第1回で書いたとおり、関東地区と関西地区の視聴率調査は、無作為抽出された600世帯を対象に行われています。
ところでこの辺で視聴率調査の根源的な問題点に立ち返りましょう。
素人の方がよく言われるのは、「たった600サンプルの調査で本当に正しい視聴率が判るのか?」ということです。
結論から言うと、正しい調査の仕方をすれば、たった600サンプルでもかなり正確な視聴率が判ります。
こういう例を考えてみてください。
10万個の大豆を用意します。そして、そのうちの13,500個を黒く塗ります。すると、大豆全体に対する黒い豆の割合は13.5%です。86,500個の白い大豆を大きな箱に入れて、そこに黒く塗った大豆を追加します。そこからジョッキで掬うかなんかして、ちょうど500個だけ取り出して黒い大豆を数えると何個あるでしょうか?
この場合は掬う場所によって黒い大豆は100個入っていたり5つしかなかったりします。それは何故かと言うと混ぜていないからです。
で、入念に徹底的に混ぜた上で同じことをやります。そうすると、不思議なことに何回やっても黒い大豆の個数は67、68個の周辺の数になります。つまり13.5%内外に収まるのです。僕はこの手の実験をテレビで見たことがありますが、たった500個のサンプルでも本当に見事なくらい全体の状況を反映してくれるのです。
理論的に言うと、仮に500個のうち黒い大豆が71個あったとすれば(この場合黒い大豆の割合は14.2%)、信頼限界95%として誤差は±3.1%です。つまり100回実験すればそのうちの95回までは、真の値(つまりここでは13.5%)は14.2±3.1%の範囲に収まっているはずで、事実その通りです。
だから視聴率調査の場合も同じようにやればこの程度に正しい数字は出てくるはずなのです。
ただし、人間や家の場合は、大豆のように混ぜる訳には行きません。
で、どうするかと言えば、例えば住民基本台帳を基に世帯に番号を打っておきます。仮にその地区に100万世帯あれば1〜1,000,000番までの番号をつける訳です。そして、そこから例えば100世帯を調査対象(サンプル)に選ぶ場合は、10,000(=1,000,000÷100)より小さい数を無作為に選びます。仮にそれが6,371番であったとすればそこから10,000番おきに6,731番、16,731番と拾って行くと、100万世帯から100世帯を抽出する作業が終わります。
このようにやると、人間や家から選ぶ場合でも大豆を入念に混ぜた時と同じくらい均等に散らばって選ぶことができるのです。
ただし、問題はあります。例えば個人情報保護の観点から地方自治体は容易に住民基本台帳を閲覧させてくれませんし、せっかく見せてもらって正しく抽出できても、選ばれた世帯が調査に協力してくれるとは限りません。拒否する世帯が多ければ多いほどデータは歪んでしまうのです。
だから、皆さんにお願いしたいのは、ビデオリサーチ社から協力依頼があったら面倒臭がらずに必ず協力してほしいということです。
ところで、先ほどの大豆に実験例に戻ると、皆さんの中には誤差が±3.1%という数字の大きさに驚いておられる方もあるかもしれません。
悲しいかな、どんなに正しい調査をしても、それがサンプル調査である限り誤差はつきものです。
ビデオリサーチはこの誤差をちゃんと公表していて、例えばサンプル600世帯、視聴率20.0%の時の理論的な誤差は±3.2%です。僕たちプロはこの値をちゃんと頭に入れた上で、視聴率を眺めています。
だから、ひとつだけ言えることは、「先週より視聴率が0.2%高かった」と喜んでいるプロデューサー/ディレクターは馬鹿野郎だということです。
Copyright(c)yama-a Apr.2002
目次へ
次回へ
前回へ