豊田市美術館

Toyota Municipal Museum


.ヒアリング実施日:1996年9月11日Wed.
庶務課:K氏


美術館DATA

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豊田行政の考え方が知りたい人は、タイトル上の赤い果実をクリック!
〒471 愛知県豊田市小坂本町8-5-1
TEL   0565-34-6610
OPEN  1995年11月
交通  名鉄豊田市駅または愛知環状鉄道新豊田駅から
    徒歩約10分
面積  建物:6,804.25F
    延床:11,120.75F
総事業費 122億6,436万円(用地費を除く)
管轄  市立だが市からは独立








設立の経緯

 豊田市は今「21世紀未来計画」を進行中である。これは、10年ぐらいのスパンで豊田市をどういう街にしていくかという長期計画で、豊田市美術館もこの事業の一貫として建設された。この「21世紀未来計画」の中で、豊田市は産業文化交流都市を目指す事を唱っている。今までは産業文化都市と呼んでいたのだが、これに「交流」を付け加えることにより、市外からも沢山の人を豊田市に呼び込もうというものである。そしてこの時、豊田市には人を引き寄せる魅力ある場所に欠けているという声が浮上してきた。
 これに昭和54年の意識調査が重なった。調査は毎年、2000人の成人を対象として行われているのだが、ここで市民の約20%が美術館建設を望んでいるいう結果が出たのだ。それから公立美術館の調査が開始され、平成2年に委員会が設置された。そして平成5年6月建設工事が着工され、平成7年11月の開館に至る。

基本方針

 国内外の近代及び美術・デザイン・工芸作品の収集、保存、調査研究、常設展示、企画展示(年4回)、教育、普及を基本方針としてあげている。しかし豊田市美で最も特徴的なのは、収集方針と常設展示である。他の多くの美術館とは異なり、ここでは常設展示が大きな位置を占める。11ある部屋のうち実に10部屋が常設展示に当てられ、またその内容も比較的充実しており、常設展だけで来館者に楽しんでもらう、またそうでなければならないという館側の気概が感じられる。そして企画展に関しては、常設展の延長線上にあるというスタンスをとっている。  それから豊田市美を成立させているもう1つの要因は、本格志向の方針である。中途半端なものでは人は集まらない、これがあるから豊田市に行くと思わせるものでなければならない。その為にはどこに出しても、それが例え世界でも恥ずかしくないものにしなくてはならない。そんな考えの下で豊田市美は着工された。

収集方針

 他の館との違いをはっきりとさせるという目的で、近代でも、よくある印象派ではなくウイーン分離派が選ばれた。ここの目玉はクリムトである。そしてそこから派生させてデザイン、また工業都市豊田と結びつけて工芸作品が収集されている。全体として、一つの分野に偏るのではなく、幅広く収集展示できる総合美術館を目指している。
 そしてもう一つの特徴は、一作家複数作品を念頭に置いていることである。これは市長の意向でもあるのだが、一人の作家を多方面から鑑賞できる様にしている。現代の作家は現役で活動中の方も多いので、作家とコラボレーションしながらという形で進められている。

財団方式

 豊田市美が作品収集に関して非常に力を入れていることは、先に述べた通りである。しかし、公的機関で高額の買い物を、しかもタイミング良くするということはなかなか難しい。良い作品が市場に出てきても、議会の決定を待っていたら他のところに先に持っていかれてしまうからである。そしてなにより、役所では年度の出費があらかじめ決められているので、いきなり高額の買い物をしたいと言っても聞いてはくれない。
 そこで導入したのが財団方式である。まず市が基金をつくり、財団はそこからお金を借りる。そして美術品を買い、議会の決定を待って市がそれを買い戻す。この図式ができたおかげで、かなり融通がきくようになった。
 しかし問題はある。財団とは言ってもそれを運営しているのは市の職員で、彼等が2足のわらじを履いているに過ぎないのである。また、役所では立て替え払いは絶対にしないことになっている。しかしそれを言っていたらいい作品は流れてしまう。そこで画商に押さえてもらうことになるのだが、これを実質は市の職員である財団職員が行っしまっているのである。

