• D-15. コメント(H.11.3.1)       NEWEST

     貴ホームページの21世紀後半の世界の一次エネルギーでは、原子力と水力がいくら頑張っても新エネルギーが総供給量の1/3も必要としています。新エネルギーの内風力や太陽光などは勿論ですが、バイオマスに相当期待するとしていますが、その可能性は大きいのですか。

     又今盛んに話題になっている燃料電池との関係はどうなんですか。

    • 筆ー者所見(H.11.3.1)        NEWEST

       目次

      【1】.燃料電池
      【2】.食料とエネルギー作物の耕地の取り合い
      【3】.水素エネルギー
      【4】.ハイオマス

       
      私が21世紀後半の世界の一次エネルギーを試算してみて一番驚いたのは、持続可能と言われる
      図−3.2’においてすら新エネルギーを総供給量の1/3も必要とし、その中でもバイオマスが期待されるところが大きいと言う日本エネルギー経済研究所の意見でした。目から鱗が落ちる思いでした。

       フランスでは原子力の比率が80%と言うのだから原子力技術者の一層の頑張って貰わなければならないが、世界の包蔵水力も80%以上未開発のまま眠っているのだから水力技術者も頑張って貰わなければならない。バイオマスについてはまだ余り研究データが少ないので残念に思っている。

      【1】.燃料電池

       8月31日朝日夕刊の「論説委員室から」と言うコラムに「温もりの選択」赤池・藤井共著のPEMの紹介がありましたが、私も7月発行後直ぐに購入して読みました。大変な力作で多くの感銘を受けましたので一読をおすすめします。

       この燃料電池というのは20〜30年位前から研究が進められてきまして、既に実証試験の域を脱しております。色々なタイプがあり、素人の私にはよく説明出来ない所があり、ここに記述するにも逡巡するところがありお許し願いたい。

       確かアサビール千葉工場で廃液から発生するメタンガスを利用して燃料電池発電に成功したという報告がありましたがこれはリン酸型燃料電池発電で、高い温度で排熱する「リン酸型」と呼ばれるもので、燃料となる水素は高温状態で都市ガスに水蒸気を加え取り出すことが出来るとされる。 この型は10万KW位までの大型も可能だが、高温の排熱を発生させる。
       
       赤池氏等が提唱するのは陽子交換膜型(PEM)燃料電池で50KWまでの小型のものである。このタイプは今年始め、ドイツ・日本の自動車メーカーが相次いで燃料電池搭載の新車を新世紀早々世界中に売りまくると宣言して有名になった。ダイムラ・ベンツはこの燃料電池を4万円/KWだという。
       
       燃料はメタノールで、液体メタノールをガソリンのように補給し、常温の化学反応で発電し走行する。このメタノールは主として天然ガスから生産されているが、農作物や草類、樹木、海藻と言った再生可能なバイオマスから造ることも出来、また古紙や廃材と言った廃棄物からの回収も可能という。

       すぐ売り出しに出てこないのは検討課題があるからだと思うが、たぶん耐久性が問題のようだ。コスト・安全性・使いやすさなどが確立されれば、自動車以外に瞬く間に一般家庭や小規模の施設に普及するだろう。

       赤池氏は21世紀に此の「PEM」によって産業構造大転換が始まると予言する一方、「PEM」型燃料電池による分散型発電が発展すると、集中型大型発電にともなう設備が不用になる。当然ながら既存の電力会社に大きな役割の変化が求められるだろうと述べている。
       それには@.地域の分散型電力供給に伴う「コーディネート・最適化事業」
              A.地域ごとの分散型発電が安定的に行われるよう「開発・監視型エネルギー産業」への移行
       が望まれるとしている。

       私はかねて、水力・火力・原子力に次ぐ21世紀後半の第四のエネルギーとして「水素とバイオエネルギー」ではないかと思っているが、メタノールがこのようにして利用できれば素晴らしい事だと思う。しかしこの原料を天然ガスでなく、農作物や草類、樹木、海藻等のエネルギー作物に求めることになれば、増大する世界人口の食料・生活を維持するために必要な土地とトレードオフの関係がある。此の点が少しも議論されてないし、解決のメドがないのが残念である。
                      
