5節.修正追加(H.11.1.18)、
文末.補 講(H.13.11.14)【脱化石燃料は可能か】
*** 本項を全面的に更改しました。
題名「世界の2100年一次エネルギー(全面改定08.09.01)」
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- はじめに−何故21世紀後半なのか 。
日本の一次エネルギーの85%が海外依存であり、私どもは世界の一次エネルギーの事情を知っておく必要がある。その世界の一次エネルギーは90%が化石燃料で残り5%ずつを水力と原子力が占めている。さらにその化石燃料の65%を占める石油、天然ガスは50〜60年で供給が怪しくなると言う。
日本でも、国際機関でも2010年を目標にしたエネルギーバランスを議論しており、各国がうまく力を合わせれば何とか乗り切れそうだと安心した意見が見られる。しかし一方では1980年代のローマクラブが警告した「成長の限界」もむなしく、最近は「成長の限界を超えて」と言う論文がでているという。
電力中央研究所は経済成長・エネルギー・環境の3者をトリレンマとして可成り長期の問題点を指摘している。
通産省もようやく2030年を目標にして 作業を開始したという。また2030年頃には化石燃料供給の緊迫感から値上がりの気配が生じ世界的なパニックが起こることがあろうという話がある。最近始まった朝日新聞の堺屋太一の「平成30年」と言う小説には興味が持たれる。
(財)エネルギー総合工学研究所は「2050年への挑戦」を、(財)日本エネルギー経済研究所は「2100年の世界のエネルギー長期需給計画」を作成し世に問うている。
最近原子力はトラブル続きで思わぬ方向に展開し心外であるが、特別に設置された高速増殖炉懇談会でもその必要性を議論するときに、対象時期は21世紀中葉以降にまで及んでいるという。人口問題・食糧問題・エネルギー問題は超長期の問題として捕まえる必要がある。
20世紀初頭イギリスの豪華客船タイタニック号は乗客も船員も絶対沈まないと確信し日夜ダンスやギャンブルに興じていたがある日突然氷河に激突して大西洋に沈没し数千人が溺死すると言う惨事があった。我が地球号も絶対沈まない、何とかなると多寡をくくっているのが現状ではないか。電力中央研究所はこの現象は「技術の過信とデータの不確実性」にありと断言している。
- 水力と原子力の量的比較

前節でも述べたが、世界の一次エネルギーの中でわずか10%が水力と原子力で、しかも表−1に示すとおり半々であると言うことに一驚する。
即ち全発電電力量12兆Kwhの内原子力は2兆Kwhで意外に少なく、しかも水力の量を下回っていることが解る。
設備出力については同じ統計資料(略)によると世界全体で28.5億Kwで、そのうち水力6.5億Kwとなっており原子力3.4億Kwの約2倍を占めている。これにはピークを受け持つ揚水発電を含むからで水力の特性を示している。
( )内に内数として日本の数字を示す。日本の水力はKwhで原子力の半分、Kwでほぼ同じとなっているのはピーク用揚水発電を含むからである。
表−1 世界の電源別年間電力量 10億Kwh ( )日本内数
1991年国連エネルギー統計
|
項 目
|
水力 |
原子力 |
火力 |
地熱他 |
計 |
|
アジア
|
396 |
311 |
1,729 |
7 |
2、443 |
|
オセアニア
|
39 |
0 |
151 |
1 |
191 |
|
中 東
|
36 |
0 |
231 |
1 |
268 |
|
アフリカ
|
53 |
4 |
267 |
1 |
325 |
|
ラテンアメリカ
|
398 |
12 |
239 |
6 |
655 |
|
北 米
|
597 |
697 |
2,274 |
19 |
3,587 |
|
西 欧
|
455 |
790 |
1,259 |
4 |
2,503 |
|
旧ソ連・東欧
|
261 |
263 |
1,536 |
0 |
2,060 |
|
(日本)内数
|
(106) |
(213) |
(567) |
(2) |
(888) |
|
合 計
|
2,236 |
2、078 |
7,681 |
38 |
12,033 |
日本の場合は包蔵水力の約70%を開発し、残り400億Kwhの半分を何とかコスト高を克服してやろうと言う程度だから量的には期待できない。
