和歌山県近代美術館

The Museum of Modern Art,WAKAYAMA


ヒアリング実施日:1996年11月19日
学芸員:T氏



美術館DATA

和歌山県和歌山市吹上1-4-14
TEL 0734-36-8690
FAX 0734-36-1337
交通 JR和歌山駅
   または南海電鉄和歌山市駅からバス約7分
   県庁前下車徒歩2分
職員 フルタイムでは18名(内 学芸員7名)
総工費 192億633万1千円(美術館134億、博物館58億。用地費を含む)
面積 (博物館も含めて)
   敷地:23,356.78F 建築:7,087.17F 延床:18,704.50F
管轄 和歌山県教育委員会文化財課






新館建設に至った経緯

沿革 1963(昭和38)年 和歌山県立美術館 開館
   1970(昭和45)年 同 廃館
        同 年 和歌山県立近代美術館 開館
   1994 (平成6 ) 年 同 新館開館

   美術館の全身は、1963年に和歌山城公園内にオープンした和歌山県立美術館である。その後1970年、機能を美術館と博物館とに分離し、美術館部分が県民文化センター内に近代美術館としてオープンした。名称を特に近代としたのは、明治以前のものは博物館で扱うため、 役割分担が主な理由である。この時の館の規模は、延面積で1740平方メートル、現在の2階部分の面積に相当する。
 またもともと和歌山県立美術館は、県民から県の公募展の作品発表の会場がほしいという要望からつくられたものであり、その性格は貸ギャラリーがほとんど、企画展は年に数回というものであった。近代美術館になってからもこの性格は変わらず、企画展や収蔵品の常設展示はあまり活発には行われなかった。そのため館の内部から、企画展や収蔵品の常設展を十分観せられる美術館が必要であるとの声が出、リニューアルの構想が持ち上がった。  建設にいたっては、保坂春彦氏などの郷土の芸術家、有識者、地元有力者、県のトップからなる建設検討委員会を設け準備に当たった。その時、税金を使うのだから、県民全体にまんべんなく利益をもたらすような性格にしなければならないという要望もあった。しかし美術館としては、館の所蔵する近現代の作品をどのように紹介するか、またこの和歌山という土地で何ができるかについて考えることの方が本質である。そのため、美術館の本質を見据えた上で、ミュージアム本来の機能を強化する形で建設が進められた。

新館の特徴

   新しい美術館では、ギャラリーと美術館機能を完全に分離し、貸ギャラリー的なことは県民文化センター内の県民ギャラリーで行っている。以前は創作のための部屋があったのだが、「作品を観せる」というリニューアル時の意向に沿ってワークショップルームは設けていない。また本物を観てほしい、画像で肩代りはできないという観点から、ハイビジョンギャラリーはあえて設置しなかった。

収集方針

 旧館時代から、和歌山県出身、もしくはゆかりのある作家及び周辺の作家の企画展、また戦後前衛運動の中の関西の作家を、大阪や京都からはなれて客観的に観ることを目的とした関西の作家シリーズという企画展を行ってきた。現在もこの方針は引き継がれており、収蔵作品ともリンクする。そして海外の優れた作品、版画の名品を収集していく。しかし、一応このような名目はあるが、いいものがあれば何でも買っていくという姿勢をとっている。しかし、予算は十分ではない。年間の作品購入予算は5000万円で、以前は1500万円だったのでそれと比べると増加はしたのだが、旧館は新館とは異なり貸ギャラリーの占める比率が大きかったため、一概に比較はできない。

来館者の反応

 アンケートを見ていると、今まであまり観られなかった常設展が観られるのはうれしい、きれいになったという声のほか、現代芸術作品に対しては何が何だかさっぱりわからないという声がほとんどである。県民の芸術に対する意識は特に高いわけではないが、昔から愛好家はおり、県立美術館ももともとはそういう人達の作品を発表する場であった。また和歌山には資産家が多く、古くから優れた個人コレクターが多い土地柄でもある。
 しかし、今だに美術館でグループ展などを開きたいから展示スペースを貸してくれという声はある。リニューアルし、世界的に優れた作品が常設されるようになったにもかかわらず、その横に自分の作品をならべたいという声があるのである。しかし、旧館の行ってきた活動をみれば、これは当然起こりうる反応だと受け止めている。新館を旧館と同じように考える人がいることに関しては、美術館側のアピールが足りない事も原因の一つだろうと反省もしている。しかし、一方で、ミュージアムとしては県民の要望に十分答えられる充実した活動を行っていくし、観客の幅は以前と比べ物にならないくらい広がった。遠方からの来館者も多く、和歌山県立近代美術館は和歌山の一つの顔として存在していると考えている。

今後

 平成8年度の運営費は3億4614万8千円である。しかし予算というものは、年々10〜15%位ずつ目減りしていってしまう。これはどこの美術館でもいえることだろうが、これからの予測はわからないし、たてられない。
 今は企画展と常設展あわせて年10数回展示を行っているのだが、県は泰西名画の展覧会を要望してくる。こういうものは多額の金額がかかり美術館の負担は大きくなるのだが、 そういうものの方が確かに県民の反応はよい。だから年に一回は県の要望も取り入れつつ、残りは学芸員一人一人の考えに従って企画を行っている。館としての統一した目標というより、学芸員それぞれが目標をもってやり続ければ、自ずと館のカラーは出てくると考えている。ロジャー・アックリング&ハミッシュ・フルトン展などについても、アンケート結果では「こんなわけのわからないものを美術館でやって」という意見もあった。しかしこの展覧会をここでやったということが重要で、これは、和歌山県立近代美術館を世界レベルの美術館に上げていく第一歩だと考えている。
 また、展示室が閉室のままだと、また会場を貸してくれという話になるので、自転車操業的ではあるが、展覧会をやり続けていく必要がある。
 館としては、芸術を特別なものではなく、もっと軽い気持ちで観られるような工夫をしていくつもりである。そして、館の中に一つでも好きな作品を見つけてくれれば、何度でも足を運んでくれると考えている。そういったリピーターを沢山つくりたい。常設展を、「20世紀美術の流れ」や「第◯期常設展」というタイトルではなく「美術館に行こう」としているのも、入りやすく面白そうな雰囲気をつくるためである。
 またこれからは、貸ギャラリーがなくなったことをうけて、一度原点に還り、美術館とは何をするところかというところから考えていかなければならない。




■和歌山県DATA■

人口:1080,481(平成7年10月1日現在)
主産業:農業(梅、みかん)



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