━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■□水処理倶楽部通信■□第216番外号 2005/11/14(月)■□
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
△△水処理の情報交換と交流誌△△編集発行:通信編集委員会
 【発行ページ】http://homepage2.nifty.com/watertreatment-club/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

この原稿は、水処理倶楽部通信210号と211号に掲載した記事について、間違い
を訂正するとともに、若干の手を加え、また、中本先生からのコメントを加えた
ものです。高崎市の浄水場を案内していただき、本稿に対しても多くのコメント
や間違いのご指摘をしていただきました中本先生に感謝します。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■ 高崎浄水場見学会の報告 ■■
              報告者 長峰
=========================================

高崎市に浄水場がいくつかありますが、生物浄化法は、剣崎と若田の2つのみで
す。この2つは隣接しており、これらを中本先生に案内していただきました。

【剣崎浄水場】
この浄水場は、明治43年に建設されました。建設当時から生物浄化法です。

沈殿池とろ過池の組み合わせが3系列、合計6つの池と、塩素消毒施設、並びに
貯水槽からなるシンプルな構成です。川から採取した水は、沈殿池とろ過池を通
り、塩素消毒されてから貯水槽を経て、各家庭に送り出されます。

2つの沈殿池と3つのろ過池は、建設当時のままで、掘り下げた粘土層の上に石
のブロックを配置しただけの簡単な構造です。しかし、石は見事に整形されてお
り、当時の浄水場に対する強い思い入れを感じました。深さは3〜4mほどで、壁
面は45℃くらいの傾斜が付いています。

沈殿池の1つは、間近に迫った宅地開発のために山の斜面を削ったために、漏水
する恐れがあるとのことから、コンクリート製の新しい沈殿池に作り替えてあり
ました。中本先生は、「見学者を案内するときは、必ずここを案内しています」
と言うと、その新しい沈殿池の一辺を、しゃがんで低い位置から見る動作をしま
した。同じようにして見ると、沈殿池の槽の壁はまっすぐでなく、中央が少し内
側に膨らんでいるのが分かりました。すぐ隣の古い方の沈殿池は、同じようにし
て見ても、見事なくらいまっすぐです。粘土層の上に石を並べただけなのに!

新しい沈殿池の漕は、壁面に傾斜をつけずに、垂直に立てた構造になっています。
「少しでも容積を増やそうという発想だが、素人施工ですね。」と先生。汚泥を
排出するために水を抜くと、周りからの圧力で壁が内側に押し出されるために歪
んでしまったのです。

しかも、新しい沈殿池の向かい合わせの2辺には、銀色に光る配管が通してあり、
そこから30本近い分岐した配管が、水面から底の方に向かって入っています。そ
の水面は白く泡立っています。沈殿池なのにばっ気??? 壁と底の角の部分に
汚泥がたまりやすく、腐敗するために(スカムが浮いてくるのでしょう)、壁面
に沿って、散気管を並べて常時ばっ気する装置を後から追加したのだそうです。
まさに素人工法!! 畜産の分野でさえ、水槽の角にテーパーを付けることくら
い、当たり前になっているのですから。

近代工法の歪んでしまった沈殿池の横にある、100年近く経っても歪まない沈殿
池。かたやばっ気の動力を要し、かたや何も動力を必要としない。何とも象徴的
な建造物です。

沈殿池は、ろ過池よりも2mほど高台になってた所にあり、自然流下でろ過池に流
れ込むようになっています。沈殿池の方からろ過池を一望できます。右側のろ過
池には、数羽の水鳥が浮いていました。「鳥がいても全く問題ありません。ニュ
ーヨーク州の緩速ろ過池では、すぐ横にクリプトスポリジウムの感染源となる可
能性がある牛が放牧されていても問題にされていません。鳥インフルエンザウイ
ルスも、ろ過池の微生物たちが食べてくれます。」風や水鳥たちがたてた小さな
さざ波が、水面に映った木々や空を絵画的に変えていました。

ろ過池は、水面の大きさが沈殿池と同程度で、水深が1.5mくらいです。砂の層は
2mほどだそうです。

ろ過池の砂は、26日おきに表面を削る作業をしています。左側のろ過池は削り取
ったばかり、真ん中が削ってから10日ほど、右側が20日ほど経ったものだそう
です。それぞれ面持ちが違っていました。