しかし日本の国土は幅約300q長さ1000qの細長い地形の真ん中に2000〜3000b級の脊梁山脈が走り、年間1500oの降雨は急湛となって海洋に流れ込む。そのため多くの小規模だが良好な発電水力地点に恵まれ古くから民間資本による開発が進められ日本の近代化に大きく貢献した。
即ち日本の近代化が進められた大正3年頃から水・火比率が逆転した昭和37年頃までの推移(図−2)を見ると、70〜80%が水力で占められ火力は水力の渇水期に補給するのが役目であった。しかも戦前はこれで世界を相手に戦争しようとしたのだから恐ろしいことだ。だから戦後水力開発の再開を企画すると、GHQは「また戦争する気か」と認めなかったことがあった。
しかし昭和30年代松永安左右衛門の電力近代化構想により、高温高圧の大容量火力が台頭しアッという間に水・火比率が逆転してしまった。原子力はこの後のことである。
- 何故主として水力なのか
21世紀後半の世界のエネルギーを論ずる際、主として水力について述べたいと言うと、殆どの人は「えっ、まだ水力あるのか」と反論する。
水力は再生可能の循環資源、CO2を排出しないクリーンエネルギー、耐用命数が長い、ピーク電力負荷の対応に優れ、地域開発に貢献、技術は完熟している等数々のメリットがあるが、反面我が国では供給量が少ない、コスト高、自然環境破壊などのデメリットがある。ところが残念なことに電気事業者が最も関心を持つ点は、この「量」と「コスト」なのである。したがつて日本国内では水力は完全に失格であり、当面火力や原子力に力を入れるのは当然の帰結である。
しかし日本の包蔵水力は約70%開発されたが、世界には可成りの包蔵水力がありそうだと言うことが解ってきた。
表−2 世界の包蔵水力 10億Kwh W.E.C1980年
| 項 目 |
理論包蔵水力 a |
包蔵水力 b |
既開発 c |
c/b% |
b/a% |
| アジア |
16,486 |
5,340 |
396 |
7 |
32 |
| オセアニア |
1,500 |
390 |
39 |
10 |
26 |
| アフリカ |
10,118 |
3,140 |
53 |
2 |
31 |
| 中南米 |
5,670 |
3,780 |
398 |
11 |
67 |
| 北 米 |
6,150 |
3,120 |
597 |
19 |
51 |
| 西 欧 |
4,360 |
1,430 |
455 |
32 |
33 |
| 旧ソ連 |
3,940 |
2,190 |
297 |
14 |
56 |
| (日本) |
(718) |
(134) |
(92) |
(69) |
(19) |
| 合 計 |
48,224 |
19,390 |
2,236 |
12 |
40 |
注 中東は旧ソ連に含めた、また既開発は表−1を使用した(筆者)
この資料によると、世界の包蔵水力が19.4兆Kwhあることが解る。表−1では世界の総発電量は12兆Kwhだから、数字的には世界の包蔵水力の6割で全世界の電力を供給出来ることになる。勿論問題はある。資源の偏在による電力輸送手段、コスト、環境問題、資金調達、国際河川の開発問題など一筋縄ではいかないものがある。
最近識者の間でも水力の量に関して興味が持たれている。例えば内閣官房長官梶山静六氏は、文芸春秋(1995.7月号)の我が決起宣言で「−−−−また、世界の未開発の水力エネルギーは、現在の世界の電力消費量(約12兆Kwh)に匹敵されるが−−−−」と述べている。
(財)エネルギー総合工学研究所は水素エネルギーで、「WE NET計画で再生可能エネルギーの第一候補は水力発電が想定される。その理由は(中略)既開発はわずか18%に過ぎず世界的に見た場合にはまだ可成りの量が期待されること−−−」とし、水力発電から電気分解により水素を固定して利用しようと計画している。
IEA(国際エネルギー機構)は1993年3月OECDなどと共催で「水力・エネルギーと環境」と言うテーマで国際会議を開いた。CO2を排出しない再生可能なクリーンエネルギーである水力の行き詰まりを打破するために新たな試みを求めたものである。この会議で「−−−全世界の包蔵水力が未開発のまま可成り残されていることが認識され、包蔵水力が全て開発されれば、一次エネルギーに占める比率は43%にもなり、これは何とSpectaculerな数字だ−−−」と強くアッピールされ、各国委員によるアクションプログラムが進められている。
