超長期的に見た水力の経済特性
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- 前提条件
- 水力はどのようにして開発されたか (日本の場合)
- 水力の開発規模 決め方
- 償却後の水力の特性を論ずることが何故タブーなのか
- 何を期待するのか
- 水力の経済特性の分析 (日本の場合)
- 水力開発概観
- 9電力の既設一般水力(全水力から揚水を除く)の発電原価試算
- 日本の卸電気事業の水力売電価格
- 超長期的に見た水力の経済特性
- 計算の根拠となる諸係数
- 新規のA水力・A火力を建設した場合の160年間の原価推移
- 100年間7.6兆Kwhの水力を開発した場合の水力原価推移
- 火力を同様に100年間7.6兆Kwh開発した場合、水力との原価推移比較
- 償却後の水力のメリット
- 結 び (問題提起)
水力発電はダム等と同じように公共事業的性格を持つが、私企業的な経済財でもある。最近環境論者ばかりでなく日本の代表的新聞ですらその論説委員までもが「川殺しの世紀」と河川工事を罵倒している。振り子は行き過ぎれば必ず戻ってきてまたそれが振り戻されて、バランスの良い社会が形成されるものだが、この頃を見ると無重力状態で片方によりすぎた振り子が宙に浮いたまま戻ってこない感じだ。
従って大きな振り子を動かす為に問題の焦点を世界に、そして21世紀後半に移し、色々な課題がある中でエネルギー問題を取り上げ、その中で水力を素材にして解りやすく訴えたいと思う。第一のテーマは21世紀後半の世界の一次エネルギーで水力の「量」を、第二テーマは性弱説で「心構え」を、第三のテーマ即ち本論文は水力の「コスト」を扱っている。
繰り返すけれども、本ホームページの論旨の対象地域は世界であり、期間は21世紀後半である。日本の現状に拘わると大局の判断がしにくくなるからである。
またグールド博士(ハーバード大学、古生物学)は地球的時間と人間的時間と言う概念をとり入れ、次のように説明している。「過去5億年で地球は5回の破局的大災害を受け、一番大きな絶滅は2.5億年前の事件ですべての種の96%が死滅したし、最近では6500万年前に直径5キロの小惑星が衝突して恐竜が絶滅した事件で生物の50%が絶滅した。それでも地球は回復した。だから地球温暖化は地球にとって危険ではない。しかし環境的に危険な状況を解釈する場合は、人間の時間的尺度で見ると10年〜100年に的を絞るのは正しい」と述べている。
本ホームページではそういう意味で化石燃料がおかしくなると言う21世紀後半に的を絞ったのであるが、50〜100年後の設備投資の超長期の経済分析方法は見あたらない。工作機械とか生産工場などの経済分析手法はあるがいずれも機械的損耗と陳腐化等により精々10〜20年位が対象期間である。水力のように償却後も資産を運用する事の出来る再生可能な耐久財についてどう分析するか大きな課題であると思う。
それでまず日本において水力がどのように開発されて来たかを分析し、そこで得た知見を世界の将来に展開する方法を取ることとした。
- 前提条件
- 水力はどのようにして開発されてきたか (日本の場合)
- 日本の最初の水力発電所は自家発として宮城県広瀬川の三居沢水力、事業用として京都の琵琶湖疎水を利用した蹴上水力でそれぞれ1888年(明治21年)、1891年(明治24年)に運転開始し、何れもその後規模を拡大して電力会社に引き継がれて現役として活躍している。平成4年にはこれを記念して、全国ベースで水力百年記念式典を挙行している。1878年(明治11年)パリー郊外のセルメーズ製糖工場が自家発水力を行ったのが世界最初である。第二は1882年(明治15年)に開発されたアメリカのウィンスコンシン洲アップルトン鉱山の自家発であり、日本は世界で三番目になる。明治の先達が如何に近代文明の吸収に貪欲であったかと言うことが解る。
- 河川の流水は年を通じ渇水から洪水の変動があり、渇水量を基準に水力出力を決めれば年間を通じて電気を利用できるが、それ以上の流水を利用するときはその部分は不定期となる。また使用水量を増やして行くと増分コストによる増分の年間電力量は充分に大きく全体のKwh当たりのコストを低減して行くが、次第に増分コストが割高に転じ全体のコストが高くなる分岐点が生ずる。このボトムの点がKwh当たりの単価の最低の水力最適規模とされた。概ね豊水量(95日水量)がこの点に当たる。
- 明治末期長距離送電の技術が成功し、山奥の大水力を都市に大量輸送する機運が高まった。しかし渇水量以上の電気は不定期で特殊電力であったから、化学工業などが不定期に利用するのは良かったが、大正時代の労働運動の高まりから、紡績工場などでは不定期電力供給のため女工のレイオフが問題となりはじめ、電力供給側も水力の渇水時には火力で補給するなどの措置を取るようになった。水火併用の始まりである。大正12年本田勘一郎が発表した「発電水力の経済的利用」は水火併用理論の原点となった。
- 世界的にも水力の有利性が評価されてエネルギー供給に重要な役割が期待されるに至った。世界動力協会では、水力の有効な開発にはダムの建設が必要であり、その経済性と安全性を高める為世界の技術の総力を揚げて取り組む必要ありとし、1928年その下部機構としてパリに本部をおく国際大ダム会議を設置した。日本動力協会は直ちに下部機構として日本国内委員会を設立し加入した。このようにして高い重力式ダムやアーチダム、ホローダム、ロックフィルダムなど新しい形式の大ダムが電力会社の水力土木技術者によって次々と建設され、電力不足の解消に大いに貢献した。
