「なにげに」「さりげに」という表現を聞いたことがありますか? 最近の若い人たちにありがちな言葉づかいです。
「なにげなく」が「なにげに」に、「さりげなく」が「さりげに」に変形してしまったのです。
私は、何でもかんでも省略・短縮形を作ってしまうテレビ業界で働いているので、若い人たちが新しい短縮形を発明することについては別に何の抵抗もありません。でも、このケースにはどうしても少し違和感を覚えてしまいます。
それは、この例が「気色悪い」を「キショイ」と略する(これは関西だけか?)のとは根本的に違っているからです。
「なにげなく」は「何気なく」であり、つまり「何の気もなく」=「別に何というつもりもなく」ということです。
「さりげなく」のほうは少し難しくなりますが、まず「さり」は「さ・あり」、つまり「そのようであり」という意味です。
「げ」は「なにげなく」の時と同様に漢字で書けば「気」ですが、「悲しげな顔をする」「惜しげもなく捨てる」という時の「げ」と同じだと考えれば解りやすいでしょう。即ち、「げ」=「そう」。これも若い人たちの言葉づかいですが、「良さそう」を「良さげ」と言うのと同じです。
以上を合せると、「さりげなく」=「そのようでありそうで(も)なく」。これでは解ったのか解らないのか分からないですが、要するに、「明らかに何かを指し示している訳ではなく」「強くアピールすることもなく」ってな感じですかね。
ここまでは素人による分析なので、国文学者に言わせると間違っているかもしれません。ただ、「なにげ」や「さりげ」の部分の解説は少々間違っていても構いません。何よりもポイントは「ない」のほうにあるのだから。
「なにげ」がないから「なにげない」になり、「さりげ」がないから「さりげない」になる訳です。この「なく」を勝手に「に」に変えたりするとどんなことが起きるか?
答えは簡単で、例えば「申し訳なく思う」「惜しげ(も)なく捨てる」を「申し訳に思う」「惜しげに捨てる」と変えてみれば明らかです。下手すると反対の意味になってしまうことになります。
「なにげに」「さりげに」という表現が誰によるものかは知りませんが、これはちょっと失敗作ではないでしょうか。
どうせ短縮・省略形をつくるのなら、「げなく」くらいでどうかなと思います。
それでは「なにげなく」なのか「さりげなく」なのか判らないと言うのであれば、意味として一番弱い「げ」を省略して、「なになく」「さりなく」でいかがでしょう?
あるいは意味のある部分を完全に分解してしまって、1字置きに抜いてきて「なげく」「さげく」なんてのもアリかなと思います。「気色悪い」が「キショイ」になっても(私は決して好きな表現ではありませんが)論理的に抵抗がないのは、「気色」も「悪い」も破壊されてそのままの形では残っていないからです。
ことばって深いと思いませんか?
ちょっと気になったので何気なく書き始めたのですが、気がついたら例によって説教臭くなってますね。もっとさりげなく書けたらなあと思います。ではまた。
Copyright(c)yama-a May.2001
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