また少し観点が異なるが、我が国の総合エネルギー調査会国際エネルギー部会では、アジア諸国の新エネルギー導入の可能性として「−−今後は豊富な包蔵水力を有し、かつ無電化地域の多いマレーシァ・インド・インドネシア・タイ・ベトナムなとでの導入の潜在性が高いものと思われる−−」、これは日本の初期近代化の時期が参考になる。
一方、水力の潜在的な可能性を評価しながらも環境上で問題ありとする意見も多い。例えばフレイビンはエネルギーの大潮流(1995.10)で「−−−潜在的な持続可能エネルギーとして水力を無視する訳にいかない。水力発電は重要な資源であるが、環境制約のために今後急成長するとはおもえない−−−」と述べている。
北川浩一郎教授は、「地球を守るために」(丸善ライブラリー1995.8)で「−−全世界で現在使用している電力消費量は12兆Kwh/年ですが、包蔵水力は14兆Kwhです。計算上では水力発電だけで世界の電力需要を賄えます。問題は水力発電を行うためにはダムの建設が必要で、これが新しい環境破壊となる可能性があるという事です。(中略)将来は炭酸ガス増大とダム建設による環境破壊のどちらを選ぶかの選択をする時期が来る可能性がある」と述べている。
このように、世界の残存包蔵水力が可成りあることが種々の論文に掲載され一般認識も高まってきているが、環境上の問題で危惧されている面がある。後で述べるが石油・天然ガスの供給が限界に近づく21世紀後半の世界のエネルギー問題を論ずる際、この忘れられた水力を原子力と共に量から見た大きな潜在力を是非再考して欲しいと言う意味で「主として水力」と強調した 。
- 化石燃料の寿命
いずれ日本の石油の90%が中東依存となり、埋蔵量も中東は世界の66%を占めるという。しかもそれらは半世紀後には枯渇するという。天然ガスも同じ傾向であるが、石炭はまだ相当残っている。世界の化石燃料の残存可採埋蔵量と可採年数との関係は異説もあるが、今日定説となっている数字を表−3に示す。
表−3 世界のエネルギー資源埋蔵量 (世界エネルギー会議・OECD他)
| 項 目 |
石油 |
天然ガス |
石炭 |
オイルサンド・オイルシェール |
ウラン |
| 究極埋蔵量 |
2兆b |
204兆立方m |
9.9兆t |
不詳 |
不詳 |
| 確認可採埋蔵量 |
9970億b |
139兆立方m |
10.392億t |
不詳 |
200万t |
| 年生産量 |
5996万b/日 |
2.16兆立方m |
47.5億t |
(少量) |
2.7万t |
| 可採年数 |
45.5年 |
64年 |
219年 |
(大) |
74年 |
原子力はトラブル続きで私共の予想するところと全く違う方向に展開してしまい、当事者の心痛は想像を超えるものがある。高速増殖炉を進めるかどうかと言う政策検討会で、当然将来のエネルギー需給が問題になるが、委員会の学者先生が化石燃料の賦存量について厳密解を求めるのに対し、この問題は不確定要素が多くエラーの多い推定値であることを理解して、必要性が出たときに議論しようと言う意見があったそうである。
確かにエネルギー資源の埋蔵量には分からない面が多い。だからと言ってこのことばかりに議論が膠着してしまうことは本質を見失う事になる。資源が有限であることに着目すれば、化石燃料の寿命が少し長いか短いだけの話である。
原子力と言う非常にわかりやすい素材で、偉い一流の先生方が将来の化石燃料の寿命や代替エネルギーの必要性を根本的に議論してもらうことは大変有意義な事である。
- 21世紀後半の世界の一次エネルギー供給計画

上記に述べたとおり、2010年、2030年のエネルギーバランスが検討されても、まだそのころは石油が存在しており、CO2等の問題から如何にして石油依存を減らそうかと言うことに落ち着いてしまう。従って化石燃料がなくなると言われる21世紀中葉以降のエネルギー供給がどうなるか、是非解明して欲しいのである。
(財)日本エネルギー経済研究所がNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託を受けて「石油代替エネルギー計量分析」を行い、平成7年9月公表した。これは2100年の世界のエネルギー供給計画をいろいろな角度から検討した労作で、平成7年1月8日の日本経済新聞に一部が紹介されている。