図−1

こうして、水主火従の水火併用方式が続き、昭和30年代半ばまで水力が日本の全供給電力量の80%近くを占めていたことは図−1によって明らかである。
今日の日本の電気事業の繁栄は戦前・戦後初期の水力の開発運用によってその基礎を築いた。明治創業の頃は、水量や落差の資料が充分でなく水力を建設しても期待通りの出力が出なかったり、渇水になると電気が止まるような事もあった
と言う。国による数次の包蔵水力調査が公表されて水力の有効開発が大いに進んだと言われる。
制度や体制にしても、戦時中に行われた電力国家管理の(株)日本発送電や戦後の電源開発促進法の(株)電源開発も水力をいかにうまく、早く開発するかにあったし、また戦後の電力再編成において、分割に伴う水力の帰属問題に話し合いが付かず、占領軍総司令部(GHQ)のポツダム政令と言う異常な力で分割された経緯も、詰まるところ既設水力や未開発水力地点の取り込みが会社の将来の運命を左右したからである。
こうして9電力はそれぞれ供給地域のみならず水系をも独占してしまったのである。この独占形態が、今日諸外国と比べて電気料金が高いと言う弊害を生む結果となっている。
平成4年のエネ庁長官の私的懇談会である水力新世紀計画策定委員会で、電力会社出身の委員が、自己紹介で「−−−−戦時中の赤紙召集令状を受けたような心境で−−−」と言って顰蹙をかったが、もっとエネルギーに対する真摯な態度がほしい。
- 水力の開発規模の決め方
- 我が国では優良な水力地点が多いことは明治以来5次に渡る政府の包蔵水力調査によって明らかにされ、その資料は公開され、水力の有効開発に貢献したことは前に述べた。即ちKwh当たり最低コストとなる規模で、火力との比率を考慮しながら民間資本による開発が進んだ。戦時中国家管理されたが、戦後分割されて再び9電力の民間体制となった。
- 戦後火力の比率が高まりベース運転する傾向から水力のピーク価値を適正に評価する要請が高まり、新設火力の建設費、燃料及び運転費から耐用年数15年間の均等化経費からKw、Kwh価値を算定し、(収入−支出)がプラスで最大となる点を最適規模とする方法等が考えられ運用されてきた。
すなわち戦前はKwh当たりの初期原価を評価の対象としていたが、上記のように水力の特性であるKwの価値を認めたことと、水力も火力もそれぞれの法定耐用命数間の均等化係数を採用した事は大きな進展であった。いずれにしても火力より高い水力地点は絶対に認められなかった。
- これらは電力会社の企画畑の技術者の精緻を極めた分析による結果だが、15年しかもたない火力と100年以上ももつ水力と完全に比較する事自体が難しく、解析を進めようとしなかったし、また出来なかった。その上重要な解析要素である金利、燃料費や物価係数は恣意的な仮定に基づいている。しかもCO2を排出しないメリットは全く評価されない。経済性に強く制約されながらも、ようやく着工し、運転開始し、40年の法定耐用命数が来て減価償却が終わり、いざ勝負と言うときに相手の火力は化石燃料が途絶えて姿が消失しているのでは何を議論してきたのかさっぱり解らない。
- 平成4年の水力新世紀計画策定委員会で燃料費などの価格変動要素のない水力は電力会社が通常行う電源開発より2〜3割高い所をねらう事とし、その数値の根拠として水力の耐用年数40年間に耐用命数15年の新鋭火力を2回建て替えると言う評価方法を導入した。画期的なことであった。(この耐用命数の水力40年、火力15年は新エネルギー財団水力委員会の小委員会(主査東京電力)の資料を適用した)
- しかし日本の場合、現実には水力のKw当たり建設費は火力の約5倍で、この巨額な初期投資が会社の経理を圧迫する。日本の場合は残存包蔵水力も1000万Kw、400億Kwhしかなく、供給力に影響を及ぼす程大きくなく、また奥地化、小規模化によるコスト高に対し補助金を投入しても、電力会社としては揚水発電を除いては殆ど興味が持たれていないのが現状である。
- 純揚水発電は昭和40年代後半から爆発的に増え、この30年間で100年かかつて開発した一般水力とほぼ同じ量の約2000万Kwを
開発した。揚水発電は深夜の余剰電力を転換して昼間のピーク時に発電するのであるから電力量を新たに造り出すものではない。夏の冷房などのピーク対策は火力よりも負荷即応性に優れた大規模で安い揚水発電が歓迎された。しかも日本は幸い高落差の優れた純揚水地点に恵まれていたのである。
- 償却後の水力の特性を論ずるのは何故タブーなのか
- 私が此処で水力価値の評価について、今まで一度も触れなかった又は触れようとしなかった或いは触れることが出来なかったタブーとされていた内容をあえて述べることを決心した。それは法定耐用命数を過ぎた後の水力の評価である。最近問題になった有料高速道路の施設償却後の処理が法制度の改正により認められた事を知ったからである。ご承知の通り有料高速道路の償却後は国の施設として無料にすると言う公約を反古にして、従来通り有料にしてその収益を別の採算割れの新規有料道路工事に回すというのだ。
