広い広い草原で、たくさんの羊や馬と、両親と子ども達…四人の女の子と一人の男の子が住んでいました。
 ある時、大切な羊や馬達が病気になってしまいました。今までに、見たことの無い病気です。
 困った父親は、草原の向こうに住むという賢者に、智恵を借りようと旅立ち、馬を三日走らせて、やっと草原の真ん中まで来た時、一人の老婆に出会いました。

魔物との取り引き


「おまえさん、草原の果ての賢者の所へいくつもりだろう?でも無駄だよ、賢者にだって、あの病気はなおせないよ。」
 父親はびっくり
「なぜお前は、わしの羊や馬達の病気を知っているんだ?」
 老婆は、おかしそうにケラケラ笑いながら答えました。
「知ってるさぁ…だって、お前さんとこの羊や馬を病気にしたのは私だもの。」
「なんだって!?」
 その時、父親は老婆の口の中には鋭い牙が有り、目が金色に光り、その上、額には真っ赤な目がもう一つ有るのに気付きました。
 老婆は、人喰い魔物だったのです。
「病気を治してやってもいいよぉ…でも、ただじゃあ、いやだけどね」
 父親ははらわたが煮えくり返りそうだったけれども、じっと堪えて魔物に聞きました。
「何が望みだ?」
「あんたの所の末っ子は男の子だったねぇ。たしか今年10才だっけ…あの子をおくれ。」
「な、なんだと!!!」
「おや、嫌なのかい?
 五人いる子どものうちの一人を惜しんで、羊や馬を全滅させるかい?そうなったら、あんたの家族はどうなるだろうねぇ…」
 こう魔物に言われては、父親には魔物と取りひきするしかありません。
「ふむふむ、よい算段だよ。では、病気は治してあげよう。あんたが家に帰ったら、羊も馬もぴんぴんしてるさ。
 子どもをよこすのも、すぐでは名残惜しかろう。そうさね、今夜は満月だ。この月が、痩せて太って、再び真ん丸になる夜までに連れておいで。
 もし、約束を破ったら…こんど病気になるのは、羊や馬だけではすまないよ。」
 父親は力なく馬を五日歩かせて、家族の所に、帰りました。


  



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