第11回 いつも同じ世帯が見ているのか?

かつて視聴率が紙の情報であった時代、つまり今のようにデータの形でオンラインで送られてコンピュータに蓄積したりできなかった時代、我々が放送翌日に手にできるのは単に番組平均視聴率だけでした。

あの頃は、ひとつの番組で毎回同じような平均視聴率が続くと、「きっと毎回同じ人しか見ていないんだ」などという単純極まりない想像をしていたものです。

データ量が豊富になり分析手法も増えてくると、それは全然正しくないことが判ります。人は決して人が想像するようなTVの見方をしていないのです。自分のTVに対する接し方を考えてみれば解ります。

その場合「楽しみにしていて毎週欠かさず必死になって見ている」番組を念頭においてはいけません。そんな番組だけではないはずだし、冷静に考えればそんな番組は少ないはずです。

視聴者は実に落ち着きなくチャンネルを変えながらTVを見ています。初めから最後まで見るというパターンはかなり稀です。先週見たから今週も見るというファンは少数派です。「前の番組に引き続いてなんとなく暫く見てしまった」というケースもあれば、逆に見たかったのに何かの都合で途中からしか見られなかったり、途中までしか見られなかったりというケースもあります。

前にも述べたように、番組平均世帯視聴率というのは毎分世帯視聴率の集積です。だから、例えばこんなことが言えます。

ある60分番組の平均視聴率が10%の場合、両極端として次の2例が考えられます。

  1. 全ての世帯のうちの1割がその番組を初めから終わりまで見て、残りの9割は1分たりとも見なかった
  2. 全ての世帯が60分の番組のうちの6分間を見た

いずれも計算すれば番組平均視聴率としては同じ10%になります。もっとも実際にはこの両者の間のどこかに落ち着くのですが…。

番組のタイプとしては、1)は「長く見せる」という点において成功した番組、2)は「たくさんの人に見せる」という点において成功した番組です。
視聴率を稼ぐためには、この「長く見せる」「たくさんの人に見せる」のいずれかを達成しなければなりません。前者は「見ごたえがあった」ということの証拠であるし、後者は「万人に受けた」ということの証拠です。どちらが偉いということはありません。

ただし、仮にこれが新番組の初回放送であったとすれば、今後見込みがあるのは1)のほうです。なにしろTVをつけた世帯にチャンネルを変えさせなかったのですから。番組宣伝が行き届いていれば、あるいは口コミで評判が広がれば、この番組の視聴率はもっと上がるはずです。

2)のほうはみんなに見てもらったという点では立派ですが、6分でチャンネルを変えられた(あるいは消された)ことを考えると、今後の視聴率の伸びはそう期待できないということになるのです。

ただし、これも以前述べたことですが、番組の型というものがあって、例えばドキュメンタリー系の番組はどうしても1)に近い形になりがちで、バラエティ番組はどちらかと言えば2)に近い形になります。

レギュラー番組を作っている人たちは、この「長く見せる」「みんなに見せる」に加えて「毎回繰り返し見せる」ということを念頭において知恵を絞っているのです。

もしも「いつも同じ世帯が見ている」という形にまで持って行けたなら、その番組はものすごい大ヒットになっているはずなのです。

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