「吾介さ−ん、困ったことになっちゃったよぉ…」
アカのお腹から、小鬼の情け無い声がした。
「ど、どうした?しっぽの怪我が治ってなくて、まだ腹の中に居させてくれとでも言うのか?」
「いや…怪我はすっかり良くなったよ。
ただ…ここで、一冬すっごく楽させてもらったせいか、俺太っちゃったんだ。それで、アカの喉が狭くて出られないんだよ。どうしよう…」
「どうしょう…って…出てくれないと困るじゃないか!約束どおりさっさとそこから出てくれ!」
「そう言われても…無理に出るためには、アカの喉を裂くか、お腹を裂くかしないと…」
「…な!?や、やめろ出るな!…い、いや、しかし…出てくれないと困る…あぁ、どうすればいいんだ。」
「あの…、アカの口をおもいっきり大きく開けさせてくれないかな…そうすれば何とかなると思うんだけど…」
「口を大きく!?よーし判った!
アカ、ほら口を開けろ!」
吾介はアカの鼻面を掴むと、口を開けさせようとした。ところがアカはいきなり鼻を掴まれたのにびっくりしたのか、反対に口をしっかり閉じてしまった。
「アカよぉ…頼むから口を開けてくれよぉ…」
吾介はもう半分泣きながらアカの口を開けようとした。お腹の中の小鬼も何とかしようとゴソゴソやっているのだけれど、アカはますます歯をくいしばるばかり…
どれほどの時間がたったのだろう…いつの間にか日はとっぷりとくれ、疲れ果てた吾介はアカの前に座り込み、思わず
ハァーッ
でっかい、溜め息とも欠伸ともつかないやつを一つ…すると
ハァーッ
アカもつられて、でっかい欠伸を一つ…その途端、ポーンとアカの喉からミカンくらいの大きさのものが飛び出した。
シュルルッ…とそれは大きくなり…
そして、吾介の前には、まるまる太った小鬼がニカニカ笑って浮かんでたんだ。
「世話になったなぁ、吾介さん、アカ。
お礼にアカを今の百倍の力持ちにしてあげるよ。」
小鬼にそう言われ、うなづこうとして、吾介はちょっと考えた。
「そいつは遠慮しとくよ。
力持ちになったら、きっと欲をだして無理に沢山の荷物をアカに運ばせたくなるよ…それじゃあアカがかわいそうだから…それより、元気で病にかからないようにしてくれないか?」
「ああ、判ったよ。そうしてあげるよ。」
そう言うと、小鬼は厩の窓から外へ飛び出した。
「さよなら、本当に助かったよ。ありがとう!」
「気を付けてなぁ…もう里で悪さはするなよぉ」
小鬼は風のように空を飛んで、山へ帰っていったんだ。
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