- 私は水力は高くてもやるべきだとは思っていない。代替火力に対して正当な評価を求めているのである。今まで述べてきたとおり、関係者のたゆまざる研究や努力で評価方法が画期的に改善されてきているが、償却後の評価に付いては全く話題にすら上っていないし、上げようともしない。経済学の常識を破るものだろうか。
- 当然公共事業的性格をもつ水力も有料高速道路と同列に考えてもおかしくないが、その水力の運営者が許認可官庁の規制に弱い電力会社と言う私企業であることだ。今まで電力会社は色々な手段で、或いは巧みな方法で経済的負担を強要されいる。中国では乱収費と言い取り締まっている。公租公課や各種公益法人などの設立・運営などに可成りの経済的負担を強いられているのが実状である。
こういう状態では償却後の既設水力のメリット評価を議論することはタブーになってしまう。今此処で論じようとしているのは化石燃料のなくなってしまう100年先の世界のエネルギー事情を直視すると言う大前提である。従って既設一般水力が長期的にはメリットがあると言うだけで、すぐ短絡的に次のような事を考えることは絶対にやめてほしいのである。
議論の本質を見失う事になってしまう。
- 公租公課の値上げ
- 許認可官庁の新旧公益法人などへの経費負担
- 多目的ダムの費用負担の増額
- 放流量の増大
- 何を期待するか
化石燃料の無くなってしまう100年先の状態に身を置いて考えて見る。過去100年の戦争の歴史、資本主義対共産主義の実験はもう繰り返さないだろう。欧州はEUの実験をスタートしている。経済から政治体制にまで高めるという。北米大陸もアメリカとカナダの間でNAFTA、アジアでも拡大ASEANの構想がある。世界政策が失敗して、資源獲得戦争等により破滅的状態になるのか、コントロールの利いたお互いに窮屈ながらも持続可能な世界を造り上げる事が出来るのかどうか解らないが、そのような時代に水力が演じる役割の可能性を探り、これから何に手を付ける事が必要かをここで議論しようと言うのだ。
有料高速道路がしたように、償却後の既設一般水力が持つ潜在価値(メリット)をどのように役立てる事が出来るか考えてみたい。
- 電気料金抑制に資する (第一義的には、料金の抑制に投入する)
- 自然の恩恵に還元する
(水源涵養林、自然の醸成などの事業投資を考慮する。自然資源の奪略を恣ままにして知らぬ顔をしている時代ではなくなった。しかし日本における訳の分からぬ赤字を抱える国有林野の救済などはもってのほか)
- 水力自身は勿論他電源或いは新エネルギーの開発を援助
(残存水力で経済性の低い地点の救済に投資するほか、新エネルギー特にバイオエネルギーの商業化などに積極的に投資する)
- 他の利水事業に協力する (農地拡大に伴う灌漑用水、飲料水に苦しむ20億人に及ぶ途上国の救済など)
- 水力の経済特性の分析
電気事業便覧と言うのが毎年刊行されている。その中に各種電源施設の発電原価が表示されている。それをプロツトしたのが図−2である。
前にも述べたが平成4年の水力新世紀計画策定審議の時に、石油危機で火力のコストの急増したのに対して、水力コストが極めて安定していることに着目して、水力の開発は電力会社が通常行う開発より2〜3割程度高いところを狙うべき事を提案した経緯があったが、図−2の石油ショック(昭和53年)の頃の事情を見るとよく理解できる。
図−2を見ると昭和49年ころは2円/Kwh以下の全水力が平成6年には火力・原子力よりも高く約9円/Kwh近くなっているのを見て驚いた。前述の通り水力はだんだん安くなるはずで不審に思って調べると、全水力の中に揚水発電所が含まれている事が解った。
揚水発電所はご承知の通り年間に発電するのは300〜400時間位いにすぎない。火力や原子力は6000時間以上だから、これをKwh当たりで比較されたのでは問題にならない事は自明のことである。そこで全水力から揚水分を差し引き、既設一般水力の原価を摘出する作業が必要となる。
ところがこの作業はなかなかやってくれない。そこで計算の仮定条件(b参照)を明らかにして試算したのが図−2に示した一番下の既設一般水力原価の線で、概ね平均で約2円/kwh程度である(水力は出水率による変動があるので平均してみた)。この試算値は筆者の計算によるものであり、おおよその傾向を示すものと理解して欲しい。但しその計算値は計算の課程から見て安全側即ち高めに出ていると考えている。
- 水力開発概観
上記の通り約2円/kwh程度と言う既設一般水力の原価は次のような観点からも憶測出来る。
昭和20年の終戦時の電気事業用水力は約500万Kwで、これが概ね9電力に引き継がれている。この500万Kwは戦前の開発だから、物価の点や償却済みの点から見ても殆ど只に等しい(ただし終戦直後のインフレの激しい一時期資産再評価を行った事実がある)。
戦後水力の開発は盛んに行われ、9電力は約900万Kwの一般水力の開発を行った。この開発は昭和30年代後半で殆ど終わり、電源開発の概要(黒本)によると建設単価は平均で30円/Kwhとなっているから経費率を12%として3.6円/Kwh程度と推定される。これらが既に平均40年弱経過しているので殆ど償却してしまっている勘定である。
このほか9電力は混合及び純揚水発電所を約1400万Kw開発している。
