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| 1980年8月の夜更けて、信州八ヶ岳の麓、土取利行は縄文時代の与助尾根遺跡に膝つき、闇に目をつぶる。そこの窪みは縄文人の悲喜こもごもが眠る竪穴住居の跡である。縄文土器に唇を当てて息を吹き込む。石笛の音を響かす。そして縄文鼓を指でうつ。掌でうつ。身体一杯をバネにして激しく、縄文のリズムを打ち出す。縄文鼓の円陣を、逆時計回りに移動しながら、右から左へと一つ一つの縄文鼓に語りかけるシルエットは、時間に抗がい遡りながら縄文の音を手掴かみしようとする懸命な祈りに似た気持ちに重なって象徴的だ。 東雲に光がさしはじめると、縄文の音の世界に小鳥たちが待ちかねたかのように あつまってきた。土取利行は静かに自らの挑戦に幕を引いた。麻衣を纏い、朝霧の中を裸足でその場を去ろうとする後姿が美しかった。 小林達雄( 国学院大学教授・考古学) |
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有孔鍔付土器 |
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