• G−7.コメント(H.11.9.6) 講演依頼(水力発電の見直し、および国際貢献)

     
    突然のご連絡で恐縮です。ホームページを拝見させていただきました。現在、私どもは、**学会建設マネジメント委員会において、「21世紀にわれわれはどのようにしていけば良いのか」議論しておる分科会がありまして、特に、地球環境とエネルギーについては、我々も化石エネルギーの枯渇、および、日本の不安定供給という点を懸念しており、「水力発電の見直し、および国際貢献」を真剣に考えております。

     つきましては、貴殿のホームページの内容に興味を持ちまして、お時間がございましたら9月上旬頃にご懇談の機会があればと思います。ご意見、ご都合をお返事願えればありがたく存じます。よろしくお願いいたします。
                                   

                         
    • A.(H.11.9.6) 「水力発電の見直し、および国際貢献」                                                  (**学会研究会講演記録、H.11.9.3)

        
      私のホームページが縁で、こうして皆様にお話出来ることは最近の情報化社会のお陰でありまして、大変光栄に思っております。大体1時間半の予定と伺がつておりますが、約1時間お話しして後30分ほど質疑をしてはどうかと思います。

       本論に入る前に私のホームページ作成の経緯についてお若干話して理解を頂きたいと思います。

       山田風太郎と言う作家が「千日の晩餐」という随筆を書いておりまして、その中に死について3っの恐怖があると言うことを述べております。その第1点は肉体的な苦痛、その第2点は死によって一瞬で有から無になるむなしさ、その第3点はやり残した事への後悔であるという。そして前2者はどうにもならないが、もし3番目の悔悟があれば、死に臨んで耐えられないほどの苦しみがあろうと言っている。

       私は年金生活を迎えるに当たって、山田風太郎の言う3番目のやり残した事への後悔があるとすれば、私にとって何であろうかと自問しました。そして考えついたのは、地球温暖化や資源枯渇問題で化石燃料が大変評判が悪いのに、再生可能でクリーンな水力が省みられず、原子力ばかりが話題になっているのはおかしいではないか。水力発電を生業として来た私にとってはこのまま黙って死ぬ訳に参らぬ。

       それでは水力が俎上に登らないのは何故か。熟考の末、問題点は「量」と「コスト」に関する情報が足りないこにあると判断した。また、たとえこれらが理解されたとしても「自然破壊」と言う環境論者の反対もある。ではそれをどのようにアッピールするか。3っの問題が考えられた。

       @.関係者が知られたくない情報も必要があれば分析して訴える必要がある。
       A.世間に通用しない論旨をマスコミは取り上げないであろう。
       B.第三者からの圧力に屈してはならない。

       最小限以上の事を考えると、インターネットを利用するホームページを通じ、水力に関する諸説を開陳し、世界に理解を求めると言う努力を尽くせば、やり残しのない生涯を閉じる事が出来るかも知れないと思い到った次第である。

       そこで、水力を論ずるには日本国内では話題にからないので世界全体を対象にすることとし、また資源枯渇は21世紀前半では何とかなりそうと言う気配があるので、テーマを「21世紀後半の世界の一次エネルギー(水力)」としたのである。

      【目 次】 
       
        【1】.水力は過小評価されている
       【2】.化石燃料はいつまでもつか
       【3】.環境問題・国際協力
       【4】.新しい時代を迎えて


      【1】.水力は過小評価されている

       (1).水力の「量」の認識不足
       (2).エネルギー単位換算で、水力は1/3も過小評価
       (3).既設水力の原価は既設火力・原子力の1/5以下(2円/Kwh)である 
       
      (4).エネルギー収支計算で、火力・原子力は運転投入エルギーとして発電燃料を含めない
       
      (5).CO2問題で水力の効果は極めて過小評価されている
       (6).水力ダムは莫大な利水のポテンシャルを持っている


       (1).水力の「量」の認識不足

       水力の話をしようとすると、殆ど100%の人が「えっ!まだ水力はあるのか」と言う反論と言うか、馬鹿じゃなかろうかと言うさげすみの言葉が返ってくるのが普通である。確かに日本では70%も開発してしまったから残り少ないが、HPの表−1に示すように全世界の総電力供給量12兆Kwhに対し、表−2を見ると世界の包蔵水力は約19兆Kwhもあり、既開発は12%の2.2兆Kwhに過ぎない。

       即ち世界の包蔵水力は、現在の世界の電力総供給量を上回る量である。

       この数字を見れば、世界の包蔵水力は可成りあり、殆ど開発利用されていないと言っても差し支えない。1994年頃から機会ある毎に喋り、書き、訴えてきたのが多少政治家や学者に浸透し活字になって世に流れ始めている。しかしこの数字はWEC(世界エネルギー会議)やWP誌(ロンドン発行の世界的水力専門雑誌)のデータを利用しているのだが、最近の環境論者に押されている為か世界の包蔵水力の数字は年毎に訂正され減って行く。表−4に見られるように現在は14兆Kwhと言う数字が使用されている。しっかりした権威ある数字が欲しい。

       私のHPは、世界の包蔵水力調査を国連などの機構を使って10年位掛けて組織的に調査するよう問題提起を行っている。

       また、次の項目でも述べるが、1991年国連統計によると世界の水力と原子力の発電実績はほぼ等しいばかりでなく、水力の方がやや多いのである。今原子力でなければ夜も昼もないと言うほど熱を上げている日本で、こういう数字を示すとホントかなと思う人が多い。私のHPの場を日本でなく、世界に置いたのはこの理由による。

       (2).エネルギー単位換算で、水力は1/3も過小評価

       世界の一次エネルギーの内、化石燃料が90%で、水力と原子力が10%を占め、しかも水力と原子力がその半々を占めていると言うと、物知り顔の人はいやそんなことはない、1992年のBP統計では原子力6.8%、水力2.4%となっていると反論する。しかし年度は1991年だが国連統計の世界の電源原別の発電量は原子力が2.08兆Kwh、水力は2.29兆Kwhで明らかに水力の方が少し多いくらいです。この違いは何かと言うことになる。(その後の情報 
      G−6参照)

       これはエネルギーの単位換算の約束事にある。即ち電力量を熱量換算するときに厄介な問題があるのである。電力を発生するために必要とされる熱量と(インプツトベース)と、電力を利用して得られる熱量(アウトプツトベース)には大きな違いがあるのである。

