キャリア・コンサルタントの部屋


 代表がNPO法人生涯学習認定の資格「キャリア・コンサルタント」を2004年2月に取得しました。キャリア・コンサルタントとは、新就職、再就職、資格の取り方、キャリアの作り方など、個人個人の立場に立ってアドバイスすることを主な業務としています。そこに傾聴をはじめとするカウンセリングの手法を応用することにもなります。ワイズリンクでは代表の資格取得を機会にして、このキャリア・コンサルティングを業務として取り組むことにしました。皆さんのキャリア、仕事について何なりとご相談ください。直接お会いして面談の中でコンサルティングいたします。ご希望の方はご連絡ください。

営業時間 平日の昼間
料金 45分〜1時間で3500円
コンサルティング方法 面接及び電子メール
担当 代表または他のキャリア・コンサルタント

代表のキャリア・コンサルタントとしての考え方を下記に書きます。参考にして共鳴いただける方は、ぜひご相談ください。

 

アイデンティティと職業選択

私がキャリア・コンサルタントとして職業相談をしているとき、ある30代の女性がクライアントとして相談に訪れた。彼女は、これまで秘書の資格を活かして、その職務を10年以上にわたって行ってきていた。相談内容は、秘書の仕事に限界を感じたので、弁理士の勉強を始め、資格を取るまでのつなぎとして、弁理士事務所に勤務したいと思っている。ついてはどのように職場を探したら良いかというものであった。就職のためにはどのような手はずが必要か、またどのように就職情報を集めたら良いか、さらには履歴書や職務経歴書の書き方はどのようにすべきか、という相談内容であった。
 そのクライアントと対面しながら、私は彼女の経歴に記されている秘書としての仕事について聞いてみた。その結果、彼女は英語がかなりできることもあり、有能な秘書として働いてきたことがよくわかった。しかし、彼女によれば、秘書という仕事は中途半端であり、専門職として認めてもらえない、将来に不安を感じている、とのことであった。それで思い立って弁理士の資格取得を目指したのだという。
 彼女の話を聞きながら釈然としない思いが湧いてきたので、私は、「秘書の仕事は将来性がないのですか。秘書の仕事を続けないという選択は秘書の仕事が社会的に認められないからですか」と質問した。彼女からは、「そんなこともないが、秘書のスキルは抽象的であり、将来性に疑問を感じている」とのことであった。結論として「秘書をとにかく辞めたい」のだという。私は、「弁理士の資格試験に合格する確率は、ご自分ではどのくらいだと思いますか」とさらに質問した。彼女の答えは、「まだ勉強を始めたばかりである程度の自信はあるが今のところはわからない」とのことであった。私は、「弁理士の資格試験はかなり難しいものです。受からなかったときはどうするのですか」と聞いた。すると彼女は「受からなかったら、秘書の仕事に戻るつもりだ」とのことであった。
 私がその場で出した結論は、「弁理士のための勉強は続けても良い。でも受かるか受からないかは半々だと考えるべきだ。受かれば良いが、受からないというリスクもある。だから、それはそれとして秘書の仕事を続けたほうが良い」というものであった。彼女は「あなたは秘書の仕事を辞めないほうが良いという意見なのですね。でも秘書の仕事は、スキルと言えるほどのものでもないし------」と彼女のほうも釈然としない様子であった。そのうちに40分あまりの相談の時間が経過してしまった。最後は「ちょっと私も考えをまとめたいので、またいらしてください」と私から言って帰ってもらった。
 それから数日の間、私は彼女のことが気になっていたので、他の仕事をしながら彼女の職業選択について考えてみた。そして思いついたのが「彼女の職業選択にはアイデンティティがない。私が秘書の仕事を辞めるのに反対したのは、秘書の仕事と弁理士の仕事との間に彼女自身のアイデンティティが認められないからだ」ということに気づいたのである。私が反対したのはそのためだったのだという考えに至ったのである。次回の面会ではそのことを言ってみるつもりになったのである。
 資格時代の今、各種の資格取得を目指す人は多い。資格を取得して有利な条件で再就職したいと考える人が多いのだ。資格取得のためには勉強が必要であり、その努力については異論を差し挟む余地はない。しかし、資格万能かというとそうでもないのである。私自身もいくつかの資格を保持しているが、資格があるからという理由だけで仕事をしてきているわけではない。また、資格があるからと言って、就職や独立が可能になり、それだけで生活の糧を得られるというものでもない。まして勉強途上では試験に合格するという保証はないのである。
30代以上の再就職にとって大事なのは、それまでの間に携わってきた職種、つまり経歴ということだが、それを活かして、つまり自己のアイデンティティを大切にして職業選択をするべきなのではないかと思うのである。今回のクライアントの場合ならば、秘書という仕事の延長線上に、キャリア・アップを図って、次の仕事を探すべきではないかと思うのである。もちろん、弁理士の資格を目指すことは悪いことではない。だけれども、秘書の仕事と弁理士の資格とは一貫性のあるのもではない。とするならば、秘書の仕事を続けながら、その一方で許される範囲で弁理士を目指してみてはどうだろうか。対面しながら明確にできなかった今回のクライアントについての私の釈然としない気持ちを説明すれば、そういうことではなかったのか、と明確になったのである。
アイデンティティとは「自己同一性」と訳されることもあるが、職業選択においてのアイデンティティとは、自分自身の経歴とか性格とかに合致した一貫性のある職業選択といった意味ではないかと思う。キャリア・コンサルタントとして仕事をしていると、アイデンティティというものを大切にしたほうが良いと言いたくなるクライアントに多く出会うのである。私としては、そこを大切にしながら、職業選択のお手伝いをしたいと考えている。

