしている輩が急増中というではないか。マジで? ホントなの? 男とルームシェア中の僕にだって、その生活は理解できない。シェアメイトなんていう訳の分からん横文字には騙されないぞ! 本人たちは何もないって言い張るけど、ホントは何かあるんじゃないの? って勘ぐりたくもなる。だって家賃の負担を減らすだけなら、わざわざそんなリスクのある生活を選ばなくてたっていいじゃないか。

 例えタイプではない女性だったとしても、何かの拍子に押し倒したくなるかもしれない。そうでなくとも恋人でもない女性が常に家にいたら、気になって仕方がない。そんな毎日を送っていたら疲れちゃうだろうし、なにより安らげない。彼らは一体どのように暮らしているのだろうか。百聞は一見にしかず。僕は彼らの知られざる共同生活を覗いてみることにした。

 
襲われたらどうしよう? と思うと夜もおちおち眠れませんでした

 都庁が一望できる閑静な住宅街。代々、ルームシェアが続いてきたという「伝統ある」メゾネットに彼ら4人は住む。恋人ではない異性と暮らすことに抵抗感を持っているのは、何も男性だけではない。「襲われたらどうしよう?と不安で、いつも本棚をドアの前に置いて寝てました」と海外で、始めて男性とルームシェアをしたときの心境をレイコさんは語ってくれた。

 しかし、その後した他の男性とのシェアが思いのほか快適だったため認識が変わったという。今では「異性として意識すらしない」とキッパリと言い切る。

 インターネットを通じて集まった彼らの生活スタイルの基本は「干渉しない」関係。「同居人はただのルームメイトで恋愛感情などは持ちこまない」と寮父的な存在のシンイチさんは言う。

 住人の多くは何か目標を持ち、今は金銭面が厳しいからと入居した。つまり、お金の余裕ができればすぐにでも出ていきたいのだ。期限付きの暮らしだと始めから決めているので、同じ家に住んでいようとまったく干渉をせずにやっていけるのだろう。少しでも家賃の安い場所に住みたい、でも自分の領域も守りたい。あくまで中心は個人で「他人は他人」、そしてルームメイトはただの同居人といった、極めて合理的な考え方。

 しかし、一緒に暮らすうちに新しい関係を築いていく人たちも多いようだ。

全裸主義者+同棲カップル+家出娘=平凡な日常!?

 東京都中野、ここにカッコ良くも"クラブで知り合った"という4人の、奇妙な共同生活があった。発端はサクライさんとウエヌマ君2人によるルームシェア。彼に「引越しするんだったら私と住んでよ」と持ちかけたサクライさん。その動機は経済面のほかにも、実は理由があった。

 「契約決めた後に一緒に飯食いに行ったら、『あたしストーカーいるから』だって(笑)」。

 彼らにお互いのことを聞くと「まったくタイプじゃない!」とのこと。それもそのはず、彼らの第一印象は「誰? このむさくるしい男」、そして「気の毒なくらいブサイク」。出会いは最悪だったが、その後3年間を通じてお互いを信頼するようになる。互いを異性としては見られないが、彼らの間には男女の友情が成立している。

 「思考や言語感覚が似てるんです。お互いの人生の中で見てきたもの、感じてきたものが一緒のような気がするんですよね」(ウエヌマ君)

 「私がされてイヤなことを絶対にしない人。何も言わなくてもわかってくれる。多くを語らずとも空気を読んでくれる」(サクライさん)

 ウエヌマ君は自分の部屋で、彼女のミカさんと同棲生活を送っている。

 「サクライとはルームシェアしてるけど、同じ部屋で一緒に住むとなると話は別。同性だろうが異性だろうがそれは成立しないと思う。『オナニーもできねえよ』って感じ。僕が一つの部屋で人と暮らせるのは彼女と住む場合のみ。sex込みでの場合のみです」。

