Restaurant Jean Moulin since 1985

    

    神戸・北野界隈は、もともと外国人の居留地として発展した高級住宅地であり、明治後半から大正にかけて、外国人
    建築家 によって建てられた木造2階建ての洋館が、細い坂道で結ばれて点在している。いくつかの洋館は異人館と
    して一般公開され、観光客の訪れる街となっている。この店はそんな地域の一角にあって、素晴らしいロケーションに
    あるのだが、食事に訪れる人は少なくとも70mの坂道を歩かなければならない。しかしそれも、食前の適度な運動に
    なっていいかもしれない。
  
     『レストラン ジャン・ムーラン』は1977年に同じ北野町の安籐忠雄氏設計によるローズガーデン地下1階にフランス料
    理のレストランとしてオープンした。フローリングの床に、壁、天井とも白い漆喰のシンプルなインテリアであった。オー
    ナーシェフの美木剛氏との出会いは居宅(神戸の家)の設計からであるが、その頃のジャン・ムーランは少し東側の北
    野坂と、山本通りの交差点に建っている建物の1階に移っていた。居宅の竣工後すぐにレストラン2度目の改装に関わ
    り、続いてパティスリー・ジャン・ムーランのインテリアも手がけた。

    この計画は、もとスイスの貿易商社社長の居宅をレストランとして改装することであった。昭和20年以前に建てられた
    この建物は、社長交代の度に改装されたようである。サンルームと使用人室が増築され、窓はアルミサッシとなり、暖
    炉も取り払われ煙道だけが残っていた。計画にあたって、オリジナルの部分の骨組みは可能な限り利用した。ただし、
    元の用途が住宅だったことは隠すよう努め、あくまでフランス料理レストランとしての居心地の良さを追求した。客席は
    2階の床を抜いて吹き抜けとし、インテリアはローズガーデンでオープンした当時のシンプルなインテリアを再現するよ
    うに、フルーリングの床に白い壁・天井とした。木製の縦長両開き窓と暖炉を新設し、この建物が竣工した当時に持っ
    ていたであろう雰囲気も再現したつもりである。約半世紀もの間この地にあって、神戸の街の変化を見続けてきたこの
    建物が、レストランとして生まれ変わり、多くのグルメ達に親しまれる建物となることを願っている。

    [この内容は、1990年6月18日号 日経アーキテクチャーに掲載されたものを編集したものです]   

    ※ 『レストラン ジャン・ムーラン』 は惜しまれながら閉店致しました。ご了承くださいませ。

  
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外観-2
レセプション
外観-1
客席(上から)
DATA

  工事場所  兵庫県神戸市
  
  延床面積  177.58u(54坪)
  
  構造      木造
 
  工程   1989年9月〜1990年2月  
廊下
エントランス