非常に精密な分析で簡単に紹介できないが、世界を地区別に分けて分析する、人口や経済など相互関連する「弾力性の可変性」を内生化する、再生可能エネルギーにコストや潜在的利用可能上限などの条件、食糧・鉄鋼・自動車をシナリオの重要なフアクターとした、土地利用特にバイオマスエネルギーとトレードオフの関係を持つ耕地面積、環境税(炭素税)導入、地球温暖化効果の算定などが考慮されている。
幾つかのシュミレーションを行っているが、トレンドを延長した図3−1の基準ケース(BAU)、様々な想定を変えて試算した図3−2の持続可能ケース(SUST)、人口爆発ケースの図3−3の3ケースをグラフ化してみよう。

図3−1によると
1.水力・原子力は殆ど期待されていない
2.石油は2050年、天然ガスは2070年に供給ストップ
3.その結果、2100年では新エネルギーは現在世界で消費している石油・天然ガスを上回る57億dを期待し、石炭は現在消費の8倍の190億dとなり、その時点での石炭の寿命は17.5年だと言う。(以下いずれも石油換算)
図3−2は上記基準ベースの諸条件を見直し、省エネ・再生可能エネルギーの促進、人口抑制、炭素税の導入などを考慮に入れたもので

1.水力・原子力は殆ど期待せず
2.化石燃料の寿命がのび、石油は2070年、天然ガスは2100年に供給ストップ
3.新エネルギーは現在の総一次エネルギーにほぼ等しい86億d、石炭は99億dでその時点での残存年数は88.7年である。
図3−3は人口政策に失敗したケースである。
1.2100年の石炭の消費を238億dで帳尻を合わせている。
2.この時の石炭の残存年数は12年と言う。

- ここで3ケースについて計算の前提とその結果の比較表を示す
表−4 3案比較表(2100年、倍率は対1990年)
| 項 目 |
図3−1 |
図3−2 |
図3−3 |
| 人口 |
117億人 |
99億人 |
159億人 |
| GDP |
13倍 |
10.8倍 |
大差なし |
| 一次エネルギー |
3.3倍 |
2.4倍 |
4倍 |
| 石油 |
2050年枯渇 |
2070年枯渇 |
2050年枯渇 |
| 天然ガス |
2070年枯渇 |
2100年枯渇 |
2070年枯渇 |
| 石炭の寿命 |
17.3年 |
88.7年 |
12年 |
| 水力 |
1.1倍 |
1.76倍 |
1.1倍 |
| 原子力 |
1.44倍 |
1.32倍 |
1.44倍 |
| CO2排出 |
189億d |
99億d |
238億d |
| 温度上昇 |
1.8度 |
1.1度 |
1.9度 |
| 省エネ・炭素税 |
なし |
あり |
なし |
(H.11.1.18 追加修正その1)

勿論水力原子力拡大ケースもシュミレート(図3−4、1990年に対し水力2.3倍、原子力5.2倍)しているが、電気エネルギーには効果はあるが個体、液体、気体のエネルギーの効果に限界ありとして、石炭を173億dとしその寿命は22.3年となっている。しかし一次エネルギーの内電力にまわる比率を電力化率と呼ぶが、電気利用の便利さ、清潔さなどから電力化率は年々上昇する傾向にあるので、この辺はもう少し勉強させて貰いたいと思う。
日本エネルギー経済研究所は図3−2の持続可能ケースを結論としているが、いずれの案も驚きを隠すことが出来ない。水力と原子力は安全性と環境問題で期待出来ないとし、石炭への異常な期待は枯渇する石油・天然ガスの代替として液化・ガス化の必要性によると言う。またいずれのケースでも新エネルギーの期待は大きいが特にバイオマスエネルギーに強い関心を訴えている。前出のフレイビンは「エネルギーの大潮流」でバイオマスが2050年までに世界の液体及び気体燃料の38%、電力の18%を供給するだろうと試算し、これは現在世界の一次エネルギー使用量の約半分以上に相当する」と述べている。目から鱗が落ちる思いがする。
(H.11.1.18 追加修正その2)

此処で仮に水力と原子力をそれぞれ1990年の5倍にした場合を試算してグラフ化してみると、図−3−2’となる。ただし此の図は図−3−2の総需要、石油、天然ガス、新エネルギー供給をそのままとして、水力と原子力を直線的に5倍増とし、その差額を単純に石炭としたため少し不自然な所もあるが、単なる概念図として理解して欲しい。
