やがて、冬になり正月も近づいた頃、アカのお腹が膨らんできた。しかも時々お腹が痛むのか苦しそうにする。
 どうやら、お腹の中の小鬼が寝返りをうつせいらしいかった。
 少しでも楽になるように、アカのお腹を藁でこすってやりながら
「まったく、寝相の悪い奴だ。おい静かに寝ろ。」
 そうブツブツ文句を言うしか、吾介にできることはなかったんだ。
 そんな調子だから、アカは仕事なんかできないよ。
「なぁ、吾介。お前の馬はもう使いものにならんよ。かわいそうだが諦めて、早いとこ新しい馬に替えろ。」
 見かねてそう忠告してくれる馬方仲間もいたけれど、吾介はもちろん首を横に振ったよ。だって、アカは小鬼がお腹にいるだけで、病気じゃぁないんだもの。
「アカ、勘弁してくれよ。
 俺があの小鬼に助けてやると言ったばっかりに…」
 吾介はアカのお腹をさすりながら、一日も早く春になるように、神様にお祈りしてた。

吾介後悔する


 やがて、吾介とアカにとって長い冬がとうとう終わった。
 桃の花が咲いているのを見た吾介は、小躍りして喜んだよ。
「おい、桃だ!桃の花が咲いたぞ!
 アカ、やっと楽になれるぞ!」
 桃の枝を片手に、吾介は厩に飛び込んだ…ところが…


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