       アウトプツトベースでは1Kwh=860Kcalで共通だが、インプツトベースでは発電効率によって異なる。日本では熱効率を38.1%として1Kwh=2250Kcalとしているが、IEA(国際エネルギー機関)では、水力を860Kcal(100%)、原子力を2600Kcal(33%)、地熱を8600Kcal(10%)と定義している。

       この定義付けは、私の推論では、火力は一次エネルギーである化石燃料から得られる二次エネルギーであるのに対し、水力と原子力は一次エネルギーであると同時に二次エネルギーでもあると定義されているからだと思う。しかるに水力は1Kwh当たり860Kcalであるのに対し、原子力は1Kwh当たり2600Kcalとしているのはどういうわけだ!                                                      
              参照 松井賢一「エネルギーデータの読み方使い方」

       だから水力と原子力の熱量換算はそれぞれ1Kwh当たり860Kcal、2600Kcalであるから、水力は1/3(=860/2600)も過小評価されているのである。これが上記のBP統計では原子力6.8%、水力2.4%に現れているのであると思う。

       この項目は、原子力を金科玉条としている日本の識者に対し、世界全体で見ると実は原子力は水力と同じ程度しか発電していない事を知らしめる根拠になる。これなら今後原子力を5倍にするなら、水力も5倍にしてはどうかと言うことになる。それをエネルギー換算単位の誤りで原子力は6.8%、水力は2.4%と評価に落差を付けてしまっているのである。

       (3).既設水力の原価は既設火力・原子力の1/5以下(2円/Kwh)である

       
      水力がエネルギーとして高いか安いかと言うのは、電力事業経営者としては当然高い関心がある。平成4年(1994)資源エネルギー庁は電源別発電原価試算を行っている。前提条件により異なるが、新設の場合、耐用年均等化発電原価は一般水力で13円/Kwh程度、石油火力で11円/Kwh程度、石炭火力で10円/Kwh程度、LNG火力で10円/Kwh程度としている。

       一方電気事業便覧と言うのが毎年電気協会から刊行されている。その中に各年度の電気料金に占める各種電源別発電原価が示されている。平成6年度発電原価を見ると、火力7.471円/Kwh、原子力7.339円/Kwh、水力8.655円/Kwhとなっている。このグラフは私のHPの長期的に見た水力経済特性の図−2に示されている。

       この図−2から昭和49年の水力(既設)発電原価は1.67円/Kwhにしかなっていないのに、平成6年には8.655円/Kwhにもなっており、火力や原子力より高くなっているのは何故だ!と誰しも思うであろう。

       日本の水力開発の山は大体昭和40年前後で終わっている。現在は大部分が償却を終わっていると考えられる。 水力は減価償却によって簿価が減って行くし、金利も減って行くから次第に原価が低減して行く筈だ。よく検討してみると、この水力発電原価にはその後に大規模な開発が進められた揚水発電の原価がが含まれていることが判った。

       揚水発電はご承知の通り、夜間の火力・原子力などの余剰電力で水を上池に貯留し、昼間のピーク時に発電するという負荷率の悪い発電所で、年間300〜400時間位しか稼働しない。火力・原子力は6000時間以上の運転だから、これを年間のKwh当たりで比較されては問題にならない。だから全水力の発電原価から揚水発電の発電原価を差し引いた一般水力で比較しなければならない。

       この作業は電力会社では出来ないと拒否され、止むを得ず筆者が、出来るだけ厳密な計算条件を明示して試算してみた。その結果は昭和49年から平成6年までの23年間の平均で2.11円/Kwhとなった。詳しくはHP(長期的に見た水力の経済特性)を参照されたい。即ち9電力会社の既設一般水力の発電原価は平均約2円/Kwhと考えて良い。
       
       水力の原価は8.655円/Kwhで、7円/Kwh台の火力・原子力よりも高いと悪者扱いされていたのは誤りであることが判った。揚水発電を除く既設一般水力は約2円/Kwhなのである。

       尤も揚水は大容量高落差のためKW当たりの建設費は火力よりも安いので、揚水時と発電時の総合効率70%を考慮しても、原価の点や運転特性から見ても有利である。もし異議があるなら、揚水発電の開発を止めてピーク火力やピーク原子力でやればよい。稼動率が悪いからたちどころにKwh当たり発電原価は10倍以上になる。

       どうして既設一般水力がこの様に安いかと言うと、法定の減価償却を終わっても運転維持を十分やれば半永久的に稼働可能であるからである。燃料価格の変動がなく、いわゆる再生可能で持続可能なエネルギーの特性なのである。これはオイルショックの時証明された。

        この観点からすると、水力の専門卸業である(株)電源開発や公営電気の売電単価がいずれも約9円/Kwh位と言うから極めて高いと言える。我が国では水力地点に恵まれていたため、古くから鉱山、製紙会社、アルミなどの会社が自家発水力を持ち、現在は償却も終わって会社経営の支えになっている。

       私はここで、自然の恩恵によって減価償却後は極めて低コストで運転できる水力の特性は火力・原子力の原価高による電気料金の高騰を抑えるのみに利用されるのではなく、「自然破壊」の元凶と見なされている水力の名誉回復をさせるような手段に利用できないかと言うのが私の考えである。

       即ちケネディではないが、私は思う「地球が私ども(水力)に何をしてくれるのではなく、私ども(水力)が地球に何をすることが出来るかである」と。

       自然界に還元すると言うことは、その水力の属する上流の流域管理に財政的に貢献する事によって、流域が安定して栄え、洪水のピークを押さえ、雨水の貯留して地下水を涵養し、渇水量が増え、傾斜地の安定し体積土砂が軽減し、緑化によって炭酸ガスを吸収するなど計り知れない貢献を果たす。これは環境論者対応を意識している。

       参照: その後の情報 B−13(自然の恩恵還元)  B−14(水力の儲けは誰のものか)

       (4).エネルギー収支計算で、火力・原子力の運転投入エルギーとして発電燃料を含めない

       エネルギー収支は設備・運転に要したエネルギーと、結果として産出したエネルギーの比率である。1977年と1995年の電中研の資料を並列して説明する。  参考: その後の情報 D−12

       
      ( )
       内は運転投入エネルギーに発電燃料(化石燃料)を含めた場合
      • 表−1 発電別エネルギー収支 LCA(1977電中研)
          項    目 水力 石油火力 原子力
        LCA: 産出/投入 31.5 5.9(0.85) 7.42(0.86)
        設備利用率% 48 70 70
        耐用年数 年 35 15 16

