観 劇 日 記
『松平健 全国縦断特別公演』
(2005年11月3日 於・茨城県小川町文化センター)
舞台を観るまでの心の葛藤
 どうしても言いたかった事、でも言ってはいけない事。それは−手抜き−というプロの仕事にはあってはならない言葉・・・。松平健さんの突然の大慶事と共に始まった、今回の全国縦断公演。本来ならお祝いムード一色に染まるはず、とは裏腹に、初日以来2週間というもの、周りから聞こえてくる声は、まさに長年のファンには耐え難い苦痛を味わうのに十分な、辛い悲しいものばかりでした(T_T)。舞台俳優として「120%の熱意でお客さんに素晴らしい舞台をお見せする」という信念の固まりだった松平さんはいったいどうしてしまったのか?舞台を見てもいない私がここまで言うのは、傲慢以外の何物でもありません。しかし、大河ドラマの過酷な撮影が9月末に終了して、十分な稽古を積む時間もなく公演が始まり、後には大作『バルトの楽園』の撮影を控えている−そんな切羽詰まった松平さんのスケジュールの事を思うと、否が応でも最初の“三文字の言葉”を思い起こさずにはいられませんでした。観たい、いや観たくない・・・でも現実を直視しなくては。(松平さんに関するご慶事以外の別件の事もあって)私は大げさではなく、どん底に突き落とされたような心持ちで10月を過ごしていました。

 そんな状況に少し変化が生じてきたのは、このビバサンバ掲示板にも何人もの方が書き込みして下さったように、10月最終週の東北公演の頃からでした。「お客さんが乗っている!」「舞台と観客の一体感が感じられる!」「殺陣の迫力が蘇ってきた!」何かが少しずつ明るい方向へと向かっている。みいまさんからの「新宿公演より市原公演、公演の昼の部よりも夜の部・・・どんどん進化している、明日(11/3)の小川町ではもっと良い物が見れるはず」との激励(?)の言葉も、私を前向きな気持ちにさせるのに充分なものでした。

 今回の公演地、茨城県小川町、自衛隊百里基地という要所を抱えてはいますが、緑豊かな自然の広がる大変のどかな土地です。都会のギスギス感から解き放たれたように、地元の皆さんも非常に穏やかな感じです。事実松平さんも、MCの中でそのように小川町の方々を暖かく評していらっしゃいました(^o^)。お客様は昼夜ともほぼ満杯!地元の方が大勢を占めてはいましたが、県北部日立からお見えになったと言う方、コスプレしたお子様連れの方もチラホラ。ここ小川町も例外なくマツケンサンバは老若男女に隈無く浸透している事を伺わせました。

『暴れん坊将軍』〜吉宗子守唄〜


 下妻藩(実は茨城県なんです!)のお家騒動を扱った、実にオーソドックスなスタイルのお話でしたが、このオーソドックスさがむしろ私には大変新鮮でもあり、懐かしくもありでした。というのもここ数年『用心棒』や『暴れん坊将軍ミュージカル』、『不死鳥よ波濤を超えて』などと、言ってみれば“異色物”のお芝居が続いたのに加え、普通の『暴れん坊将軍』も「二人吉宗」「哀怨おしどり道中」と再演物が続きましたので、まったくの新作『暴れん坊将軍』は本当に久しぶりだったからです。

 75分という短さ。巡業公演特有の時間制約を受けながらも、非常にコンパクトに、でも『暴れん坊』のエッセンス「笑いと涙と人情」「痛快無比な展開」「スピーディーな殺陣」は全て網羅した、ある意味非常に贅沢なお芝居だったと思います。め組の頭による冒頭の口上と幕切れの三本締めも、巡業ならではの楽しさがありましたし、笑いどころでは大いに笑う小川町の皆さんの暖かさにはこちらも大変感激しました。一緒に観劇した小さな娘たちも、笑いどころでは終始声をあげて笑っていましたよ(^o^)。
 場数は五場でしたが、暗転間では必ず黒幕前のお芝居が挿入されるので観客を全く飽きさせません。私、いわゆる黒幕前のお芝居というものは、大変失礼ながら“つなぎ”としか考えてなかったのですが、今回に限ってはこの黒幕前でのお芝居が、巡業ならではのアットホームな雰囲気を醸し出すのに大きな役割を担っていたと思います。もちろん主人公である上様&新之助様は、黒幕前でのお芝居をする事は絶対ありませんから、松平さんのお姿だけが観たい!という方には少々物足りなさを感じるかもしれません。でも全体的なお芝居の成果を考えた場合には、(巡業であればなおさらの事)無視する事のできない要素であったと思うし、お芝居の質を下げることなく観客の集中力を舞台に向けることに成功していたと思います。

