昔々、街道沿いの小さな村に吾介という馬方がいたんだよ。
 え?馬方って何かって?
 そうだねぇ…今の職業で言えば運送業者…ってとこかな?もちろん昔のことだから、車じゃなくて馬を使うんだよ。
 吾介の馬は「アカ」という名前で、とってもきれいな鹿毛の馬で、その上、性格もやさしくてね…
 ただ、ちょっとばかり体が弱くて、無理をするとすぐにお腹が痛くなって、吾介を心配させていた。
 吾介はアカが大好きだったから、あんまり重たい荷物を背負わせたり、長い道を無理に歩かせたりしなかった。
 だから、吾介はいつも貧乏で、大好きなお酒も十日に一度位しか飲めなかった。
 でもね、別に不平を言うわけでなく、アカと吾介は毎日仲良くのんびりと暮らしていたんだよ。
 ある年の秋も終わりに近い頃、吾介は頼まれて山奥の小さな村まで魚の干物や塩なんかを運んでいった。
 そして、無事に荷を下ろし、アカの手綱を引いてポコポコと家に帰る途中、峠のお地蔵様の前に差しかかった時…
「吾介さん…吾介さん…」


 どこからか、小さな声が聞こえてきた。
 吾介は辺りを見回したけど、アカと自分がいるだけだ。
 …こりゃ、空耳かな…
 そう思って歩きだそうとしたところ、また声がした。
「ここだよ、お地蔵様の後ろだよ」
 言われるままに、お地蔵様の後ろを吾介はのぞき込み…
「なんだぁ?お前は?」
 そこには、変てこな奴がいた。
 大きさは…そう、猫ぐらい。
 顔は猫のようにも、人のようにも見える…で、バサバサの髪は金色だ。
 身体は人間の子供のようだけれど、緑色の水干を着ているので、本当のところはよく判らない。
 その上、そいつは頭の上に一本の角と、お尻に牛のようなしっぽが生えていた。
 吾介はびっくりして、しばらくは何も言えずそいつを見つめていたんだけど、ふと気が付いた。そいつがしっぽにひどい怪我をしていることに…


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