━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■□水処理倶楽部通信■□第228号 2006/2/13(月)■□
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
△△水処理の情報交換と交流誌△△編集発行:通信編集委員会
 【発行ページ】http://homepage2.nifty.com/watertreatment-club/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    目  次
      ★ お知らせ
      ★ 養豚場と環境問題 その1
      ★ 短信

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■ お知らせ ■■
●「養豚場と環境問題」は、養豚排水処理に取り組んでいる二見氏からの寄稿で
す。氏は、環境保全のための技術開発を長年続けられており、環境を食い物にす
る社会構造に疑問を投げかける発言でも知られる人です。今回、不定期連載をお
引き受けいただけましたので、その1回目です。
●「作り生物浄化装置プロジェクト」のサイトに「情報の整理」を追加しました。
http://homepage.mac.com/nagt/mizusyori_kurabu/index.htm

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■ 養豚場と環境問題 その1 ■■
                    二見 治
=========================================
 豚肉は、古来より人類にとって大事な摂取タンパク源のひとつとして、重要な
役割を担っています。OECD(経済協力開発機構)のデータによると、豚肉は世界
中の人達が食べる肉類の40%を占めており、その生産量は世界中で増え続けてい
るそうです。安くて栄養価に富んだ豚肉は、増え続ける世界の人口を支える重要
な役割を担った食品のひとつであると言えます。

 この様に、我々人類にとって重要な食品である豚肉を生産する場である養豚場
の存在が、近年、環境面から世界中で問題視されるようになっています。養豚場
が引き起こす環境問題として、以下の様な提起がなされています。
  
1、水質汚染
・養豚場からの糞尿に由来する窒素と燐による河川・湖沼・海域の富栄養化とそ
れに起因する環境及び生態系の破壊。
・養豚場からの糞尿に由来する飲用水中の硝酸性・亜硝酸性窒素量の増大による
健康被害。
・養豚場からの糞尿に由来する病原性の菌類による飲用水の汚染。
OECDの刊行物(Agriculture, Trade and the Environment: The pig sector)に
よると、養豚場の高度集中化が進み、飲用水中の硝酸性窒素の汚染リスクが高い
地域として、欧州諸国の一部や韓国と並んで、日本もその名を挙げられています。

2、大気汚染(悪臭)
 化学工場等が引き起こす深刻で広域的な大気汚染による公害問題とは質が異な
りますが、養豚場の高度集中化が進んだ北欧の一部及びアジア地域では、養豚場
から発生する悪臭及び糞尿を堆肥として耕作地に撒布した際に発生する悪臭に対
して、周辺の住民がこれを問題視して無視出来ない社会問題となってきています。

3、温室効果ガスの発生
 豚の糞尿に由来して発生するメタン及び一酸化窒素は、地球温暖化の原因とさ
れている温室効果ガスですが、養豚場由来の温室効果ガスは、全OECD加盟国の農
業部門から発生する全ての温室効果ガスの5%以下であろうと考えられており、
無視できる問題であると考えられています。

4、野生種の豚(猪)の絶滅化への危惧
 養豚場が未開地に侵入して造られる事により、野生の猪と豚の混血化が進行し
て、従前からそこにいる土着の純粋な野生種の猪が、遺伝子レベルで絶滅する危
険性があると言われています。全世界では、今までに650種類の猪が確認されて
いますが、すでに150種類が絶滅したと言われています。いまでは164種類の野生
種が絶滅の危機にさらされていると言われています。


 古来より世界中で行われていた豚の飼育ですが、近年になり、何故、問題視さ
れる様になったのでしょうか。世界中で環境問題が人々の関心事となったからで
しょうか?それとも、世界中で都市化が進行して養豚場の存在が目障りになった
のでしょうか?

 確かに人々の意識の変化も大きな原因のひとつでしょうが、一番の原因は、養
豚に関する技術の進歩に伴い発生しています。養豚場における豚舎の造営や給餌
技術の進歩に伴い、昔に比べて同じ労働量の投入でも、また又同じ広さの養豚場
でも、飼育出来る豚の頭数が格段に増えて来ているのです。これにより、世界中
で養豚場の大型化・集約化が進行しています。我が国では、肉豚の出荷頭数は減
少傾向にあるのですが、個々の養豚場の大型化・集約化は進行しています。

 小規模な養豚場があちこちに点在していた時代の豚一頭当りの占有面積は、大
型化・集約化された現在の養豚場のそれに比べると、はるかに大きかったと考え
られます。現在の大型化・集約化された養豚場が環境に与える負荷は、旧式の養
豚場に比べると、はるかに大きなものとなっていると考えられます。