 

多様化する雇用形態

 2004年7月30日に発表された日本の完全失業率は4.6%であった。年初の5%台からは改善されているとは言うものの、依然として厳しい雇用状態を示している。
 キャリア・コンサルタントとして相談業務に当たっていると、失業者として再就職を目指しているクライアントに多く出会う。30歳までの失業者は次の職場も見つけやすく、こちらも気楽に相談できる。ところが、40歳を超える失業者は何回も面接し希望が適わなかった人も多く、再就職は困難を極めるのである。こちらとしても重たい気持ちで相談に応じることになる。一度不合格になってもめげることなく応募してください、と励ますしかないし、それで再就職が決まる人もいるのだが、決まらない人も一方で多いのが現実である。もっとも就職先が決まらない場合はもう一度訪れるクライアントが多い。ところが、決まってしまえば会う用件がなくなるというのがキャリア・コンサルタントの相談業務である。
 そういうクライアントに必ず言うことは、現在の日本の企業社会において進行している「雇用形態の多様化」ということである。以前の日本社会では終身雇用制を前提にして正社員として雇用されるのが当たり前であった。ところがバブル経済崩壊以後の右肩下がりの経済状況の中で、リストラされる正社員が多く生まれ、その一方で、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなどの雇用形態によって雇用される社員が増加してきているのである。
雇用する企業の側から言うと、正社員として社員を雇用すれば、固定費として長期的な費用として計上しなければならない。前述の雇用形態ならば、仕事のある時期だけの雇用で済むのであり、変動費としての費用性格を持たすこともできる。もちろん人件費自体を減少させたいという意識が企業側にあるのも事実だが、それ以上に財務上の固定費を減らすことが企業にとって急務なのである。その結果、企業としては前述の雇用形態を採用することになる。雇用される側の我々にとっては、正社員のほうが一般的に有利な就業条件になるのはわかっている。しかし正社員の募集は相対的に少なくなっているのである。
そこで、キャリア・コンサルタントとしては、再就職に当たって契約社員でも派遣社員でも良いから、とにかく就職することを目指すようにリードすることになる。正社員よりは条件が悪くなるのは止むを得ないのであるが、それでも失業を長引かせるよりは良いと考えられるのである。また、派遣法で認められている派遣社員については、紹介予定派遣と言って、会社と社員が合意すれば正社員としての採用に切り替えることも可能なのである。それが、どういう形態でも良いからとにかく就職しなさい、とリードするうえでのキャリア・コンサルタントの根拠にもなっているのである。
もっとも、クライアントのほうも、そうした時代状況を知ってか、自ら進んで派遣社員などの雇用形態を求める動きが出ている。つまり、たとえば、資格取得までに時間がかかるので、それまでの間は派遣社員として働こうといった活用が可能である。また子育てのためにはそうした雇用形態のほうが便利だと考える人も増えている。派遣社員のほうが社内の煩雑な人間関係に束縛されることもなく、自由な気持ちで働けるといった利点もあるようだ。
こうした雇用形態の多様化によって、会社と社員との関係も変化の時代を迎えている。以前は会社への所属意識を強く求められ、もっと言えば会社への従属が必要であった。その結果、長時間の残業など、過酷とも言えるような就業が正社員には求められてきた。しかし派遣社員ならば、社員自らのライフスタイルに合わせての就業が可能であり、社員の側のメリットも存在すると考えられる。給料は安くてもゆとりのある働き方をしたいと考える人には、契約社員や派遣社員という雇用形態は有利なのである。そこには、働く社員の側が個人主義の意識を強めているという傾向を読み取ることができるのかもしれない。

 