 松平さんの新之助が登場した時の観客のどよめき、オーラの凄さは言うまでもなく、“青年将軍”の爽やかさはTV版そのままに舞台の上でも場を支配しています。五場面全てで松平さんは衣装替えするので、衣装好きの私には大変目の保養にもなりました(*^_^*)。赤ん坊をいかにも不慣れな手つきで扱う松平さんのとまどいの表情、そして慈しみの優しさ溢れる表情。松平さんのナチュラルとも言える演技の安定感は言うまでもありませんが、それ以上に今回のお芝居で強く感じたのは、一座の皆さんのチームワークの良さでした。め組の頭役の園田さんを筆頭に、おさい、おちよ、嵐一座の皆さん(真島さんの女形も強烈なインパクト!)、そして大奥総取締・滝川役の浅利さんとお側御用人・田之倉孫兵衛役の北町さんの絶妙なコンビぶり、ヒロイン役の芦川さん、悪役の堤さん・田口さん等々と・・このお芝居を盛り上げようとする熱意が役者の皆さんからビンビンに伝わってきて、その姿勢に感動さえ覚えました。特に浅利さんは今回もいわば狂言回し、黒幕前芝居でも大活躍だったのですが、ピンで主役を張れるほどの演技派とも言える浅利さんのこのような姿は涙が出るほど嬉しく感じられます。

 大詰めの立ち回りも、大河『義経』で丁度「堀川夜討」で太刀の豪快な殺陣を見た直後でしたので安心はしていたものの(^^;)、冒頭で述べた噂の件もありましたので、ドキドキしながら見守っていたのですが、いやあ〜相変わらずのスピーディー感!見得切り場面では大いに拍手を送っていました!“徳田新之助は健在だ”を充分アピールする素晴らしい立ち回りでした。
 このお芝居なら大丈夫(*^_^*)。もう私の不安など何処かへ飛んでいってしまったのは言うまでもありません。池田政之氏脚本&田中林輔氏演出は、やはり『暴れん坊将軍』芝居の名コンビである事を実感できた瞬間でした。

ショー『マツケンサンバU 唄う絵草紙』編


 まずは、オープニングのマツケンサンバU。サンバコンですっかりお馴染みのOPの音楽に続く“マツケンマンボ・ダンストラックスver.”のキャッチーなリズムが体を支配していたものですから、ここでいきなりジャン!のサンバUのイントロが流れる事に、自分の体は少々ビックリしておりましたが、すぐに慣れました(笑)。小川町特有の照明設備のせいかもしれませんし、今回の座席が非常に後方で(涙)、舞台全体を見渡せたからかもしれませんが、サンバコンに比べて照明がとにかく派手に感じられました。サンバUでは虹色の照明が客席に向かっても放たれるのです。そのまばゆくも煌びやかな事!舞台後方に設置された階段状のミニステージにも沢山の電飾がほどこされて、それぞれの場面に相応しい鮮やかなカラー照明が彩ります。私は心底立って踊りたかったのですが、会場整備の方に「消防法の規定により云々」と言われ(T_T)、残念ながらスタンディングする事無くその場でサンバ棒を振りながら座り踊り(?)しておりました。サンバコンでの少数精鋭部隊の踊りも素敵ですが、やはりにぎにぎしさは舞台公演ならではですね。今回のさしずめ中編成での群舞は特に男性ダンサーのブルーのお衣装の多さが目立った事もあって、煌びやかさは倍増!間奏部も五組のカップルで踊られましたので、高揚感は否が応でも増します。

 その次は私の大好きな、大好きなボレロ二連発(*^_^*)!!実はこんな事いうと腰元ファンの方に怒られそうですが(^^;)、“ボレロぬくもり”を初めて舞台で観たのが女優さん相手の物でしたので、今回の芦川さんとのコンビも、その美しさに思わずうっとりしてしまいました。相手方の芦川さんの髪飾りがサンバコンよりも派手だったように見受けられるのですが?

