金色の牡馬は、普通の馬が三日の距離を三時間で駆け抜けて、魔物のゲルが見えた時、ぴたりと立ち止まったのです。
「どうしたの?」
 尋ねる男の子に、馬は言いました。
「お前が魔物の元に行けば、本当に、もう魔物は、私たちを苦しめないのだろうか?
 そもそも、なぜ魔物がお前を欲しがったのか気にかかる。」
「では、どうするの?」
「草むらに隠れろ。
 私は魔物に呼び掛けて、なぜお前を欲しがっているのか聞いてみよう。馬にならば気を許して、真実を語るかも知れない。」
 金色の馬に言われたとおり、男の子が草むらに隠れると、馬は魔物の小屋に近付き、一声嘶き、出てきた魔物に問いかけました。
「私はお前に苦しめられた馬群の牡馬。我が一族が二度と苦しまないよう確かめに来た。人間は満月の夜に子どもを渡せば、それで大丈夫と言っているが本当か?」
「ホウホウ、賢く勇敢な牡馬よ、教えよう。
 魔物の魔力は、子どもの生き肝を喰えば高まる。
 更に百年に一度、特別な夜が来る。その夜に喰らえば、私の力は百倍になるのさ。」
「百倍の力?それを手に入れてどうするのだ?」
「手に入れたら…私はこの草原の支配者だ。
 呪いで病気にして脅さなくても、好き勝手に人も羊も馬も食い放題になるんだよ。」
 そう言うと、魔物はいきなり巨大な刀を振りかざしたのです。
「あぶない!逃げて!」
 隠れていた少年が、気がついて叫ぶと、金色の馬は一飛びで男の子の所に来て、その背に乗せると、風のような早さで走り出しました。
「おのれ!逃がすか!」
 魔物が投げ付けた刀は、くるくる風車のように回り、ざっくりと、馬の足を四本すべて切り落としました。
 しかし、馬は空を飛んで逃げます。

逃げろ!


「ええい!これでどうだ!」
 魔物は再び刀を投げ付け、馬の胴体を切り落としてしまいました。
 金色の馬は、その首に男の子を乗せて、なおも飛びましたが、ついに力つきて草原に落ちてしまいました。
「馬よ、金色の馬よ死なないで」
 馬の首にしがみついて、男の子はなきました。
「泣くな…魔物の思い通りにはさせぬ。必ず助けてやるから…満月の夜までに、あの魔物を油断させろ。できるな?」
 そして金色の馬は動かなくなったのです。


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