      • 表−2 発電別エネルギー収支 LCA(1995電中研)
          項     目 水 力 石油火力      原子力   
        LCA: 産出/投入 50 21(?) 24(?)
        設備利用率% 45 75 75
        耐用年数 年 30 30 30

      • 表−3発電別エネルギー収支 LCA(表−2修正)
          項      目 水力 石油火力 原子力
        LCA: 産出/投入 74 4.41(?) 12.48(?)
        設備利用率% 50.4 41.5 78
        耐用年数 年 40 15 15

    •  上記エネルギー収支計算で次の3点について不可思議な仮定を設定している。

       @.火力と原子力には運転投入エネルギーに発電燃料(化石燃料)を含めない。
       A.耐用年数は法定でない。
       B.年間負荷率は火力・原子力に有利。

       表−1では石油火力で発電燃料を含む場合を( )内に示す。原子力を火力並みに計算すると(0.86)となる。いずれも1.0以下となる。LCAの数字は、耐用年数、稼動率に深く関係する。表−3は筆者の試算によるもので、9電力の長期計画から採用した稼動率を取り上げ、耐用年数は法定としたものである(水力の実質耐用年数は∝である)。

       表−2、3のLCAは共に発電燃料を加算してない場合の数字しかないので、発電燃料を加算した場合はどうなるか計算する必要があるが表−1から類推すれば1.0以下になることは明らかである。

       表−3は表−2の設備利用率、耐用年数を変えたもの

       半永久的な耐用年数を考慮した場合には、水力のLCAは幾らとなるか歴然たるものがある。過小評価、これに極まるものはない。

      (5).CO2問題で水力の効果は極めて過小評価されている。

       
      地球温暖化問題が次世紀の大きな課題の一つであることは間違いない。この話題の中にCO2を排出しない再生可能な水力エネルギー問題が出てこないのは不思議でならない。水力の過小評価について上記に4っ程取り上げたが、ここではCO2を取り上げてみたい。

       A. 水力のCO2排出量は殆ど0である
       B. 世界の包蔵水力の70%の10兆Kwhは20億トンの炭素排出節減に相当
       C. ダムの水没森林のCO2吸収減は、そのダムを利用する水力によるCO2節約減効果が数十倍少ない
      •  A. 水力のCO2排出量は殆ど0である。

         日本のCO2排出量は70%が産業部門で、そのうち電力が最大で全体の30%を占めている。

           主な電源別CO2排出原単位(g炭素/Kwh)を示すと、(耐用命数30年と仮定)
                         設備費     燃料     合計
                原子力      5.7     0      5.7
                LNG火力    40     138     178
                石油火力    12     188     200 
                石炭火力    24     146     270
                水力       4.8      0     4.8
                その他    6.3〜33.7  0  6.3〜33.7
                平均                      128 (1992年度電源構成)

         問題点

         @.この計算はプラントの寿命を30年と仮定しているため、寿命の長い水力は1/3以下となり排出量0と見なして良い。
         A.天然ガスは採掘時、液化時に発生する多量のCO2を含むが、濃縮ウランは製造時に極めて多量の電力を消費すると言うがこれに関するCO2が含まれていない。

                   参考: その後の情報 D−13

         B. 世界の包蔵水力の70%の10兆Kwhは20億トンの炭素排出節減に相当。

         石油火力の場合1000Kwh当たり0.2トンの炭素が排出されるとされる。炭素20億トンは現在世界の総炭素排出量60億トンの1/3に当たる。2100年の持続可能シナリオでは炭素排出を99億トンとしているので2割相当の節減貢献をする事になる。もし原子力も同様に10兆Kwhとすれば、40億トンの炭素排出節減となり、4割の節減貢献は地球温暖化対策の強力な助っ人である。

         C. ダムの水没森林のCO2吸収減は、そのダムを利用する水力によるCO2節減効果が数十倍少ない。

         ダムによる森林の水没は自然破壊の象徴的な反対理由になっていおり、また水没森林によるCO2吸収力が減少すると言う。これは大変情緒的なダム反対意見である。
                            この項は杉木清氏「世界の水力共生投資論」(未発表)による。

         森林は、炭酸同化作用によって炭酸ガスを吸収し炭素を固定させる。その炭素量は、ヘクタール当たり約6トンと言われる。具体例を計算してみよう。即ち炭素量換算は 6トンC/ha=600トン/Km2、 0.2トンC/1000Kwh、 但し炭水面積即水没森林面積とす。
         
        • 水没森林と水力による炭酸ガス削減効果の比
          ダム名 @流域面積 A湛水面積 B発生電力量Mwh C炭酸ガス
          削減比率
          A/@
          佐久間 3.821  Km2 7.15Km2 1.344.000 63 0.0019
          田子倉 702.3    10    594.000 20 0.014
          奥只見 425.6 11.50 613.000 18 0.027
          黒部第4 184.5 3.49 805.000 77 0.019
          御母衣 395.0 8.80 579.000 22 0.022
          三峡 1.000.000.0 1084.00 84.680.000 26 0.0011

    •  表から判るように、まず第一に、水力の発生電力量が火力の身代わりに炭酸ガス発生を抑制する効果は、水没する森林の炭酸ガス吸収効果に較べ数十倍になる。この傾向はダムの大小によって変わらない。

       第二に、水力が計画として経済的に成立する為にはダムは大量の水量を必要とするから、集水面積(流域)の大きい所で計画されないと採算にあわない。そのとき森林が水没する貯水池の湛水面積は流域面積に比較して遙かに小さい。

       水力ダムは自然破壊の元凶のように言うが、大自然の中では非常に小さい部分であり、十分なアセスを行えば、地球温暖化と言う別な観点から見れば、むしろ環境保全に貢献するところが大きい。

      (6).水力ダムは莫大な利水のポテンシャルを持っている

       
      我が国の高さ15m以上の水力ダムは371地点あり、建設時総貯水容量109.6億トン、有効貯水容量82.6億トンで堆砂率はそれそれ8.9%、4.3%で、現在の有効貯水容量は79億トンとなっている。(その後の情報 F−6参照)

       この貯水容量は発電専用であるが、単純に4ヶ月の渇水を補給すると仮定して略算すると年間237億トンが常時年間を通じて利用できる水利権が生まれる。水資源白書によると、平成11年度の國や地方自治体のダムによる都市用水は154億トン(内上水道94億トン、工水60億トン))と言うから、この237億トンと言うのは莫大な水量と言うべきである。 

