日本野鳥の会 諏訪 |
| 支部報「いわすずめ」No.79 (2001年7-8月号) | 「そまびとの双眼鏡」No.17 |
No.17 杉山 要(kaname@avis.ne.jp) |
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出 動 「山仕事をしている青年」ということで、遭対協(山の救助隊)の隊員に任命されました。平均年齢の高い林業界では、厄年を過ぎた身の私でも圧倒的に青年なのです。日本アルプスのような険しい山が無い村なので、出動することはない。と聞いて安心していたのもつかの間、千曲川源流でのケガ人救助の要請が入りました。 午前4時前に源流のある集落に集合し、登山道の起点である駐車場へ向かいます。夜明け前の駐車場は繁殖期をむかえた鳥たちの歌声のシャワー。カッコウ、ジュウイチ、ホトトギスを筆頭に、この世にはこんなにたくさんの鳥がいたのか、と思うほどの賑やかさです。歩きはじめると、林道沿いに歌声の主役はウグイス、オオルリ、アオジへと変化し、やがて沢筋の直登でエゾムシクイ、コマドリに交代します。急いで登っているので、鳥たちの垂直分布の変化がわかるなぁ、などと感心していたのもつかの間、救助用の折りたたみ担架を背負うことになりました。「軽いから大丈夫です」などと言いつつも、たちまち額から汗が噴きだします。その時でした、聞き覚えのある優雅な声。いつか自分の暮らす土地でも耳にすることを夢見ていた歌声の主、クロジが現れたのです。この村に暮らすようになって7年、生きたクロジとの出会いはこの時がはじめてでした。沢から少し離れた若齢カラマツとトウヒの混交林が彼の縄張りのようです。歌声に励まされて気合が入り、なんとか担架を背負ったまま救助地点までたどり着くことができました。 標高2000mを超える沢周辺は、いつしかルリビタキとミソサザイの領域になっています。けが人を乗せた担架を8人がかりで支え、ヘリとの会合点に下るときには、さすがに何が鳴いているのかを聞いている余裕などありませんでした。やがてヘリが到着し、けが人が無事に運び出されたとき、激しい爆音と風に驚いたのかカワガラスが水面を飛びまわりました。気が付けば冷たい雨が降り始めています。視界のあるうちに救助することができて本当に良かった。 そこから少し登ったところは、千曲川の最初のひとしずくが滴り落ちる場所です。日本一の大河の、最上流に暮らすカワガラスに見送られ、南佐久で最も不謹慎な救助隊員は無事、はじめての任務を果たすことができました。 △前回の「そまびとの双眼鏡」No.16 土引き (No.78 2001年5-6月号)へ ▽次回の「そまびとの双眼鏡」No.18 間 伐 (No.80 2001年9-10月号)へ |