 そういうわけですから、引き続く“さくらボレロ”も、いわば良い意味でアクの少ないサンバコンの踊りの時と比べて、ねっとり感が増した風に感じられます。でも個人的には踊り手にも演技力が欲しいなぁ〜と常々思っていたので、自分としては好みの“さくらボレロ”でした。(ベストはやはり2000年明治座のですけれどね)。アップテンポ調に切り変わるところでは、昼の部では松平さんの“妖艶な笑み”が見られました(*^_^*)。腰元四人組のフォーメーションも直線ではなく、ジグザグなので、遠方から眺めると立体感が増して奥行きがあるように思えました。

 さくらボレロのお衣装でお唄いになる“夜明け“&”斬って候“、照明は前者がブルー、後者が真っ赤、その対比が素晴らしい。また衣装が異なるだけで、どうしてこうも印象が違うのでしょう。サンバコンでのラメ着流し、東京ドームコンサートでのピンクのお衣装に引き続いて、3パターン目なるのですが、今回も非常に贅沢なものを見せていただいた気分です。単なるサンバコンの短縮版と思っていた自分を心から恥じました。

 そしていよいよお待ちかね、私にとっては“本舞台”で観る初めての“生マツケンサンバV”です。くどいようですが、遠方から拝見すると、腰元ダンサーのフォーメーションの懲り具合といい、振り付けといい、前作とは段違いにレベルアップ、というより難易度が大幅に増している事が分かります。松平さんもすっかり踊り慣れてきたのか、間奏部の踊りもまったく不安を感じさせません。三角形のフォーメーションで、ぐんぐん舞台前方に迫ってくる様子は、カッコイイの何の・・・観ていてゾクゾクしました。そして何より嬉しかったのが、サビ部分の横移動で軽快なサンバステップを踏んで下さった事(^o^)!やっぱりマツケンサンバには欠かせない要素ですよね。これからも是非続けていただきたいです。そうそう今回初めて気が付いたのですが、♪燃え上がる炎のように〜♪のフレーズで、手の螺旋状の動きに合わせて腰も振っていらっしゃいました(*^_^*)。セクシーだけど上品!これが松平さんのサンバの神髄ですよね。

 “ワン・モア!”の後、出演者の皆さんを迎える松平さんのお姿はまさにサンバの神様が光臨されたかのように神々しく見えました。緞帳が下りるときになさる、松平さんの手首のひねりの動きも、右手にされた赤ラメのリストバンドの輝きがイヤでも目について(^^;)、艶めかしさを醸し出しています。

 ええ〜もう終わり??もっと観ていたい!!あっという間のショー30分間でした。

 話が前後しますが、MCは皆さんご存じのいつものネタに加えて、地元ならではのネタが登場しました。でもここ茨城では他所とは少し違い、土地の産物ではありませんでした(^o^)。「茨城には大河ドラマの撮影で大変お世話になりました。近くの海岸で撮影をしたり、ええ〜と、ワープ、ワープ・・なんだっけ?」(←会場の私、思わず「ワープステーション江戸」!と遠方から叫ぶ)「そうそう、ワープなにひゃら江戸(爆)」「とにかく大河ドラマ撮影にとって茨城県は欠かすことの出来ない場所です」(会場大拍手)。大河ファンの自分にはこれ以上嬉しい発言はありませんでした(T_T)(T_T)。松平さんありがとう〜〜これからも懲りずに茨城県に“ロケ”でいらっしゃって下さいね〜〜(笑)。

 巡業公演は場数を重ねるうちに観客との呼吸がつかめて、だんだん良くなるという話は普通にありますが、今回の巡業公演ではそれ以前の事が問題化していましたので、初日始まって二週間ほどは、(周りからの評判に)ホントに落ち込んでいました。しかし今回地元で拝見したお芝居に限って言えば、後者の不安要素は全くと言っていいほど感じられませんでした。むしろ新作お芝居+新曲サンバVを拝見できる今回の公演は、劇場芝居にも劣らない高揚感・満足感を味わえる貴重な公演だと思えます。まだご覧になってない方は、是非是非首を長〜くして待っていて下さい。私も叶うことなら、飛行機で乗ってでも四国公演や九州公演に飛んで行きたいのですが・・・。要はそれくらい何度でも観たい公演だ、という事を強調して筆を置きたいと思います。

HOMEShibakoの歴史ドラマの小部屋