これから見ても9電力の既設一般水力約1400万Kwは2円/Kwh以下と推定されるのである。例えば揚水が少なく、その影響の薄い昭和49年の全水力の原価は1.67円/Kwhにしかなっていない(図−2)。揚水発電所の建設はは殆ど昭和40年代後半からである。
表−1に平成5年の日本の水力設備の一覧表(水力会社とは電力会社の子会社で5社)を示す。
表−1 水力設備一覧表(H.5) MW
| 項 目 |
一般水力 |
混合揚水 |
純揚水 |
合 計 |
| 9電力会社 |
13.900 |
3.915 |
9.973 |
27.787 |
| 公営電気 |
2.150 |
0 |
250 |
2.401 |
| 梶@電 発 |
3.246 |
1.712 |
2.675 |
7.633 |
| 水力会社 |
317 |
0 |
0 |
317 |
| 自家用 |
1.407 |
0 |
0 |
1.407 |
| 合 計 |
21.021 |
5.627 |
12.897 |
39.545 |
- 9電力の既設一般水力(全水力から揚水を除く)の発電原価試算
- 計算の前提
-
- 基礎データは電気事業便覧によった。
- 但し、水力の原価は混合・純揚水を含むものであったため、この作業ではこれらを除外する事にあった。
- 混合・純揚水の運転開始年月、Kwは電源開発の概要(黒本)によった。
- 混合・純揚水の工事費は確認出来ないので、それぞれ運転開始年次の火力の建設単価(円/Kw)を参考にして仮定した。この精度に問題が有るので、安全側であるが
後の精査に待ちたい。
- 混合・純揚水の固定費は定率法で、金利は8%で計算した。
- 混合揚水については、自流分と揚水分に分けることも考えたが、仮定が多すぎて分析に混乱を来すので、自流分を含め全て除くこととした。従って分母のKwhは既設一般水力のみとした。
- 燃料単価(円/kwh)は火力・原子力の平均とし、電気事業便覧によった。
- 揚水する費用は、揚水発電所の発生した電力量(電気事業便覧)を0.7で除した量に上記の単価を乗じて求めた。
- 水力の原価は出水率により変化するので、図−2の上段に一般水力発電電力量のカーブを参考のために記した。
この計算の結果、既設一般水力(混・純揚水を除く)の原価は平均で2.11円/Kwhとなった。図−2の上段の既設一般水力発電量のカーブを見ると既設一般水力は昭和49年から殆ど増えていない事が分かる。維持運転費や本社費分担が増えても2円/Kwh以下でないとおかしい。従ってで2.11円/Kwhと言うのは安全側と思うが、なお一層の精査が望まれる。
図−2
平成6年度原価
(円/kwh)
火力 7.471
原子力 7.339
全水力 8.655
一般水力
2.98(試算)
- 日本の卸電気事業の水力売電価格
電力白書等によると、公営電気の平均売電価格は9.5円/Kwh位だという。鞄d発は揚水も火力も入れて9円/Kwh位だと言うから、今まで述べて来た事を考えると、これらの既設一般水力は絶対数倍は高いと思う。
戦後公営電気は約200万Kwを殆ど多目的ダムのアロケーションで実施したから建設コストは30円/Kwh以下(電力原価にして約3円/Kwh以下)である。鞄d発も特に経済性評価を厳しく審査されたから同程度である。両者は共に電力会社に卸売りするが、売電価格が高いため嫌われている。世情に言われている様に、泰西名画を購入したり、都心に豪壮な本社ビルを新築しているのは水力を食い物にしていると憶測せざるを得ない。
一方電力会社も少なくとも自分の既設一般水力の正確な原価を算出して実証し、卸電気事業者の売電価格の値下げを強く求める必要がある。もしそれをしないなら、電力会社自身も水力を食い物にしていると批判されても仕方あるまい。
新規の水力開発の担い手は公営電気と(株)電源開発だが、電力会社から概ね警戒されており、水力新世紀計画策定委員会の勧告もあり、補助金も支出されているにも係わらず水力開発は殆ど実施されていないと言うに等しい。電力会社から是非開発して欲しいと言う様な体制にならないと新規開発は絶望と見て良い。水力の原価計算方法或いは営業戦略が独りよがりになっているのではないか。こんな状況では日本の残存包蔵水力の開発は不可能だと思う。
また話は違うが、土木建築・電気機器・鉄管などのメタル工事等はすべて高い。少なくとも諸外国の3〜5割は高い。入札方法に問題があるのではないかと質問すると、地元には顔役がいて理想と現実は異なるという。それでは昨今の銀行や証券会社における総会屋と同じではないか。行革委でも入札方式に付いて審議されているが、曖昧に終わりそうだ。水力は事業採算の面では、公共事業と違いコストが高ければ計画が抹消されてしまい、元も子もなくなってしまう。
上記のように水力にも補助金が出るようになった。太陽光発電にも補助金が出るが、この場合はコストが高いから補助金によって普及率を高める。普及率が高まれば量産出来る。量産によってさらにコストがさがり、ついには補助金もいらなくなるという希望がある。これに反し水力には全くと言って良い程何も期待できるものがない。電力会社は補助金はいらないと言って対象外になっている。電力会社に嫌われているような新規水力開発に補助金を支出する政府も虚仮にされている。水力に対する補助金はやめてもよいのではないか。補助金をもらってやる仕事にはろくなことがない。(しかし残り少ないと言われる日本の未開発水力とは言え、333万戸分の太陽光発電に、または6〜7基分の原子力発電にも匹敵するのだが)。