      【2】.食料とエネルギー作物の耕地の取り合い

       燃料電池に関心が高まっています。ただ問題はその原料を再生可能でない天然ガスなどを使用することで満足しているのでは、私どもが対象にしている議論からいささか逸脱しているのではないかと言う疑念がある。確かに供給もコストも安定している天然ガスなどを利用して燃料電池の技術を確立しておき、天然ガスなどが枯渇してきたときにバイオマスが活用出来るように考えるのはどうだろうか。

       赤池氏も又「エネルギー大潮流」を書いたフレイビン氏も再生可能なバイオマスに期待を掛けています。バイオマスの定義もハッキリ掴んでいないのですが、聞きかじり読みかじりで何とか試行錯誤のすえ次のように纏めて見ました。

       これは(財)日本エネルギー経済研究所の資料から引用しております。この作業は地球の100年後の人口増加を考えた時に相当部分のエネルギーをバイオマスに依存すると言う事になれば、食料を確保するための耕地とトレードオフの関係になる事をテーマにしている。

       主にJohansson氏が2050年目標にして作成した資料を元にして2100年を展望している。次に概要を述べるので概略を掴]む程度で許して欲しい。

       現在の世界の耕地面積 1478MHA=661MHA(先進国)+817MHA(途上国)

       ここで上記途上国(817MHA)の内91ヶ国について調べてみると(FAOの評価による)

       現在の耕地  706.3MHA
       潜在的な耕地 2054.9MHA(このうち2025年までに必要な耕地1059MHA)

       即ち2025年における過剰な耕地 (2054.9−1059=995)995MHAがバイオマス農場としての利用が潜在的に可能な代替土地の面積対象になると言う。

       なお995MHAの内458MHAが耕地面積の10%+草原+森林地帯、で426MHAが劣悪地帯だが森林再生出来る面積で合計約890MHAがバイオ耕地として利用可能と分析している。

       計算によるとこの995MHAで267EJのエネルギーが得られる計算で、これは現在の世界の一次エネルギー供給322EJにほぼ匹敵するとされる。  

       (単位、EJ/年=22.03MTOE、MTOE=石油換算トン)

        COS85.gif

       以上を踏まえてバイオマスと農業生産の土地の取り合いをチェックする。

               穀物/人   HA/トン
         1990年 0.37トン   0.7HA
         2100年  0.41      0.51

      と仮定すると(即ち一人当たり穀物消費は増、土地の生産性は増)

             人口(百万人)  穀物生産(MT)  穀物耕地(MHA)  バイオ耕地
       1990年    5083        1871       1310           0
       2100年    9898        4110       2108         807
       
      となる。

       バイオマス=エタノール、メタノール、バイオガス、水素発生、発電用

      と定義されるが、さてこの807MHAをこれからどのように技術的に解決するか勉強のしどころか。


      【3】.水素エネルギー(WE-NETシンポジウムより・H.11.2.24)

       枯渇の怖れのある化石燃料に変わる新しいエネルギー源が求められている。この様な期待に応えるため、世界に広くかつ豊富に賦存するクリーンな水力や太陽光など再生可能なエネルギーの地球規模での導入を計る事が重要である。しかし再生可能なエネルギーは偏在しており、長距離の輸送、貯蔵の壁があって、限定的利用に留まっている。之を地球規模で利用するには偏在する再生可能なエネルギーを生産から流通・消費まで一貫して取り扱える二次エネルギー体型の確立が必要である。ここで、その媒体として環境負荷の小さい水素エネルギーが着目されることになった。

       また、水素は化石燃料と同じく輸送・貯蔵が可能となれば、国際市場における取引も可能となり、国際エネルギー供給安定化・多様化に資すると共に、クリーンエネルギーの大規模導入を促進する事となり、また豊かな再生可能なエネルギーを持つ国にとっては、輸出エネルギーとして産業振興につながるものとなる。

       通産省は1993年WE-NET(水素利用国際クリーンシステム技術)研究を発足させ、1998年迄をそのT期計画(予算約80億円)とした。先日T期計画に関するシンポシ゜ウムがあり出席する機会があった。そのときの印象は

