━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■□水処理倶楽部通信■□第232号 2006/3/13(月)■□ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ △△水処理の情報交換と交流誌△△編集発行:通信編集委員会 【発行ページ】http://homepage2.nifty.com/watertreatment-club/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 目 次 ★ お知らせ ★ 養豚場と環境問題 その2 ★ 短信 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■ お知らせ ■■ ●「養豚場と環境問題」は、養豚排水処理に取り組んでいる二見氏からの寄稿第 二弾です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■ 養豚場と環境問題 その2 悪臭について ■■ 二見 治 ========================================= 畜産業と縁の無い、一般の人に養豚場のイメージを尋ねると最初に「クサイ」 と言う答えがかえってくる事が多いのではないでしょうか。 豚は臭い動物なのでしょうか?決してそうではありません。人間でも集団生活 をしている所であれば、その施設が臭う、臭いと言う話はよくあります。養豚場 の悪臭問題は多数の豚を一定の敷地内で飼育する事から始まっており、養豚場の 大型化・集約化に伴い深刻化してきた経緯にあると考えられます。 養豚に限らず、畜産業から発生する悪臭は主として糞尿に由来しており、その 臭気は複数の成分により構成されていて、複合臭として畜舎から発せられていま す。臭気の成分には畜種による違いはほとんどありませんが、悪臭の中に含まれ ている各成分の量の違いにより、鶏舎、牛舎、豚舎、各々独特の臭気を有してい ます。 悪臭防止法では22種類の物質が「規制悪臭物質」としてとりあげられていま すが、その中で畜産業から発生する悪臭と関連が深いとされている物質は、アン モニア、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、プロピオン酸、ノルマル 酪酸、ノルマル吉草酸、イソ吉草酸の9種類です。 豚舎から発生する悪臭と鶏舎から発生する悪臭の成分を比較すると、豚舎から のものにはプロピオン酸、ノルマル酪酸、ノルマル吉草酸、イソ吉草酸などの低 級脂肪酸が多く、鶏舎の臭気にはアンモニアの比率が多いと言う特徴があります。 低級脂肪酸はその特性として鼻をつく臭いがします。養豚場から発生する悪臭に 限らず、大半の悪臭問題は多成分の臭気物質が相加・相乗・相殺されて作り出さ れた複合臭によって発生していると考えられます。 悪臭を発生させる施設に対してその周辺住民がクレームをつけて、問題にされ た施設が何らかの改善策を取った場合、悪臭の程度に改善の前と後でどの程度差 があるのかと言う事を客観的に判断したい場合どの様な検査を行えば良いのか、 少し考えてみましょう。 悪臭の原因になっている成分が特定されている場合ならば、その成分に対する 測定器を準備すればよいのですが、複合臭の場合はそういう訳にはゆきません。 「臭い」と言う感覚的な強度を合理的に判定する方法として、三点比較式臭袋法 (三点式臭い袋法)と言う検査方法があり、これは悪臭防止法の中で、臭覚測定 法として定められているものです。測定方法は臭気判定士の統括の下で、複数の パネル(6人以上)に3つの袋をかいでもらって発生源で採取した悪臭の入って いる一つの袋を当てると言う作業を、悪臭を希釈しながら、臭気が感知出来なく なるまで繰り返し行い、臭気を判定するものです。 三点比較式臭袋法で何が判定出来るかと言うと、悪臭の「臭気濃度」と「臭気 指数」です。 臭気濃度−−−臭気を無臭の清浄な空気で希釈したとき、ちょうど無臭に至る までに要した希釈倍数を示します。臭気濃度1000は無臭の空気 で1000倍に希釈した時に臭気が感じられなくなる臭気の濃度を 示します。 臭気指数−−−臭気濃度は臭気物質が10倍あれば10倍、100倍あれば100倍の値 を示し、臭気物質の量に比例して変化しますが通常、人間の感 覚は刺激量10倍に対して2倍100倍に対して3倍と言う様に対数 関数的な変化をします(ウェバー・フェヒナーの法則)。そこ で、より直感的に人間の臭気感覚に似せた数値の表示が臭気指 数です。 臭気指数=10×log臭気濃度 【ウェバー・フェヒナーの法則】 刺激がある一定の量に達した時、人間はその刺激を感知します。この時の刺激 量を「検知閾値」(刺激を感じる最少の刺激量)と言います。その後、刺激量の 増大と共に感覚的な強度も増加しますが、刺激量が増えるのに比例してその感覚 強度も増える訳ではありません。もし、悪臭物質の濃度の増加に比例して臭いを 感じていたら、悪臭の刺激で人間は卒倒するかもしれません。この様な感覚強度 のありようは強い刺激から身を守る為の防御機能と考えられています。 ウェバー・フェヒナーは、人間の感覚と刺激量との間に対数の感覚があること を見いだしました。刺激量をX、感覚強度をYとすると、 Y=klogX+α という関係になります。kは刺激に対する感覚の受ける強さ、aは感覚として感じ られる最低限の刺激量(検知閾値)によって決まる定数です。臭気指数は、X=臭 気濃度、k=10、a=0として求めた値です。 私は、養豚場の臭いを低減させる装置の製造・販売も仕事としております。私 が販売している装置を取付けたある養豚場で、装置をつける前とつけてから3ケ 月後の2回、同一豚舎内の臭気を三点比較式臭袋法で測定してもらった事があり ます。その時の臭気指数は、設置前が31、設置三ケ月後が21、臭気濃度に関して は設置前が1300、設置3ケ月後が130でした。