「その馬の、お腹を貸しておくれよ」
「アカの腹だってぇ…?!!」
「うん、そうだよ。
 さっきも言ったように、俺は寒いのは苦手でね、冬になると暖かいところにこもって、寝て暮らすんだ。
 実は俺さ、今日の朝からここに隠れて、道を通る馬や牛を見てたけど、あんたの連れてるその馬くらい、きれいで性根の良さそうなのはいなかったよ。
 そいつのお腹の中で一冬ゆっくり眠らせてくれないかなぁ…ねぇ、お願いだよ、吾介さん」
 小鬼にそう頼まれて、吾介は困ってしまった。
 だって、アカはもともと腹を壊しやすいのに、小鬼なんかに腹に住み込まれたらどうなるか判らないもの…とはいえ、助けてやると約束してしまったし…
 吾介が悩んでいると、後ろにいたアカがブルルッと鼻を鳴らした。
 そして、小鬼のほうに首を伸ばして匂いをかいで、うなずくように首を振ったんだ
「俺をお腹に入れてくれるの?」
「お、おい!いいのかアカ?」
 喜んだのは小鬼でびっくりしたのは吾介だ。
「まぁアカがいいって言うのなら…おい小鬼、腹に入っていいが、中で悪さするなよ。」
「うん!ありがとう。
じゃあ、ちょっと口を開けとくれ。」
 アカがアーンと口を開けた途端…キュルルルル…小鬼の身体は縮んでキンカンの実くらいになって、ぽ−んとアカの口に飛び込んだ。
 …ゴックン…
「アカ、大丈夫か?」
 吾介が聞くと、アカは鼻面をこすりつけてくる。
 軽く首を叩いてやってから、今度はアカの腹に向かって声を掛けてみた。
「おい…小鬼。そこにいるのか?」
「ああ、いるよ。思ったとおりここは気持ちいいよぉ」
 小鬼の声は本当に気持ち良さそうで、もう半分寝ているみたいだった。

いるのかな?


「おいおい、まさかず−っとそこに住みつくなんて言うんじゃあないだろうな?」
「心配しなくていいよ…春になったら…桃の花が咲く頃には、しっぽも治るだろうし、すぐに出て、山に…帰る…よ…じゃあ…お…やす…み…」
 それっきり、小鬼の声は聞こえなくなっちゃった。
 …で、吾介はアカを連れて家に帰ったんだよ。


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