此の図から、2100年の一次エネルギー全体(1990年の2.43倍)から見るとたとえ水力・原子力を5倍にしても合わせても24%位しかならない。ただし電力(1990年の3.29倍)の構成比率として見ると52.8%にもなるので、高く評価しても良いのではないかと思う。此の関係は「D-5.の筆者所見(H.10.1.20)」に詳述してあるので参考されたい。
しかしいずれにしても、わずか100年後ですら世界のエネルギーはどうなるのかという不安は拭いきれない。ごく最近「石油はいつなくなるか」小山茂樹著(H.10.12.15時事通信社)と言う最も権威ある書籍が出版された。これによると
【1】.石油;この著書で新しく得た知見は3っあった。即ち第一は地質学的研究から見て石油の埋蔵が考えられる堆積盆地は世界に少なくとも400はあり、うち275は相当探査されたが残り125は僅かばかりの探査で又このうち70は南北極地や深海だという。第二は石油採集方法で一次回収(自然状態で)、二次回収(地下に圧力注入により)、三次回収(蒸気・薬品注入により)までやって漸く約34%しか回収出来ないと言う。第三は原油生産は左右対称のベル型の双曲線を描いて増減する、即ち既生産量が究極可採埋蔵量の1/2(いわゆるMidpoint)に達すると生産が減退すると言う理論がある。そして石油のMidpointが2010年前後であると言う。
各種推計資料を検討すると、複雑な石油価格、資源ナショナリズムの絡み合いなどを考慮しても、いずれにせよ遠からず原油資源は枯渇に向かうとされる。
【2】.天然ガス;クリーンで熱効率の高い性質を持ち、各種の推計、確率計算してもその埋蔵量はかなり多く、従来の究極可採埋蔵量204兆立方mが300兆立方mに達すると言う見解は相当程度受け入れられつつあり、資源的に見る限り、天然ガスの将来展望はかなり明るいものがあるとされる。
【3】.石炭;世界に広く分布しており、埋蔵量も大きく今後急速に減少していく可能性は殆ど存在せず、価格の変動も少ないとされるが、CO2の排出にとどまらず、硫黄酸化物、窒素酸化物、粉塵などの不純物を大量に大気中に放出する。これらは酸性雨等周辺国にも重大な環境汚染をもたらす。このためクリーン・コール・テクノロジーなどの問題解決に対して 、その答えを我々はまだ手中にしていないとされる。
【4】.原子力;世界の主要国は国内総発電力量の3〜4割以上を原子力に依存しており、フランスの如きは8割に達している。此の動きは発展途上国に広がることは確実としながらも、最近の安全性、廃棄物処理に対する不信、建設のリードタイム、経済性等から世界的に原発建設計画の縮小、更には頼みの高速増殖炉も暗唱に乗り上げ事実上の凍結するなど原子力の将来に懸念を示している。
小山氏はこの様に分析した上で、生産コスト20ドル以上の原油開発を含めれば 、資源枯渇の時期は15年近く延びる可能性があると言う論議に対して、そのようにズルズル行けば現在開発されていない重質油、タールサンド、オイルシェール、極地の石油或いはメタンハイドレード等の非在来型石油までを考慮にいれることになり、それ以前の問題として人類がそこまでエネルギーを炭化水素源に依存し続けるのかと言う基本な問題がある。
更に石油や天然ガス等の在来型の炭化水素資源が枯渇したからと言って、すぐ上記のような環境破壊型の非在来型の炭化水素資源に依存して行くのでは、あまりにも知恵に欠けていると言うものだ。寧ろ需要と供給に基づくマーケツトメカニズムによって資源配分を行わしめるという点からすれば、コストの高い環境保全型エネルギーである太陽光・太陽熱・風力・バイオマスなどの再生可能エネルギーの本格的開発促進に目を注ぐべきだろうと述べている。
しかし資本は資本の論理に従って地球上を勝手に暴れ回るかもしれない。
惑星物理学者松井孝典さんは「レンタル思想」を唱えております。即ち、人類は農耕を知り、大地を「所有した」と錯覚してしまった。太陽や雨の恵みの範囲内で自足したフロー依存型文明の時代はそれで良かった。工業文明は鉄や石油と言った地球のストツクを野放図に食いつぶす。このままでは資源も食料も確実に枯渇すると言う所まで来た。人間と地球の関係を、本来の姿に戻さねばならない。それが地球と人間の「貸し借り」の関係だ。人体は地球の借り物だ、借り手が貸し元より大きくなる道理はないと言う訳である。
