高岡市美術館
Takaoka Art Museum
ヒアリング実施日:1996年11月20日Wed.
副館長:Y氏
美術館DATA
タイトル上のフタバマークからMuseum Infomation Japanの高岡市美術館のページへリンクできます。
〒933 富山県高岡市中川1丁目1番30号
TEL 0766-20-1177
FAX 0766-20-1178
交通 JR高岡駅から徒歩約20分
もしくは氷見線越中中川駅 徒歩2分
または富山行 バス中川バス停 徒歩2分
職員 12名(内学芸員7名)
面積 敷地:9,182.00F(市有地のみ)
建築:3,152.98F
延床:5,630.99F
総事業費 約60億円
管轄 財団法人文化振興事業団(財団は教育委員会の管轄)
リニューアルに至った経緯
沿革 1951(昭和26)年 高岡市美術館開館
1970(昭和45)年 美術館に隣接して高岡市博物館開館
1994 (平成6) 年 高岡市美術館新設
以前の美術館の建物は博物館に組み込まれる
リニューアルを考えたのは建物の老朽化が主な理由である。昭和60年、市制100年記念事業に高岡市市民総合文化広場の整備をする計画が持ち上がった。そしてそのなかで、美術館を広場内に移転、新築する方向で話が進んだ。館としては、全国的な流れを追っていかなければ飽きられる、取り残されるという配慮から、各地で行われているような展覧会をここでも行っていく考えである。またここでやるのにふさわしいもの、市民の皆さんが観ておいたほうがいいと思われるものを展示していこうと考えている。
館の特徴
全国的、国際的な水準の展覧会、高岡伝統の金属工芸・金属造形作品の収集、展示、市民に開かれた美術館という3つの柱で活動を行っている。展覧会では、館独自の方向性を重要視するため自主企画中心に行っていくと唱ってはいるのだが、実際のところはそうでもない。
市民に開かれた美術館という点では、本当なら無料であれば一番いいと思うのだが、雰囲気を入りやすくする、ギャラリーを使って市民の作品発表の場にするなどということが必要だと考えている。
しかし、ここにはワークショップルームが設けられていない。美術館の建設当初の予定では、隣に生涯学習センターをつくり、そこの作業室やワークショップルームを共同で使う予定であった。しかし、別枠で高岡市活性化のためにホテルを建設するという話が持ち上がり、生涯学習センターはそちらに組み込まれることになってしまった。その代わり美術館の隣には図書館を建設し、その中にワークショップルームをつくることになったのだが、図書館の建設予定は平成12年以降といつできるかわからない状況である。
また以前は美術館は市経済部の直轄であったが、現在の運営は財団が行っている。財団設立そのものは市役所の人員削減の意味もあったのだが、予算面では財団の方が運営がしやすい。財団法人文化振興事業団の管轄になっているものは美術館の他に万葉資料館がある。また事務局そのものがコンサートや野外劇を開催している。
収集方針
以前の作品購入予算は何百万の単位であったのだが、現在は年間1億円。リニューアルオープン時の作品購入予算は4億円である。
高岡には昔、刀の鞘をつくる金細工の名工がいたのだが、パリ万博にその金細工が出品され、それがきっかけとなってそういった作品がロンドンのオークションで取り引きされるようになった。それを発見したのが高岡出身の林忠正である。貴重な郷土の文化財であることから、13年前に市がこれらを買い取り、収蔵したのが現在の収集の原点になっている。以来高岡の伝統工芸である銅器、漆器の他、金属工芸、またそれから発展させた金属造形作品を主に収集している。ロダンの「考える人」はここの目玉である。
美術館新設の意義
高岡市の市長自身芸術に関心があり、自分でも野外劇に出演などする一方、美術館にも力を入れている。特産品であった銅器が石油ショック以来低迷を続けており、何とかして活気を取り戻したいという考えもあった。また高岡市は富山と金沢に挟まれており、観光客も高岡では宿泊せずどちらかに流れてしまう。そのため文化を通じて他市と友好関係を結ぶ、交流する事によって、観光人口を誘致したいという意向がある。観光人口誘致のために現在行っている活動は、美術館のほか金沢と協同での野外劇の上演、万葉祭などのお祭りの開催、パンフレット作り等である。それらのイベントの集客率は一応60万、70万などと報道されてはいるが、実際の成果については何ともいえない。