削ってすぐのろ過池は、底の白い砂に黒い筋が入っていました。これは、トンボ
を使って削った後だとのことです。

真ん中のろ過池は、底が緑色の藻に覆われており、浮上した藻も少し見られまし
た。その中に15cmくらいの魚の死骸も浮いていました。そして、反対側には8cm
くらいの魚の死骸が沈んでいました。魚が川から入ってくるのだそうです。もち
ろん、これも全く問題ないです。むしろ、魚を入れて積極的に藻を食べさせた方
がよいかもしれないとのことです。

どこかの雑誌に、汚濁物質を食べた微生物を食べる微生物、さらにそれを食べる
生物と、高次の生物にまで浄化に関与させるほど、汚泥の発生量が少なくなると、
環境研の稲森悠平氏が書いていたことを思い起こしました。

右側の、削ってから最も時間が経ったろ過池は、水面の2割くらいが浮上した藻
に覆われ、底は、明らかに真ん中のろ過池よりも厚みのある藻で覆われていまし
た。ここに水鳥がいたのもうなずけました。浮いた藻は、水面にラッパ状に開い
たオーバーフローの配水管に吸い込まれていました。この水は、そのまま河川に
排出されているそうです。「本当は浄化して戻すべきなんでしょうね。」先生が
言いました。入ってきた水は河川の水。その汚濁物質を栄養にして増えた藻や微
生物だから、この施設に入ってきた水が、もし、そのまま河川を流れていたのな
らば、同じくらいの藻や微生物が増えると考えていいわけです。私は、そのまま
流してもいいのではないかと思いました。でも、せっかくの資源だから、回収し
て有効活用できないかな?とも思いました。

私は、一番気になっていたことを聞いてみました。それは、上水道で問題になっ
ている毒産性藻類のことです。こんなに藻が生えていると、そういう藻がはえて
くることはないのか?「それは代謝中間物質ですから、微生物が分解してしまい
ます。」先生のあまりの即答に、私は逆に怪しく思ってしまいました。この疑問
に限らず、私が先生に聞いた疑問のほとんどは、「おいしい水のつくり方」に答
えが書いてありました。この時点では、半分までしか読んでいなかった私は、し
なくてもよかった質問をたくさんし、そのあげくに「ちょっと怪しい?」とまで
思ってしまいました。先生、すみません・・・。

家に帰ってから、その本の残りを読んで、つくづく思ったのは、いろんな人の質
問攻めを乗り越えてきた人なんだということでした。

微生物浄化法では、生物が代謝できるものは、すべて浄化できると考えていいよ
うです。ですから、逆にこれ以上分解できない状態でも私たちに害をなす物質は、
除去しきれない可能性があります。例えば、本ではバングラッシュでのヒ素を含
んだ水の浄化の場合、施設内のヒ素が蓄積してしまう問題があったようです。
(中本先生からのコメント:原水中のヒ素を除去できても、砂層に蓄積してしま
う。ヒ素は元素であり、完全に無くすことはできない。そこで、ヒ素を含まない
湖沼や河川水を利用することを考えた。)

各ろ過池の排水側には、排水の水圧を調節する機構がありました。中央と右側の
ろ過池は、建設後に改修されており、V字型の関の高さを上下することで、砂ろ
過層に対する水圧を調節するようになっていました。左側のろ過池は、恐らく建
設当時のままのものが残っていました。上向きの排水口にかぶせたふた(恐らく
そのような構造だろう)につないだひもの先を、地上の天秤のような装置の片端
につなげ、その反対側に、それに釣り合うよりも少しだけ軽い重しを乗せてあり
ます。その天秤が、完全にふたを閉じてしまわないように、木の角材を数枚はさ
んでありました。つまり、砂ろ過を通ってくる水の量が多いとき(川からの流入
量が多いときや砂のろ過速度が速いとき)には、排水口が大きく開き、逆の場合
には排水口の開きを最小限にとどめておくという調節が自動的になされるように
なっている訳です。新しい方のV字ノッチでは、砂ろ過を通る水の速度が遅くな
った場合に、人が調節しないと一時的に水流が止まってしまう可能性があります。

