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〜2〜 今年のクリスマス礼拝は21日だ。その一週間前の日曜日に、教会学校のページェント(=小劇)がある。梨沙は、そのページェントを英語劇にしたくて、脚本を書いていた。 『宮本梨沙様 ページェントの英語劇、大変よく出来ています。ですがあと少ししかありませんが、果たして中学生達にそれが出来るでしょうか? 今から、日本語に直してもいいのではないでしょうか?
橋爪牧人』 メールは単純で無機的なものだった。最初メールの名前を見た時の梨沙の歓喜は、たちまちの内に消え果ていた。 ― 先生って、結局わたしを単に、CSの都合のいい教師としか見ていないんだわ……。 哀しみと怒りが少し湧き起こったが、梨沙は直ぐに頭を振った。 ― ばかばかっ! 梨沙ったら、利己的なことしか考えていないんだ。これは単なる奉仕活動。自分のエゴは捨てなくちゃならないくせに……。一体、何のために教会なんかに通っているんだろ? 梨沙は自分の身勝手さに、自分自身が許せなくなった。いつまで経っても、自分は“本物の”クリスチャンになんかなれそうもない……。 梨沙はパソコンに向かった。 『橋爪先生へ 英語が難しかったのなら、済みません。少し考えさせて下さい……』 梨沙の手が止る。 『ところで、先生がご結婚なさるって、本当ですか? 『ユースの会』のみんな、噂してますよ^^ 宮本梨沙』 なんて意地が悪いんだろ、と梨沙は自己嫌悪に陥った。けれども、しばらくそのデジタルな字を眺めていたが、削除せずそのまんま、さーっと送信をクリックする。あっという間に、そのメールは電子と共に牧人のパソコンに入って行ったのだ。 梨沙は両手で自分の長い髪をかきむしった。そして額を覆う。深い溜息……。疲れがどっと押し寄せて来る。梨沙は暗い夜空を窓越しに見上げると、サーッとカーテンを引いた。 結局、メールは来なかった……。そして日曜日がやって来た。 ーーー◇◇◇ーーー いつもの日曜日のように、梨沙は早起きして教会学校へと向かった。まだ11月だというのに、どことなく肌寒い雨の日だ。 けれども一歩中に入れば、それはやはり神聖な場所の佇まいが、そこかしこにある。カトリックのような仰々しいステンドグラスの窓や、マリア像やキリスト像は皆無だが、今日の担当のオルガニストがオルガンを練習しているのか、会堂からは微かにその響きが聞こえ、教会学校のある部屋は子供たちで賑やかだ。 長老(*教会の役員)の一人である、恰幅のいい林と言う60過ぎの信者のオジサンが、いつものようににこやかに梨沙を出迎えた。 ふと目を上げると、目の前に牧人が立っていた。牧人は余り背が高い方ではないが、けれども圧倒的な存在感があるのだ。それは“オーラ”と言い換えてもいいかも知れないが、けれどもかえってどことなくとっつきにくい。 「おっ、宮本さん、お早う」 「なに、これは?」 ― あの林さんと同じように言わないでよ、先生! 思わず梨沙の口から、次に又しても出てきた言葉。 「色々噂はあるみたいだけれど、今は僕はその気は無いから。勘弁して欲しいな」 数秒の沈黙。けれどもちょうどいいことに、鐘が鳴った。 ― だからわたしって、嫌われるんだわ。嫌われることしか言えないんだ……。元カレの穣(みのる)とも……そのあと出会った男の人達とも……。結局、友達止まりか知人としてしか付き合えなかったのは……。
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2008/12/23 |
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