      @.当初の構想では大量の生産・輸送・貯蔵を考えていたが、現実に世界では水素自動車など水素の分散利用が急速に進展し、遅れを取った。U期計画以降はこれを考慮して練り直す。

      A.水素そのものはは既に利用されているので、相当技術が進んでいると思っていたが、シンポシ゜ウムの報告を聞くと殆どが「調査研究」、「研究開発」などで基礎的研究が多いのに驚いた。まだまだこれからの技術だなと思った。

      B.しかしT期計画の経験をベースにして、より具体的な実用化のマイルストーンをうち立てているのは大変心強く思った。
          例えば
      2010年までに実用化: 水素自動車関連技術、水素供給ステーション、PEM(長寿命化・高効率化・耐高温)
      2020年までに実用化: 水素ジーゼルコージネレーション、新規水素吸蔵合金
      2030年までに実用化: 水素製造技術、液体水素輸送・貯蔵、低温材料、安全対策、国際協力

      C.全体構想の見直しの中で次の事が印象的であった。

       ・WE-NETによる水素エネルギーの国際的な大量輸送は2030から2040年ころから始まり、2040年で我が国のエネルギー供給の役3.4%をしめるであろうと予測している。

       ・バイオマスについては、我が国の資源量、経済性の面で問題があるが、少なくともローカルなエネルギー源として考慮する必要があろうとしている。

       ・水素燃料電池自動車の開発は民間自動車産業界が独自に取り組んでいるが、燃料水素の供給インフラ整備については、国の技術開発に対する期待が大きいとしている。

      D.発電コスト(海外の豊富な水力で水素を生産し、需要地に輸送・貯蔵し、水素燃焼タービンで電力を生産)

       前提条件: 水素燃焼タービン1000Mw、水力発原価2円/Kwh、輸送距離5000Km(パイプライン陸上3600Km・海底1400Km)

       発電コスト: 25.5円/Kwh(2030年に実用化の予想、コスト減の研究を要す)

      【4】.ハイオマスについては概念的にもよく掴めないが、革新的・先導的技術の研究として平成9年度に行った調査結果が報告されているので、参考に供したい。

       ・世界で現時点での利用量は約10億TOE/年で世界の一次エネルギー供給量の13%に当たる。これ以外に殆ど利用されていないバイオマス残差滓が約20億TOE/年ある。
       (TOE=Ton Oil Equivalent石油換算トン)
       ・バイオマスのエネルギー資源としての供給可能量の見積もりには不確実性が大きいが、IPCCは2050年時点で44億TOE/年、2100年時点で77億TOE/年と見積もっている。

       ・日本における供給可能量の見積は0.46億TOE/年で、現在の一時エネルギーの10%に当たる。内約としては未利用残滓9%、休耕地利用1%としている。

       ・バイオマスからエネルギー転換コスト: 単位、千円/TOE
       水素(37.3)、液化油(18.1)、エタノール(25.6)、メタノール(35.4)

       ・世界的にも、日本においても、バイオマス残滓は大量に発生している。鍵はその収集費にあり、市場価格の人件費を用いては経済的に成り立つ訳がない。収集を可能ならしめる社会システムの構築や適切な転換技術を組み合わせる総合的なシステムを考える必要がある。 
       
       WE-NETのホムベージは http://www.enaa.or.jp/WE-NET/ であります。

      以上を総括して次のように考える。

       水素エネルギーを偏隔地から大量に移動させるようになるのは、技術的にも経済的にも矢張り21世紀後半になりそうだと思う。平田教授の説に寄れば、欧州では80万Km、北米でも44万Kmのパイプラインが敷設されている。東アジアは部分的にしか無く、最近シベリアから天然ガスを中国へ輸送するパイプライン計画があり、日本にも呼びかけがあると報ぜられている。当然日本もこれに呼応し、国内にも太平洋側と日本海側に二本の幹線3300Kmを儲け大陸のパイプに結ぶ事を考える時期に来たと言える。

       同教授も主張しているように、パイプラインも敷設しておけば天然ガスが少なくなってくれば水素ガスを混ぜて送ればよく、強度を持たせた耐久性のある材料を使用すれば、耐用命数も長いのでインフラ資産として将来のエネルギー危機に対応する事が出来よう。