先生が言うには、「水流は倍くらいの増減があっても問題ない。問題となるのは、
急激な流速の変化と、水流が止まってしまうこと」だそうです。大雨などで、一
時的に川の濁度が高まることがあります。そうすると、砂ろ過層が詰まって流速
が低くなってしまいます。それでも、「排水側のバルブを触って、流量を多くす
るようなことはしてはならない」そうです。「バルブをいじらなければ、数日す
れば、微生物が濁りを分解して、流速は元に戻る。もし、バルブをいじって、流
速を高めるようなことをすると、濁り成分が砂ろ過層の奥まで入ってしまって、
分解されなくなってしまう。」とのことです。私は、濁りの多くは無機物だろう
から、それを吸着した藻などが浮上して、オーバーフローに乗って排出されるこ
とで、詰まりが解消される部分もあるのではないか?と思いました。

左側のろ過池が先生の調査対象になっているようで、排水側に高精度の濁度計が
付いていました。でも、ここが0以上の値を記録したことはないそうです(中本
先生からのコメント:生物浄化法では精密濁度計で0.0以下になるのが普通で
す)。ここから学生が処理水を採水していました。

いよいよ、塩素消毒前の水の「自己責任の上での」味見のときがきました。小ジ
ョッキにつがれた水を、参加者で交互に飲みました。私は喉が渇いていたのもあ
って、ジョッキ一杯の水をすべて飲んでしまいました(嘘ではないですよ)。先
生に「どんな味ですか」と聞かれ、「カルシウムかマグネシウムの硬度が高いよ
うな感じがしますが、山の苔がたくさん生えたところからわき出した水のようで
す」と答えました。先生は納得できないような顔をしましたが、水を飲んでみて
「ここは砂を削ったばかりだから、まだ微生物が十分に機能できていないようで
す」と言いました。この水は、砂を削ったばかりの左側のろ過池から出た水なの
です。

私が現在住んでいるところは水質の悪いところですが、2年前まで住んでいたと
ころは、人口3000人ほどの山奥なのに、造り酒屋が2つもあるくらいの水質のよ
いところでした。私が生まれ育ったところも、田舎の山麓の地下水がうまいとこ
ろでしたから、効き水には少しばかり自信がありました。おいしいと言ったのに、
先生は首をひねったことに納得できませんでした。

でも、K氏が持ってきた関東地域の水道水の入ったペットボトルの口を、自分の
口に持っていった瞬間に、自分の感覚がおかしい訳でないことを思い知りました。
私は、瞬間的に「うわっ!臭い!」と言って、その水を飲む以前に、ペットボト
ルを持った手を遠ざけました。本当に、塩素剤を入れすぎたプールの水のように
感じたのです。

この感覚は、ここの浄水場の水を飲んだ後の全員が感じたようでした。

K氏は、とっても準備がよくて、エビアン(だったけか?)も持ってきていまし
た。この水を飲んでみると、岩肌から湧き出てきた水の感じでした。一方、この
浄水場の水は、苔の生えたところから湧き出た水の味。(中本先生からのコメン
ト:山の清水は、スッキリとした感覚。それは、有機物は無いが、溶けている無
機イオン物質が反応しやすい状態で存在している。それらの物質が少ない時は良
い水。鉄やマンガンなど還元物質がイオン状態で存在し、空気に触れて、酸化沈
殿する場合もある。この水は渋い、苦いことがある。それに対して、生物浄化処
理した水は重いような甘いような味がする。反応する物質が無い状態である。こ
の水は、生物にとって甘い水。「こっちの水は甘いぞ!」と童謡にある水で、生
物にとって安全な水である。2005年9月10日にフジテレビ系の全国ネットで放
送された「不思議の水1000年の旅」で俳優の辰巳琢郎さんが飲んだ水は、苔が生
えたり、藻が生えたりしたところを通過した水で、甘い水でおいしい水であっ
た。)

先生は、学生に指示して右側の砂を削ってから最も日が経っているろ過池から、
水を採取してくれました。この水は、先のものよりもずっと苔(藻?)の香りが
薄くなっていました。実は先生たちは、翌日の効き水パーティー用の水を採水に
来ていたそうで、学生はたくさんのペットボトルに、この水を汲んでいました。
私も、隠し持っていた空のペットボトルいっぱいに水を汲んでもらい、持ち帰り
ました。これは家内もおいしいと言っていましたし、焼酎の水割りもgoodでした。

いや〜すばらしい見学でした・・・って、これで終わりじゃないんです。つづ
く!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■ 高崎浄水場見学会の報告 その2 ■■
              報告者 長峰
=========================================