 そんなウエヌマ君とミカさんの、同棲生活に今度は家出娘のエリちゃん珍入者が紛れ込んだ。「好きな男にもっと会いたくって、ふらっと家を『出っちゃおっかな?』って」。しかし、その男には奥さんがいた。3人は、否応なくウエヌマ君の部屋で共同生活をすることになった。

 「彼と住んで正解だったと思う。シェアするなら男の方がいい。女の子相手だと、どんなに仲良くても気を使っちゃうから」。
サクライさんはそう語る。

 「もし、ウエヌマ君を好きになったとしても、私は言わないと思う。これからもずっと仲良くしていきたいから、恋愛感情は持ち込みたくないの」。

 奇妙な4人の共同生活は、サクライさんの退去という形で幕を閉じた。現在、彼女の部屋にはエリちゃんが住んでいる。

刺激的な生活を送りたいという欲求をシェアは満たしてくれるはず

 ひとり暮らしをする理由が見つからなかった。早くから実家を出たいと考えていたむつ子さんにとって、上京後のひとり暮らしは''退屈''に思えた。当時流行ったドラマ、「ロンバケ」や「ビバヒル」。その登場人物たちの楽しそうなことといったら! 私もあんな生活を送りたい。彼女の目には、他人と共に暮らしていく様がとても魅力的に映っていた。そんなシェアへの憧れを抱きつつ上京するも、同居人が見つからなかった。むつ子さんはしかたなくひとりで暮らす。

 「その家も嫌いじゃなかったけど、やっぱりシェアがしたかった」。

 思い立ったが吉日、彼女はネットのルームシェア募集掲示板を検索した。そこで一人の女性、男性と知り合う。その3人で家を探し始めたが…、

 「結局は失敗しちゃったんですよ。これといった物件が見つからないうちに男の人の期限が来ちゃって」。

 失敗にもめげず、再び掲示板を覗く日々。それほどまでに彼女は''人と暮らすこと''に飢えていた。シェアメイトと助け合いながら、ドラマチックな生活を作っていきたい。そして、彼女は新しい「家族」をルームシェアに求めていた。そこに男女の性差は関係なかった。例えば''男と暮らす''ことになったら、''不安が無い''わけではないけれど。

 そんな折、浅野君とネットで知り合い、一緒に家探しを始める。

 「男の子ってことで最初はちょっと心配だったんです。だからシェアメイトとして部屋を共有するだけの仲、つきあう前提ではない、という約束をしました」。

 「実は、好みのタイプだったらつき合いたくなっちゃうかもって、思ってたんですけど(笑)」(浅野君)

 2人で不動産屋を廻り、住みたい物件も見つかった。後は契約だけとなった時、親の反対を受ける。

 「私の中では、男の人と住むって言ってたつもりだったんだけど、『聞いてないぞ』と」。
 「お前が男と住むってことは、キズモノとして見られるってことだぞ」。
 「同棲ならまだわかる。つきあってもない男となんで一緒に住む必要があるんだ」。

 社会常識という大きな壁に阻まれ、2人の計画は失敗に終わった。現在、むつ子さんは浅野君とのシェアを諦め、女性とのシェア生活を送っている。

シェアに恋愛感情を持ち込むのはトラブルのもと

 「恋人探しに来るような人もいたんです」。

今まで、8人の男女(外国人5、日本人3)とシェア生活を送ってきたAkkyさんは言う。彼はマイホームの空き部屋を、趣味と実益を兼ねて人に貸し出している。

 「ホームページ開設当初は、出会い系サイトのひとつと勘違いする輩も多かった」らしい。最近になってようやくルームシェアに関する情報も出始め、人々の認識も変化してきた。しかしやはり男は男、これまでの同居人にもこんな男性がいた。

 「擬似的に、"彼女"とは言わないまでも家族的な意識を持っちゃって、シェアメイトが彼氏を連れてきたら怒るんですよ。『なんか気にくわない』って(笑)。『ただのシェアメイトなんだから彼女の勝手なんじゃない?』って言ったんですけど」。他人のプライベートに口をはさむべきではない。シェアメイト同士は依存関係ではない。そうAkkyさんは考えている。

