大阪市立近代美術館建設準備室

大阪市教育委員会社会教育課


ヒアリング実施日:1996年10月7日Mon.
企画 K氏



準備室がおかれた経緯

 山本コレクションから佐伯祐三を中心とした作品の寄贈を受けたことと、市政100周年を記念して何かやろうという動きが重なり美術館建設としてまとまった。既にでき上がっている科学館も話が持ちあがったのは同じ頃である。
 

どんな美術館を目指しているのか

基本的な方針としては以下の4つ。
●近現代を中心としたコレクション。
 大阪には、東洋青磁や中国のコレクションはあるが、近現代に関してはまとまったものがない。そこで新しい美術館では近現代の作品を扱うことになった。美術館建設の発端となった山本コレクションが近代の作品を中心としていることも関係している。

●充実した常設展示。
 美術館は常設展だけで来館者をよろこばせることができるものでなければならないという考えがあり、作品収集や常設展示にも力を入れる。

●国際的な評価に耐えうる企画展。
 常設展示と同時に企画展も世界に認められるレベルのものを開催する。大きな巡回展は大阪を素通りしてしまうことも多く、そういったものを開催する場所にしたい。

●作品と静かに対話できる環境、雰囲気づくり。
 来た人に何かを感じ取ってもらう、その人の中に何かを芽生えさせる環境をつくる。

 観に来た人も勉強できる体制をつくりたい。また作品展示だけでなく、展示と関連づけた音楽会やパフォーマンスなど、人を呼び込めるようなイベントもしていく必要がある。それから小中学校との関わり、ギャラリートーク、作家のワークショップなどは、やっていこうと考えてはいるが現時点ではどれもまだ具体的には決まっていない。
 しかし、根本の一番大切な部分は学芸員の調査、研究であると考える。そして、その成果をどう展示し、発表するか。どうやって市民の皆さんに分かっていただくかという問題が続く。

作品収集

   大阪としての特色をもたせる。佐伯の生誕地が大阪の中津であることから、山本コレクションの佐伯祐三を中心とした日本の近代作品、そして現代作品では、大阪と関わりのある具体美術の吉原治良を中心に収集していく。
 また同時に近現代の作品の流れを概観できるようにするため、海外の巨匠の作品もあわせて収集する。一人の作家を複数というやり方ではなくて、あくまで概観的に、広く浅くという方針でやっていく。そのとき、値の張る巨匠の作品を1点買うか、それとも現代のそれほど高くないものを2〜3点買うか、その選択は難しいところである。人を集められなければ意味がないし、その大衆はブランド志向が高いのも事実である。
 この他には生活の中の芸術作品という観点から、家具などのデザイン作品も集めている。
 ここに来ればこれが分かる、という特色を持たせたいと考えている。現在、全体では2500点の収蔵品があるのだが、デッサンなど展示したときに補足説明になるようなものが多く、まだまだ常設展としてみせるには不十分である。しかしこれらの作品は、年に1〜2回展覧会を開いたり、他に貸し出したりしている。収像については、館が建っていないので収蔵庫はないが、ちゃんとしかるべき場所で保管している。

問題点

 建設予定地は中ノ島4丁目なのだが、美術館単独ではなく市街地再開発の一環として建設する計画である。中ノ島4丁目は、大阪大学医学部の跡地である国有地、民間企業の土地、そして大阪市の市有地とに分かれている。市街地再開発とはここ一体を整備しようというものである。土地を売却し、国は大学発祥の地を記念するものを何かつくる。そして残った土地にビルを建て、ビルの何階かまでは土地の所有者であった民間企業が権利を買い、余った床に美術館を建設するという予定であった。しかしバブルがはじけて権利証が売れなくなってしまった。それが美術館建設が遅れている大きな理由である。
 このことについては市役所の計画課、民間企業とも協議していかなくてはならないことであり、その際発生する問題を一言でいうのは難しい。
 それからもう一つ、その土地に昔の蔵屋敷の蔵いりの跡が発見され、調査が行われるようになったことも問題の一つになっている。
 一方、大阪市の税収も年々落ち込んでおり、財政は苦しく問題は山積みされているというのが現状である。どこに先にお金がいるか、どこが緊急を要するかということになると、美術館はどうしても後回しになってしまう。そのため担当者が思うスピードと、市側が、経済のバランスを考えた上で対応するスピードとではずれが出てくる。これはどこの課、どこの自治体も同じである。
 しかし、同じ時期に話があがったはずの科学館が既に完成してしまっているのは何故か。それは、大阪では関西電力の力が強く、勢力を持っているということが関係しているようである。
 しかし、高齢化が進み、週休二日や時短も実施されるようになった現在、余暇として文化は否定できないものになっているのは事実である。その文化の発信地として美術館建設は大きなプロジェクトであるし、目玉であると担当者は考えている。

その他・所感

 近代美術館準備室は大阪市役所の教育委員会事務局の中にあるのだが、これは「美術館、博物館は社会教育施設である」と考えられているためである。しかし美術館、博物館の業務は広範囲に渡り、これは一つの独立した課に匹敵するものではないだろうか。
 また、今回話を聴いた限りでは、美術館建設は必要からでてきたものではなく、100周年だから何かしよう、これがあるからそれをしようといういわばいいかげんな動機で生まれたプロジェクトという印象がぬぐえない。それだから障害があるとつまずいてしまう。これが、どうしても必要だからつくるんだという明確な必要性が最初からあれば、建設はもっとスムーズにいっていたのではないだろうか。欠けているのは芸術の必要性についての認識であると思う。
 しかし余暇が増え、文化は無視できない大切なことであるという認識が公になされるようになったことは事実である。これからはこれをもっとつきつめて、文化をイメージや雰囲気としてではなく、もっと具体的に考えられるようにしていかなければならない。今はその過渡期であるのかもしれない。

■大阪市DATE■

人口:259万9642人(平成8年10月1日現在)
主産業:卸売り小売業、サービス業



NEXT DATA

TOP PAGEへ ● [MUSEUM NOW]目次へ

Pelican-can's HPのHOMEに戻る
無断転載を禁止します。リンクしていただける場合は、お手数ですがご一報下さい
Copyright:Noriko SATOH
QYP02215@nifty.ne.jp