砂を削ったばかりのきれいなろ過池を通った水よりも、削ってから20日ほど経ち、
藻が繁茂しているろ過池を通った水の方がおいしかったです。「ここでは、20日
経って、ようやく水がおいしくなった頃に、砂を削っています」中本先生が言い
ました。そして、こう続けました。「でも、ここにはここのやり方があるので、
それを強く言うことはしていません。現場の人にそっぽ向かれたら調査もできな
くなりますから。」

私も畜産農家を回る仕事をしているので、同じような思いをしています。現場に
入れさせてもらえなくなると、仕事になりませんから、現場の人とうまく付き合
っていかなくてはならないのです。中本先生の言葉の端々に、その経験を感じさ
せるものがありました。

私は、自宅で生物ろ過をしてみたいと思っているので、どのくらいの深さがあれ
ばよいのかを聞いてみたところ、ろ過池は、水深15cm、砂ろ過層1mもあれば十
分だとのことでした。これは浄水場規模での話で、先生の実験室では、バケツを
使って、水深10cm、砂ろ過層30cmで試験しているそうです。「おいしい水のつ
くり方」には、水深10〜30cmで、砂ろ過層は50cm以上あった方がよいと書いて
あります。

砂の大きさは0.5〜1mm程度で、大きさは不揃いでもよいとのことです。ここの浄
水場では、かなり均一な砂が使用されていますが、そこまでする必要はないよう
です。

【若田浄水場】
隣接するもう1つの浄水場に移動しました。若田浄水場は、キリンビールが工場
を建設する際に、ビールを作るための水を確保するために、昭和39年に造られま
した。

こちらの施設には10のろ過池があり、そのうちの1つで、砂の削り取り作業をし
ている最中でした。その周辺では、激しい藻の臭いがただよっていました。まる
で、嵐で海草類が大量に打ち上げられた磯臭い海岸のようです。

作業員のおじさんたちが、トンボを使って削り取りをしていました。削る前は緑
色で、削った後は砂の色になっていました。その境目は、まるでよく管理された
野球グラウンドの芝生のあるところと、砂地のところのように見えました。

「降りてみましょう」と中本先生は、その沈殿池の下へとかけられていたはしご
を指差しました。

降りてみると、水を含んだ砂が、やんわりと足を受け止めてくれました。削る前
と後の境目に行き、しゃがみ込んで、藻の断面を覗き込みました。削った厚みは
1cmもないほどで、藻の厚さはそれよりも薄くて5mmくらいしかありませんでし
た。

私が遠慮がちに人差し指で小さな穴を掘っていると、それを察したのか、先生が、
私の横で片手いっぱいの砂を掘りました。掘ってもいいんだ・・・私は、15cmく
らいまで掘ってみました。砂は、藻の層のすぐ下から、見た目、ただの湿った砂
のようになっていました。微生物の膜ができて、ぬるぬるした感じになっている
と思っていた私には期待はずれでした。15cm掘っても、砂の様子は変わりません
でした。先生に、砂の中には微生物はいないのですか?と聞いてみたところ、昔、
細菌を調べた人がいて、10cmもいかないうちにいなくなると言いながら「おいし
い水のつくり方」の42ページの図を示してくれました。

砂のにおいを嗅いでみると、あたりに漂う藻の臭いと同じでした。これは、15cm
掘ったところも同じでした。もし、こんなに臭うのならば、ろ過した水も、かな
り臭うはずです。でも、剣崎浄水場で飲んだ水は、臭わなかったのです。つまり、
この臭いは、削り取りの作業のときにだけ出るのだと思われます。藻が水の外に
出たとき、もしかすると死んだとき?に、藻の体内にある物質が出たためなので
しょう。

砂には、微生物がそれほどいないので、浄化能力はほとんど期待できなさそうで
す。そうすると、5mmもない藻の層が有機物の分解や分解できない物質の吸着を
行っていることになります。ろ過速度は、最大5m/日程度だと「おいしい水のつ
くりかた」に書いてあったことを思い出し、計算してみました。24時間×60×60
÷5000mm×5mm=86.4秒。「先生、1分ちょっとで浄化が行われていることになり
ますよ!」と言うと、先生は「そうです。ほとんど瞬間的に浄化が行われている
のです。」との答えでした。もちえろん、砂から上の水の部分でも、ある程度の
浄化が行われるのでしょうが・・・微生物の力って、やっぱりすごい。

日頃、微生物を扱っていて感じることは、彼らとは距離的スケールだけでなく、
時間的なスケールも全く違っているということです。それは、単にむちゃくちゃ
速いというだけでなく、むちゃくちゃ遅いものもいます。こういうときに、人間
の持つ感覚が障害になると思わされます。

