人間悪いことはできないものです。K氏からメールが来てしまいました。
ひょっとしてビデオリサーチの社員が読んでいたりしないだろうかと前から気にはなっていたのですが、まさかK氏本人に見つかってしまうとは! 一生の不覚です(笑)
いや、別に僕は法律に触れるようなことも道義的に許されないこともやってはいないつもりですが、それでもK氏に隠れてこんなページをこそこそ運営しているのは気が引けるというものです。
K氏って誰?という読者のためにもう一度書いておくと、彼はビデオリサーチ社の誇るスーパー分析男です(詳しくは「第20回 K氏のデータベース」をお読みください)。
それは1月24日の夜のことでした。帰宅してHP用のウェブメールを開けたら「Kです」というタイトルのメールがあります(ここでは「K」としていますが原文はもちろん本名の姓が書いてありました)。
瞬時にして「げっ、まさか!」と思ったのですが、しかし、差出人を見ると名字はKでも女の名前です。ははあ、さては…。僕はてっきり出会い系サイトかなんかの勧誘メールかと思ってしまいました(そういうの、たくさん来るんですよ)。確かにKという名字はそんなにありふれた名字ではないですが、出会い系サイトの運営者が思いつかないほどではない…。
半信半疑のまま結局メールを開いてみると、あちゃー、やっぱりK氏でした。奥様のPCを借りてメールを書いたとのこと。で、書き出しが、
K(フルネーム)です長い連載ご苦労さまです。
「おや?へー?なるほど!」のKさんです。
なんて、相変わらずお茶目じゃないですか!
僕が「Kさんは多分私のことをご記憶ではないでしょうが、勝手に弟子のひとりと自認しております。お許しください」という返事(タイトルは「げっ、あのKさんですか?」)を書いたら、「これから懇意にいたしましょう」という文章に添えて、彼の最新の分析を送ってくれました。
いやいや、これが久しぶりに読んだK節(鰹節じゃないよ)。豊富なデータに支えられた実にスマートで見事な分析です。
もちろん今回もここにデータを転記するような真似はしませんが、それは主に紅白歌合戦に焦点を当てた年末年始のテレビ視聴動向に関するものでした。この分析のいたるところにK氏らしい切れ味があります。
例えば、今回の越年時のテレビ非視聴世帯の比率は前回よりも増えているのだそうです。安物の記者がこのネタを仕入れたら、すぐに「TVは年々面白くなくなっている」などという安物の記事を書くでしょう。ここ10年間で30%以上の高視聴率番組が激減していること(これ自体は事実)ともきっと結びつけることでしょう。
ところが、越年時のTV非視聴と景気の動向と並べてみると非常に単純なことが判ります──景気の回復・拡大期には年末年始のTV非視聴が増えるのです。K氏によると「テレビがつまらないから帰省・海外旅行に出かけるのではありません!」とのこと。
これが分析というもんなんですよ!
(もしこの分析にこけおどしのハクをつけたければ、景気の動向を数値化して、TV非視聴世帯の割合との相関係数を算出した表を加えれば良いでしょう)
誰であっても、何かを調べようとする時にはその前に自分なりの仮説があるはずです。そのことがいけないとは言いません。ただし、「自説の援用」を大前提にしてデータを眺めてしまうと往々にしてインチキな分析が成立してしまうものなのです。
ただし、多分放送局の間抜け社員の中にはこれを読んで「そうか、別にTVが面白くなくなった訳じゃないんだ!」と膝を打つ人がいるでしょうが、逆にこの分析でそこまでのことが証明されている訳でもありません。
事実はなかなかに複雑なのです。何であれ、ともかく裏づけとなるデータを見つけ出さなければ何も言えないのです。気分で断定することは危険なのです。
ところで、今回K氏の分析を拝見させてもらって気がついたことがあります。
個人視聴率のカテゴリの中で、M3/F3と言われる50歳以上の層を、K氏は「50〜64歳」と「65歳以上」の2つに割っているのです(他にもCやTの層も男女に2分しておられますが)。
ね、やっぱりそうでしょう? それって僕が約10年前から主張してることじゃないですか(詳しくは「第9回 F1神話を打ち破れるか?」をお読みください)。
営業面でどういう影響が出るかが不透明なので、ひょっとすると各局営業セクションからの反対があるかもしれませんが、調査マンの立場からすると50歳と70歳を同じカテゴリに入れることには抵抗感があります。サンプル数の面では充分なはずですから、是非ともK氏が分析に使っているような新カテゴリを設定してもらいたいものです。
僕が最後にK氏にお会いしたのは多分10年ほど前。きっと今やかなり偉くおなりになって社内での発言力も以前に増して増大しているはずです。K氏の鶴の一声で新カテゴリ創設なんてのは無理なんですかね?Copyright(c)yama-a Jan.2006
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