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■□水処理倶楽部通信■□第209号 2005/09/26(月)■□
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△△水処理の情報交換と交流誌△△編集発行:通信編集委員会
【発行ページ】http://homepage2.nifty.com/watertreatment-club/
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目 次
★ お知らせ
★ 本の紹介
★ 短信
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■■ お知らせ ■■
●本の紹介は、今話題の『おいしい水のつくり方』です。本誌初登場のひろきち
さんからの投稿です。生物浄化法に対しては、水処理の観点、利用者の観点、研
究者の観点と様々な見方ができます。皆様からのご意見をお寄せください。
●短信は、超電導磁石を使った汚水浄化システムの紹介です。
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■■ 本の紹介 ■■
『おいしい水のつくり方』
副 題−生物浄化法-飲んでおいしい水道水復活のキリフダ技術−
中本信忠著、築地書館 2005年8月18日初版 2,000円+税
by ひろきち
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《本を読んでの感想》
数年前まで私は仕事で簡易水道の浄水場や配水池を廻っていました。
今はどうか判りませんが、その当時多くの簡易水道施設で緩速ろ過池に
塩素の注入ができるようになっていました。
塩素の注入は、通常は止めているけれども、藻が発生してどうにもなら
なくると入れるのだと、施設管理の方から説明を聞いていました。
藻が枯れて綺麗になるとのことでした。
「緩速ろ過って、微生物で水を綺麗にするはずなのになんか変だな??」
そう思いながら、具体的な答えを持てないまま数年が過ぎてしまいました。
その私の前に現れたのが、この中本教授著『おいし水のつくり方』です。
答えは全てこの本の中に書いてありました。
この本で中本教授は、『緩速ろ過法』を『生物浄化法』と呼んでいます。
『生物浄化法』ですから、先に書いた緩速ろ過池での塩素注入が不適切
だということが判ります。
この本の内容は本当に平易です。しかしそれでいいのだと思います。
主役はろ過池内の微生物であり、要はいかに上手にろ過池内で藻を育てるか
ということのようです。なんだか野菜づくりと共通しているところがあると
思いました。この本を読んで、自分も緩速ろ過施設を作ってみたくなりまし
た。ところで、この『生物浄化法』という言葉の響きはとても良いと思いま
せんか?
どこで読み聞きしたのか覚えていませんが、私の中では次のような認識が
ありました。
「日本では戦前は緩速ろ過が主流であった。この方法は、
水の味は良いが原水が汚いと目詰まりなどで処理がで
きなくなる。また、処理するスピードが遅いので浄水
場の面積が途方もなく大きくなる欠点がある。
戦後日本は経済成長で水道水の使用量が増加したこ
とに加え、原水の水質が悪化したためにろ過能力の低
い緩速ろ過では処理ができなくなった。
そのため処理スピードが速く、原水が汚れていても
大丈夫な高度処理法である『急速ろ過法』が主流とな
った。この方法は、処理水は不味いが緩速ろ過法より
もより高度な処理方法であり、汚染を確実に除去でき
る。
すなわち、緩速ろ過法のようなローテクの、のんび
りした処理方法は現在の日本にはそぐわない。」
だいたこんなところです。私以外の多くの人も似たり寄ったりではないで
しょうか?