       なお、上記371地点の内、5000万トン以上の貯水池は27地点あり、その有効貯水容量の合計は42.億トンである。
       

      【2】.化石燃料はいつまでもつか

       
      2度の石油ショックから見れば現在は石油も安値安定で訳が分からない。表徴的な次の4っの見解を述べよう。

       (1).2030年が危ない(隅田教授)
       (2).次世紀のエネルギーは成長を維持するに十分な量がある(第17回世界エネルギー会議)
       (3).石油は何時なくなるか(小山茂樹氏
      著著)
       (4).21世紀後半の世界の一次エネルギー(主として水力)


       (1).2030年が危ない(隅田教授 http://mechsvr.isc.chubu.ac.jp/Mech_Labs/sumida/2030.htm)

       このHPは世界の2050年のエネルギー問題を分析するユニークな啓蒙書である。エネルギー需要の伸びを2000年迄を1.92%、以降を1.39%(この年率だと100年で4倍)としている。Javaで各項目の増加率を組み合わせて投入してシュミレートすることが出来る。
      •  (仮定1): 資源量は限界があるので、生産力のピークを過ぎた時の供給力を残存資源量の30分の1以内とする。

         (仮定2): 再生可能エネルギーは急激な増強は望めないで年率8.61%の伸びとする

         (仮定3): 原子力は高速増殖炉が行き詰まっているので、2030年頃から供給が減少する。

    •  この仮定では、結局エネルギー資源は石炭に頼らざるを得なくなり、地球環境は急速に悪化する。

       そこで、21世紀のエネルギーは再生可能エネルギーと原子力の2つしかないと言える。再生可能エネルギーを年率10%、原子力を5%とすると、2030年以降の地球環境は目に見えて改善される。しかし2030年迄の対策は手の打ちようがない。エネルギー問題を解決する起死回生の方法はなさそうです。 

       それでも教授は、2030年まで何を為すべきかを提案している。

       @.ライフスタイルを変え、大量エネルギー消費を止める
       A.化石エネルギー資源をより効果的に使う工夫

       と言う考え方で、次のような項目を上げている。 

       ・既存技術の見直し ・最新技術の応用拡大 ・新技術開発の見直しと目標設定 ・地域におけるエネルギーの独立
             
       (2).次世紀のエネルギーは成長を維持するに十分な量がある(第17回世界エネルギー会議)

       1998年9月米国のヒューストンで開催された第17回世界エネルギー会議の最終結論は「次世紀のエネルギーは成長を維持するに十分な量があるので心配無用」であった。会議に出席した日本人は口々に不快感を表していたが、会議に提出された「IIASA/WEC共同調査レポート1998: 世界エネルギー見通し」を読むと彼らの自信の程が窺われる。

       このレポートは6年の歳月をかけ、世界の11地域の専門家100名による討議の末、6っのシナリオについて報告されたものである。

       彼らは、「技術」と「資本」で21世紀のエネルギー問題を克服出来るとしている。例えば、遠隔地で採算のとれない在来型エネルギーは、排出権取引から得た収入などでどしどし輸送インフラストラクチャーに投資すれば解決するのではないか。又メタンハイドレイトのような未知の非在来型エネルギーも長期的な技術開発の継続が必要であるなど色々な例を挙げて強調している。

       2020年迄に投資された技術開発の成果は、それ以降のエネルギー戦略を左右する。と言うことは2020乃至30年が天王山か。(次項の(4)参照)

       彼らの自信は何処からきたのであろうか。「産業革命の成功」、「植民地支配」、「世界大戦の勝利」、「資本主義の成功」、「自由主義の世界制覇」の実績からであろうか。これは私の推測。

            (その後の情報 D−11追加、 D−16参照)

       (3). 石油は何時なくなるか(小山茂樹著)

       
      この著書で新しく得た知見は3っあった。

      •  @.地質学的研究から見て石油の埋蔵が考えられる堆積盆地は世界に少なくとも400はあり、うち275は相当探査されたが残り125は僅かばかりの探査で又このうち70は南北極地や深海だという。

         A.石油採集方法で一次回収(自然状態で)、二次回収(地下に圧力注入により)、三次回収(蒸気・薬品注入により)までやって漸く約34%しか回収出来ないと言う。

         B.原油生産は左右対称のベル型の双曲線を描いて増減する、即ち既生産量が究極可採埋蔵量の1/2(いわゆるMidpoint)に達すると生産が減退すると言う理論(ヒューバート曲線)がある。そして石油のMidpointが2010年前後であると言う。

    •  各種推計資料を検討すると、複雑な石油価格、資源ナショナリズムの絡み合いなどを考慮しても、いずれにせよ遠からず原油資源は枯渇に向かうとされる。

        小山氏はこの様に分析した上で、生産コスト20ドル以上の原油開発を含めれば 、資源枯渇の時期は15年近く延びる可能性があると言う論議に対して、そのようにズルズル行けば現在開発されていない重質油、タールサンド、オイルシェール、極地の石油或いはメタンハイドレード等の非在来型石油までを考慮にいれることになり、それ以前の問題として人類がそこまでエネルギーを炭化水素源に依存し続けるのかと言う基本な問題がある。

       更に石油や天然ガス等の在来型の炭化水素資源が枯渇したからと言って、すぐ上記のような環境破壊型の非在来型の炭化水素資源に依存して行くのでは、あまりにも知恵に欠けていると言うものだ。寧ろ需要と供給に基づくマーケツトメカニズムによって資源配分を行わしめるという点からすれば、コストの高い環境保全型エネルギーである太陽光・太陽熱・風力・バイオマスなどの再生可能エネルギーの本格的開発促進に目を注ぐべきだろうと述べている。

       (4). 21世紀後半の世界の一次エネルギー(主として水力) (http://www4.justnet.ne.jp/~tasuzu/)

        私のHPでは、需要想定を日本エネルギー経済研究所の論文を参考に利用させて貰っている。その後1998年秋の第17回世界エネルギー会議の論文で2100年のシナリオを論じたものがある。私の持続可能案(図 3−2’)に相当するのが環境重視型のシナリオC-1、2である。次に比較する。


