四郷版画館開館にあたって




 私の父親の出身地三重県一志郡白山町は、日本のエッチングの先覚者と
言われる西田武雄の生れた七栗(ななくり)の隣の山村です。母親の育っ
た四日市の富田は、国際的木版画家木下富雄・佐藤宏の出た漁村です。美
杉村で生をうけた私は、4・5歳の頃に四日市に移り住みました。中学か
ら高校という多感な時期に約7年間室山に住んでおりました。60歳近く
になって思いがけなくも当館を譲り受け、再び四郷の住人になったのです。
 伊藤傅七が川島紡績へ、ろ馬を駆って通ったであろう山道を歩いたり、
伊藤小左衛門の忘れ形見とも言うべき、亀山製糸室山工場(旧伊藤製絲・
木造明治建築)をスケッチしたり、酒の香漂う醸造所や土蔵の路地を散策
するごとに、「よごう」への愛着みたいなものが湧いてきました。それに
もまして、当館の所在地が四郷村発祥の地であるということに、不思議な
縁(えにし)を感じ、「四郷版画館」と命名させていただいたのでした。
 コザエモンさんやデンヒチさんのみた夢と、キノシタさん・サトウさん
の目指した道は違うけれど、時代を超えて今もいろいろなことを教えてく
れています。これらのことを一人でも多くの方々に知っていただくために、
開館させていただくものです。






  四郷版画館       

小原 喜夫