• A−6.コメント(H.10.7.14)     電力不足は国際貿易で解決できる    

     興味ある論文を見つけました。この構想に貴ホームページの考えを合わせれば、一つの成案となりそうです。2〜3の質問事項があり、小文を作成して連絡中です。参考にして下さい。
     
     論文の題名は「環太平洋電力ネットワーク(APREC)構想」で、1998−5−16の週刊東洋経済に掲載されております。著者は日立総合計画研究所・主任研究員一針源一郎氏(E-mail:ichihari@cm.head.hitachi.co.jp)です。APRECはAsia Pacific Rim Electrocity Cooperationの略です。 副題として「電力不足は国際貿易で解決できる」となっている。次に概要を抜粋して紹介するが、詳しくは上記論文を見てほしい。

    1. 「環太平洋電力ネットワーク(APREC)構想」とは

       電力業界は今、「3つのE」即ち経済成長(Economic)、エネルギー安全保障(Energy Security)、環境安全(Ecology)をバランスよく保つことが求められているが、国別の対応には限界がある。そこでグローバルに「3っのE」の達成を目指す「環太平洋電力ネットワーク(APREC)構想」を提唱する。

       即ち、送電技術の進歩で長距離の高圧直流送電が可能となり、電力を非貿易財としてきた政治的・経済的・技術的な壁が崩れつつある今、国際協力を基盤とする電力ネットワークを実現するだけの基盤はできあがっている。APRECとは、経済性と安全保障、そして環境保全に優れた最適地点で、複数国の需要を賄う大規模発電を行い、長距離送電に適した高圧直流送電を通じ、電力を融通し合うネットワーク構想を意味する。

       
    2. APREC構想のメリット

       
      その際日本が技術的・資金的にリーダーシップを発揮し、電力貿易を開始することには、具体的に「3っのE」についてそれぞれ以下に述べるメリットがある。

      1. 世界ベースで投資を効率化(Economic)

         季節の異なる南北半球間や時差のある東西間で電力を融通し合えば、ピークも平滑化され、より少ない設備で効率的・安定的に電力を供給する事が可能になる。

         APREC構想では、老朽化が進む送電網の更新により電力損失や停電多発も解消出来る。
         
         更に電源開発も「立地選択の自由」と「規模の利益」から経済性が向上し、国際資金調達が容易になる。

         電力供給の拡大は、途上国の工業化や先進国の高度情報化など経済発展にも寄与する。

         エネルギー産出国は、燃料輸送から電力輸送へ高付加価値化をはかることが出来、雇用拡大と安定した外貨収入も確保できる。また送電網が通る仲介国は、電力託送料を通して外貨を獲得することが出来る。

          
      2. 安全保障強化にも寄与(Energy Security)

         政治体制の異なる国家間の電力融通には、安全保障上の懸念もある。しかし軍事的にではなく経済的な相互依存で安全保障を達成しようとすることは、ポスト冷戦時代の賢明な選択である。
         
         日本はエネルギーの80%以上を輸入し、主に中東の原油に依存している。化石燃料の貿易は恒常的に@.航路の渋滞、A.海洋汚染事故、B.シーレイン防衛、C.石油危機など様々なリスクをはらんでいる。エネルギー源と供給地域を多様化する効率的ポートフォリオは、安全保障上からも好もしい。既に欧州では電力融通が盛んであり、さらにこれを拡大し中東欧諸国を参加させるTENs(ヨーロッパ横断エネルギー・ネットワーク)構想が試みられている。

         環太平洋は地震・台風の巣でもあり、被災時や復興時には周辺国からの電力供給が助けになる。電力網に通信用光ファイバーなどを併設すれば、国家間の絆を強めると同時に経済性の向上に役立つ。
      3. 環境問題への本質的対応(Ecology)

         
        先進国は地球温暖化防止のため、CO2など温室効果ガスの削減を約束しているが、これまでの考え方では国別の達成が困難であるばかりでなく、本質的な解決にならない。

         何となれば、「省エネ」規制は、エネルギー多消費産業を規制外の途上国に移転するばかりでなく、効率低下・輸送費増を通じて地球全体のエネルギー消費を増加させる。 更に先進国はガス使用に重点が移行し、需要減で安くなる石炭が途上国で大量消費され却ってCO2などが増加する。