      • COSF3A5.gifCOS151.gif
      • 鈴木案とWEC案の2100年比較
        項目 図−3−2’水・原5倍増−維持可能 WEC−シナリオソ−1,2
        人口 億人 99 117
        WGP兆$ 216 220
        一次エネルギー 202  億トン石油換算 210  億トン石油換算
        石炭 67.8 4.2
        石油・天然ガス 0 37.8
        再生・原子力 133.8 168
        CO2排出 67億トン 20
        環境税 あり あり

        •  (イ).図−3−2’  (その後の情報 D−5)

           @. 再生・原子力の内、水力と原子力は5倍増でそれぞれ10兆Kwh、石油換算でそれぞれ24億トン(1Kwh=0.24トンとした)で合計48億トンで、総一次エネルギーの24%しか占めいてないが、電力だけの内訳では52.8%となりかなりのシェアを持つ。

           A. 再生・原子力の内、新エネルギーは約85.8億トンで42.6%である。現在の世界の一次エネルギー消費が80億トンだからかなりの量であり、風力や太陽光発電などだけでは限界があるとすれば、バイオマスエネルギーに大いに期待せざるを得ない。このバイオマスの可能性について、2050年に44億トン、2100年には77億トンと言う研究があるが、もっと具体的な計画を検討して欲しい。
                                (その後の情報 D−15)

           B. 石油は2070年、天然ガスは2100年に枯渇

           C. 石炭は約67.8億トンで、33.4%である。これも数量的にかなり大きい。これだけの量を集め燃焼するには莫大な輸送インフラを必要とするだろし、これだけ大量の石炭燃焼に伴う大気汚染防止には困難を来すであろう。

           (ロ). シナリオ C−1、2 (その後の情報 D−16)

           @. 資料には明確に記述がないのではっきりしないが、シナリオC−1では原子力を21世紀末に全く姿を消すとし、C−2では安全且つ小型の100MW〜300MWで広く社会に受け入れられる新世代原子炉が開発されるとしている。

           A. 近代的バイオマスを含む再生可能エネルギーの持続可能な利用促進

           B. 2020年以降石油・ガス依存状態から離脱する。環境重視のシナリオCで、離脱が急速に進む。

           C. 最終エネルギー形態fは裕福になるに従ってよりクリーンになり、よりグリッドに依存するようになる。伝統的なバイオマスや石炭のような固体燃料は徐々に消え、電気や天然ガスには水素のようにグリッドに依存する燃料が増えて行く。 石炭の直接利用は無くなる。

           D.2100年のCO2排出が20億トンとなっているのは恐るべきシナリオである。



           この4っの案を見て、どうも決め手は見つからない。2030年は危ないという意見がある一方、「技術」と「資本」により21世紀は成長を阻害するようなエネルギーの制約はないと断言する世界会議の結論が示されたり、石油問題の国内第一人者の小山茂樹氏はほぼ中間的な意見で、在来型の炭化水素資源が枯渇するなら、この時こそマーケットメカニズムに従って再生可能エネルギーの本格的展開を計るべきとしている。

           これらの諸案で水力については、分散型エネルギーとして小規模水力が推奨されている程度である。これらに対し、鈴木の意見は、石油・天然ガスは21世紀末で枯渇し、水力を原子力と同じく5倍増とし、新エネルギーを85.8億トン見込みそのうち相当部分を近代的バイオマスに頼るとしている。それでも67.8億トンの石炭を必要としているのは絶望的ですらあると述べている。

           鈴木の力点は、量的に少ないと一般に見られている既設水力の供給力は、実は今注目されている既設原子力とほぼ等しい事から、原子力を5倍にするなら、同じくらいの苦労する水力も5倍にしてはどうかと言う提案である。

           いずれにしても、2100年でCO2の排出が20億トンと言うシナリオを提案しているからには、日本の専門家は1998年9月のWECの会議の結論を詳細に分析し検討した報告書を関係者に提出して問題点を明らかにする必要がある。

    • 【3】.環境問題・国際協力

       
      水力エネルギーについて、「量」、「コスト」、「大気汚染」、「再生可能資源」等という問題をクリヤーしても尚残る問題は「自然破壊の元凶」と言う汚名である。

       地球上に、過去5.5億年の間に5回の大量絶滅事件があったという。特に2.5億年前には火山の異常爆発で95%の生物が絶滅しその回復に1000万年を要し、また6500万年前には小惑星の衝突により恐竜が絶滅しその回復に数十万年を要したと言う歴史がある。

       又現在地球上の生物種は300万〜3000万にのぼると予測されているが、産業革命以来400年間で少なくとも600種は絶滅したとされる。      (その後の情報 A−10参照)

       「手つかずの自然はもはや現在では希な特性」である。人類が誕生して以来この方、木を切り山や野原を切り広げて、都市や耕地を造成して増え続ける人口を養ってきた。これが自然治癒の力の範囲内なら許されるが、このまま大量消費を続けて、100年で倍増するという爆発的な世界の人口に平穏で快適な文明生活を保障するにはどうしたらよいか。

       環境論者は何を求めているのだろうか。あるシンポジウムで、ガンジス河が開発をしないのに環境が破壊しているのはどう言う訳かと言う論争があったが、「開発によって環境を保全する」と言う考え方が提唱された。

       今までの開発について勿論反省はあるが、グリーピースやIRNなど地球規模での強力な環境論者の強弁をそのままにして置いて良いのだろうか。21世紀に向けて堂々の反論があってもよさそうだと思う。それにしても日本の行政のアクションはお粗末と言えないだろうか。環境問題に対する確固たるスタンスが欲しい。

       米国内務省開拓局元長官ビァード氏は「ダムの時代は終わった」として、開拓局予算を18%削減、25%の職員をカットし、
      これからはダムの開発を止め、既設の水供給施設の効率的運用と環境の修復作業に専念すると言明している。更に人口増加のみならず、世界人口の半分が都市集中するだろとし、水資源問題解決には巨大な投資が望まれると述べている。但しその場合でもダムの建設は考えないと言う。少し格好が良すぎるが、我々としては、それを直ぐそのまま受け入れられない。しかしビァード氏の指導力や行動力は評価出来る。              

                                  (その後の情報 C−4参照)

       (1).ダム撤去命令の実例 
       (2).流域管理
       (3).国際協力



       (1).ダム撤去命令の実例

       アメリカでダムの撤去命令を受けた例が2っある。共通点を調べてみると次の3点である。
      • 1.その発電所を廃止しても、周辺からの電力供給に余裕がある。但し命令を出す際、水力は大気汚染防止と言う観点から重要な一部であることを強調し、今回の措置は非常に特殊なものであるとしている。

