岡崎市美術博物館

Mind Scape Museum


ヒアリング 実施日:1996年9月18日Tue.
管理:K氏



美術館DATA

タイトル上のフタバマークから岡崎市美術博物館のホームページへリンクできます。
〒444 愛知県岡崎市高隆寺町峠1
    岡崎中央総合公園文化ゾーン内
TEL  0564-28-5000
FAX  0564-28-5005
交通  名古屋鉄道東岡崎駅から車で約15分
    東名高速道路岡崎インターより約10分
OPEN  1996年7月
職員  学芸員4名
面積  建物:3,982F  延床:6,444F
総工費 55億6000万円(建設費のみ)
管轄  岡崎市社会部






設立の経緯

 数年前、市内の古い寺院が火災にあい、そこに保存されていた文化財も寺院といっしょに燃えてしまうという事件があった。岡崎は城下町であり、こういった町中の古い寺院などで貴重な文化財が保管されている。そこで収蔵庫をつくり、それらを一括で管理することで貴重な文化財を火災や天災から守ろうというのがそもそもの目的であった。しかし話を進めていく段階で、近くの市に常設展示場を持つ施設が出来てしまった。そこで同じようなものをいくつもつくっても意味がないということになり、変更案が出された。そしてこの空間を今までの美術館とは違う空間にしたいということに話がまとまり、今のようなかたちとなる。

収集方針

 岡崎市内に散らばっている重要な文化財と、それに関連する作品、資料を収集する。またコンセプトにあわせて海外の作品も収集する。岡崎には他にも岡崎市美術館や家康館があり、そこにも収蔵庫はあるのだが、ここに収蔵される作品は一定のレベル以上のものを想定している。そして他のところはそれぞれで存続させていく。だが現段階では、レベルの線をどこで引くか、それぞれの館をどう特徴づけていくかは明確には決定していない。

基本方針

 このミュージアムには以下の4つのコンセプトがある。
 @ 岡崎と世界を結ぶ
 A マインドスケープ
 B ワールドバロック
 C 東と西の出会い

   企画展示はこのコンセプトにのっとったテーマで行われる。基本的には、収蔵される岡崎の文化財を中心にそこから視野を広げていき、同じ時期の海外の作品や資料を関連づけて並べていくというものである。
 またここで特徴的なのは、展示の方法である。ここでは作品を一つ一つをみせるというよりも、ストーリー性や、全体の雰囲気を感じとってもらうことの方に重点をおいている。そのため作品がオブジェ的に置かれることもあるし、照明や音楽、映像など非常に凝っていて、展示室全体があたかも一つの作品であるかのような見せ方をしている。
 これは、まずみんなに芸術に親しんでもらおうという意図があるためである。芸術は難しいから行かないというのではなくて、何か面白そうなことをやっている、行ってみようという気にさせる。そしてそこで興味を持ち、もっと知りたいと思った人には、他市(名古屋や豊田)の、より質の高い展示をやっている美術館に行ってもらう。いってみればこれは役割分担である。そのためこの美術館の空間は体感型で、芸術にあまり興味のない人でも楽しめるよう気を配っている。興味を持つきっかけをつくる事を目的とした美術館なのである。
 役割分担という点で、市内の館がそれぞれの特色を十分に発揮できるようにするため、月に一回、市内の学芸員の交流会が開かれている。そこで意見交換、情報交換を行うのである。そして将来的には、市内の美術館がそれぞれの特色を生かしながらも、全体で一つのテーマになっているという趣向の企画展を開催したいと考えている。
 また、岡崎市は現在マルチメディアモデル都市を推進中であるため、それと関連させてビデオやパソコンネットワークを使った作品紹介についても検討している。

学芸員

 学芸員は、全体のリーダーに衛藤駿氏を市の委託職員として迎えている。その他、新卒1名を除く5名は市の職員の中から選ばれた。館のコンセプトが広がりのあるテーマだけに、各自の専門分野もばらばらである。またここでは、一人の学芸員が館の仕事全てを把握できるようにするため、基本的な仕事、経理の事務などにも携っている。これは、役所仕事の予備知識があれば企画をたてていく時に説得力のある予算を組める等の理由からである。時間的にきつい面も出てくるが、そういう基本的なことを知った上でないと自分たちの好きなことは出来ない、というスタンスをとっているのである。

