視聴率というものは本来業界の指標であり非常にプロ・ユースなデータでした。
ところが最近は色んな雑誌やスポーツ新聞などで紹介されるので、今や完全に一般視聴者の興味の対象になってしまいました。
実は僕はとある放送局に勤めているので、毎日毎日色んな番組の視聴率を矯めつ眇めつしています。どこまで書けば良いのか自分でもよく解らないのですが、多分20年前よりはこういう話が受け入れられるのではないかと考え、この連載エッセイに手を染めることにした訳です。
一口に視聴率と言っても様々な種類のものがあります。
みんなが「昨日の『伊東家の食卓』は25.7%だった」などと言っているのはその中の1つ、番組平均世帯視聴率です。世の中に出回っているのはほとんどこれだけだと言っても良いでしょう。
世帯視聴率以外には個人視聴率というものがあり、業界内では番組平均視聴率とは別に番組終了時視聴率というものも重宝されています。それ以外にも毎分視聴率という種類の視聴率があり、さらに単にそれらの視聴率を眺めるだけではなく、応用問題として流入流出とかリーチ&フリークエンシーとか視聴分数分布など幅広い分析方法があります。
で、僕がこういう仕事についているので、そういうプロ・ユースのデータを持ち出して、視聴率の様々な実例について書くのはたやすいことです。
でも、このシリーズではそれは控えます。いえ、書くのを控えるのではなく、データを持ち出すのを控えるという意味です。
何故かと言うと、それは契約違反になるからです。
さっきも書いたように、街では「昨日の『伊東家の食卓』は25.7%だった」などと軽く話題にしていますが、実は僕たちはそんなに自由には口に出せないのです。
土日祝日を除いて毎朝9時ごろになるとテレビ局のファックスが動き出します。
ビデオリサーチから各放送局に、火曜から金曜までは前日の視聴率が、そして月曜日には前週の金土日の視聴率がファックスとオンラインで届けられるのです。
で、何故届けられるかと言えば、それは局がビデオリサーチからそのデータを買っているからなのです。いくらで買っているかと言えば、それは口外する訳には行かないのですが、まあさっきも書いたように、我々は非常に多様なデータを購入しているので、年間億単位の金だとだけ言っておきましょう。
つまり、高い金出して買っているデータをタダで無差別に撒き散らすのは我々としてもアホらしいし、またビデオリサーチとの契約上もむやみに公開してはならないことになっているのです。
なのに何でこうもあっさりスポーツ新聞や週刊誌の記事になるかと言えば、可能性としては次の3つが考えられます。
まず、1)は可能性が低いです。それに単に契約しているだけでは、我々と同じ立場なのでむやみにそのデータを記事にしてばらまくわけには行かないので、可能性の高いのは2)でしょう。部分的な使用であれば、ビデオリサーチから許諾を取って記事にすることも可能です。
では、3)は何故契約違反にならないかと言えば、放送局は「自局の広報宣伝活動のためであれば自由にデータを使うことができる」という条項があるからなのです。
そういう訳ですから、僕はここでは「何々の番組が何%だった」と実例を挙げて書く訳には行かないのです。
考えてみれば視聴率調査というのは非常に金も手間もかかる仕事です。ビデオリサーチが何故そんな仕事を継続できるかと言えば、それは日本中の放送局からそれなりの大金を集めているからに他ならないのです。
みなさんは気軽に「あの番組はめちゃくちゃ視聴率が高い」とか「視聴率が低くて打ち切りになった」などと面白おかしく話しているかもしれませんが、その蔭では大金が動いていることをまず知って下さい。
さて、そういう脂っこい話は今回限りにして、次回からは視聴率の色んなからくりについて書いて行きましょう。
Copyright(c)yama-a Mar.2002
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