         再生可能なエネルギーの豊富な地域での発電を促進し、世界全体で環境保全と持続的経済成長の両立を可能にする。

         例えば、太陽光発電は砂漠や熱帯で促進すべきであるし、水力発電も次表に示す通りまだかなりの潜在力が残されている。

         将来的には、温室効果ガスの排出権取引市場の創設、温室効果ガス削減プロジェクトの共同実施も計画されている。日本をはじめ先進国にとって環境保全は経済的価値を持つようになった。
        世界の水力(Gwh/年)
        地域 技術的に開発可能 既設・工事中 開発率(%)
        アジア計
        4.225.479
        699.636
        16.6
        中国
        1.923.304
        3.037
        1.4
        ラオス
        210.000
        1.450
        0.9
        ミャンマー
        160.000
        1.450
        0.9
        日本
        129.840
        91.654
        70.8
        カンボジア
        83.000
        0
        0.0
        旧ソ連計
        2.105.600
        323.750
        15.4
        北米計
        1.007.713
        601.791
        59.7
        中南米計
        3.933.770
        550.650
        14.0
        欧州計
        1.158.029
        486.819
        48.68
        アフリカ計
        1.590.828
        64.042
        4.0
        オセアニア計
        206.366
        42.634
        20.7
        世界合計
        14.227.785
        2.769.344
        19.5

        出典:International Water Power &Dam Constraction  Yearbook(1997)

    3. 5っの提言
      1. 研究会の設立

         試算によると全長4万Km(地球の全周相当)の架空線・ケーブル・直交流変換所の建設費20兆円、CO2削減や投資の節約、単価差等の経済効果は年間1兆円超と推定される。

         より詳細に検討し、地域選定・環境アセスメント・資金計画のフィージビィリティ スダディを行うために、産業界・金融界・有識者・NPO(非営利市民団体)等による研究会の設立。

      2. 日本から世界への提言

         日本は98年1月の「21世紀へ向けてのODA改革懇談会」最終報告で「地球的課題の克服」、「好ましい安全保障環境の実現」を唱えている。まずはAPREC構想でのリーダーシップの発揮を提唱したい。例えば、98年11月のAPECエネルギー大臣沖縄大会で、主催国として世界へ提言したら如何だろうか。

      3. 推進のための国際機関

         APREC構想の実現には国家間の協調が必要であり、推進母体として、APECの委員会または傘下に非営利の国際機関の設立を提言したい。これは日本の電気事業調整審議会のAPEC版だ。尚実際の電力の売買契約の調整(日本の中央電力協議会に相当)は別組織に任せ、米国・欧州の先進事例を参考にして電力プール市場を形成することも出来る。

      4. 官民連携による運営組織

         全体像に沿って順次建設・運用する主体はPFI(Private Finance Initiative)等の官民連携が好ましい。技術競争や、価格競争など市場に任せる民間部分と公的支援や規制が必要な公共財的部門があるからだ。

         また個別プロジェクトで見るとBOO、BOTなどがあり、統合運用面での発展もある。

         
      5. 資金面の国際協力

         建設・回収期間が長く、多国間にまたがることからリスクは大きい。民間では負担しきれないリスクへの、国際金融機関や各国政府による資金援助や債務保証が重要となる。

         日本としては、21世紀へ向けて、再び世界の経済を牽引するには、エネルギー分野を中心にしたAPREC構想を核に、他の分野でも各国間協力によるグローバル・ソリューションを、考える必要があることを最後に提言する。


      • A:筆者所見(H.10.7.14)   

         ある新聞のコラムによると「話がまるで外務省」と言う言葉があるそうだ。其の意味は具体的に詰めきれず、抽象的であり、総論だけで各論が無いと言うことらしい。当事者にとっては極めて失礼な言葉だが、不確定事項が多く、かつスケールの大きいテーマではやむを得ないと思う。ただし、そのままでは問題の解決が得られないから、水面下でも具体策としての各論の検討は進める必要がある。