成果主義の拡大と再就職

 ビジネス書籍において、成果主義をテーマにしたものが多く出版されている。現在、大企業と中小企業に関わらず、多くの企業が処遇における成果主義を採用する傾向にある。それを反映し、成果主義をテーマにした書籍が出版され、ビジネス・パーソンに読まれているのである。キャリア・コンサルタントとして相談業務をする場合も、この日本企業の新しい傾向を念頭において、再就職支援なり、就業支援を行われなくてはならない。
そもそも成果主義と能力主義とは意味の異なるものである。「能力主義とは、中長期的視野に立って、人材の開発・育成を図ることを目的とし、能力を評価して処遇を行う考え方」である。これに対し「成果主義とは、実際に達成した成果・業績を通して、それを評価して処遇する考え方であり、能力主義よりも短期的で顕在的な結果を重視する」ということになる。社員を評価するというプロセスを経ていることでは共通しているが、その制度と運用のあり方には違う性格をもっている。
この成果主義と能力主義の違いを念頭において考えれば、現在は能力主義から成果主義への転換が行われていると言える。そもそも日本的雇用慣行である年功序列制度には、能力主義と言える要素を含んでいた。ただ年齢を重ねていけば昇給・昇格が行われるというのが年功序列制度だと考えられがちだが、ここにおいても昇給・昇格などの処遇は社員ごとに能力を評価して、別個に考えられてきたし、実際社員間の出世競争は熾烈を極めていたのである。
そうした能力主義には、社員を評価するというプロセスにおいて曖昧さ、すなわち客観性の欠如などの問題点を抱えていた。上司に気に入られるなどの情実的な要素が出世の条件となり、必ずしも正しい評価が適用されてこなかった。そこで、売上高とか利益とかの数字としての業績に基づいて社員を評価しようという成果主義が注目されてきたのである。こちらは比較的、客観性をもちやすく、公平な評価ができると考えられたのである。ただしその背後に、人件費総額を抑えたいという経営者側の思惑があったことも事実であろう。
 こうした成果主義が採用され、その社員の短期的な売上高とか利益が処遇に反映されることになると、これまで会社とかその経営者とかが背負ってきたリスクというものを社員自らが引き受けることになったのである。つまり社員自らがリスクテーカーとしての役割を果たすことにつながっているのである。高度成長期だったならば、リスクは会社とかその経営者が背負っていることに何の疑問を差し挟む余地はなかった。社員一人ひとりの成果によって処遇が変わるということは、そのリスクテーカーとしての役割が下部の社員に回ってきたということである。成果主義の適用によって、同じ年齢でも給与に大きな差が出るということは、社員一人ひとりがリスクを背負っていることを示している。
 それでは、成果主義が増える傾向にある現在、再就職に当たってどのような変化が生じているだろうか。すでに数年前になるが、再就職のための面接において、面接官と応募者の間に次のような会話が交わされたという話を聞いたことがある。すなわち、面接官が「あなたはどれくらいの給与を希望されていますか」と応募者に問いかけ、応募者が「○○百万円くらいは必要なのですが」と応答した。すると面接官は、「○○百万円が欲しいならば、あなたの売上げは△△千万円にならなくてはいけませんね。それだけの自信はありますか」と尋ね返したのだという。要するに成果(業績)に応じて、給料はいくらでも高くなるし、逆に低くもなるというのである。言ってみれば、この会社は完全な成果主義を志向していたことになる。
 成果主義を導入した会社では、ある意味では、採用の門戸は広がっていると見ることもできる。ある程度の選別はもちろん行われるが、採用した後に成果が上がれば社内の立場は保証されるが、成果が上がらなければ解雇まであり得るということでもある。こうした個人主義の傾向が、終身雇用制度の終焉の一方で進行していると考えることができる。
 そのことは別の困難さを生じさせている。つまり、以前は顧客というものは企業に帰属していたのだが、転職者は自らが顧客を保持して次の会社でも有用な人材になっていかなければいけないということである。顧客を保持できていれば転職に有利に働くのである。また顧客を保持していない場合でも、少なくても顧客を開拓するノウハウ、スキルを持っている必要がある。これは営業部門に携わる社員だけの課題ではない。経理などの管理部門でも結局は顧客を開拓できる能力が問われているのである。
 キャリア・コンサルタントとして相談業務をしていると、実際問題として顧客を保持している人は稀である。顧客を開拓するノウハウ、スキルを持ち合わせている人も、現状では残念ながら少ない。特に管理部門への再就職を目指している人は、そもそも顧客という概念を持っていない求職者も多い。しかし、成果主義の時代になって、会社への貢献は、突き詰めれば顧客獲得によって実現できるのである。そうした就労における価値観の変化を、成果主義の導入が示していると考えられる。
 


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