 また、都市近郊の養豚場が人口密度の低い地域に移転する、あるいは移転させ
られる状況があります。国土の広い北米などは別として、面積の狭い国では、あ
る特定の地域に大型化した養豚場が集中すると言う事になります。その様な場合、
もともと山紫水明であった地方の自然環境を、養豚場が著しく破壊すると言う結
果になります。

 養豚を始めとして畜産業が盛んな鹿児島県の鹿屋市では、複数の上水道の水源
地で、その原水の硝酸性・亜硝酸性窒素が上水道の基準値(10mg/l未満)を超え
ており、他の水源地の源水と混ぜて希釈されてから給水されています。この様な
地方で、公共の上水道を利用せず、地下水を汲み上げて飲用水として利用してい
るところでは、上水道の基準値以上の硝酸性・亜硝酸性窒素が含まれた水を飲ん
でいる例も多いのではないかと考えられます。

 飲水中に含まれる窒素酸化物の内、人体に悪影響を与えるのは亜硝酸性窒素
(NO2-)です。硝酸性窒素(NO3-)は、そのままでは人体への毒性は無いと言わ
れています。通常、汚水中で発生した亜硝酸性窒素(NO2-)は、硝酸菌によりた
だちに硝酸性窒素(NO3-)へと変換されます。実際に硝酸性・亜硝酸性窒素の汚
染が大きいといわれている地域の地下水を調べてみても、硝酸性窒素は検出され
ますが、亜硝酸性窒素は殆ど検出されません。しかし、硝酸性窒素を多く含む水
を飲むと、嫌気的な人体の消化管に生息している細菌により、硝酸性窒素が亜硝
酸性窒素に還元されます。体内で生成された亜硝酸は、血液中のヘモグロビンを
酸化して、乳幼児にメトヘモグロビン血症と呼ばれる疾病を引き起こします。乳
幼児は、胃酸の分泌が少なく、亜硝酸が生成しやすいと言われています。また、
亜硝酸性窒素は、肉や焼き魚に含まれている第二級アミンと体内で化合して、ニ
トロソアミンと呼ばれる発ガン性物質を生成すると言われています。

 養豚業が盛んな地域の地下水に、硝酸性・亜硝酸性窒素が何故多量に含まれる
事になるのでしょうか。少し考えてみましょう。当然の事ですが、養豚場からは
大量の豚の糞尿が排出されます。尿の中には多量の尿素が含まれています。尿と
糞は、生体から排泄された後に、豚舎内で混じり合い糞尿混合の汚水となります。
糞の中には、消化管内に生息している細菌によって作られた、ウレアーゼと言う
酵素が含まれています。尿素は、ウレアーゼによって加水分解されて、アンモニ
アと二酸化炭素に分解されます。
(反応式:(NH2)2CO + H2O → 2NH3 + CO2)

 発生したアンモニアの内、汚水中に溶け込んだものは、アンモニウムイオン
(NH4+)として存在します。アンモニウムイオンは、酸素の存在するところ(好気
的条件)では、亜硝酸菌(Nitrosomonas属など)とか硝酸菌(Nitrobactor属な
ど)と呼ばれる細菌によって、酸化されて亜硝酸性窒素から硝酸性窒素へと変換
されます。この様な生物化学的な反応は硝化と呼ばれています。
(反応式:NH4+ + 2O2 → NO3- +H2O +2H+)

 硝化反応により発生した硝酸性体窒素(NO3-)は、酸素の無いところ(嫌気的
条件)では、種々の細菌が有機物を酸化分解する代謝に利用されて、無害な窒素
(N2)に変換されて大気中へ気散されてゆきます。この様な反応は脱窒と呼ばれ
ています。汚水中の全ての窒素酸化物が脱窒されるならば問題は無いのですが、
養豚場から未処理の糞尿汚水が地中に染込めば、地下水の硝酸性・亜硝酸性窒素
の濃度を押し上げてしまいます。

 我が国では、平成16年11月1日より「家畜排泄物の管理の適正化及び利用の促
進に関する法律」の管理基準が適用される様になり、畜産農家は、この法律の定
める所に従い、責任をもって適切な畜産糞尿の処理をしなければならない事にな
りました。

 法律の整備と公的な助成・援助さらには公共事業での環境整備も行われて、近
年では、多くの養豚場で適正な堆肥場や汚水処理施設の設置がなされる様になり、
以前と比べると随分と環境整備がなされてきています。

 しかしながら、養豚場の環境整備に対して補助金等の公的助成を与えたり、こ
れを公共事業で行ったりうと言う我が国の制度は、OECDの環境指針に照らし合わ
せれば、「汚染者負担の原則」(PPP:Polluter-Pays-Principle)に反する行為で
あり、将来、国際的に不正な貿易障害であると批判されるかも知れません。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■ 短信  ■■
=======================================================
 「NPO法人・地域水道支援センター」設立準備室HP
 http://www.geocities.jp/watertecjapan/tiikisuidou.html