        2.環境対策を、例えば魚道を設置しようとしなかった。

        3.弱体企業のため、環境保護団体から狙い打ちされた。

    •  この共通点から見ると、矢張り「必要性」や「安全性」がはっきりしていること、「やるべき環境対策」をやれる範囲の最大限、環境論者から言えば最小限を満たす事が大切で、また企業が弱体では対抗出来ないと言うことである。

                        (その後の情報 C−5)

       (2).流域管理

       
      新しい全国総合開発計画策定に、中山間地域が俎上に上がっている。今までの全総で触れていなかったところでかなりの面積があることから、着目されたように聞いた。

       最近の洪水の被害増大・土砂の大量流出・水不足などは上流流域の荒廃が原因であると指摘されている。「また中山間地域よおまえもか」と言ういらだちを感ずる。人口は都市に集中するのは歴然たる傾向であり、今後中山間地域を開発し道路を開削するなどにより流域を更に荒廃させるような事があってはならない。

       新聞の伝える所によると、「緑のオーナー廃止」と言う記事があった。H.11.5.19の朝日で、林野庁が「採算が見込める適当な林がなくなって来たため、国有林への投資制度による一般公募を取りやめる」としたものである。一口50万円で約500億円を調達済みだが、「このままでは大半の契約は元本割れが濃厚」と言う事で新規募集の中止に踏み切ったと言う。

       林野庁の無策振りを激しく非難する書籍を読んだことがある。林野庁は「緑のオーナーは一般の投資と違って、社会奉仕の意味を持つ」と強調しているが、民間の経営ノウハウを導入し、自然の恩恵を受ける下流の受益者から供出される特別の原資等を当てて、流域管理を全うするアイデァがないだろうか。繰り返すが、水源涵養林による流域管理は雨水を貯留し、洪水ピーを押さえ、地下水を涵養して河水の渇水量を増やし、傾斜地の流出土砂を押さえ、森林は炭酸ガスを吸収する等計り知れない効果をもたらす。

       水力の経済特性を、火力・原子力による電力原価高騰を押さえるのに利用するばかりでなく、この際水力の「自然の恩恵への還元」がこの際検討され、水力の自然破壊と言う汚名をそそぐことに活用できないか提案したい。

       (3).これからの国際協力

       
      今まではプロジェクト毎に國の援助機関または世銀等の国際金融機関の資金援助または融資によって途上国の電力公社等に設計や施工管理の技術援助を行って工事を完成させてきた。

       しかし最近は資金調達の多様化、電力の自由化の風潮が支配し、従来とは異なった複雑な様相を呈している。特に日本国内の電力独占の形態になれている日本の海外電力コンサルタントはその出番を失いつつあるという。

                          (その後の情報 D−15参照)

      • 1.電力の自由化は途上国の国営電力公社をを直撃している。これは低料率・非効率による経営悪化、新規電源投資資金調達の困難等に直面し、料金制度の改革、市場原理の導入、国営電力の解体が求められているからである。

         コンサルタントは発電所の調査・設計だけでなくこの様な電力形態変革ソフトのノウハウを必要とするようになり、従ってこの様なソフトなノウハウを持たない日本のコンサルタントは非常に不利となる。現実にインドネシアやフィリピンでは電力公社が発電所を売りに出している。

        2.資金調達の方式により、BOT、BOO、IPP、PFI等がある。
         
          BOOは発電所を建設・運転・所有
          BOTは発電所を建設・運転・移転
          IPPは発電して特定の電力会社に電気を売る
          PFIは公共施設を民間の資金とノウハウで民主導で行う。

        3.85%も海外からエネルギーを依存している日本としては、巨大な隣国アジア大陸と無関係ではあり得ない。EUやNAFTAのようにアジア地区の経済圏も構想されている中で、エネルギーの安定供給のためのエネルギーの輸送インフラには重大な関心が持たれる。

        4.世界のエネルギー問題が議論されるときに、「量」の認識は可成り理解がされてきているようだが、結論としては「自然破壊」の世論を恐れて、環境負荷の少ない分散型中小水力を推薦するのが落ちである。WP誌が世界小水力会議を3年ごとに開催しており、その熱気あふれる会議に驚く。しかしこれはこれで大変意義のあることだが、これだけで終わるのは困るのである。

        5.日本政府は大ダムを含む水力計画を非常に警戒し、慎重で及び腰である。中国の三峡発電所の機器入札に日本政府は輸出入銀行の融資に難色を示し、入札締め切りの前日に漸く承認した。日本業者は直ちに札を入れたが既に遅く、大分前から準備していた欧米の業者に完敗してしまつた。当たり前である。

         日本政府は人権問題、環境論者の反対を恐れているのである。私が多少ムキになって、このHPで水力や大ダムのことをしつこくあげつらっているのは、こういう為政者・行政者の意識改革をしなければならないと思うからである。

         又その前に電力の専門家として自他共に許す電力会社の面々に理解して貰うこと、更には我々同業の水力土木の技術者も同断である。

        6.通産省の動きとして、アジアのインフラへは公的資金だけでは無理,との立場から,産業構造審議会の答申を受けて,電力会社の首脳を集めて海外進出への発破をかけいてる。東電が真っ先に駈けたわけですが,折からのアジア不況の影響でモタモタしている間に関電がフィリピンでサンロケダムの開発に取り組んでいる。中部電力も海外にアクションを起こしている。

    • 【4】. 新しい時代を迎えて

       (1).電力自由化
       (2).PFIとは
       (3).エネルギー輸送インフラストラクチャーの整備
       (4).世界的な水資源の枯渇


       (1).電力自由化

       
      社会経済活動にはそれぞれの産業グループがある。例えば鉄鋼産業、機械産業、電機産業、石炭産業、電力産業等々無数に近いほどある。残念ながら水力産業と言うものがない。ただ電力産業の一部を構成しているに過ぎない。昭和40年ころまでの水主火従の時代は如何にうまく水力地点を確保するかが社運を制していたが、現在は10%も満たないシェアではその存在価値すら危ない。

       しかし戦前の日本には水力産業と言えるものがあった。ご承知の通り我が国は山が多く降雨も多いのでコストの安い水力地点に恵まれ、近代化を目論む資本家は全国の水力開発に注目し、水力会社を起こした。その数は最盛期で600を超えたという。松永安左右衛門とか福沢桃介等という資本家は大いに大水力を起こし、中小水力会社を吸収合併して5大電力体制を形成した。その後国家管理(日本発送電・九配電会社)を経て、戦後の電力再編成で九電力体制となったが水力は電力会社の生産機能一部に過ぎなくなってしまった。