         私はこの論文を見て、私のHPは「まるで外務省」ではないかと思った。もともと日本国内の水力の最盛期も終わって、今後の水力開発の評価が落ち込んでしまい、まだ世界には可成り未開発水力があるのに、99%の人々は「水力はもう無い、コスト高、環境破壊の元凶」と決めつけ、将来のエネルギー問題の俎上にも全く乗せて来ないのをいかにも残念に思い、それで何とか再生可能でクリーンな水力の「量」と「コスト」を解明し、その存在感を高めたく、懸命に努力した余り、総論に終始してしまった嫌いはある。勿論開発の困難さや他のエネルギーとの関係など実施についての障害(各論)は頭にあったが、どちらかというと問題点として提起するに留めて、よそ事のような取り扱いをしてしまってきた。

         しかし例えば、「その後の情報」
        D-8、筆者所見(H.10.1.8)の末尾に「「世界の水力」と言うキーワードで検索すると電力輸送に関する専門家のホームページが出てくるようになれば本物のテーマとなろう」と結んでいるのを見ると、実施の可能性に関する願望(各論)が深層心理にあったことが窺かがえる。

         その願望が今年になって3件もバタバタと現実のものとなってきた。第一弾は元東北大学総長の西沢潤一氏の地球をめぐる高圧直流送電ネットワーク構想(その後の情報D-8、H.10.1.8)で、これによって目から鱗のとれた人が可成りいる。第二弾は東大名誉教授の平田賢氏のシベリアガスのパイプライン計画で、熱力学法則に基づく論法は説得力があり、このパイプラインは将来シベリアの水力により造られる水素の輸送に利用する等次世代の水素時代を視野に入れた壮大な構想である(その後の情報D-4・A-1所見、H.10.6.22)。

         そして第三弾が今回の一針源一郎氏(日立総合計画研究所)の環太平洋電力ネットワーク構想で、直流送電による方法である。H.10.11のAPECエネルギー大臣沖縄会議でホスト国日本として提言するよう求めるなど極めて緊迫した論旨である。この構想は前2者の中間を行くもので、欧州のEU、北米のNAFTAなどは政治を超えて、経済の分野まで統合するという信じがたい事が現実に進んでおり、前述の平田教授も指摘しているようにアジアはそういう面で極めて遅れている事に着目すれば、さしずめ環太平洋(一針氏の図ではベーリング海峡を超えてカナダ・アメリカ・チリまで線が引かれているが議論があろう)地区に限定すれば、日本としてはその貢献のための実力を発揮し易いであろう。

         ただし私としては3っ程疑問を感ずる。即ち私のHPで述べたとおり、日本エネルギー経済研究所の最適計画でも、2100年までの世界の一次エネルギーの中で水力・原子力の開発は殆ど考慮されていない。そこで「その後の情報D-5・A筆者所見、H.10.1.20)」で、水力を2100年で現状の約5倍の10兆Kwh(世界の包蔵水力の70%)、原子力も同じく5倍の10兆Kwhとして試算して見たが、2100年の総需要を201億トン(石油換算以下同じ)として供給力は水力・原子力はそれぞれ12%、新エネルギー34%、石炭42%となる。

         疑問の第一点は、この石炭42%は84.4億トンで、此の量は現在世界で消費している一次エネルギーの総量に等しい。これでは世界中石炭の煤で真っ黒にならないか。クリーンコールテクノロジーはこのために研究を続けているわけだが、いくら石炭の量が多いからと言つても寿命は長く続かない。これでよいのか。

         疑問の第二点は、新エネルギーの34%で、これは68.3億トンである。これは現在世界で消費している一次エネルギーの内化石燃料(石炭・石油・天然ガス)総量の72.3億トンにほぼ匹敵する数字である。いわゆる新エネルギーが100年経てば技術革新でこの程度の量を確保することが可能になると断言出来るの
        だろうか。だから日本エネルギー経済研究所はバイエマスエネルギーに期待すると言っている。「エネルギー大潮流」の著者フレービン氏も十分なバイオマスが得られると述べている。しかも一部は液体として可能だとしている。其の割にバイオマスの具体的研究成果が世に出てこないのに疑問を感ずるのである。

