僕たちの業界には「F1神話」という言葉があります。
自動車レースのF1ではありません。20〜34歳の女性のことです。同じ年代の男性のことをM1と呼びます。Fは female の、Mは male の略です。
ビデオリサーチの個人視聴率の区分にはG1〜G9の9種類が用意されており、その中で専ら使われるのがG1と言われる区分です。このG1は性・年齢で視聴者を8種類のカテゴリに分けています。
Cは children の、Tは teens の略です。ちなみにこれらの名称はビデオリサーチ社が正式に採用しているのではなく業界で自然に始まった呼び方であり、CのことをK(kids)と呼んでいる局もあります。
F1神話というのは、これらの視聴者の中でF1を最重要視し、とにかくF1に見てもらえる番組が一番良いとする風潮のことです。
何故F1が一番重要かと言うと、多くのTVスポンサーにとって自社の商品購入に一番繋がるのがF1層だからです。次に重要なのがM1です。この2つを合せて「M1・F1神話」と呼ぶこともあります。
営業からの要請によって、今のタイムテーブルはとかく若い層に受ける番組ばかりが並びがちです。このような風潮に一石を投じようとして、僕は「捨てたもんじゃない50代」というリポートを書きかけたことがあります。
しかし、調べれば調べるほど、M3・F3は商品購買力に欠けているのです。50代と言えば、どこの会社でも部長〜取締役など、会社の中枢を担う人たちであるはずで、この人たち(あるいはこの人たちの配偶者)が30代の平社員より購買力が低い訳がないと思うのですが、金はあっても使わないということなのか、却々良いデータが得られません。
それともっと大きな問題は、M3・F3というカテゴリはあくまで「50歳以上」であるということです。つまり、ここには(理屈の上では)100歳の人も含まれるのです。会社の役員と100歳のご隠居が同じグループとして扱われている訳で、これは全く理解できません。
恐らくこの区分は、平均寿命が60歳台で会社の定年が50〜55歳の時代に作られたものなのでしょう。僕は現行のM3・F3を50〜64歳の「新M3・F3」と65歳以上の「M4・F4」に分割すべきであると主張しています。
アメリカ合衆国に視聴率調査の実態を調べに行った時に、日本からのメンバーのひとりがNBCの人に、「アメリカで一番需要の高い層はどの層ですか」と質問をしたことがあります。
答えは「それはスポンサーによって様々だ」という極めて淡々としたもので、一同は逆に衝撃を受けました。
アメリカの視聴率調査はニールセン社の独占状態にありますが、ニールセンのカテゴリは日本のように重ならずに設定されているのではなく、例えば「我が社のターゲットは18〜35歳女性」「我が社のターゲットは20〜40歳男女」という風に実に鷹揚なのです。このことによって、スポンサー・ニーズは日本のように単一の層に集中することもなく、個人視聴率については実におおらかに運用されているように感じました。
日本のF1神話はある意味で狂乱状態です。
しかし、この狂乱から脱却するためには、どうしても50代の皆さんにもっと商品を購入してもらわなければならないのかもしれません。
Copyright(c)yama-a May.2002
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