市側の理解と評価

 しかし、何かと問題はあるにせよ今のところ収集がうまくいっているのは、市長及び市議会の理解によるところが大きい。この点では豊田市美は非常に恵まれている。一般に、万人受けしない、判らないと敬遠されがちな現代芸術作品も比較的スムーズに受け入れられているだけでなく、収集に関してはかなりの比重で学芸員に任されている。
 そして学芸員の高い理想と市側の理解によって、豊田市美は専門家から高い評価を受るものとなった。その評価の対象は主に現代芸術作品の充実である。また専門家だけでなく、一般的にみても豊田市美への関心は高い。「月刊美術」では、行ってみたい美術館のナンバー1に豊田市美があげられた。
 質を追及していけば自ずと人は集まる。豊田市美はそれを体現してみせた。

問題点

 美術館建設は、今まで市民向けの施設しかつくってこなかった豊田市職員にとって、初めての連続であった。画商とのつながりだけでなく、一流の設計士と組んで仕事をしたのも初めての経験である。その為建物に関しては、もっと障害者用の配慮がなされなければならなかったはずであるのに、結局は建築家の景観重視の意向に沿うかたちになってしまった。また美術の専門業者が入ってきても、経験がないためにいい業者と悪い業者の見分けがつかない。料金が高いのか安いのかについてもわからない。
 しかし少しづつ経験を積んだ人がいろいろなセクションに散っていけば、時間はかかるが、徐々に体制は良くなっていくだろうと思われる。

今後

 美術館のような事業は、できるまでは力を入れてくれるのだが、それから先は尻つぼみになってしまうことが多い。それをどう阻止するかは、学芸員と館職員の熱意、そしてどう実績をあげるかにかかっている。また美術館は開いているだけで電気代その他の莫大な料金がかかるものであり、それらを観覧料だけでペイするのは土台無理な話である。残った赤字部分は税金で補うわけだが、その時市民に「あれは税金の無駄遣いだ」と思われてしまうと、後々の予算縮小につながる。だから、あまり理想ばかり追って市民の声を無視していてはいけない。しかし、美術館としては高いレベルを目指さなければ生き残っていけない。その辺の兼ね合いが頭を悩ませるところである。

その他

 この他にも、豊田市美では解説ボランティアの養成も行っている。それまでは身障者の介助しか行っていなかったのだが、来年春に向けてボランティアを募集し、現在研修を行っている。
 またこの夏には、企画展示を使って子供を対象にしたワークショップも開催され、これからも引き続き行っていく予定である。

所感

 常設展示を見た限り、現代芸術ではいい作品が集まっているのだが、他のジャンルの作品は少ない。いっそのこと近現代の美術品に絞ったほうがいい作品が集まるのではないかと感じる。しかし、現段階で、作品収集に関しては学芸員の方が中心となり非常な熱意をもってやっておられるし、集まっている作品も質の高いものであるので、もし本当にこの方針が貫かれ、改善を繰り返しながら収集が進んでいくのであれば、何十年後かには海外の大きな美術館に匹敵するぐらいの総合美術館が出来上がるのかもしれない。
 加えてここでは、学芸員の高い理想とそれをサポートしようとする館職員の雰囲気は、完成されてはいないにせよ強く感じられた。「これからできるんかなあ」などと弱音をはいている方でも、「大事なのはやっぱり学芸員だと思う。学芸員の考えさえしっかりしていれば、後はバックアップ。(中略)学芸員が理想をもちつつしっかり仕事をしていけるような環境をつくっていければ、いい美術館ができていくんじゃないかと思う」とおっしゃっていた。その考えを継続させていってほしいと思う。
 また、少しづつ経験を積んだ人がいろいろなセクションに散っていけば、時間はかかるが、徐々に体制は良くなっていくだろうとおっしゃっていたが、基本的なノウハウに関しては、あらかじめ対応できる人材を育成しておく事が必要なのではないだろうか。その土地、その館にあう人材を自然なかたちで育てていくことは重要だが、はじめからある程度の事に通じた人材がいれば無駄も省かれるし、ビジョンも明確に打ち出しやすくなる。地方都市で新しい美術館が次々に建設されている現在において、それらの質を低下させないためにも、人材の育成ははますます求められる、また行っていかなければならないことだと思われる。




■豊田市DATA■

人口:34万人(1996年9月1日現在)
主産業:自動車製造業



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