「ねえねえ、昨日の『スマスマ』見た?」
「見てない。昨夜はお母さんと『月ミス』見ちゃった」
ありがちな会話ですが、では「『スマスマ』を見た」とはどういうことでしょうか? 22時00分00秒から22時54分00秒まで、「SMAP×SMAP」の画面から、かたときも目を離さなかった、という意味なのでしょうか。
「見た」という言葉をそこまで厳密な意味で使っている人はないでしょう。
我々の業界では「テレビがついていた=見た」ということになっています。
「そんな乱暴な」と言われるかもしれませんが、それ以外に測り方がないのです。
もし、「じっと見ていた=見た」とするのであれば、ビデオリサーチの被調査世帯の家族全員に視線センサーつきのゴーグルを装着してもらわなければなりません。
スポンサー筋からは、「テレビがついているだけでカウントされる訳だから、視聴率は過大評価されている」という批判がありますが、必ずしもそうではありません。
テレビをつけっぱなしにして、1時間も2時間もテレビの前から離れている人はほとんどないはずです。
テレビの見方には「専念視聴」と「ながら視聴」の2つがあって、例えばトーク系の番組なら、ながら視聴でもテレビの提供する情報の大部分は伝わります。例えば本を読みながらテレビをチラチラ見ている時、たとえその瞬間視線はテレビに向かっていなくとも、我々は音に反応してすぐに視線を向けます。興味のある話題になったり、CMに入った瞬間面白そうだったりすると、ながら視聴は突然非常に集約度の高い専念視聴に変わるのです。
逆にじっと見ているようであっても、一瞬他のことを考えていて聞き逃したりすることもある訳で、視線の問題だけでは片付けられないのです。だから我々は、「テレビを見る=テレビに視線を向けている」ではなく、「テレビを見る=何らかの形でテレビからの情報を受け取っている=テレビがついている」と解釈しています。
ところで、上記の「見る」の定義は1分ごとの毎分視聴率には適用できますが、「CMや番組を見たかどうか」という場合にはどう考えれば良いのでしょうか?
CMの場合は最短15秒と短いので、上記の定義で大丈夫です(むしろ、1分ごとでは長すぎるので本当は「毎15秒視聴率」が必要なくらいです)。
では、番組の場合はどうでしょうか?
これは我々が「継続視聴」や「流入流出」を調べる時に問題になってきます。例えば、「先週この番組を見てくれた世帯のうち何%が今週も見てくれたか?」とか、「直前の番組を見ていた世帯のうち何%が引き続きこの番組も見たか?」などを調べたい時です。
ここで、もし「見た=最初から最後まで見た」としてしまうと、どんな人気番組でもほとんどゼロに近い数値になってしまいます。それでは分析のしようがなくなってしまうのです。
我々はそういう時に「何分以上見たら『見た』と言えるのか」を定義します。どんな数値でもコンピュータに設定できます。この設定を何種類か変えながらはじき出すと、「何分以上見た世帯が何%」という風に、その番組がどのような見られ方をしているかが判ります(これを視聴分数分布と言います)。
継続視聴/流入流出を調べる時に我々がよく用いるのは「断続3分の1以上」という定義です。
これは「ある番組の3分の1以上の分数を見たら『見た』ということにしよう」という定義で、例えば30分番組なら10分以上、54分番組なら18分以上、114分番組なら38分以上見た世帯が「見た」とカウントされます。合計で10分なら10分以上見ていれば良いのであって、継続して一気に10分間見ていようとも、あちこちザッピングしながら断続的に見ていようが、合計が10分以上であれば同列に扱います。
何故「3分の1」という定義をするかと言えば、これは決して「3分の1くらい見れば見たうちに入るだろう」という乱暴な見解に基づいている訳ではなく、「視聴判定断続3分の1以上」ではじき出した時の数値が番組平均世帯視聴率に比較的近くなるので、テレビ局の視聴率分析屋さんが生理的に受け入れやすくなる、という理由に基づいています。
だから、我々は決して「3分の1くらい見てくれればそれで充分だ」という気持ちで番組を作っているわけではありません。
我々番組の送り手側の本意はあくまで「3分の1と言わず、できれば最初から最後までじっと見ていてほしい」ということですので、念のため。
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