地球にも先進国と中進国、発展途上国更には最極貧国がある。相互依存、相互協力、文明の衝突・融和、人種差別の撤廃、経済格差の縮小等これからの100年はエネルギー問題と共に解決して行かねばならない課題が多すぎる。
以上で21世紀後半のエネルギーの問題の深さがわかるが、最近刊行された古田隆彦氏の人口問題に関する「人口波動で未来を読む」によると、地球には「人口容量」と言うものがあって「自然環境」に様々な手を加えることによって人口を増減出来るとしている。
即ち 人口容量=自然環境*文明
となる。古田氏は日本の人口は2100年で6000万人と予想されているが8000万から1億人位が良いのではないか、また世界全体は増えるが80億人位が限度ではないかと述べている。
過日外務省・JICA共催のシンポジウム「大メコン圏の環境と開発を考える」が開催された。ある講師から「ガンジス河のように開発を行わなくても環境が破壊されて行くのをどう考えるか」という提言があり、盛んな討論がなされた。即ち環境と開発は対立するものではなく「環境を維持するために開発を行う」と言うことになり、人口容量を確保する意味にも通ずると思う。
中国三峡ダムは高さ180b、貯水量400億d、100万人を越す水没、洪水調節に灌漑・舟運の他世界最大の水力発電所1800万Kw・850億Kwh(一ヶ所で日本の既設水力の合計に等しい)の能力を持ち、70年の懐妊期間を経て着工した。
李鵬首相は電力出身だが何が彼をして決心させたのだろうか。総工事費約3兆円と言うから全てを電力が負担しても発電原価は4円/kwh位しかならない。資金の償還を考えると国力から見てこの辺が決心した原因かもしれない。
160bが最適計画と言われたが、上流の武漢市から舟運のため是非水位をあげて欲しい要望があり、180bに決定した経緯があった。中国内陸部に瀬戸内海を1っ半位造成したようなものだから、その経済効果は計り知れないものがあろう。メコン河をはじめ大陸河川の本流部は殆ど手つかずの状態にある。
平成9年8月5日の朝日新聞によると、中国は将来の経済発展を見越して60基の原子力を考えているという。現在稼働中が3基だから約20倍の勢いである。仮に世界の水力と原子力を共に現在の5倍程度開発すると、約45億d(石油換算)となり、図3−2の持続可能ケースで石炭の約半分を代替出来る。水力の5倍というのは約10兆Kwhだから世界の包蔵水力を14兆Kwhとすれば約70%の開発率であり、可能と言える数字と言えよう。。
日本の場合はどうなるかと言う問題は必ず起こる。資源も土地もない日本は貿易と言う手段で人口容量を確保してきたが、これからどうなるかは恐ろしくて予想がたてられない。その上人口が半分になるのでは破局を迎える事になろうと言う人もいる。
- 問題提起
a.世界の包蔵水力調査の早期実施
第3節で述べた表−3は1980年のW.E.Cの数字で、それ以外にもWater Power誌がまとめた資料がある。 大変数字がまちまちで信憑性が薄い。総計だけについて表−4にまとめた。
表−4 世界の包蔵水力に関する各種資料 10億Kwh
| 項 目 |
WEC1980 |
WEC1995 |
WP1989 |
WP1994 |
| アジア |
5,340 |
4,142 |
4,335 |
4,226 |
| オセアニア |
390 |
206 |
202 |
78 |
| アフリカ |
3,140 |
1,590 |
1,154 |
1,525 |
| 中南米 |
3,780 |
3,887 |
3,536 |
4,021 |
| 北米 |
3,120 |
1,008 |
969 |
1,007 |
| 西欧 |
1,430 |
771 |
1,073 |
769 |
| 旧ソ連・東欧 |
2,190 |
1,899 |
3,831 |
603 |
| 合 計 |
19,390 |
13,503 |
15,099 |
11,856 |
注 WEC:World Energy Con. WP:Water Power誌
ここでは表にしなかったが、これ以外の理論包蔵水力、既開発量についても信憑性が極めて薄い。さらに理論包蔵水力と包蔵水力と既発量との相関関係も我が国の例から見てかけ離れた数値を示している。これは調査基準に統一性がなく、各国独自で行ったものの単なる集計にすぎないからだと思う。