以上の論点も既設一般水力の発電原価が図−2の試算値に近い約2円/kwh位という前提だから、この数字を是非精査してほしい。
- 超長期的に見た水力の経済特性
日本の水力開発で得た経済評価方法の知見を応用して世界の超長期の水力の潜在価値を試算してみるとどのようになるか。
すなわち計算の前提として、開発量は世界の包蔵水力の70%に当たる約10兆Kwhから既開発分2.4兆Kwhを差し引いた7.6兆Kwhとし、これを100年間で毎年760億Kwh相当を開発するものとする。
計算期間は2100年に最後に運転開始した水力760億Kwhの償却が済む40年過ぎたあと、更に20年間様子を見るため2161年までとした。2101年以降は水力の新規開発はないものとする。
- 計算の根拠となる諸係数
表−2 新設A水・A火力の諸係数
| 項目 |
水力 |
火力 |
| 金利 |
6% |
6% |
| 減価償却費 |
40年、残存10%、定率法 |
15年、残存10%、定率法 |
| 修繕費@ |
0.31%、、年2%UP |
0.57%、年2%UP |
| 固定資産税A |
1.4% |
1.4% |
| 人件費B |
0.17%、年2%UP |
0.34%、年2%UP |
| その他経費C |
0.31%、年2%UP |
0.86%、年2%UP |
| 一般管理費 |
(@+A+B+C)*0.12 |
同左 |
| 事業税 |
以上計*0.01523 |
同左 |
| 建設費 |
40万円/kw、年2%UP |
20万円/kw、年2%UP |
| 燃料費 |
0 |
4.5円/kwh、年2%UP |
これらの諸係数はNEF(新エネルギー財団)の資料「水力発電の経済性評価」によったが、この試算と異なるところは、金利8%を6%としたことと燃料費の年上昇率6%を2%とした点が大きい。NEFの方法は水力の法定耐用命数40年間に火力は2回建て替えを行うものとし、各年度の経費を現在価値に戻して、資本回収係数を用いて均等化し比較している。
世界銀行やアジア開銀のプロジェクト投資基準は求められた内部収益率(IRR:Internal Rate of Retern)が一定の率以上である事としている。このIRRは、プロジェクトの法定耐用年数期間の収入と支出の現在価値の合計が等しくなるような割引率を求めて得られるので、やはり現在価値手法を用いていることになる。
このように現在価値を用いた経済分析が一般に用いられているが、超長期の現在価値はきわめて小さくなり、超長期にメリットのある水力の評価が目に見えてこない。例えば金利(割引率)8%及び6%の160年で現在価値係数はそれぞれ0.000004及び0.00008である。即ち160年目の原価差による水力のメリツト157.95円/kwh、152.78円/kwhは現在価値に戻すとそれぞれ6毛、1銭2厘である。
今回の試算では40年をさらに延長して現在価値に戻すことはせず、次のような計算をして比較した。
水力は金利6%とし、償却後は償却費がなくなり、その後は残存価格の金利と公租公課のほか修繕費等の諸経費が年率2%上昇するとして2160年までのばす。
火力は同じく金利6%とし、15年毎の立て替え建設費を年率上昇率2%の工事費を考え2160年までに10回建て替える勘定になる。燃料費はNEFの場合は過去の実績や将来の化石燃料の枯渇予想から上昇年率名目6%、実質4%としているが、このまま2160年迄伸ばすと、燃料費だけで初年度Kwh当たり4.5円が5万円近くなってしまう。仮に燃料費上昇率を6%、4%、2%について試算すると表−3のとおりとなる。
100年先の物価感覚が実感として湧かないが、例えば105年前の蹴上水力の頃の電気料金の値段が厘と言う単位であれば現在の電気料金は10円の単位だから1万倍に当たる。
この理屈からすれば、6%ケースで2160年で約1万倍と言うのはおかしくないが、燃料単価だけでKwh当たり約5万円となる。実際は技術革新などによって燃料価格がこんなに上がらないような努力がなされると思う。
こうまでしなくても2%のケースでも水力と火力の差は歴然として現れるし、他の物価上昇率をすべて2%にしていることから、ここではわかりやすく単純に燃料費の上昇率を年率2%と仮定することとした。
表−3 燃料単価の上昇率 2001年を1.0とした時の倍率(燃料単価円/kwh)
| 年度/% |
6% |
4% |
2% |
| 2001年 |
1.0(4.5) |
1.0 (4.5) |
1.0 (4.5) |
| 2015年 |
2.26 (10.17) |
1.73 (7.79) |
1.32 (5.94) |
| 2050年 |
17.38 (78.20) |
6.83(30.75) |
2.64(11.87) |
| 2100年 |
320.1(1440.43) |
48.56(218.5) |
7.1 (31.96) |
| 2150年 |
5896.2(26533.0) |
345.1(1553.0) |
19.1(86.03) |
| 2160年 |
10559.2(47516.6) |