悪臭発生源の豚舎内では、臭気濃度 つまり悪臭物質の濃度は、設置前と設置3ヶ月後の判定で十分の一になっている のに、臭気指数つまり人間の感覚では設置前と設置3ヶ月後の判定で三分の二程 度にしか低減していないわけです。現にその養豚場で作業されている方に感想を 聞いても、設置前と設置3ヶ月後で臭いの低減をあまり感じられないとのお話で した。ただ、養豚場の所在地の住民に話を聞いたところ、その養豚場からの悪臭 が随分と低減したとの事でした。 ウェバー・フェヒナーの法則に従えば、悪臭の発生源の近傍と言う常に悪臭を 感じる場所にいる人間が、臭気が三分の一以上なくなったと感じる為には、臭気 の濃度が97%以上低減しなければなりません。逆に考えると、養豚場で働いてい る人達は、そこで発生する臭気物質が仮に100倍に増えたとしても、臭気として は3倍程度にしか感じないということです。悪臭の発生源にいる人達には3倍程度 にしか感じなくても、実際には100倍の悪臭物質が発生しており、周辺住民から の苦情が自分達の予想を大きく越えるものになるという事態も想定できます。 養豚場に限らず、悪臭問題は、臭気の発生源で常に悪臭に曝されている人間と、 その周辺に住んでいる人たちとでは、感覚とその反応に大きな隔たりがある事が、 問題を複雑化していると考えられます。 【参考文献】 「悪臭防止法の概要」神奈川県HP http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/taikisuisitu/taiki/akusyu/sankou.htm 「畜産における発生臭気について」(独)農業技術研究機構 代永道裕 http://jliadb.lin.go.jp/summary/k25/010911.pdf ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■ 短信 ■■ ======================================================= GMイネ裁判支援ネット主催 学習会 ―GMイネが耐性緑膿菌を生み出したらヒトに何が起こるか?― 新潟の北陸研究センターが昨年につづき、今年も遺伝子組み換えイネの野外栽培 実験を予定しています。このイネは遺伝子操作で、いもち病などイネの病気に耐 性を持たせたというものですが、常時抗菌たんぱく質を分泌することから耐性菌 の出現が強く懸念されています。 常在菌として身のまわりに存在する緑膿菌。あたりまえのこの菌がヒトの抗菌た んぱく質に抵抗力をもつような変異をしたら、なにが起こるか、この実験を強く 危惧し、危険性を指摘する微生物学者木暮一啓氏からお話を伺います。 日時:3月27日(月)午後3:00から5:00 場所:飯田橋セントラルプラザ 16階 A会議室 講師:木暮一啓さん(東京大学海洋研究所教授) 資料代:1000円 GMイネ差し止め裁判公式サイト http://ine-saiban.com/ 木暮先生は、微生物生態の第一人者です。気さくな方なので、話しかけられる 機会があったら何でも聞いてみるといいですよ。(長) ======================================================= 日本の研究者、牛糞からガソリンやバニリンを生成 http://hotwired.goo.ne.jp/news/20060306304.html 東京農工大学の澁澤栄教授と産業技術総合研究所の研究グループが、亜臨界処 理で、牛ふん100グラムから約1.2グラムのガソリンを作ることに成功したそうで す。複数の金属触媒を使うところがミソだそうです。5年以内の実用化を目指し ているそうです。豚ふんや鶏ふん、人ふんではだめなんでしょうかね? 既に大 量にふんが集まっているようなところでないと、ふんを搬送するためだけでガソ リンを消費しそう? 一方、積水化学工業と国立国際医療センター研究所の研究グループが、牛ふん を高温高圧の状態(やはり亜臨界か?)にすることで、バニラの芳香成分である バニリンを抽出することに成功したそうです。ウンチからとった香料を何に使う か?が問題のような気もしますが、バニリン以外にも、いろんなものがとれそう な期待が持てる話ですね。(長) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■□水処理倶楽部通信 ■□水処理の情報交換と交流誌■□ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【お断り】このマガジンは正確さ・完璧さなど保証致しかねますので各自の 責任で確認のうえ、ご利用下さい。また本誌で知りえた情報による損害・ 紛争について一切関知しませんのであらかじめご承知下さい。 ◆配信所:まぐまぐID=0000019863 melma!ID=m00010669 その他の配信所は、配信を停止しました。 ◆登録・変更・解除、バックナンバー、ML、読者掲示板 http://homepage2.nifty.com/watertreatment-club/ ◆発行:水処理倶楽部通信編集委員会 連絡・投稿先:長峰 mizusyori@mac.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【編集後記】日が長くなり、春めいてきました。東北に移り住んで、春に山の木々 が芽吹くときの美しさを、初めて知りました。緑や藍の淡い色を、ペタペタと貼 付けたような山々は、繊細に輝いていて、日々変わる姿は生命の勢いそのものを 感じさせます。東北に住んでいる人には、それが当たり前なのだそうで、何とも 贅沢な話です。さて私の方は、年度末の七転八倒が終わらないと、春が来ません。 手作り生物浄化装置プロジェクトが小休止状態となっていて、気にはなっている のですが、もう1、2週間ほどで復活なるかと・・・(長)