株式会社のミュージアムショップ

 ミュージアムショップとレストランは、美術館ではなく市役所の管轄である。市役所の100%出資で株式会社を設立し、経営を行っている。いい品物があった時、役所で買おうとすると一週間も二週間もかかる。それをうまくカバーするのが株式会社方式なのである。また品揃えに関しては、お土産的な要素はなるべく少なくして、オリジナル性の高いもの、文化的レベルの高いものを意識している。そのためCD-ROMや書籍など、他ではなかなか見つからないようなものがそろっている。そしてそこに、美術館のコンセプトやその時々の企画展に見合ったものも随時置いていく。岡崎市と美術館との共同事業という形をとった運営形態である。

問題点

 まずアクセスが悪い。公共の交通期間は日祝日にバスが一日4本出ているだけである。山の上なので自転車は無理であるし、後は車かタクシーを利用するしかないのである。しかしそれでも以前は特に問題はなかった。なぜなら、ここは市民向けのスポーツ施設やイベント会場が多く、何か行事があるときだけ臨時バスを出していれば、後はみんな自家用車で来てくれたのである。しかし美術館となるとそうはいかない。週6日も開館しているし、遠方から電車で来る人もいる。だがここに金銭的な壁がたちふさがる。1時間に1本の割合でバスを出すとなると、年間4〜5000万かかる。で、それががらがらで走らせるという状態だと、せっかくの市民の税金が名鉄バスの社員の給料に化けるだけである。このことについては賛否両論あるのだが、効率的な予算思考から考えるとどうしても考えざるを得ない。
 それからシステム的な問題がある。例えばある企画が売り込まれたとする。するとそれがいくらいい企画でも、買うという意思表示を出すのに事務手続きだけで1ヵ月から1ヵ月半かかる。すると売り込んだ側はそんなに長く待っていられないから、どこか他のところにいってしまう。こういう不便さを制度面でどう改革していくか、今はまだ検討中である。

所感

 著名で高額な作品を集めるよりも、あまり興味のなかった人が芸術に親しめる、そして美術館にいくきっかけになるような催しを開催していくという方針は、評価できるものだと思う。そのため館全体にアミューズメント的な雰囲気があることは否定できないが、日本人の芸術に関する興味の度合を考えた時、美術館が役割分担をして現状に見合ったやり方で教育普及につとめてていくことも必要ではないだろうか。しかしこの時、ここの美術館だけで完結して、他へ広がっていかない人も大勢いるだろう。芸術の体感スペースに徹することも一つのやり方ではあるが、世間で体感スペース流行の風潮があるだけに、美術館としてのレベルをどう維持していくか、問われるところだと思われる。
 それと運営の面で、気になるところがいくつかある。まず第一は、一貫しない方針と職員の認識である。はじめは収蔵庫として計画されていたものが今のような形になったのである。本当にこの美術館がつくられる必要性があったのか、本気で計画を練っていたのか疑わざるを得ない。それは建物と中味の関係ついても言える。館の方向性が固まり実際ソフト面に取りかかったのは建物があらかた出来てしまった後であり、それからこういうことがしたいからこういう部屋が欲しいと言っても聞き入れられる状況ではなかったのである。
 それから交通機関であるが、車でしか来られないようでは無理があることは分かり切っている。それなのにそこで躊躇するところをみると、運営に携わる職員に芸術普及の必要性が認識されていない、社会に貢献する気概が十分ではないと受け取らざるをえない。市民の税金を無駄遣いは出来ないから慎重にならざるを得ないといいつつも、町中に何の意味もない趣味の悪いオブジェが建っていたりするところをみると、やはり芸術に関する市の認識に、何らかの問題があるのではないかと思わざるを得ない。
 学芸員の待遇についても、今までさんざん問題になっている雑芸員をそのまま何の改善もなく持ち込んでいる。今のところ文句は出ていないし、このやり方は今後も続けていくとおっしゃっていたが、文句は出ていないのはまだ館が開館して間もないからであり、職員に疲労がたまっていないだけのことではないだろうか。言っていることは立派でも、実際やっていることはなにかしら中途半端だというのが、全体としての印象である。




■岡崎市DATA■

人口:32万8587人(平成8年11月1日)
主産業: 繊維、自動車製造業



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