510.9(2298.9) |
23.3(104.9)
|
- 新規のA水力・A火力を建設した場合の160年間の原価推移
図−3

表−2の計算条件で新設のA水力または新設A火力を建設して160年間の原価推移を見ると、初期原価14.26円/KwhのA水力は40年目に償却が終わる迄逐次原価は低減し2.75円/kwhとなるが、償却が済むと10%の残存価格に金利と公租公課がかかるほか年率2%UP諸経費増で原価は2160年の21.70円/kwh迄漸増して行く。
A火力は15年で償却する期間は水力と同じように原価は低減するが、10回の建て替えを行い、そのときの建て替え建設費は年2%UPの値上がりがあるほか、燃料費の値上がりがある。初期原価11.81円/Kwhは2160年の151.87円/kwh迄漸増する。
以上を比較したものが図−3である。
- 100年間に7.6兆Kwhの水力を開発した場合の水力原価推移
図−4

100年間で7.6兆Kwh即ち毎年760億Kwhを開発した場合、水力の建設費は初年度(2001年)Kw当たり40万円で年率2%の上昇を考えるので、例えば2050年に運開する水力の建設費は106万円/kw、2100年では建設費284万円/kwとなる。
経費率は3−b.で述べた係数を使用して計算したものを累計する。
また世界の既設水力2.4兆Kwhの原価を2円/kwhと仮定して、年率2%で上昇するとして計算し、上記新設分を加えると図−4の通りとなる。これによると超長期的に見ても総合水力の原価は約20円/kwh台に収まりそうである。
2100年で一つの山が出るのはそれ以降の新規開発がないからである。2100年以降の既設水力の原価の上昇ぶりは不自然で、新設並みが常識的だと思う。
- 火力を同様に100年間に7.6兆Kwh開発した場合水力との原価推移比較
図−5
火力も水力の場合と同様に2001年から2100年迄毎年760億Kwhの開発を行い、それぞれ3−b.の諸係数を用いて計算し、2101年以降はその出力を維持するため2160年まで15年毎に建て替えを続行することとした。
既設火力は世界で7.5兆Kwhあるが、水力と異なりいずれ設備を更新して行くことになるから原価としては新設並みとした。此の考え方で水・火原価推移を比較すると図−5のようになる。
またこれらの代表的年度の原価を抽出すると、それぞれ表−4のとおり
表−4 図−5における代表的年度の原価(円/kwh)
| 年度/項目 |
水 力 |
火 力 |
| 2001年 |
2.38 |
11.81 |
| 2050年 |
9.14 |
20.94 |
| 2100年 |
18.16 |
55.28 |
| 2160年 |
28.61 |
181.39 |
- 償却後水力のメリット
前節d.の図−5は水・火の償却期間を考慮しながら160年間推移(2101年以降の開発はストップすると仮定)したものの総括である。水力と火力の大きな差は、火力は15年毎に建て替えなければならないことと、値上がりが予想される燃料費があることである。他の条件は同じにした。ただし燃料費の値上がり予想はかなりなものと予想されるが、ここでは他の物価上昇と同じとし2%としている。
もし水力を開発しなければ当然それに代わる火力を建設する事になるから、それに差額があればそれは水力のメリットと考えられる。代表的な年度について例示する表−5の様な金額が得られた。
160年間の平均は余り意味はないが、398兆5492億円となる。
@.
100年後には水力を開発したことにより、毎年400兆円程度以上のメリットが得られるので、これを3等分し、前に述べた通り、第一に電力料金値下げに向ける、第二に水源涵養林等自然の恩恵に還元する、第三に新エネルギーの研究・開発や水資源の有効利用に貢献する。
仮にこれを1/3主義と呼ぶこととする。
A.水力でこの程度開発利用すれば、石炭火力の10兆Kwhは約25億トンのCO2(炭素換算)を排出するので、これを節減することが出来る。これは今日の地球温暖化で問題になっている人工的CO2排出量約60億トンの40%強に相当する大きな数字である。
B
.一般水力には黒部川第四水力のようにKw価値のあるものもあるので、一律にKwh当たりの原価の比較だけでは正しくないが、ここでは論じないこととする。
表−5 水力のメリット
| 年度/金額 |
金額 (億円/年) |
| 2001年度 |
23兆3486億円 |
| 2050年 |
73兆1564億円 |
| 2100年度 |
371兆1978億円 |
| 2160年度 |
1538兆6594億円 |
| 160年間総計 |
63767兆8705億円 |
しかしこのような考えを現実の施策として取り上げることはなかなか馴染まないものがある。各国それぞれの水力開発利用の歴史があり、主権もあり、特に自家発電や私企業の電気事業者にとっては常識では考え難い。しかし最近の地球温暖化問題にしても、或いはEU、NAFTA、APECのように今まで常識と考えられていたバリアをどんどん越えた議論が進められいる。つい最近まで化石燃料が枯渇する等とは考えても見なかったが、その到来時期の度合いに緩急はあっても、いよいよ現実身を帯びて来ている。私はどちらかというと、CO2抑制のためと言うよりも、資源有限論の立場から再生可能エネルギーとして水力や原子力をもっと利用すべきあると考えている。だから10兆Kwhの水力は約25億トンものCO2を節減するが、これはは結果として貢献すると言う考えで、最近の地球温暖化問題に便乗するつもりはない。