       それが今や電力再編成後50年を経て、漸くその独占形態のほころびが、電気料金水準の高さに現れ、自由化の大波に洗われることとなった。IPP制度は既に発足し、電力の卸事業は自由化されている。更に一般需要家にも供給自由化が企図されており、そうなると送・配電線などの流通施設の独立に論点が移り、革命的な体制の変革が蠢動している。

       そうすると水力には経済的な特性があり、運用のメリットがあるので、既設水力施設の買収、新設水力の開発運営など、いわゆる水力事業を営むことによって、十分な利益を挙げる事が出来るチャンスが生まれる。既に発展途上国の非能率な、破産寸前の国営電力公社が解体・分解して、諸発電施設を売りに出しているという。

       資金調達や技術の面で競争の原理を生かしたBOT、BOOやIPPの制度が途上国で制度化されている。勿論総ての電源にて適用される。又資金調達・事業の運営の点から従来の第三セクターや民活事業とは異なるPFIも制度化される。世界的な電力自由化の風潮の中で、この様な新しい制度を利用して水力事業を営もうと言う企業家(起業家)が現れることを期待するものである。

       特に次に述べるエネルギー輸送インフラが整備されると偏在している未開発大水力が大資本のねらい所になるであろう。     

                    (その後の情報 B−14、B−15)

       (2).PFIとは

       PFIと言うのはPrivate Finance Initiativeの略で、「民間が促進する社会資本整備・運営等(民促事業)」と定義される。そのおもな特徴を挙げると次のとおり  (PFI推進研究会報告書)
      •  @. 「設計」、「建設」、「維持管理」、「運営」の各ブロセスについて、民間の資金とノウハウを活用して、公共事業が民間主導で実施される事で、民活や第三セクターは従来公共では実施されていなかった公共施設を目的としたのとは異なる。

         PFIは、新たな民間の事業機会を創出する事により、景気拡大に資するとともに、新規産業の創出を促進するとの点で経済構造改革の推進にも寄与する。

         A. 将来に渡る財政資金が効率的使用(コストの引き下げ、サービスの向上)

         B. 官民のリスク分担と契約による明確化(官民の明確なパートナーシップ)

         C. PFIの事業は、国民のニーズが高く、安定的な収入の見込まれる事業(ペイする社会資本)等から導入することが有益。

         D. 補助金は適切な財政措置を高ずるが、必要な範囲内で無利子貸付、しゃっし等も行う。

         E. 入札は民間事業のノウハウを採用する。

         F. PFIの円滑な実施が可能になるよう、法的地位を明確化する必要がある。

         G. PHIは国有財産・公有財産を使用することが出来る。

    •  私はこれを読んでいて、かつて私が推進していた、「電力を主体にした多目的ダム」構想を想起した。これは今にして思えばPFIに近い考えではなかったか。水力は電力の需要の形に対応するため、又河水の有効な利用のため大ダムを必要とし、過去多くのハイダムを建設してきた。

       貯水池を設けることは洪水を溜め渇水時に補給する事であるから、水力の効果以外に、結果的に副次的な効果として、洪水のカットにもなるし、下流の灌漑用水補給や下流都市の上・工用水に貢献する事は自明の理である。この事実は物理的に明らかであるが、その効果に対して何の対価を得ることは一度もなかった。

       木曽川最上流の三浦ダム(昭和20年1月完成)を当時の大同電力が建設したが、電力側から「貯水池の水没問題で、えらい補償を要求されているが、貯水池により莫大な利益を受ける下流から何らの受益負担がない」と訴え嘆いたと言う記事があった。当時は殆ど泣き寝入りが当たり前あつた。その理由は、電力の需要に間に合わせるため、また工期延長による工事費の高騰を避けるため工事の完成を急いだこと、電力単独でも採算があった事などによる。

       多目的ダムの費用負担の方法は、昭和27年電源開発促進法第6条で始めて法制化された。これは戦後米国の進駐軍(GHQ)が日本の電力事業を改革させるために官民十数人による米国電気事業視察団を編成し派遣した。その中に商工省(当時)電力局の吉岡技術長が居て、河川総合開発TVAの成功をつぶさに見て痛く感激、資料を収集して法制化に備えていたものであった。

       これによって多目的ダムによる水力発電が多く建設されたが、ダムの建設は殆ど國や地方自治体の建設するダムが主体であった。これは治水(洪水調節)を含む多目的ダムは総て國または地方自治体が建設を行うという暗黙の行政方針が存在していたのである。私は通産省の第4次包蔵水力調査をしていて、電力会社が建設する「電力を主とした多目的ダム」があっても良いのではないか、何故出来ないのか疑問に思っていた。良い計画ではあるが、電力単独では採算がとれなくなるケースが出てきたのである。
       
       丁度そのころ、中部電力の馬瀬川第一発電所に岩屋ダム(昭和51年6月完成)と言う計画があった。これには次のような経緯があった。岩屋ダム上流で昭和28年完成した朝日ダム(中部電力)の建設時、下流の農業用水からダム計画に参加させて欲しいと言う話があった。当時は戦後の混乱時で農業も予算も計画も立たず話が難航したが、将来の計画に岩屋ダムがあるので、そのときに検討しようと言うことで、電力事情が切迫していた事もあって朝日ダムは電力単独で建設した。

       従って後年中部電力が岩屋ダム建設する時には当然農業用水も計画に入れ、費用負担も合意して電源開発調整審議会で決定しようとしたときに、建設省から岩屋ダムに治水(洪水調節)をのせるからダムの建設は建設省で行うと申し入れてきた。当然電源開発調整審議会は猛然と反対し、もし洪水調節をしたいなら必要貯水容量を提示すれば、直ちに検討して技術的に可能であれば、電源開発調整審議会で再審議して中部電力に建設させる事とした。中部電力は有効貯水容量5000万トンを1億トンに設計変更し、完成させた。