         疑問の第三点は、最近水力(主として途上国)が経済インフラとしてまたCO2対策として一定の評価が得られつつあることは喜ばしいが、環太平洋のエネルギーと言うような場で日本が貢献するには技術コンサルタントの幅広い活躍が不可欠の一つであるが、最近日本のある有力なコンサルタントが海外分野の事業の撤退を決めたという。聞くところによると、海外の仕事はなかなか取り難いし、とれても採算がなかなかとれず社内での理解を得られなかったのが原因だという。日本はエネルギーセキュリティのため、電源確保のためグローバルな対応をとらざるを得ないし、またCO2対策として排出権取引・共同実施など技術コンサルタントの活躍が期待されるが、現実は海外業務の撤退を余儀なくされるような事態が表面化し始めている。アジア地域には欧米の連中が進出し、虎視眈々としてさらなる拡大を狙っている。電力会社や政府のエネルギー戦略に誤りはないか。これは各論の一つである。

         まず、とりあえずは研究会の設置である。政府も電力会社も早急にその具体策を検討する価値がある。                  目次へ戻る                            ホームページ表紙へ

  • A−7.コメント(H.11.1.10)       日経の環境・エネルギー特集に異議あり  

     日経(98/12/2)第二部(環境エネルギー広告特集)に対する感想

     この特集においても、水力についての認識は甚だ薄い。理由として次の諸点が考えられる。

     世界の包蔵水力の値が認識されていない。仮に認識されていても、地域的に分散しているため、利用上の不便が生じる。そのため、我々は直流送電によるグローバルなネットワークを提唱しているのであるが、これについても下記の諸問題が存在する。

     (1)多国間の、電力の融通を考える前に、国内で賄う考えが優先し、実現までの諸問題の解決に時間がかかりすぎるため、力を注ぐ気力が湧かないのではないか?

     (2)水力の場合、計画から工事完了までの期間が長く、即効性がすくない。

     (3)電源地帯と需要地間のナショナリズムや南北問題に如何に対処するか?下手をすれば、先進国の資源の収奪等と言われかねない。

     (4)石油や天然ガスは、すでに大量輸送のパイプラインの敷設計画や工事が実施されている。 水力送電網との違いは、生産地が集中しているか、分散しているかの差であり、水力の特性とはいえ、生産地の分散はプロジェクトの実現までの種々の困難性を示していると考えられる。

     (5)以上を別の見方で表現すれば、国境を越えた多国間の取引の難しさに要約されるのではなかろうか。

     その他種々問題点が考えられるが、地球環境とエネルギー問題を考える場合、直流送電によるグローバルなネットワークをめざし、世界の世論を喚起していくことが必要ではなかろうか。 

    • A:筆者所見(H.11.1.8)

       
      極めて現実的な問題で、具体的に突き極める必要を感じます。色々考えてみましたが第T弾としてとりあえず次のような所見を述べさせて貰います。勿論これからも当然続けるべき問題だと思っております。

      T. 水力資源について問題点
      を次のように整理してみよう。

      1.エネルギー資源として水力の「量」と「コスト」について充分理解が得られるような資料を用意する。特に水力は循環資源であるから、減価償却後は含み試算として貢献する。

      2.クリーンで再生可能な天然の循環資源であり且つ
      エネルギー収支が優れ、ピーク対策にも有効。

      3.自然環境に対する影響についての説得。これには自然景観の破壊と、貯水池の場合は土砂堆積と水没物件の問題がある。

      4.投資資金の波及効果について幅広い説明

      U.バランス感覚を持った説明

       
      しかし此処までで90〜100点とつても、話はこれ以上進まないことが判った。何となれば、世間の人達は「水力さえやれば日本のエネルギーの総てが解決するのか」と思ってしまう。解決する訳がないのですぐ失望してしまう。従って全体像の中での位置づけを明らかにして説明する必要がある。これは丁度、いま日本の電力会社が原子力さえやれば日本のエネルギーの総てが解決するかの如くに説明しているので理解を得られ難いのと同じだ。

       日本の残存未開発水力は包蔵水力の30%(約400億Kwh)しかなく大きな期待は持てないが、世界の残存未開発水力は80%以上の12兆Kwhもあり、これに着目する必要がある。この12兆Kwhという数字は現在世界で発電し供給している総発生電力量にほぼ等しい。私のHP「21世紀後半の世界のエネルギー」はこうした観点で纏め、結論として水力と原子力をそれぞれ現状の5倍程度の開発を行い、後は石炭と新エネルギーで賄うこととしている。特に新エネルギーではバイオマスエネルギーが主力となるので研究開発に力をそそぐべきだと主張した。
       
