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1 厄介者、転がり込む
その1 ちょうど3月3日の雛祭りの日に生まれた女の子だったので、滝川組の親分高志は最初の子供に付けようとした名前は雛子だった。けれども、ふと思い返し、蘭という名前に変えたのだ。けれどもそれがその女の子、蘭の人生を決定付けたのかも知れない。 けれども親分の高志は、どうあっても蘭を女らしく育てたいと、中高一貫女子校にむりやり通わせた。案の定、蘭はその内にレディースに入り、退学スレスレのところを大金で逃れたものの、結局はレディースのトップにまで登りつめ、卒業後は極道の娘の道をまっしぐらに突き進んでいったのだ。 高志の嘆きをよそに、弟の浩次は成績抜群、なよなよした草食系男子になり、挙句の果てに国立大学に入学してしまった。浩次はかくして両親の希望の星、自慢の息子になった。 親分の滝川組組長、滝川高志とその妻やよいが、プーケットを旅行中に行くえ不明になってしまったのだ! とりあえず、若頭(わかがしら)の田島が組長代行を申し出たそのまさにその時、突如乱入してきたのが蘭だった! 「あ、あ、あ、お嬢さん。ここのところは、順番から見ても、あっしでしょう……この仕事は女には無理かと……」
「い、いえ。ですんが……お嬢さんが代行になると、他の組から馬鹿にされないかなと」 「ええと……なんでも、平塚雷鳥とかいう女が、昔居たそうだ。そいつが、そう言ったのよ」 蘭は粋がって、龍の柄の真っ赤なTシャッの肩を少しだけはだけて見せる。そこには、胡蝶蘭の刺青が毒々しく、けれども妖しく彫られていた……。薄紅(うすくれない)にまるで一対の蝶々のような胡蝶蘭は、蘭の仁侠人生の覚悟をしめしているかのように。 「みんな、そんなにジロジロ見るんじゃないっ。こう見えてもあたし……一応若い女なんだから」
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