       私は具体的に「電力を主体とする多目的ダム」が民間の電力会社によって建設可能であることが実証されたことを踏まえ、直ちに次の地点の策定に取りかかった。それが今問題になっている揖斐川の徳山ダムと石川県手取川の手取川ダムであった。昭和47年頃の話である。矢張り建設省は治水が入るので両ダムとも國でやることを主張して譲らなかった。話し合いは当然難航したが、たまたま木曽三川が水資源開発促進法の水系指定河川になった事もあって、徳山は断念して手取川ダムを「電力を主体とする多目的ダム(発電・洪水調節・上水道・工業用水)」として(株)電源開発にやらせることに落ち着いた。中川石川県知事、原谷北陸電力会長等の全面的協力で昭和52年工期通りに完成することが出来た。

       その後、天竜川最下流の船明ダムが電力主体で農業用水・上水道・工業用水から費用負担を受けて(株)電源開発が昭和52年4月完成した。

        今考えれば、上記のプロジェクトはPFIではなかったかと思う。当時の関係者によると、工事入札時や工事中の管理に國からの介入が不必要に多く難渋したと言う。

       しかしその後この様なプロジェクト計画の動きはないが、PFIをうまく噛み合わせればその趣旨にあった社会的な効果が発揮できるかも知れない。PFI推進研究会では、このような多目的ダムは想定していないようだが、必ずしも限定していないと表明している。当時の経験を参考にPFIの運用や法的整備を進め、国内のみならず海外でも適用し、BOT・BOOやIPP方式と共に、いわゆる水力事業の成功を祈る者である。

       (3).エネルギー輸送インフラストラクチャーの整備

       水力に限らず、いずれの化石燃料も産出地と消費地との間の輸送に問題を抱えている。距離のみならず、経過地のセェキュリティに問題がある。この問題は国際間の複雑な関係が絡むので、一概に言えないが、それなりに戦略なり戦術が必要であろう。日本など大国と言われる国々も英国やカナダを除いてエネルギー輸入国が多い。クローバル化は避けられない。最近3っの論文がある。
      •  @. 元東北大学総長西沢博士は、「交流送電では精々500Km以内だが、直流送電では1万Kmが可能。1万Kmと言うのは地球半分の広さだから、世界の大電力需要地を直流送電のネットで結べば、世界の何処で水力を開発しても世界の隅々まで送電できる」と述べ、水力資源の偏在性を早急に解消すべきとしている。         (その後の情報 D−8 参照)

         A. 東大名誉教授平田博士は、「電力不足と省エネルギーの徹底には、超高温のガス発電によるリパワーリングの技術(在来型火力・原子力の能力を5割以上高めることが出来る)しかない」とし、シベリアの天然ガス導入のためにガスパイプラインの敷設を提唱し、そして将来はシベリアの無尽蔵に近い水力で水を電気分解して水素を生産して、このパイプラインを利用して輸送する考えを述べている。。

         EU経済圏では既に80万Kmのパイプラインが敷設されている。しかも殆どが第一次オイルショック以来の短い期間だと言う。北米のNAFTA経済圏では44万Kmに達している。

         残念ながら、アジア太平洋地域の立ち後れは明らかである。シベリア・サハリン・中央アジア等からのパイプライン構想がある。具体的にシベリアの天然ガスについて中国は既に現実に契約を進めており、日本にも参加を申し入れしているが、日本はセェキュリティなどの点から及び腰である。このパイプラインは3400Km、工事費5000億円、2004年完成予定と言う。(その後の情報 D−4 参照)

         B. 日立の研究員の一針氏か唱えている構想で、「環太平洋を直流送電で結び、電力を貿易財とすることによつて、電力立地選択の自由・効率的な運用等によって投資効率を高め、EU経済圏に見られるようにエネルギー供給を共有することによって国家間の安全保障に役立て、地球温暖化対策も地域グローバルに環境保全と持続可能経済成長を両立させることが出来る」としている。
                        (その後の情報 A−6 参照)

    •  このエネルギー輸送インフラは21世紀に極めて重要であることは、第17回世界エネルギー会議の論文でも唱っている。特にアジア地区のエネルギーの増大は危機的状況になると見通し、その対策の一つとして中央アジア、シベリアからのガスパイプラインの敷設は必要不可欠とし、これによって大気汚染の浄化が期待出来るとしている。

       又これに関連して、石炭集中のシナリオA−2の南・東アジアや東欧は危機的な硫黄酸化物汚染に見舞われるだろう。石炭集中で行く方針を途中で他のエネルギーに転換するには投資の莫大なムダになるので最初から止めた方がよいとしている。これは輸送インフラを意味しているのだろう。石炭は量的には可成りあるが21世紀に入るとエネルギーの様態はクリーンとなり、個体石炭の消費は減少すると言う考えがある。


       (4).世界的な水資源の枯渇


       「ダムの時代は終わった」と言うテーマでよその國にまで来て講演してまわった元米国内務省開拓局長官ビァード氏は、退官して環境関係の組織の責任者となって、1996年9月14日長良川の国際サミツトで再び講演している。彼の説は次の2っに集約される。
      •  @. アメリカはダム建設に代えて、持続可能な水管理の確立に移行する。

         A. 21世紀は人口増加に加えて都市化・工業化が進むので、EUや途上国で急激な水需要が起こる。世銀は次世紀で6〜8000億$が必要とされるとしている。ビァード氏はこの場合でもダム建設による計画は検討しないと言っている。

    •  ビァード氏が何故ここまで拘るのか理解できない。河川水は洪水と渇水があるので、これを年間を通じて安定して使用するにはダムを築造して平滑化するしか方法がない。まして熱帯地方の豊・渇水は著しいのである。

       上記のように、都市用水のみならず食料問題から灌漑用水の需要も増大することは必死である。今後の水力開発はこれらとの多目的施設としてその必要性を訴えて行く必要がある。

  • 【後 記】 

    講演後フリートーキングか行われ次のようなご意見があった。これをベースに今後も研鑽を積んで行きたい。

    @.学会の立場として、縦割りではなく、中立な立場でどのような提言が出来るか考えたい。
    A.海外で水力をバックアップする有力な組織があるのか。
    B.日本国内で、水力をサポートするグループがあるのか。まとまった動きはあるのか。
    C.日本国内の水力に対して、日本政府は今後どう言うポリシーを持っているか。
    D.日本国内の既設ダムを横につないで河水の有効な利用を図ると言う計画の可能性があるか。
    E.海外協力で日本は水力についてどのような政策を持っているか。
    F.海外に有望な水力地点があるか。
    G.将来原子力しか頼るものがないのではないか。
    H.石油資源の開発でMidpointはいつ頃来そうか。

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