養老天命反転地

Site of Reversible Destiny-Yoro Park,GIFU


ヒアリング実施日:1996年10月24日Thu.
指導課長:O氏
学芸員 :H氏



反転地DATA

岐阜行政の考え方が知りたい人は、タイトル上の赤い果実をクリック!
〒503-12 岐阜県養老群養老町養老公園
TEL 0584-32-4592
FAX 0584-32-4593
OPEN 1995年10月4日
交通  JR養老駅から徒歩約15分
職員  反転地では5名(内学芸員1名)
    公園全体では約20名
面積  約18,100F
高低差 約25m
事業費 約11億700万円
管轄  岐阜県公園緑地課






設立の経緯

 養老公園ができたのは明治13年である。公園のリニューアルと地域の活性化をはかるため、1990年から公園の再生整備の計画はされていた。この時、画一的でない特色ある公園を公園を考えていた県に、荒川修作氏の企画が持ち込まれたことが設立のきっかけである。
 荒川氏は同じ企画を海外や東京にも持ち込んでいる。特にイタリアでは着工寸前までいったのだが、「あらゆるところに神が宿る」という荒川氏の考えがキリストカトリックの考えと相いれず、断念せざるを得なかった。

反転地の方針

 今の芸術は観るものがほとんどで、触れられるものは彫刻ぐらいである。しかしここの基本方針は「体を動かすこと」である。反転地自体には「場」があるだけで、何のアトラクションもサービスもない。サービスしないことがサービスなのである。訪れた人一人一人が体を動かすことで自分のからだと関わり、再認識する。それはあくまで人にさせてもらうのではなく、自分で「する」のである。ナントカ村というような思いつきのものではなく、思考と哲学に根差した奥深さがここにはある。
 また、ここを文化の発信地にしたいという思惑もある。一つの文化の拠点をつくり、そこから世界に向けて岐阜をアピールする。そして世界から人を呼び込もうという考えである。

反応、評価

 開園当初、どこでも自由に歩き回れるという方針だったため、パーク内の建物に人が登り、一人が上から転落、骨折した。そして、公共の施設が怪我人を出したということで各メディアで取り上げられ、大きな話題を呼んだ。幸か不幸かこのことが反転地の名を世間に広める結果となったのである。以来反転地を訪れる人は増加し、14万人と見込んでいた年間入場者は倍以上の40万人を突破した。
 来園者の反応の多くは「面白い」というものである。荒川氏の意図は理解していないなくても、冒険心を刺激され素直に喜んでいる人が多い。そして評判が人づてに伝わり、人が人をよんでいる。
 また、行政視察で訪れる人も多い。東京都をはじめ、各地方から来ているという。「よくこんなものがつくれましたな」というのが圧倒的な反応で、今まで行政では考えられなかったような施設ができてしまい、実際盛況を呼んでいるのに驚いているのである。そして「こんなに盛況ならうちでも・・・」と考えるところもあるようである。
 地元の人はこのことをどう思っているのだろうか。養老公園は、養老の滝へ行くコースの入り口に当たるところである。地元の人達は養老の滝に誇りを持っており、またこれは県が半ば強引に進めてきた事業であるため、内心快く思っていない人もいるという。また週末になると来園者の車で静かな土地に渋滞がおき、迷惑している住民は多い。
 しかし逆に、これを足掛りに養老町を活性化したいという声は強い。実際周辺の売店、飲食店の売り上げは、反転地ができてから大幅にアップしている。

問題点

 骨折があってから公園事務所では運動靴とヘルメットの無料貸し出しをはじめた。そして大勢の警備員も配置し、事故のあった場所に「立ち入り禁止」の貼紙もしたのだが、荒川氏が視察に訪れた際、「コンセプトに反する」と言って破り捨てられてしまった。以来事務所では、芸術性と安全性との間を常に行ったり来たりしている。
 しかし、その後は175人(96年5/21現在)の人が何らかの治療を受けたものの、ほとんどが軽い擦り傷で大事には至っていない。

今後

 現在は、隣接地に荒川氏の構想による「天命反転記念館(仮称)」が建設中である。詳細はまだ検討中だが、作品に何らかの解説をくわえることも考えられる。また来園者で何らかの説明を求める人は多く、作品理解のヒントになるようなギャラリートークも考えていきたいとおっしゃっていた。

所感

 危なさが面白いと、反転地には人が集まる。今まで安全を追究し、親切すぎるほどになった日本社会で、それも公的機関がつくったところで価値の逆転が起きている。実際には様々な制約があるにしろ、これは一つの変革ではないだろうか。
 また、視察に来て「こんなに盛況ならうちでも」と考える自治体もあるそうだが、安易な二番煎じになることだけは避けて欲しいと思う。これは公立美術館にも言えることで、見よう見まねの中途半端なものに無駄遣いをするようなら、つくらないほうがいくらかましである。
 しかし、日本人だけかどうかはわからないが、一般にはどこか芸術や芸術家を特別視し、神格化しているところがあるように思う。また、世界的に認められていると聞けば、理解はできなくても許してしまうところがある。これがいいのかどうかはわからないが、これと「こんなに盛況ならうちでも・・・」という二番煎じの考えを重ねて利用して、各地に現代アートプロジェクトをうち立ててしまったら面白くはないだろうか。勿論安易なもの、美術館建設ラッシュの二の舞では意味がないが、特別視していた現代アートがいつの間にか自分の身近に来ている。そうしてしまえば、そこから新たな価値が生まれてくることも考えられるのではないだろうか。




■岐阜県DATA■

人口:210万5598人(平成8年9/1現在)
主産業:繊維、木工、金属(刃物)、紙、食料品



NEXT DATA

TOP PAGEへ ● [MUSEUM NOW]目次へ

Pelican-can's HPのHOMEに戻る
無断転載を禁止します。リンクしていただける場合は、お手数ですがご一報下さい
Copyright:Noriko SATOH
QYP02215@nifty.ne.jp