        当時通産省は過去10数年でソフト産業が生産した量の数十倍の生産をバイオ産業が稼ぐに到るであろうと言って居たが少しもその気配が見えないのは寂しい限りだ。

      V.各論である100年後の日本のエネルギー事情分析が必要

       
      しかし私のHPも前節”A-6”コメントで述べたとおり「まるで外務省」で総論に過ぎない。はたして「100年後の日本のエネルギーはどうなるか」と言う厳しいコメントを突きつけられている。これは言うなれば各論なのである。この各論を究明するに至って始めて本論であるA-7のコメントに対する意見なり、回答が出されるべきものである。

       エネルギーの85%も海外依存する日本が、21世紀後半に世界の化石燃料が枯渇してくればどういう事態に直面するか自明の理である。全く孤立して江戸時代に戻るか、一針氏(日立総合計画研究所)の環太平洋電力ネットワーク構想(A-6)のように経済ブロックの中で共存する等しか方法が無いのではないか。平田東大名誉教授(D-4の所見A-1)や西沢潤一元東北大学総長(D-8世界直流送電ネットワーク構想)の様な意見もある。本コメントで述べられている水力の諸問題はこの中で自ずから議論されることになるものと思う。

       注.此の問題は人口問題・移民問題の分析を加えて、新たな展開を求めて勉強中である。乞う応援。

      W.電力会社の姿勢に苦言を呈す

       
      足立氏のHP(http://www.adachi.net/hayao/)のToday's News Flashによると

       【ニューヨーク30日共同】米国の民間環境問題研究所ワールドウオッチは三十日、世界の風力発電能力が今年二百十万キロワット拡大し、年末時点での世界全体の風力発電能力は九百六十万キロワットと、三年前の二倍になったとする推計結果を発表した。   
       風力発電による売上高は一九九八年に約二十億ドルに達し急成長産業の一つになっている。ワールドウオッチ研究所は、長期的には風力発電が現在世界の電力の二三%を占める水力発電を抜く可能性があるとし、今後ドイツや米国のほか、日本やカナダ、イタリアなどでも風力発電市場が拡大する、とみている。       
          [1998-12-30-17:38]

       と言う記事があった。「現在世界の電力の二三%を占める水力発電」(設備出力で6億KW相当)の表現は正しいが、概して風力発電は出力が安定していないので設備出力だけではよくわからない点があるが、世界の新エネルギー開発で風力や太陽光発電が可成り拍車がかかつている事が窺われる。

       余計なことかも知れないが、此処で日本の電力会社に苦言を呈したい。電力会社は電力供給の専門家で、しかも年間設備投資が4兆円以上に及ぶ巨大発注産業だから、その一挙肢一投足に影響されることは甚だしいものがある。電力売り上げの何%かによって運営される電力中央研究所はいい仕事をしているが、結論は電力サイドに偏るのは止むを得ないが、私どもは知らず知らず洗脳されてしまっている事に気付く。

       例えば新エネルギー増強等は書生論であって、エネルギー密度が低く、エネルギー収支も悪く、コストも高く、精々努力しても全体供給力の1%にも満たない。大量で安定したコストの安い原子力を進める以外に日本の電力の解決策はない!と断じている。水力なども新エネルギーと十把ひとからげで黙殺している。

       従って、私は原子力以外に解決策は無いと言う前提で色々議論を重ねて来たが、昨今の原子力の不祥事には唖然たるものがある。裏切られた思いである。原電工事(株)の廃業、(財)動燃事業団の廃止、使用済み核燃料処理施設の兆円オーダーの工事費の倍増、高速増殖炉の凍結など目を覆うばかりだ。こういう事態を見るとどうも日本の原子力はこれ以上難しいのではないかと言う疑いを持ち始めざるを得ない。更に9円/Kwh程度という原子力原価も実際は13円以上で電力会社は嘘を突いていると言う記事さえもも見受けられるようになった。

       日本の電力会社としては、将来のエネルギー問題はこうすれば解決出来ると言う本当の考えを、専門知識を駆使して腹を割って説明して貰いたい。専門家である電力会社が新エネルギーは書生論だと突き放してしまっては新エネルギーの世論は高まって来ない。上記の共同通信の報道も有ることだし、本当のことを知りたいと思うのは無理だろうか。先ずこの辺から電力会社の姿勢が問われる。