        このように考えると、電力やエネルギーの輸送を取り扱う独立した別途の機構なり会社組織があっても良いのではないかと言う構想があり得る。そうすれば大きな意味で発電と配電(売電)を自由化出来る。共同通信によると、中国の電力組織において、上海市、山東省、浙江省と東北地区三省では「送電網・発電所分離経営」の試験を実施すると言う報道が見られる。又今度のEU統合に際し、送電形態に色々な変化がもたらされるのではないかと思う。

       日本の電力自由化と送電線の関係は、電気事業審議会の基本政策部会の次のHPが参考になる。

          http://www.enecho.go.jp/dayori/index05.html
          


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  • D−16. コメント  IIASA/WECレポート(世界のエネルギー)    (H.11.7.5)       NEWEST

     私は水力を生業にして来た技術者ですが、地球温暖化が問題になっている現状に係わらず、再生可能でクリーン
    な水力エネルギーが余り評価されていないのは残念に思っておりました。貴ホームページは敢然としてこの問題に
    挑戦しているのを見て、心強く思っている次第であります・

     昨年(1998)9月アメリカのヒューストンで第17回の世界エネルギー会議(WEC)が開かれております。そのう
    ちスペシャル セッション2の「2050年迄とそれ以降」でIIASA/WECの共同調査レポート1998(世界のエルル
    ギーの見通し)が発表されております。

     この報告書は2100年までの世界のエネルギーの需給見通しが報告されていますが、その中に「−−−いずれ
    のシナリオでも、次の世代を通じて、経済の発展にとって地下資源は制約要因にならないだろう−−−」、或いは
    「−−−化石燃料資源は21世紀に於いても、引き続き世界のエネルギーの大部分を十分に供給するが、その割
    合はシナリオによって変化する。−−−」等とあり、化石燃料の見通しに付いて、楽観的な表現になっています。
    私どもの感覚と大きく乖離して居るような気がします。

     レポートはお持ちの事と思いますがコピーをお送りしますので、ご意見を賜れば幸甚です。

    • A−1.筆者所見  (H.11.7.5)        NEWEST

       レポートコビー有り難う御座いました。なかなか難解な翻訳で少々ヘコタレましたが、何とか解析してみたい。

       このヒューストン大会の模様は昨年11月に大会参加者の報告会が東京であり、私も出席してその模様を、私のHP「その後の情報」の
      D−11のA−2筆者所見に述べてあります。
       
       この報告会で、「ローマクラブでも資源有限を警告しているし、我が国でも経済発展・エネルギー・環境と言うトリレンマに苦しんでいるが、何と言っても資源は有限であり、掘削技術が進歩しても化石燃料の可採埋蔵量が倍に成るわけでもないし、土壇場になってサア使い尽くしてしまいしたのでは、困る」と言うのが報告者の率直な意見であった。しかも「心配無用」を会議の結論に入れろと言うのには頭に来ると不快感を露わにしていた。

       小生の意見は石油メジャーの謀略ではないかと思う。ゲスの勘ぐりかも知れないが、省エネルギー、CO2削減の大合唱の
      中で石油の消費が減りつつある。消費が減少すれば生産がだぶつく。だぶつけば原油価格が下落する。そこで石油は幾らも
      ある。どしどし使っても心配なしとしているのではないか。

       WECはどうも商業主義に汚染されているのではないか。ローマクラブの方が真面目のように思う。世界エネルギー会議など止めてしまえ!という意見もあるという。

       又その後、朝日新聞主催・資源エネルギー庁後援のシンポジウム「21世紀のエネルギーのために、私たちが考えること」があり、茅陽一氏はヒューストンの最終結論は理解し難く不可解であるとしています。

       いずれにしても、石油や天然ガスは政略が絡んで考え方が揺れ動くが、矢張り物理的には限界に来ていると言って良いの
      ではないか。例えば小山茂樹著「石油は何時無くなるか−検証・エネルギー問題のすべて」時事通信社発行を読むとかなり
      の前提を置いても、限界は近いと思う。メタンハイドレートなど期待しなければ。

