住岡夜晃選集(第一巻) 『若い友のために』
             

 

刊行のことば
 最近の経済成長は、人間に多くの生活上の便宜をもたらし、衣食を富かにしてきたが、しかし、高度の機械化は、極度の人間疎外を生んでいる。人間は衣食住だけでほ生きられない精神的な存在である。内に人生が問われてくるとき、自己をどこにうちたて、どこに生きる根拠を置き、どこに生きる意義を見出すべきか、究竟的な帰依処が問われてくる。しかもこれとこたえるものを持たないのが現代人の大半ではあるまいか。
 このような時代に、時代とともに生き、万人に課せられた課題を自己において問い、しかも、これらを親鸞の教法において解決し、生死大海の大船をあきらかにし、無明長夜の燈炬(とうこ)を掲げて下さった先師住岡夜晃先生の教化に遇いえたことは、われら遺弟のこの上ないよろこびである。
 されば、今こそ、先師の教が現代人の課題を解く光明となることを願わずにはいられない。ききに、先師の十三回忌を(ぼく)し、住岡夜晃全集二十巻を刊行したのは、この願いのゆえである。
 しかし、住岡夜晃全集はすでに出版以来十年を経て、もほや一般には入手不可能である。ここにおいて、全集を底本とし選集を編さんして普及版としたいという議がおこり、前後ニヶ年の時を費し、ここに選集五巻を刊行することになった。これ一重にあまねくもろもろの人々ととともに、先師の教化をとおして親鸞聖人の教法に接し、混乱のこの時代をこえて大乗菩薩道を進む一人の人の誕生を念願する故にほかならない。
 願わくばこの選集が仏天の冥慮にかなわんことを。
 終わりに刊行をひきうけていただいた山喜房仏書林にあつく感謝する。

昭和46年5月
住岡夜晃選集刊行会
代表 柳田 智照



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