      X.日本の新エネルギー開発動向

       
      風力、太陽光、地熱、中小水力などはいずれも規模が小さく、普及率も低いためコスト高である。そのため政府は開発を促進し量産化する事によりコスト削減を狙って補助金を国家予算に組んでいる。電力会社は補助金給付による国の監査を嫌い補助金を受けることを拒否している。従ってこれら新エネルギー施設を実施するのは地方自治体や個人に限られてくる。

       政府の新エネルギー開発の2010年目標としては、太陽光460万kw、風力15万Kw、水力528万Kw、地熱256万Kw等となっている。

       残存未開発水力は約400億Kwh(約1千万KW)あり、いずれも小規模で平均5000Kwとしても概ね2000ヶ所となる。これらは専ら地方自治体が補助金を受けて公営電気事業として少しずつ実施されているが、電力会社との売電交渉に難渋している。
       
       要するに日本の電力会社は自ら積極的に新エネルギーや中小水力に取り組む体制になっていないのである。原子力を押し進めるしか方法はない事が判る。

      Y.日本の電気事業小史から学ぶ 

       電気事業は過去2回大きな変革が行われた。その第一は昭和13年、戦争を遂行するため5大電力をはじめ数百の電力会社を、軍部の圧力で発電・送電全国一貫運営する日本発送電(株)と9つの(株)配電会社に統合する国家管理を強制した。 これは「過当競争による無駄な投資を廃し、国産資源の水力の積極開発と火力との合理的併用更に送電網の確立は戦争遂行のために急務」であるとした。

       第二は戦後の昭和25年、経済力集中排除法で電力再編成論が高まり、全国を幾つかのブロックに分割し、発電・送電・配電を一貫した地域独占形態をとることを最善としたが、まとまらず国会を通さず占領軍(GHQ)のポツダム政令で電力再編成を強行し、現在の9電力体制が確立した。
       これは「供給責任の有する者(配電会社)に供給力を与えず、供給責任の有しない者(日本発送電)に供給力を独占させた結果責任の所在が不明確となり、発送配電一貫運営に責任を持つ適正規模にすべき」であるとした。

       この9電力体制は非常に成功し今日の日本の繁栄をもたらしたが、何せ約50年も独占を続けていると歪みが出てくる。これが電力料金の国際格差である。

       独占体制に自由化を導入するという事は、今までは考えられない大事件だ。既に電力の卸売りは自由化(IPP)された。更に小売り制度も自由化すると言う。そうすると電力輸送を自由化するため全国の送電線を独立させ、別会社にする?と言う話になる。そういえば大昔(株)九州送電等という送電専門の会社もあった。大変なことだ。第三の変革となる可能性がある。

       日本の電力料金は国際的に見て2〜3倍(朝日H.9.9.13)と言われるが、通産省は2〜3割の低減を狙っているという。通産省は自由化寄りの政策を採っていると言われるが、この程度では電力会社の意見に追従していると見られる嫌いがあり、過去2回の変革の実体を見ると何か特別のパワーがないと第三の変革は難しいのではは無いかと思う。要は電力会社自身としてどうすれば将来のエネルギーの量的・質的問題を解決し、電力料金も国際並みにする事が出来るのか専門知識を生かしてその展望を責任を持って示して欲しい。
       
       最近新聞で、電力会社が海外で製紙会社と共同して植林事業を始めたと言う報道を見た。これは植林によるCO2の減少とパルプ用材の確保の為と言うが、商売柄エネルギー作物と言うなら判るがパルプ用材では生ぬるい話だ。友人で杉木君と言うのが勉強していて次のような提案をしている。即ちダムを築造して水力を造る場合、水没による緑の喪失によるCO2吸収量の減少に較べ、発生する水力と同じ電力量を化石燃料により発電する事により発生するCO2よりも数十倍も多いことが、幾つかのケースを検討した平均値で判ったと言う。化石燃料が枯渇する怖れのある時代だ。製紙会社などを頼りにしないで、一歩も二歩も独自の踏み込んだ戦略を考えて欲しい。