       コンピューターで2000年問題が騒がれているが、2000年なんて言うことは、物理的に時間が経てば来ることが判ってい
      るのに、何故に末尾二桁を年号にしてしまったのか。当事者は何を考えていたのか理解できない。不可解である。化石燃料
      も同じ事である。枯渇が来ることは判っているのだ。物理的に有限なのだ。年号のように前の年にならなければ対策がとれな
      いと言うのでは困るのである。(閑話休題)

       しかしお送り頂いたレポートを熟読玩味するまでは、以上の様な考えで悪口を言っていたが、繰り返しよく読んでみると、別
      な意味で評価すべき点も多々あり、多くの示唆に富んでいることを知った。彼らの21世紀における化石燃料に対する認識は
      驚くほど楽観的であり、且つ断定的である。そして飽くことなき技術の革新に頼っている。文化の違いと言うべきか。コピーの
      概略を紹介し、最後に私の所見をまとめることとしたい。

      目 次

       【1】.このレポートの性格
       【2】.各シナリオの概要
       【3】.世界の11地域の特徴
       【4】.総括的筆者所見


       このレポートは第一段階として1993年〜1995年の間に世界の11の地域に対して6つのシナリオを展開し、その意味合い
      を分析した。第二段階として1995年〜1998年迄に100を超える11地域の専門家による評価を行い纏めたものである。

      【1】.このレポートの性格

       @.世界を11の地域にに分けて分析した。

         1.NAM 北アメリカ 2.LAM ラテンアメリカ・カリブ 3.WEU 西ヨーロッパ 4.EEU 中央・東ヨーロッパ
         5.FSU 旧ソ連 6.MEA 中東・北アフリカ 7.AFR サハラアフリカ 8.CPA 中央アジア・中国 
         9.SAS 南アジア 10.PAS その他太平洋アジア 11.PAO 太平洋OECD

       A.対象期間を2050年迄とそれ以降2100年までとした。

       B.6っのシナリオを展開した。

       ケースA.抽象的技術改良・高い成長率
           A−1.石油とガスの優位性は21世紀まで続く
           A−2.石油とガスが欠乏し、石炭に多く依存
           A−3.原子力・再生可能エネルギーの技術改良、資源の欠乏と言うより経済的理由で化石燃料撤退

       ケースB.現実的な技術改良中間的経済成長

       ケースC.実質的な技術進歩・環境重視
           C−1.原子力が21世紀末に全く姿を消す
           C−2.安全且つ小型の100MW〜300MWで、広く社会に受け入れられる新世代原子炉が開発

       C.世界人口は2050年で100億人、2100年でほぼ117億人に達する。各ケース同じとする。

      【2】.各シナリオの概要

       計算根拠の詳細はレポートに無いが、グラフにしてみるとつぎの通りとなる。又私のHPの図3−1、図3−2’、図3−3をWECと同じように石炭、石油・天然ガス、新エネ・原子力の三分野でグラフを書き直して併記する。
       (再生はは再生可能エネのこと)

      • COS5301.gif

        COS6332.gifCOS71B5.gif

        COS7394.gif
        COS8350.gifCOS9126.gif
        COS92D0.gifCOSA033.gif

      •  これらのグラフを総括すると次のようになる。(図で再生は再生可能エネルギー)

         2020年以降に於いて、総てのシナリオが在来の石油とガス依存状態から離脱する。離れて行く過程は

         イ.石油とガスが豊富なシナリオA−1は比較的ゆっくり
         ロ.技術的進歩の早いシナリオA−3と、環境政策を重視するシナリオCが急速に進む
         ハ.シナリオA−2と、シナリオBは石油とガスの推移に、石炭の影響が大きい

         これを私のホームページ「21世紀後半の世界のエネルギー(主として水力)」と比較してみる。シナリ
        オAは私の図3−3(人口爆発)、シナリオBは図3−1(トレンド)、シナリオCは図3−2’(持続可能
        にほぼ該当する。

         注1.GWP:世界総生産、注2.一次エネルギー単位:石油換算、億トン
        WECと鈴木の2100年比較
        項目 シナリオA(3−3) シナリオB(3−1) シナリオC(3−2’)
        人口 億人 117(159) 117(117) 117(99)
        WGP兆$ 300(大差なし) 200(260) 220(216)
        一次エネルギー 450(310)
        350(260)
        210(202)
        環境税 NO(NO) NO(NO) YES(YES)


