明日できることは、今日しない!
 小石雄一著 アスキーメディアワークス 1500円
           
「明日があるさ」から「明日を創る」への発想の転換

 缶コーヒーのコマーシャルソングとして、「明日があるさ」がリバイバルヒットしたのは今から十年近く前のことです。ちょうど日本経済がバブル崩壊の調整期にあり、長いトンネルの先が見えなくなっていた時期です。

 明日があるさは、自分に自信が持てない学生の恋心をうまく表現していました。自信がもてないのは、日本の企業社会も同じ状況にあったのです。
 かつて新規ビジネスは、アメリカでヒットしたものを上手に真似して日本に導入していました。しかし、インターネットなどによって情報の流通が高速化したため、お手本が無くなったのです。

 ちょうど、歌に出てくる学生の気持ちなのではないでしょうか。意中の女の子が居ても、どうやって打ち明けたらいいのか分からないし、自信がないということです。

 高度成長に坂本九が歌っていたときの「背景」は少し違います。昭和三十九年ですから、高度成長期真っ只中です。いま、自信の無い自分達、日本でも、欧米のまねをすれば「明日があるさ」という、言ってみれば能天気な歌だったのです。

 高度成長期は、能天気に明日があるさ〜と言っていればよかった。低成長時代には、明日がいつ訪れるかわからないから、仲間どうしで、励ましあったというところでしょう。

 そこで現代、もはや、「明日があるさ」では通用しません。

 明日は、「自分で創り出す」必要があるのです。
 ビジネスや人生で成功する人は、プラス思考で明るい人ということになっています。

 高度成長期は能天気でも成功しました。経済全体が拡大したのです。低成長時代には、モデルがありませんから、人脈作りの得意な陽転思考の人が、新規のビジネスモデルを創ってニッチな分野で成功しました。

 今やプラス発想だけでは通用しないのです。

 本書の中では、「非積極的な残業」を自信の無さや他人への依存体質としてとらえ、明日を創り出す方法について述べてきました。
 世界中がネットワークされて、情報が一瞬で伝わる「情報社会」においては、明日があるさと言っている余裕が無くなって来ているようなのです。

 ある意味、偶然や運に期待して、組織や他人に頼ろうとする心は良く分かります。

 自律的な生き方をするのはいいのだが、みんなからどう見られているか心配な気持ちもわかります。

 明日できることは今日しないという生き方は、今日すべきことは今日中にきちんとこなし、明日を創っていくと言う考え方、生き方です。

 政治の世界に見られるような「先送り」ではありません。自分の置かれた立場をしっかり理解し、仕事の軽重も理解した上での行動です。

 本書では、残業が全て悪者とはいっていません。残業をやめろと主張するつもりもありません。

 自律的な生き方をして欲しいと思い、筆をとったのです。
 さて、これから成功するビジネスマンとはどんな人でしょうか。わたしは、マイナス思考に裏打ちされたプラス思考で行動する人だと考えています。

 能天気なだけではもはや通用しません。明るいことは重要ですが、暗いところがあるから明るい面が強調されるのだということをお伝えして、筆をおきたいと思います。

 明日できることは今日しない。