先生は、ろ過池の中を反対側まで歩き、ろ過池の槽の角まで行くと、排水口の説
明をしました。そこには、オーバーフローした水を排水する管が立ち上がって、
上向きに開口していました。その根元に、砂の削り取り作業のために排水する排
水口があり、土嚢が積んでありました。元はもっと砂の面が低かったのですが、
こうして砂の面を高くし、水深を浅くしたことで水質がよくなったのだそうです。
現在の水深は、私の身長よりちょっと高いくらいでしたから、1.8mくらいでしょ
うか。

ろ過池を含めて、こちらの施設はコンクリートで造られ、壁面は地面に対して垂
直になっています。中本先生が、壁面を指差しながら「コンクリートが伸び縮み
するのを吸収するために、所々コーキング材でつなぐ構造になっています。それ
でもクラックが生じて補修しています。」と言いました。見回すと、あちらこち
らにひび割れを補修した後がありました。剣崎の石を積んで作った槽に比べて、
寿命が短そうだと感じました。

ろ過池に下りたはしごのところまで戻ると、そこには、沈殿池からくる給水管が
出ていました。管は壁から出て90°折れて下に向かって開口しています。そこは、
コンクリートで囲まれた小さな槽の中になっています。つまり、下向きに吹き出
た水が、槽の中で上向きに方向を変えて、沈殿池に流れ出て行くようになってい
ます。剣崎浄水場の方も、同じような構造が見えました。水流で砂が流れてしま
わないように、また、短絡路ができて、入った水がそのままオーバーフローの配
水管に排出されてしまわないようにとの配慮なのでしょう。

はしごを上って、外に出ました。中では、おじさんたちが、まだ砂の削り取りの
作業をしています。時折、背中を伸ばしながら腰をたたく姿が見られました。こ
れだけの広さの、しかも湿って重い砂を削るのは、大変な作業のようです。

こちらの施設は、剣崎に比べて、新しいだけあって、複雑な構造をしています。
取水口から来た水は、混和池を通って沈殿池に行き、そこから関を落ちて、ろ過
池に行きます。

混和池は、1m四方くらいのマスが50個ほど連なっており、上下に互い違いにな
るように水が流れるようになっています。これは、雨が降って源水の濁りが強い
ときに、凝集剤を投入して自動的に混合されるようにするためのものです。これ
は、厚生省の指導に従って、設置されたものです。ところが、凝集剤を投入する
と、出来上がった水がまずくなるので、使用されておらず、ただ水が流れている
だけだそうです。「水に酸素を取り込ませる効果はあるかもしれませんね」と先
生。

先生は言いました。「この浄水場は、ビール工場のために造られたのが良かった
のです。少しでも水質が悪いと、こんな水ではビールが作れないと、すぐにクレ
ームがつきました。このおかげで、おいしい水を作るために、してよいことと悪
いことが分かったのです。」

PACなどの凝集剤を使うと、後の生物浄化がうまく機能しなくなるのだそうです。
凝集剤は、多くが凝集して沈殿するが、一部が残ってしまい、これを微生物が嫌
うためだと、先生は考えているそうです。私は、PACを使うと、リンがほとんど
除去されてしまうために、栄養塩が不足して藻類が増えられなくなるのも、理由
の1つになるのではないかと思いました。(中本先生からのコメント:リンや窒
素が極端に少ない渓流の水でも、メロシラは繁殖することがわかり、栄養塩が減
少するのではなく、急激な水質変化がいけないと思われた。また、凝集剤が沈殿
池で除去しきれず、ほんの少しでもろ過池に入ると、ろ過池から線虫などの微小
動物が漏出することがわかった。)

先生は続けました。「ろ過池に藻が出ないように薬剤を散布したら、水質が悪く
なり、これにもクレームがつきました。なので、藻はいた方がよいとなったので
す。」先生が、ろ過池の藻に着目した原点がこの辺にあるのだろうなと感じまし
た。

沈殿池は、ろ過池に比べてずっと小さい面積でした。深さが分からないので、容
量的にはどうか分かりませんが、沈殿池は面積が効果に大きな影響を持つので、
剣崎よりもずっと性能が落ちると思われます。凝集剤を使うから小さくても良い
ということになったのか? 沈殿池から出た水は、高さ20cmほどの滝を落ちてい
ました。酸素を取り込ませようとするための構造なのでしょうか?