中国長江三峡ダムは各方面でいろいろ論評されているが、重要だが一つだけ話題になっていない問題がある。巨大な工事費に危惧を抱いているが、たとえ総工事費の3兆円が4兆円になっても全部水力発電が負担しても850億Kwhもの電気が発生するのでKwh当たり、経費率10%にしても初年度原価は4.7円しかならない。しかも舟運・洪水調節・各種用水がダム工事費を負担するから尚いっそう安くなる。中国はなんと言っても安い再生可能エネルギーを狙ったものと思う。もちろん最悪の場合でも水力電気だけで建設資金の回収は可能と踏んでいるのではないかと思う。こういう観点からの論評が全くなされておらず、土砂堆積・水没規模・巨費・環境破壊など興味本位のレポートが多く苦々しい思いだ。
土砂堆積にしても貯水池の規模は400億トンで巨大と言うが、足立氏(URL:http://www.adachi.net/hayao/のThree G参照)によれば、有効貯水量は220億トンで、4500億トンの年間の流入量から見れば5%に満たず、きわめて小さく水力計画論から言えば小規模な普通な調整池と言っても差し支えなく、河川流量をため込む能力はなく、流入土砂は下流に流してやればよい。設計としては洪水吐用クレストゲートのほかに、ダム下部に幅7メートル高さ9メートルのゲート23門が設けられている。三峡ダムは短期的に見てもきわめて安くて有利なのである。
三峡計画以外にも世界にはかなりの未開発包蔵水力がある。既開発は18%にすぎない。水力は技術は完熟している、再生可能なエネルギーである、クリーンである、本論文に明らかにした様に長期的に見ればきわめて安価である等々良いことばかりであるが、環境問題と巨額な資金投資で水力開発は世間の抵抗が強い。今からでも遅くない。地球人類の為に各界の理解を求めるよう一層の努力をする時期が来ている。
西沢潤一氏(元東北大学総長)は「従来は30〜500q以内に発電所を造らなければならなかったが、現在の技術でも直流送電なら1万qも送電可能だ。1万qと言うと地球の半径だから、地球上を張り巡らせれば世界中の水力資源がすべて利用出来よう。その総発生電力量は少なくとも当分の間全世界の電力需要を賄って余りがある事になる」と述べられている。
日本の場合は、繰り返すが残存水力は相対的に少なく、コストも高いので将来の期待は持てない。しかし既設水力の原価を見ると、本論文の2−b.で解説したように当面直ちに検討を進める事が可能な素地がありそうだ。即ち卸電気事業、自家用発電を含めると総水力発電量は900億Kwhとなる。既設の水力・火力の原価の差は約7円/kwhと見て毎年6300億円となる。これは100年前から水力を開発利用して来たために得たメリツトを具体的に示した数字と言うことが出来る。電気事業の場合は原価主義で料金が定められているので、このメリットを吐き出せば料金値上げにつながる訳だが、日本の電気料金が高いのは別の所にあるので、ここでの議論に絡ませるのは言われなき言い掛かりである。
- 結び
この水力経済性の特性の趣旨を一層発展させるために、次のような問題を提起したい。
- 日本の発電原価算定基礎の公開
前に述べたとおり、原価算定の中身は全くの闇だ。情報公開は無理なら、お願いした資料を教えて欲しいものだ。性弱説によれば虚偽の資料のおそれがあるが、そういうことのないようお願いしたい。真実の資料が出て、始めて新しい世界戦略構想が湧く。
- 朝日新聞(H.9.9.13)の報道によると、米国のエネルギー省の資料から日米の電気料金を比較すると、日本の電気料金は家庭用で2.48倍、産業用で3.7倍高く、これまで通産省や電気事業連合会によると「米国とでは約2割程度の料金差がある−−−−」としていたが、と不信感を訴えている。この2割程度について、日本とは購買力に格差があり、これを考慮したと言う弁明を電力サイドから聞いたことはある。しかし2倍以上も格差があるとは始めて聞いて驚いた。これでは世界戦略を立てようがない。
通産省も料金引き下げの方策を議論している電気事業審議会に対して、これまで電事連のデータをそのまま示していたが、「より実体を反映した現地日本法人企業の取引ベースの料金格差を調べる必要あり」として、別途の調査を自ら開始するとの事である。その調査結果を期待したい。
こういう話を聞くと仮説「性弱説」にもあるとおり、民間に資料を任せるのは問題があるし、官側にも積極的な調査能力に限界があるし、各種委員会・審議会なども御用機関になりがちだと言われるし、結局第4権と言われるマスコミに頼るしかないのかと思う。そのマスコミにしても時勢におもねるある種の偏向を感ずる時もあるが、努めて真実の姿を分析して報道してほしい。
- 「世界エネルギー共生投資基金」構想の討議
畏友杉木君がたまたま「世界共生投資」と言う構想を持っている事を知ったので、ここに概要を紹介する。