 そんな彼はというと、「一緒に住んだら却って手なんか出せなくなりますよ(笑)」とのこと。当面、一番の目標はシェアをうまく、円滑に進めていくことのようだ。

結婚相手にはふさわしいけど、"今ひとつ足らない人"って感じかな

 「分かりやすくいうとSEXをしない同棲ですよ」と、少し戸惑っている僕に浅川さんが二人の関係を表現してくれた。二人は、あまりお互いのことを知らない段階で共同生活をスタートさせた。どうやってそこまでの関係を築いていったのだろうか。

 福島さんは浅川さんを「良きパートナー」だと言う。「性格や神経質さなどが似ているから、生活が楽なんです」。当初、相手が男性だということもあって福島さんは、「掃除とか洗濯とか全部面倒を見ないといけないのかな」と思っていたそうだ。でもそんな心配はいらなかった。お互いにプライベートは守りつつ、程良い距離感を保ってきたのだ。

 「二人とも住むなら異性の方が良い」と口を揃えて言う。

 「男同士だと気遣いがないからね。たぶん女性の方がいろんなことに気がつく。だから、教えてもらうことが多いんだ」。
 逆に福島さんは、女性同士だとその気遣いが仇になると感じている。

 "共に暮らす"ということについて浅川さんは、こう考えている。「好きと愛してるは違うんですけど、友達って好きだから仲良くなるんじゃないですか。好きかキライか。その延長線上にしかないんです」。性別ではなく、あくまで人としてつき合っているというわけだ。

 週末などには、二人で仲良く買い物や食事に出かけることもあるという。「暇な時にひとり暮らしだったら、ずっと一人で家の中でテレビ見て1日が終わっちゃうかもしれない。でも二人だったらどっか行こうかって気になりますからね」。「彼女ができるとあからさまに行かなくなりますから(笑)」。恋人でもなく、単なる友達でもないそんな関係。

 「一人で住むより家賃が安い。暇なときに話し相手がいるし、相談もできる。彼女と違ってやきもちを焼かれないじゃん。まさに究極の"理想的なスタイル"って感じ」。

 そんな彼らの生活も、周囲はやはりなかなか理解してくれない。

 「この生活を始める前に共通の友人から『もし、彼女がお前のことが好きだったら、恋愛感情に気づかずその生活をするのは罪だぞ。確認しとけ』って言われたんです。ええっ!それはねぇだろうって思ったんだけど、一応確認しました。『お前もしかして俺のこと好き?って(笑)』」。

 いくつか障害もあるようだが、すごく心地よさそうなこの生活は、当分続きそうな気配だ。
 
今回の取材で出会った浅野君とむつ子さんのルームシェアは、世間の常識という壁が彼らの前に立ちはだかった。しかし、浅川さんはこのように言う。

「結婚どうするの?とか、彼女できないじゃんって言われたりするけど、それは将来を見据えて人が勝手に思うこと。別にそれに従う必要ないじゃん。将来なんて分かんないし。そういう一般論的なことを結構言われるんですけど、物事をそのように判断している人とはたぶんこういう生活はできないと思う」

 僕は、常に女性を恋愛の対象として見ている。男女の友情なんて信じられないとさえ思ってる。取材を終えた今でも、その思いは変わらない。しかし今回見た、相手が恋人ではない女性だからこそ可能な心安らぐ生活は、魅力的だった。

 そんな生活を送る男たちは、どこか懐の深さや余裕みたいなものまで漂わせていた。気がつけば、そんな彼らを羨ましいと思うようになっていた。
 恋愛経験を積み、酸いも甘いも噛みしめたサブラ世代だから許される、"人生の楽しみ方"を満喫してみるのもアリかもしれない。
『sabra』 2001年8月9日号「男と女のノンセックス同棲」