    • 【3】.世界の11地域の特徴

       11地域の専門家が集まって1995年〜1998年の約く4年に亘って詳細な地域評価を行ったと言うから大変な労力と言うより他ない。しかしこれが決定打と言うわけには行かないだろう。あくまでシナリオなのだ。しかしこういう研究を続けると言うことは、今取るべき手段、或いは今後の変化の対応に速やかに対処出来ると言うことだ。

       私のHPの一次エネルギー需要指標は、WECの環境重視のシナリオCと似ている持続可能ケース(図 3−2)を除いて、大きな差がある。 私の場合は日本エネルギー経済研究所の多年にわたる多くのスタフの研究による資料を参考にさせて貰っているが、WECの詳細な資料が手元あるわけでもないし、又あっても私だけではどうにも解析出来ない。専門家の検討を待つしかない。

       @.WECはエネルギー政策論争に重要な次の8つの問題について、地域の100人余の専門家に採点を委託した。
      (但し、1=非常に重要、2=重要、3=関心あり、4=関心なし)。即ち数字か小さい程重要視している事を意味する。11地域の平均値を括弧の中に示す。地域別の表はここをクリック。

       制度的欠陥(1.59)、資金調達(1.77)、地方環境への関心(2.09)、技術(2.14)、効率と自然保護(2.14)
       商用エネルギー需要(2.5)、人口増加(2.55)、潜在的気候変動(2.95)

       この表で特徴的なことを列記するとつぎの通り

       イ.制度上の欠陥と資金調達が最大の関心事である。これは1992年では最高位にあった効率と環境保護を凌駕した。
       ロ.気候変動が最下位
       ハ.地方環境問題は可能性のある気候変動より高位
       ニ.人口問題は発展途上国とPAOで高位。PAOで上位にランクされているのは日本の人口減少であり正反対。
       ホ.NAMの最高位は技術、PAOの最高位は効率と環境保護である。

       A.各論

       高成長を期待する地域:LAM、MEA、CPA、SAS

       成長達成困難:EEU、FSU、AFR、SAS

       A−1.資源利用に制約はあるか

       レポートは次のように述べている。

       「顕著なことはたつた10年前に圧倒的だった「資源不足の切迫」と言う問題が地域評価の中で聞かれなかったことである。資源の利用可能性はもはや地質によって確定しているものと見なされない事である。これは、資源を探査し開発するために、長距離輸送に必要なインフラストラクチャーを建設するために、又、とりわけエネルギー投資の資金を誘引するために行う刺激策と政策の一機能と見られることである。

       総てのシナリオが指摘することは、次の世代を通じて、経済の発展にとって地下資源は制約要因にならないだろうと言うことである。化石燃料の分布は一様でないために地域的に不足や価格上昇は起こりうる。しかし、世界全体で見れば、それは制約ではない。

       環境問題、資金問題、技術的要求は将来を制約する要因になりそうに思われる。国際政治、投機、景気循環が短期に移り変わること、長期にわたる資源開発は時折混乱する。

       何よりも必要なことは、膨大な地下資源を「経済的に技術的に回収できる資源」への実現の可能性を秘めて転換することである」

       エネルギー輸出に懸念:MEA、PAS、NAM・CPA・SAS(シナリオA−2における石炭集中)

       エネルギー輸入依存度懸念:WEU

       A−2.エネルギー供給の質と形

       「最終エネルギー形態は裕福になるに従ってよりクリーンになり、よりグリッドに依存するようになる。住宅用と商業用に使用される伝統的なバイオマスや石炭のような固体燃料は総てのシナリオで徐々に消え去って行く。電気・天然ガス時には水素のようなグリッドに依存する燃料が漸次導入される」

       即ち、「化石燃料は21世紀に於いても引き続き世界のエネルギーの大部分を十分に供給するが、
           1.非商業用と持続可能利用が殆ど出来ないバイオマスは他のエネルギー源へ転換される
           2.石炭の直接使用は実質的に無くなる
           3.近代的バイオマスを含む再生可能エネルギーの持続可能な利用
           4.これらは個体ではなく電気・液体・ガスとして消費者に供給される」