杉木氏は次のように述べている。「最近目先の「国益論」が多いが、現世どころか20〜30年したら国害になるような皮相的なものが散見される。平和・環境・市民権には自分たちが生きている基盤の認識に大きく欠けている所がある。−中略−国には公共投資が必要であるのと同様に世界全体で必要な公共投資があるでしょう。国連、各国のAIDや第二世銀なども出資国の国益や思惑に左右されがちである。−中略−このような公的資金の限界からBOTのような民間資金の導入が考えられているが、これも目先の利潤があがるものでないと資本が集まりません。水力エネルギー開発のような長期的な環境基盤に必要な資本は別な方法で誘導しなければならないように思います。今の市場経済資本主義と国益論では無理のような気がします」
考え方は同じだが、私は化石燃料の無くなったときの各種エネルギー源の相互調整の中核となるのが水力で、その財務的な原資は償却後の水力の経済性の特性から求めると言うところが異なる。しかし残念ながら今その裏付けとなる方法論、組織等についての具体的なものは何もない。今後論議を起こし、検討を進めたい。
- 本論文の試算では、燃料費の年率上昇率を2%としているが、電気事業連合会は現実の水力開発の経済指標を求める際、代替火力の燃料費の値上がり年率を名目6%、実質4%としている。仮に6%として試算すると、現在4.5円/kwhの燃料費は160年後は約5万円/kwhにもなってしまうことはこの試算で述べた。
昭和40年頃サムエルソンの「経済学」を輪読したことがある。氏の資本主義の方程式によるとインフレーションが必要であるが、駆け足インフレーションでなく忍び寄るインフレーションでなければならないとしている。上記2%が前者でないことは確かと思うが、6%では経済の歯車が狂うのではないか。水力のような超長期に再生可能な効用を発揮する耐久経済構造物を評価するに際して採用さるべき金利・物価スライド・代替え物等をどう考えるか、解らない問題が多すぎる。過去100年の技術の進歩を考えれば、向こう100年の期待は大きいと楽観論を述べる人も居るが、電力中央研究所はこれを「技術の過信とデータの不確実性」によるのだと警告している。
某大学で「資源経済学」と言う学説を起こしているやに聞いているが(中公新書)、水力のような耐久性のある構造物の投資に関する新しい改訂厚生経済学が出てこないものか。20世紀のすばらしい人類の成果をふまえて、これを越える新学説の出現を期待したい。
- 日本の場合、水力が持つ超長期のメリットは結果的に明治以来開発してきた現在の既設水力の原価にイメージを重ねることが出来る。即ち既設火力の原価と既設水力の原価差約7円/kwhである。これに全既設水力の900億Kwh/年を乗ずれば6300億円/年となり、これが長期にわたり水力を開発してきたために生じたメリットと見ることが出来る。料金と絡ませて或いは電源開発促進税(現在約3500億円)を含めて諸制度を再構築する理論を研究する価値があるのではないか。
- 外務省、JICA主催の「メコン川開発」シンポジウムで野本ともよと言う女性司会者から、いきなり「ゼネコン型ダム」なる言葉が飛び出してきて驚くやら、情けないやら、やるせない思いがしたことがある。世間一般の人たちはダムについてこんな程度の印象しか持っていないのかと思うと、長い間水力の計画や実施を経験して来た技術者としては涙がこぼれる。
東北の最上川に寒河江川と言う支流がある。村の有力者がいくつかの水力開発に成功し、当時としては大きい1.3万Kwの水ガ瀞水力も昭和4年に完成させたが、運悪く不況に見舞われ負債を抱えたまま倒産、寒河江の河原で割腹自殺するという血塗られた歴史があった。私はここに高さ112メートルのダムによる再開発計画を作成し、それが実施されて現在8万Kwの水力設備となって稼働している。日本全国に約2000以上の既設水力があるがそれぞれ秘められた歴史を持つ。水力計画には無数の選択肢があって、実現されるのはごく一部で、大部分は経済性の為に放棄されてしまう。このようにやっとの思いで実現したダム計画を「ゼネコン型ダム」と同一視されては泣くにも泣けない。
このホームページはNetScape Navigater及びJustViewで経済・科学に登録しております。InfoSeeとYahooにも世界のエネルギーで登録させて頂いております。特にYahooでは「世界のエネルギー|水力」の検索で、私の1件のみ抽出しており感謝しておりますが、水力に関する世界的な政策課題が少しも議論されていないことは予想されていた通りで、誠に心細い限りです。世界で4位の水力大国である日本はもちろん、世界においても「独りよがりでない」水力政策議論が高まり、「世界のエネルギー|水力」のコーナーがいっぱいになることを願っております。
この論文をお読みの方々に是非お願いしたい。
日本国内に残存水力の少ないことは再三述べた。しかし世界にはまだかなりの水力が眠っており、地球上の将来の有力な再生可能エネルギー資源である事に間違いはないと思うので、多くの方々になお一層研究していただいて、世の中のおおかたの人々の理解を得るよう力を合わせて頂だくことを!
- 貴方は何故そんなに水力を論じたいのですかと言う質問を受ければ、私は直ちに「それは世界に10兆Kwh余の未開発水力があるからだ!」と答えるであろう。かつて登山家ヒラリー卿が「そこに山があるからだ」と答えたように。
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