美術館自体の意義について言うことは難しい。しかし高岡の文化行政の中心になっているとは思われる。
来館者の反応
高岡市には文化人、また銅器産業が盛んであったことから、芸術に関心のある人が多い。市内の工芸高校からは優れた作家も輩出されている。入館者はオープン後2年間で30万人を数えた。これは一般的に評価できる数字だと考えている。反応は、新しくなってきれいになった、建物が洒落ているという声が多い。地方からの視察もあり、その中には「自分のところで美術館をつくる予定なのだが、収蔵庫は何故必要なのしょうか」と聞いていかれた方もいる。
全国に先駆ける、あって悪いものではないという理由でハイビジョンを設置している。非常に性能の良いものなのだが、一日4時間流していて実際観ているのは2〜3人程度である。しかし個人ブースの方は、行けば誰かか使っている。ハイビジョンシステムの維持費は、光源を取り替えるだけでも5〜600万とかなり高額なのだが、団体で来た方達などは観ていかれるし、これからもソフトの充実は続けていくつもりである。どんなところに重点を置いて充実させていくかはこれから検討していく。
富山県博物館協会
富山県では、富山県立近代美術館が事務局となって富山県博物館協会を組織している。しかし年に2回学芸員の研修会を開いているほか、目立った活動はしてはいない。加えて、行くと半日つぶれてしまう、あまり行くほどの事もしていないという理由から、交流は頻繁ではない。
今後
高岡市美術館では開館当初、美術館と学校教育との連携によって、子供を対象としたワークショップを開催した。内容は、第1室では高岡市内の小、中、養護学校の生徒作品の展示、第2室では常設展時の鑑賞、第3室では段ボールを使って実際に美術館で制作したものを、展示するという形で行われた。これは改善をしつつ、今後も続けていく予定である。
まだ3年目であるので、今はがんばってやっていかなくてはという時期である。これがあと5〜10年たつと、少ない予算の中いかにしてレベルを落とさず、かつお金をかけずに展覧会をやっていくかで知恵を絞らねばならなくなる。有名な、人気のあるテーマでの展覧会がいくつもできたらいいのだが、予算がついていかないし、内容が限られてくる。そのためには学芸員一人一人が人脈をつくる、企業とタイアップするということが必要である。高岡には読売新聞社の支社があるのだが、読売新聞のトップの方が隣町の出身ということもあり、何かと手助けをしてくれる。読売新聞の中に全国美術館連盟の事務局があり、そこが色々な企画展をしているので、そういうところの巡回展を持ち込むことも考えている。
所感
お話しをしてくれる方にもよるのだろうが、新しい美術館よりもリニューアルしたところの方が元気がないように感じられた。高岡市美術館では、副館長が今年配属された方ということもあるのだろうが、館のコンセプトについてしっかり把握できていない印象を受けた。またそのコンセプトも既存の美術館に追随するもので、金属造形の収集のほかにはリニューアル前からの進展があまりみられない。一大事業であるはずのハイビジョンシステムも、現段階ではその性能に見合うだけの役割を果たしていないようである。とりあえず全国レベルの設備の整った美術館を、そうすれば人が集まりあとは何とかなるだろうという、美術館は玉手箱的な風潮があるように感じた。館のリニューアルは町おこしの意味もあるとおっしゃっていたが何故芸術文化事業が町起こしにつながるのかという具体的な理念や根拠といったものは今回聴くことができなかった。
高岡市では、昭和26年という早い時期に市立の美術館が建設され、その中で企業とタイアップした企画展などが行われていた。そうした経験を持った町であるのだから、今までの活動を見直し、それを踏まえた上でワンランクアップした美術館建設も可能だったはずではなかったのだろうか。
■高岡市DATA■
人口:17万5000人
主産業:アルミ、銅器、漆器
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