さらに問題なのは、調査資料の発表が新しいほど包蔵水力の数字が減っていることである。はじめ約20兆Kwhであったものが時を経るに従い14兆になり最近のWP誌は余り根拠もなく約12兆としている。これは最近環境問題に迎合して、さしたる統一基準もなく、それぞれの数字は各国の恣意に任せられているのではないかと思う。
そこで国際機関を通じて各国が調査資金を拠出して、10年位の期間で統一基準による世界の包蔵水力を調査し、21世紀後半に備える必要があると思う。
その調査実施の国際世論を喚起するため、日本としては取り合えず「世界の地形図と降雨資料により図上で理論包蔵水力を積算し、日本の経験から約20%を乗じて包蔵水力を推定し、これを各国にブレークダウンしたものに表−4の内容を比較したものを作成し」これを国際会議で発表し、より精度の高い世界の包蔵水力調査を早期に実施するよう提案する。
b.新エネルギー(特にバイオマス)の研究促進−−略 (参照 その後の情報 D-15)
- 補 講 A−31.(H.13.11.14) 筆者所見(脱化石燃料は可能か)
このホームページを立ち上げを企画したのは平成9年の始め頃で、「21世紀後半の世界の一次エネルギー(主として水力)」は確か8月頃で、「性弱説」が平成9年9月28日、「超長期的に見た水力の経済特性」は平成9年12月5日で3部作が完成し、アクセスカウンターは平成10年の半ば頃から設置した。
約3年でアクセスは4.3万を越えることとなり、晴耕雨パソがいつの間にか晴パソ雨パソになり年金生活を忙しく過ごす事となった。そしてその後の質疑(その後の情報)は144件に達した。
個人のホームページながら、公的な外部との接触には幾つかの緊張を覚えた。例えば、主なものとして
1.ある学会から貴殿のHPから将来の土木事業の展望を探りたいのでと、レクチュアーを依頼されたことがあった(G−7.G−8.G−9.G−10)
2.NHKから、NHKが企画している環境問題に関する「地球法廷」に投稿しないかと言う誘いがあり、6回に渡り、地球温暖化の空洞を埋めると題して投稿したところ、厳しい反論があり、勿論持論を展開して討論したが、これは大変勉強になった。(G−14.G−15.G−16.G−17.G−18.G−19.G−20、G−21、G−22)
3−1.IEA(国際エネルギー機構)の水力部会がスペインのヴァレンシァで開催されたとき、出席予定の日本代表が心臓手術で出られなくなり、私のHPの縁で代理を依頼され一週間会議に出席した。この会議の数ある意義の深いテーマの中の一つに「各國の将来のエネルギー展望」を述べる議題があつた。
3−2.日本ではせいぜい2010年、長くても2020年くらいしか議論していない。そこで私は2100年をターゲツトにした「21世紀末に脱化石燃料は可能か」と言う論文を書いて、出発前に団員間で意見を交換したが、まだ国内で未発表であること、、その内容も誰にも認知されていない事が問題になったが、この会議は割とフリーな意見の交換する場であり、「私的見解」と前提を置けば良いではないかと言う経緯があつて、当日OHPで説明した。(A−22)
等か特記される。
【説 明】
実はこのA−22に解説した「21世紀末に脱化石燃料は可能か」と言うテーマは私の当初のHPで満たされなかった疑問を、そして3年間思い続けてきた課題を、曲がりにも大胆に解決して世に問うものであった。
私のHPでは、水力や原子力を一生懸命やっていても、化石燃料が無くなれば、人口は増えて、エネルギー需要は2倍半にもなるし、後は石炭でと言う事なら地球は「マックロケ」になるではないかと言う嘆きである。そこで小さい声で「バイオマス!」と叫んでいたのである。
3っのキーワードがある。
1.エネルギー需要を半分にして、豊かさを2倍にする。
2.水力と原子力は現在ほぼ同じ量だが、これをそれぞれ5倍にする。石油・石炭・天然ガスは零。
3.残りはバイオマスメタノールで賄う。
これで、水力・原子力がそれぞれ20%でバイオマスメタノールが60%と言うことになり、「21世紀末に脱化石燃料は可能になる」と言う筋書きである。結論の図(A−22)は次のとおりである。しかしこれからの道のりは遠い。
さらにこの日本版も作成してみた。(A−27)
道が遠いとつくづく思う。
1.エネルギー効率を改善し、省エネを徹底するとは、「言うは易く行うは難し」である。毎年、現実に前年対比でエネルギーは少しも減っていない!