ろ過池に戻ると、削る作業は、集めた藻と砂をベルトコンベアーで外に運び出す
作業をしていました。搬送する部分はベルトコンベアーですが、砂をベルトコン
ベアーに乗せるのは手作業です。ベルトコンベアーを設置する作業も人力です。
砂は、トラックに積まれ、施設の端にある砂を再生する施設に運ばれていました。
私たちは、その施設へと向かいました。

削った砂は、しばらく積んでおくのだそうです。そうすると、藻が腐って白くな
ります。現場にいたおじさんが、10cmくらいの固まりを採ってくれました。元が
藻だとは思えないほど真っ白で、指先で簡単に壊れるほどの軽い固まりでした。
腐るときは、かなり臭いそうです。藻は、堆肥や家畜の餌として、有効活用でき
るのではないかと思いました。(中本先生からのコメント:中本の研究室では、藻
の有効利用の研究、どれだけ生産されるのかの研究をしている。)

腐らせた後の砂は、大量の水で洗いながらふるいにかけていました。ふるい分け
られた後には、巻貝や二枚貝の殻が入っていました。貝類が沈殿池を抜けてくる
とは考えられないので、ろ過池で大きくなった、もしかすると繁殖までしている、
のでしょう。

洗った砂は積み上げることで水をきり、乾燥させていました。

施設の入り口にあった、管理棟に行き、施設の責任者にお礼を述べた後、先生は、
取水口も案内してくれました。

【取水口】
浄水場から6.5km離れた川の上流に、堰を切って取水しています。堰は、大きな
自然石が使われており、建造された時代を感じさせるものです。もちろん、水路
を含めて多くの部分がコンクリートになっていました。元々は、農業用水を採っ
ているところなので、幅2mほどの水路を、たっぷりの水が流れていました。

その水路に入ってすぐのところの側面に、浄水用の取水口が開いていました。幅
10cmほどの柵があるだけなので、魚も通り放題です。ここから浄水場までは、自
然流下で流れているのだそうです。取水から浄化まで、すべて自然流下で済んで
いるなんて、なんてすばらしい施設なのでしょう!

先生に、高崎駅まで案内していただき、そこで別れました。先生には、私たちの
種々雑多な質問、失礼な質問もあったと思いますが、終止、丁寧なお答えをいた
だき、ありがとうございました。また、この後に、翌日の効き水パーティー用の
水を随所に採取に行かなくてはならなかったそうで、そのようなことに配慮もせ
ずにいた私たちに、予定を大幅に超えるお時間を割いていただき、誠にありがと
うございました。

本稿を作成するにあたって、下記のサイトを参考にしました。施設の規模など、
本稿には記述しなかった多くの情報が掲載されています。また、写真や図もある
ので、良い参考になると思います。それから、「緩速ろ過・小規模水道応援
(団)」なるものもありましたので、記載しておきます。

見学した場所
http://www.city.takasaki.gunma.jp/sosiki/s-jousui/kinenkan/annaizu.htm

剣崎浄水場
http://www.city.takasaki.gunma.jp/sosiki/s-jousui/shisetsu/kenzaki.htm

若田浄水場
http://www.city.takasaki.gunma.jp/sosiki/s-jousui/shisetsu/wakata.htm

若田浄水場の構造
http://www.city.takasaki.gunma.jp/sosiki/s-jousui/dekiru/dekiru.htm

高崎市の浄水場
http://www.city.takasaki.gunma.jp/sosiki/s-jousui/index.htm

緩速ろ過・小規模水道応援(団)
http://www.geocities.jp/watertecjapan/


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■□水処理倶楽部通信 ■□水処理の情報交換と交流誌■□
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【お断り】このマガジンは正確さ・完璧さなど保証致しかねますので各自の
 責任で確認のうえ、ご利用下さい。また本誌で知りえた情報による損害・
 紛争について一切関知しませんのであらかじめご承知下さい。
◆配信所:まぐまぐID=0000019863  melma!ID=m00010669
 その他の配信所は、配信を停止しました。
◆登録・変更・解除、バックナンバー、ML、読者掲示板
 http://homepage2.nifty.com/watertreatment-club/
◆発行:水処理倶楽部通信編集委員会
 連絡・投稿先:長峰 nagt@shirakawa.ne.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




BACK|NEXT HOME|バックナンバー| 広場|リンク| メール