       地域では次のような特徴がある
        NAM:石炭・原子力・再生可能エネルギーを特定せず、「中道」エネルギー開発を進める
        WEU:輸入依存度を抑えるためにエネルギー源の多様化を優先
        MEA:石油とガスにに頼って高成長を期待する。
        PAO:化石燃料の範囲を超えて急速な移行(シナリオA-3)が行われる。アジア投資源として期待される。

       A−3.技術の進歩

       「これから数十年の調査研究開発投資によって、2020年以降に利用される技術の選択が始まるであろう。即ち、次の20年間に調査研究、開発と投資の選択が技術改良につながると言うこと、そして役立つ技術が安価になり、その後の投資がより魅力的になるであろうと言うことである」

       「公共、民間どちらの部門に於いても、調査研究開発予算が最近減少していることは慎重に検討する必要があり、首尾一貫した技術戦略が長期の課題に対応するため開発された。総てのOECD諸国の内で、現在日本のみが、長期にわたり考察を必要とするようなことや、世界シナリオの将来見通しで極めて重大な技術開発への投資を準備するように思われる」

       技術最優先課題とした地域:NAM、PAD、AFR(特殊な環境)、CPA、PAO(特にメタンハイドレイド)、WEU
       
       A−4.世界のエネルギーシステム変化の度合い

       「経済開発、エネルギー最終用途の形、及びエネルギー供給システムの変化が全面的に広がるには時間を要する。例えば、FSUは経済再構築を完了する迄に30年は必要、AFRやSASは21世紀末まで掛かるであろう」

       「CPAの評価では、石炭に集中した筋道(シナリオA-2)から2020年以降では炭素集中の少ない燃料(シナリオA-3)に切り替えだ場合、そのロスは大きいとされる。それは石炭のインフラストラクチャーと技術開発に対する投資は重複投資となる。又炭素集中の少ない燃料の開発投資を最初から実施した方が安く付く」

       A−5.地域間の相互連携がシステムの融通・弾力性を生む

       「エネルギー政策で出来ることは古いインフラストラクチャーの改良と新しいインフラストラクチャーの開発である。相互連携の拡張が期待されるのは、
       LAM、MEA:
       CPA・SAS・PAO・PAS:アジアのエネルギー消費センターとして、カスピ海とシベリアにある豊富な石油ガスの利用に対する新しいインフラストラクチャーが必要となる
       FSU:石油特に天然ガスを西のWEU、東のアジア両地域の大きな市場に連携するエネルギーインフラストラクチャーを建設する誘引がある。これによってFSUは取引収入が増え、一方でアジアにおいてよりクリーンな石炭集中度の低い開発が促進される」

       A−6.所要資金の調達は総てのエネルギー戦略に取って重要

       11地域の評価の中で資金需要が2番目に関心が高い。

       「OECD地域(NAM、WEU、PAO)において、地域評価者が最も懸念したことは、エネルギー部門の規制緩和が長期調査研究開発の意欲を減退させ、必要なエネルギーインフラストラクチャー投資を大きくて(ごつごつした)危険な物として思いと止まらせるかもしれないことである。エネルギー部門は民間部門からの資金調達の割合を増やす必要がある」

       A−7.地域における環境の影響

       地域における環境の問題は世界的な変化に優先すると言う意見は地域投票でも地域評価においても一致した。

       「効率の改善とよりクリーンなエネルギーシステム(脱炭化)は世界分析が示唆した戦略にとって重要な要素である。脱炭化によって、地方の、地域のそして世界のレベルの環境が改善されるであろう。
       しかし脱炭化だけで環境保全を保障する物でない。石炭集中のシナリオA−2は南と東アジア、中央、東ヨーロッパでは硫黄酸化物汚染は、危機的な量に達するであろう」

       「1997年の京都議定書に一致するのはシナリオCであり、シナリオBとA−3は議定書にかなり近い線である。
       国際的な排出取引で、潜在的な排出削減コストの取引価格は炭素トン当たり(tC)10$から200$の範囲と予測され、ロシアバルブの潜在的総額は巨大な物になる。排出権取引から得た収入の投資先として特に重要で可能性のある対象候補は、シべリア・カスピ海地域と中国、その他急速に発展するアジア諸国と結ぶ新しいガス輸送インフラストラクチャーである。これによってアジアにおける環境の浄化が促進され目だろう」 