 当MLでも話題に上がった「水道はどうなるのか?」の著者であり、緩速ろ過で
の浄水を提唱されている瀬野守史さんが「NPO法人・地域水道支援センター」を
立ち上げられ、現在会員を募られています。設立発起人には中本教授もおります。
(ひろきち)

=======================================================
オリンパスが落下衝撃に強く、水中3m防水、防塵設計で砂やホコリも気にしない
デジカメを発売
http://olympus-imaging.jp/digitalcamera/mju720sw/

 水没しても砂をかぶってもいいなら、汚水をかぶっても大丈夫でしょう。汚水
処理施設の記録用によさそう。ばっ気槽や沈殿槽に落としても大丈夫? 拾える
ようにヒモでつないでおきましょう。このてのものは、パッキンの寿命が気にな
ります。(長)

=======================================================
「君に伝えたい 自然を守る仕事のこと」
学生向けリアルネイチャー・セミナー 東京・名古屋・京都
http://www.nacsj.or.jp/event/real/student/real-students-06.html

「NACS-Jで働きたい」「自然を守る仕事に就きたい」「NGOで働きたい」そんな学
生の方々から、「どんな仕事があるのか」「どんな専門性、能力、経験が必要か」
という質問が、NACS-Jにはたくさん寄せられます。そこでイベント形式で、そん
な多彩な情報を提供していくのが、このセミナーです。
 
 学生の方々のニーズにもお応えしますが、それよりもむしろNACS-Jの側、「大
人の側」から学生の方々にぜひ伝えたいと思っている、自然保護に関する多彩な
「仕事」の情報(学生時代に体験・学習した方がいいこと、仕事や業界の様子な
ど)や将来に向けたアドバイスを提供します。求人情報や面接のテクニック等の
目先の情報ではなく、「長い目で見た生き方やライフスタイル」を提案するもの
です。この企画を通じて、将来の自然保護の仲間、「自然保護意識の高い人」を
増やしたいと思います。

主 催 自然保護協会(NACS-J)
運 営 自然保護協会学生ボランティアチーム
参加費 1日あたり学生1,000円 社会人3,000円

(東京会場)
・2/17(金)
 「若者を育てる」:山中千花(企業のインターン制度担当/損保ジャパン)
 「自然を伝える」:長谷川裕彦(研究者/明治大学)
・2/18(土)
 「良さを伝える」:神谷有二(編集者/山と渓谷社)
 「森を守り育てる」:島内厚実(政府職員/赤谷森林環境保全ふれあいセンタ
ー)
・2/19(日)
 「政策を作る」:山本麻衣(政府職員/環境省国立公園課)
 「体験の場を作る」:竹山史朗(企業の広報担当/モンベル)

(名古屋会場)
・2/23(木)
 「大切さを広める」:森本言也(NACS-J普及広報部)
 「現状を調べる」  :目崎茂和(南山大学)
 「会社を動かす」  :柴垣民雄(リコー中部CSR推進室)

(京都会場) 
・2/26(日)
 「大切さを広める」:森本言也(NACS-J普及広報部)
 「現状を調べる」:中静 透(総合地球環境学研究所)
 「会社を動かす」:大豊規至(宝酒造環境広報部)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■□水処理倶楽部通信 ■□水処理の情報交換と交流誌■□
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【お断り】このマガジンは正確さ・完璧さなど保証致しかねますので各自の
 責任で確認のうえ、ご利用下さい。また本誌で知りえた情報による損害・
 紛争について一切関知しませんのであらかじめご承知下さい。
◆配信所:まぐまぐID=0000019863  melma!ID=m00010669
 その他の配信所は、配信を停止しました。
◆登録・変更・解除、バックナンバー、ML、読者掲示板
 http://homepage2.nifty.com/watertreatment-club/
◆発行:水処理倶楽部通信編集委員会
 連絡・投稿先:長峰 nagt@mac.com
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集後記】白河だるま市を端から端まで往復してみました。
http://www.shirakawa.ne.jp/~kyokai/daruma/
1km以上に渡ってテキ屋が並んでいるのはスゴイですね。メインは、単にだるま
を売っているだけなのに、なぜこんなにテキ屋や人が集まってくるのでしょう? 
今年はモヤットボールが流行っているようで、くじ引きの景品でよく見かけまし
た。1件だけですが、モヤットボール専門店までありました。歩き疲れてしまっ
て、だるまも買わずに帰途につきました。途中で立ち寄ったスーパーでもだるま
を売っていて、美男子のだるまを格安で買って帰りました。ご利益はあるのでし
ょうか?(長)



 


BACK|NEXT
HOME|バックナンバー| 広場|リンク| メール