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弱い者いじめは「恥ずかしい」とする文化があった。しかし、競争社会の中で「勝ち組」という流行語に象徴されるように、規範意識からこうした「恥」の倫理が希薄化していくようだ。
昨年一年間に全国の警察が検挙・補導した、小中高生によるいじめに絡む事件は、四年連続で増加した。いじめた動機も「無抵抗だから」が突出している。児童(十八歳未満)虐待事件も統計を始めてから最多となった。しかも、無抵抗の一歳未満の乳児の被害が一番多い。
いじめ事件の統計が残っている一九八四年以降、ピークは八五年で事件数が六百三十八件、摘発・補導人数は千九百五十人だった。〇二年には九十四件、二百二十五人に減ったのに、また増加に転じて、昨年は二百三十三件、四百六十人になった。ピーク時に比べると三分の一ほどだが、気になるのは、複数回答で聞いたいじめの動機で、「力が弱い・無抵抗だから」が前年より19ポイント増えて46%と、一位になっている。
児童虐待事件も前年より34%増え二百九十七件と、統計を取り始めた九九年以降で最多となった。摘発人数も三百二十九人で最多であり、実母が九十六人で一番多いのが悲しい。実父八十六人、養・継父五十六人、実母と同居する男性五十二人と続く。被害を受け死亡した児童が五十九人もおり、そのうち殺害された子どもが前年の倍以上の三十六人と痛ましい。
広島市で四歳の男児を殴って押し入れに監禁、転落させ、死亡させたとして、昨年十一月に広島地裁で、懲役八年を求刑された二十三歳の同居男は「うっぷん晴らしに、しつけと称して虐待を繰り返した」と論告されている。
学校でのいじめに似た構図が、少年らによるホームレス襲撃事件だろう。そこでは「無抵抗で一方的に暴行でき、ストレスが解消する」といった供述が聞かれる。
「恥」意識は幼児期の遊びと、仲間との付き合いの中で、体で覚えるものだろう。その遊びが失われつつある。さらに、子どもは、欲求を抑え、「待つ」力が育たないと、自立できない。ところが、親自身、子の成長を「待つ」力が弱体化している。いじめや虐待につながる大きな要因である。
そして、消費行動をあおる自由市場経済があり、「負け組」を踏み台にする一部の企業論理が、そうした傾向に拍車をかけていることも忘れてはならない。
2007年2月16日 中国新聞 社説より
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