しかし、この本で書かれていることは、まさにこのような認識に一石を
投じるものです。
この本では『緩速ろ過法(生物浄化法)』についてその歴史に始まり、
その仕組みや微生物の適正な管理方法、さらには緩速ろ過処理施設の作り方
まで平易に書いています。加えて塩素消毒も含めた日本の浄水技術の問題点
についても言及しています。
この本は、私のこれまでの疑問に多々答えを与えてくれるものでしたが、
「へぇー」と、認識を新たにする点も多々ありました。
少しだけ紹介します。
1.「『生物浄化法』の面積能率は良い」
『急速ろ過法』は沈殿池や汚泥の天日乾燥床といった付帯施設の
処理面積を大きく取る必要があり、結局緩速ろ過池で完結する『生
物浄化法』の面積あたりの処理能力は良い。
2.ろ過速度は遅すぎてはいけない
『緩速ろ過』というだけに、ろ過速度を落としたほうがより綺麗
にできると思っていました。しかし、ろ過速度が極端に遅い(2m
以下くらい)と、ろ過池内が湖沼的環境になり結果ろ過能力が落ち
るのだそうです。
3.藻が繁殖するとろ過能力が上がり、ろ過池が閉塞しない
私の認識は、この事実とまったく反対でした。
私の行っていた緩速ろ過施設の管理者は皆この「藻」を悪者扱い
しており、いかに藻を発生させないようにするか、取り除くかに腐心
されていました。
この本のテーマである、この事実は、まさに目からウロコでした。
4.ロンドンの水道は『緩速ろ過』であり塩素滅菌をしていない
『緩速ろ過』とは小規模な水道向けの施設だと誤認していました。
その方法が大都市ロンドンで採用されそして、滅菌無し!である。
5.カシンベック病
1960年代の東京都の玉川浄水場給水域で発生した。
この話は知りませんでした。本では前塩素による副生成物が原因
と記載されていますが、ネットで調べたところ、当時詳しい原因究明
はなされず、闇に葬られたような感じを受けました。
この本で中本教授が主張されている内容は、現在そして戦後の水道行政の
歴史を否定するものです。そのため、日本の水道行政の中心(日本水道協会
や厚生労働省などでしょうか?)が、すぐにこの内容を全面的に認める事は
ないでしょう。
しかし日本の水道は水質に対する信用の失墜と赤字の増大といった大問題
を抱え、今ちょうど転換期にあります。トリハロメタンやクリプト対策の
こともありますし、主流ではなくとも、より安全でおいしく、なおかつ
低コストであるこの『緩速ろ過法=生物浄化法』を各自治体の担当者レベル
で再考し、採用されるところが、今後少しずつ増えてくると思います。
(最近では広島県三原市水道局など)
その時、きっとこの『おいしい水のつくり方』は設計担当者や現場担当者
のバイブルになることでしょう。
皆、基準値内とはいえ後塩だけよりも何十倍も高い濃度でトリハロメタン
が存在し、ひょっとして凝集剤(PACを使うことが多い)が残留しているよう
な急速ろ過の水よりも、薬品を使わない緩速ろ過の水を飲みたい(子供に
飲ませたい)ですよね。心有る多くの水道技術者も、できればそうしたいと
思っているはずです。しかも『緩速ろ過』は、低コスト・低エネルギー消費
(水を低いところから高いところへ持ち上げるだけ)ですからなおのこと
です。あとは、『緩速ろ過=生物ろ過』が優れているという認識の確立だけ
であると思います。
最後になりますが、中本教授の『藻の繁殖に注目した緩速ろ過技術』が、
愛知万博に関連した「愛・地球賞(地球環境問題の解決と人類・地球の持続
可能性に貢献する100の地球環境技術を選定)」で受賞されました。
受賞されたことで『緩速ろ過法=生物浄化法』の復権に対しての強い追い風
が吹いているなと実感できました。一人でも多くの水道関係者や市民(技術者
でなくても十分読めます)が、この本を読むことで、『緩速ろ過法=生物浄化
法』復権の大きな流れができることを願います。
この本に関連するHPを記載しますので、参考にしてください。
著者HP
http://water.shinshu-u.ac.jp/j_ssf/j_ssftop.htm
三原市水道局HP
http://www.mihara-waterworks.jp/sensei/index.htm
⇒水道局HP内に中本教授のコラムを記載
日本水道協会⇒これからの水道
http://www.jwwa.or.jp/water09.html
*これからの水道は量より質だと言っています。
日本水道協会⇒浄水方法別の浄水量
http://www.jwwa.or.jp/frame02.html
*これを見ると、『緩速ろ過』は全体の5%程度でしょうか?
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■■ 短信 ■■
下記のニュースが流れていました。東京理科大かどこかが試験研究の報告をし
ていたような気がします。(長)
●工場廃水を超電導磁石できれいに、低コスト装置を開発
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20050914i306.htm
=========一部引用=====================================
再生紙工場から出る廃水を強力な超電導磁石の力を利用して浄化する
システムを、大阪大工学研究科の西島茂宏教授、武田真一講師らが開発
した。
水中の汚染物質を酸化鉄粒子と結合させ、磁力で吸着する仕組みで、
コストや設置面積が従来の方法の半分以下になるという。共同開発した
二葉商事(大阪市)が来春にも販売を開始する。
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【編集後記】本誌では、生物ろ過法を大きな話題として取り上げています。しか
し、生物ろ過法が善で、急速ろ過法が悪だと、決めつけているわけではありませ
ん。生物浄化法を再認識することは大切なことです。その一方で、急速ろ過法(物
理化学浄化法とでも呼ぶべきか?)の利点を再認識する機会でもあります。急速
ろ過施設の販売や維持管理をしている人たちには、漫然と自前の技術を売ってい
るよりも、もっと自信を持って販売できるようになる機会だととらえてもらいた
いです。(長)