       コメントに対する回答にならないが、各論に入らないと説得力のあるものが得られない。各論にしてはあまりにも遠未来過ぎる課題だ。もし送電部門だけを独立させて運営を任せるような組織が望ましいものとして評価され、現実のものになれば、このA-7のコメントの回答も作成できるようになるであろう。

       フランスでは超長期計画のことを「Horizon」と言う。即ち水平線に何か見える。雲や島ではない、どうも船団らしいが軍艦かもしれない。だが次第に近づいてくるとその船種や数量・大きさが明らかになってくる。こういうのを「Horizon」と言うらしい。100年後の日本のエネルギー超長期計画は「Horizon」の様なものかも知れない。

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  • A−8.コメント(H.11.2.1)    水力を国際世論に載せよ

     本日改めて鈴木さんのHPを、見直しました。

     まさに今後の世界の水力のありかたに関するノウハウの宝庫といっても過言ではないと思いました。 これら貴重なデータや思索について、インターネット上のみでは、天下の世論を喚起するためには、力不足ではないかと考えます。 ぜひこれらを集約して、出版されてはと思いお願いいたします。 

    • A:筆者所見(H.11.2.1) 

       
      広く言えば地球の環境、狭く言つても日本の現在の不況など「問題の先送り」が総ての原因だと言う考えが最近支配的だ。世界の2大資源浪費国の一つと言われたアメリカでさえ、ワールドウォッチ研究所(ワシントン)は1999年版地球白書を刊行し、レスター・ブラウン所長は記者会見で「化石燃料依存、車中心、使い捨ての西洋文明が問われている」と指摘し経済発展を阻害する事になろうとしている。

       米国の地質学者C・J・キャンペルは、いかなる油田も油層工学的特性によって生産のピークと累積生産量が究極可採埋蔵量の1/2に達する時点(Midpoint)でとは一致せざるを得ないとし、OPEC等が仮に生産割り当てなどによって生産制限しても、そのMidpointから数年以内に減産が始まるとしている。更にそのMidpointは2001年だと言う。

       キャンベル氏の意見によると確かに鉱物埋蔵量は Midpointがあるようだ。日本の鉱山の殆どが衰退している。炭坑などはかつて数百の炭坑があったが、現在はたった2ヶ所にすぎずそれもコスト高で廃坑寸前だ。しかし考えてみると地球上の大部分の資源は回収によって相当程度再利用できるが、化石燃料だけは駄目だ。

       小山茂樹氏はその著書(前出)で化石燃料が逼迫して値段が上がると、コストが高くて生産出来なかったオイルシェー等の在来公害型の化石燃料をまた掘り出すと言うのは如何にも知恵がないのではないか、寧ろそういうときにこそ風力や太陽光のような新エネルギーをビジネスチャンスとしてとらえ、積極的な対策を考えるべきではないかと訴えている。

       この様に各方面から澎湃として世論が高まり、機は熟したと見えるが、いずれの論説にも水力の話は出て来ない。「量」と
      「コスト」についての理解が無いことと、矢張り環境破壊を恐れているのだと思う。「量」と「コスト」については世に問いたいと思うが、それにしても孫子の兵法に言う「敵を説得すためには先ず身方を説得出来なければならない」のだ。

       環境破壊・景観破壊に関しては、環境論者の中には高いダムをやめて低ダムにしたらどうだと言う意見は可成りある。しかし河川の流れは洪水と渇水との格差が大きく、洪水を制御し河川水を灌漑用水や都市用水に有効に利用する為には高ダムがどうしても必要なのだ。高ダムにすると直ぐ土砂が埋まって貯水能力(
      F-5.土砂堆積)が無くなるのでは無いかと指摘される。

       私のHPでは水力の特性はメンテナンスさえよくやれば永久的に寿命を保つことが出来且つコストが低減するので、あたらしい他の電源とのコスト差を「自然の恩恵に還元」(水力の経済特性)すると言うことで、植林をはじめ流域管理の費用を負担し、景観修復保持や流域の荒廃による土砂の流出を防ぐ等の対策を考えてはどうかと言う提唱をしているのだが。

       もう少し冷たい世間の風を受けなければならない。 

                                 
      続く  目次へ戻る                 ホームページ表紙へ