       「シナリオA−3によって提示された代替方法に沿って安定を達成することも可能であろう。例えば京都議定書による排出権取引から得た収入が化石燃料の技術とインフラストラクチャーに慎重に投資される場合である。排出権から得た収入をこの様な環境に優しい目的に使用する事を明確にすれば、排出権取引と資源移転の両方が短期間に、より政策的に受け入れられるかも知れない」


      【4】.総括的筆者所見

       @.21世紀は化石燃料は十分にあり、地域の専門家からも意見がないとのこと。そしてあくまで技術と開発のための資金がこれを解決するという考え方の要だ。しかしその根拠が明記されていない。

       レポートには「PAO地域評価では、メタンハイドロイドの形をとった非在来型化石資源を開発することについての長期的な可能性と技術開発努力の継続と調和を必要とする選択に重点を置いている」と述べているが、住友系の企業が研究開発に資金を投資している話は新聞で見たことがあるが、人間は懲りずに又メタンハイドロイドまでてを出すのかと、天を仰ぎたい気持ちだ。しかしこれがアングロサクソンのかつての産業革命の延長を夢見て居るのだろうか。

       前にも引用したが、小山茂樹氏(石油は何時なくなるのか-時事通信社)、松井孝典氏(朝日新聞)は次のように述べている。

       「小山氏はこの様に分析した上で、生産コスト20ドル以上の原油開発を含めれば 、資源枯渇の時期は15年近く延びる可能性があると言う論議に対して、そのようにズルズル行けば現在開発されていない重質油、タールサンド、オイルシェール、極地の石油或いはメタンハイドレード等の非在来型石油までを考慮にいれることになり、それ以前の問題として人類がそこまでエネルギーを炭化水素源に依存し続けるのかと言う基本な問題がある。
       更に石油や天然ガス等の在来型の炭化水素資源が枯渇したからと言って、すぐ上記のような環境破壊型の非在来型の炭化水素資源に依存して行くのでは、あまりにも知恵に欠けていると言うものだ。寧ろ需要と供給に基づくマーケツトメカニズムによって資源配分を行わしめるという点からすれば、コストの高い環境保全型エネルギーである太陽光・太陽熱・風力・バイオマスなどの再生可能エネルギーの本格的開発促進に目を注ぐべきだろう」と述べている。
       
       惑星物理学者松井孝典さんは「レンタル思想」を唱えております。即ち、人類は農耕を知り、大地を「所有した」と錯覚してしまった。太陽や雨の恵みの範囲内で自足したフロー依存型文明の時代はそれで良かった。工業文明は鉄や石油と言った地球のストツクを野放図に食いつぶす。このままでは資源も食料も確実に枯渇すると言う所まで来た。人間と地球の関係を、本来の姿に戻さねばならない。それが地球と人間の「貸し借り」の関係だ。人体は地球の借り物だ、借り手が貸し元より大きくなる道理はないと言う訳である」

       私は両者の意見に共感するのだが、諸兄はどうでしょうか。

       A.シナリオA−1で2100年の一次エネルギーは450億トン(石油換算)、シナリオCでは220億トンとしているがこの様に大差があっても少しも騒がず、地域によってはA−1型に該当するものがあるなどと言っている神経は理解できない。

       B.シナリオCと私の図3−2’は環境を重視したタイプで、計数的にも近似している。

       C.2020年迄の長期調査研究開発の成果が、移行のエネルギー投資の態様が決まる。

       D.エネルギーの様態は全く変わり、伝統的なバイオマス、個体石炭の消費は消滅し、電気、ガス、液体、更に水素の他に近代的なバイオマスを含む再生可能エネルギーとなる。

       E.途中まで石炭中心で行き、他エネルギーに切り替えることは投資の莫大なムダとなる。

       F.地域融通はソ連、アジア地区で有望である。これは平田教授(D-4)、西沢元東北大総長(D-8)、一針氏(A-6)等の構想と重なる。

       G.資金調達は民間部門から割合を増やすこと。にぎやかな提案を期待する。

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