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ドラマの収録をしていて、楽しいことの一つは撮影の合間のおしゃべりです。カメラのセッティングができるまで、ストーブを囲ってよもやま話をします。NHKの大河『義経』のような現場は出演者がいろいろな世代に分かれているので、自分の知らないことが分かって、大いに刺激になります。特にベテラン、松平健さんの話が含蓄があり、演技にとってもこれからの人生にとってもとても勉強になります。 「剣の出し入れは、さやを横に傾けるとうまくいくよ」。その通りにやってみるとスムーズに刀が出てきて、刀を入れるときも言われたように、さやの所に手を添えると実にきれいにおさまってくれます。拍手の仕方も教わりました。「この時代は今のような両手を合わせて音を出すのではなく、手でひざをたたくんだよ」。こういうアドバイスがドラマにリアリティを与えてくれます。 今、大ヒット中の『マツケンサンバU』の秘密も話してくれました。実はあの曲を最初に作ったのは7年前。ステージで使っていた曲をCDにしてくれないかとレコード会社に持って行ったら、な、な、なんと「こんな曲は売れない!」と断られたのだそうです。仕方なく、自主出版にしてCDを作り、ステージで7年間歌い続けて、今日の大ブレーク。まさしく「人生はオレッ!!」と叫びたくなります。 それだけにこの曲に対するこだわりは強く、歌うときは一つのレビューと考えていて、幾多の歌番組のお誘いも、お客さんの前で腰元ダンサーズも一緒で・・・という条件がないと、あのめくるめく『マツケンサンバU』の世界を表せないと断っているのだそうです。 こういうプロ意識は、もちろん体調管理にも表れてきます。僕ももうじき四十歳になるのですが、朝早い撮影が続くと疲れが取れにくく、現におでこにでっかいニキビがありました。どうやれば松平さんのように元気に、顔がつやつやでいられるんでしょう。四十代からの健康法を教えてもらいました。 「まずウォーキングだね。毎朝一時間くらいしてる。京都でも撮影前にしているよ」(やはり歩くことは大切なんだ)。「それと睡眠、六時間はとるようにしている」(やっぱりねぇ。人間、眠らないとね)。「お酒は次の日に残らないように控えることだね」(なるほど節制ですね)。以上の三つを自分に課しているからこそ、時代劇スター松平健から魅惑のマツケンサンバまで踊ることができるのでしょう。 「ナンチャンもやってみて」「分かりました」と力強く決意をした夜のことです。その日の食事の時、松平さんの誕生日をみんなで祝いました。中華料理を食べ、お酒も飲み、にぎやかで楽しい時間を過ごし、松平さんもうれしそうです。僕もお酒がまわり、いい気分になってきてもう一杯飲もうとしたのですが、昼間、聞いたばかりの自己管理を思い出し、店員さんに「お水を下さい」と頼もうとした時に、野太い声が耳に飛び込んできました。「何それ!お水じゃなくて焼酎二倍でしょ」。テーブルの向こうで暴れん坊将軍が笑顔でこちらを見ています。「はい」と言われるがままにお酒を頼み、それを飲み干してまた水を頼もうとすると、「何それ!焼酎三倍でしょ!」と将軍様が微笑みます。(オーイ、自己管理はどこへ行ったー!?) お開きの時間になり、僕は一応、松平さんに聞きました。「あすも早いですから、きょうはこれで終わりにしますか。それとも歌なんか行きます・・・」「行こう!!」(あれ?睡眠六時間は)。その時、僕の目には白馬にまたがって駆けだしている松平さんの姿が確かに見えたのでした。 一行はそのままホテル内にあるカラオケルームへ移動し、メドレー合戦で盛り上がり、みんなでマイクを渡しながら順番に歌っている時も、松平さんは冷静に一回一回見やすいようにモニターを動かしてくれます。(やさしい!!)そして最後に誰かが、「松平さんお願いします!」とマイクを向けました。流れてきたイントロは『マツケンサンバU』(ヤバイ、こだわりの歌だよ。こんな所じゃ・・・)。「いいよ」とマイクを持ち、歌うマツケン!!翌朝、僕のでっかいニキビは見事に小さくなっていました。松平健さん曰く「ストレスをためるのが一番良くないね」。おっしゃる通りです。 (ナンチャンの何がでっきょんな 四国新聞特別寄稿 より) |