2.世界の包蔵水力の見直しをすべしと訴えているが少しも動かない。「水力産業」と言うジャンルが無ければ公的支援が無ければ出来ない。千三つと言われる石油探査には莫大な調査投資が為されているではないか。
3.原子力は期待していたが、最近の中部電力・浜岡原子力の事故を見ると考えさせられる。稼働率はアメリカの実績より高めたい、耐用命数を20年から40年に延ばしたい。そうすれば経済産業省の試算によると原価は半分の5.6円/KWH位になるという。.高温高圧の施設は水力と異なり、維持管理は大変だ。しっかりガンバつて欲しい。
4.水力だって手を抜けば傷みは激しく進む。特に土砂の流入というアキレス腱がある。貯水池の土砂満杯について調べたことがあるが、幸い発電用の大貯水池は2,3の例外を除いて5百年以上の寿命がある。この期間に何とか研究して手を打つ時間がある。例えば流域管理や物理的な土砂の排除に意を尽くす必要がある。
5.最近、洪水調節や都市用水の為に大ダムが築造出来なくなったから、既設の水力専用の大ダムを国土交通省が買収すると言う話が聞こえてくる。とんでもない話だ。そんなことをすれば水力の価値は半減する。ダムは大水を貯めて渇水を補給する役目を持つから水力と都市用水は共通の目的がある。ところが洪水調節は洪水に備えて常に水位を低下して、貯水池を空にしておくので、渇水期に備えて満水にして置くことが出来ない。
大陸とは異なり、日本は河川が急流でしかも河状係数が悪く大貯水池の建設が困難な情況では、特に洪水が二山続けて来た時などを想定すると、多目的ダムの合理的な運用は難しいと言うことは、河水統制思想が日本で議論されて来た時以来ズット問題にされて来たところである。
6.勿論、水力のダムは下流の用水の渇水補給になるから費用負担して欲しい、貯水池の水没補償に苦労している事や電気料金の低減にもなる事を理解して欲しいと、関係方面に懇請してきたが、勝手に開発しているのだからと言って全く相手にされて来なかった。
水力用の貯水池の有効容量は79億トンあり、これを4ケ月の渇水補給するとして計算すると年間237億トンが常時年間を通じ利用出来る水利権がうまれる。水資源白書によると平成11年の國や地方自治体のダムによる都市用水は154億トンと言うからか莫大な量であることがわかる。これらの水力ダムが補給する水はたぶん自然水であるかのように利用されていると思う。
また、勿論発電用大ダムも中小の洪水はため込むから下流の災害を減らしている効果はあるが、計画洪水を調節することは発電を犠牲にしない限り出来ない。流石洪水調節を國から求められた時は、必要な貯水容量分だけダムを嵩上げし、その嵩上げ分の費用を負担して貰って、協力しているケースかある。この場合電力にとってはプラスもマイナスも無い。
7. バイオマスについても行く先不明なところがある。これからの世紀のテーマはバイオマスだと言われるが、その定義は大変幅が広い。私の言うのは木質バイオマスであって液体燃料の代替えとなるものである。
食料耕地と競合するので全く不可能・非現実的と真っ向からの反対、技術的に無関心、将来のエネルギーとして強い関心を持つと言う3通りの意見がある。茅陽一氏は結論を急ぐ必要はない、研究すべきと提案している。地道な研究を続けている学者もあると元気付ける大学の先生もある。今後の動きに関心がある。
8.将来のエネルギーとして、水力・原子力をそれぞれ20%、バイオマスを60%と提案しているのだが、このように、まだまだ問題が山積していて、簡単にエネルギー問題の解決の道は見えてこない。 しかし目標や政策を立て、一つずつ詰めて行くしか方法がない。エネルギーについてアメリカのような一人勝主義、産油国の思惑、消費國の悲哀、悲惨な途上国は時代の移りに従って変わる。しかし「資源は有限」と言うローマクラブの主張は共有の課題である。
【結 語】
私は、日本に残存包蔵水力か400億KWHあり、殆ど中小水で、中小水力は環境負荷が小さいからドシドシやるべしと言う世論があるのに、風力や太陽熱に押されて、少しも開発が進まないのはどういう訳かと言う疑問を抱き、一つの仮説を立て自分自身に戦いを挑んでいる。
即ち「補助金無し」「談合無し」「民間ベース」でこの400億KWHを開発する新しい方法を提案する。その助走期間として
私のHP(A−29)及び(A−30)を参照されたい。目下その具体的経営指標作成に呻吟している。
これは又、現在の途上国では三峡水力などスケールメリットのある安い地点がまだまだかなりあるが、これらの開発が進むと、日本と同じように奥地に取り残されたコストの高い中小水力が残るであろう。その時の参考になるであろう。
以上 H.13.11.14
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