視聴率には誤差があります。
そのことは皆知っています。しかし、理屈の上では解っていても、業界の人間の誰一人として一顧だにしていない、と言って良い状況ではないでしょうか。
このことは第8回の原稿でも触れましたが、今回もう少し深く解説してみようと思います。
視聴率の誤差は下記の公式によって導き出されます。

この公式については、ビデオリサーチ社のさまざまな発行書類に明記してありますし、同社のホームページ上でも説明されています(もっともVR社は、有効桁数を考えてか「1.96」ではなく「2」としています)。
僕も調査担当になった時に数学や統計学の本を読みまくって、なぜこの式で誤差が割り出せるのかを一度は理解しました。ただし、残念ながら、今もう一度説明してみろと言われてもできません。
ま、難しいことは置いといて、ちょっと式の使い方を解説します。
視聴率調査は標本(サンプル)調査です。全世帯に訊くのではなく、特定のサンプルを抜き出して調査しているので誤差が生じます。仮に全世帯に調査をしたとしたら、その結果として得られるのが「真の視聴率」です。真の視聴率とサンプル調査によって得られた視聴率との差が「誤差」ということになります。
標本数というのは(世帯視聴率の場合)何世帯を抜き出して調査したかということです。関東・関西両地区の場合は、ここに600という数字が入ります。
この式を見て良く考えると解るように、視聴率が X%の時と (100-X)%の時の誤差は同じです(見た世帯の割合の誤差と見ていない世帯の割合の誤差が違っていると理屈に合いません)。そして、誤差が最大になるのは視聴率が 50%の時です。
誤差はその時の視聴率の値より小さくなります。考えれば当たり前で、視聴率が 5%の時に誤差が ±6%あるとすれば、真の視聴率が -1%というケースが想定されておかしくなります。
で、註釈の「信頼限界95%」ですが、これは「100回調査したらそのうち95回まではこの範囲の誤差に収まる」という意味です。「じゃあ、あとの5回はどうなんだ?」と言われると、これが分からんのです。「そんな無責任な」と怒られても、あとの5回については数学的・論理的に割り出すのは不可能なのです。
まあ、「100回のうち95回まで合っているなら良しとしようか」という発想です。
ちなみに信頼限界を99%に高めると、公式中の1.96は2.48に跳ね上がります。
さて、この公式を用いていちいち誤差を算出してみると、先週10%だったのが11%に上がったなどと喜ぶのは意味がないことが判ります。以下に視聴率が10%、15%、20%の時の誤差を表にしておきました(関東/関西の場合)。
| 視聴率 | 10% | 15% | 20% |
| 誤差 | ±2.4% | ±2.9% | ±3.2% |
| 真の視聴率の範囲 | 7.6-12.2% | 12.1-17.9% | 16.8-23.2% |
2つの視聴率の間に有意な差があるかどうかについては本当は「検定」という手法を採らなければならないのかもしれませんが、この表だけでもかなりのことが判ります。
これを見て判ることは、「20%は10%より高いとは言い切れそうだが、15%のほうが10%より高いとも、20%のほうが15%より高いとも言い切れない」ということです。
にも拘らず、業界の人たちは「先週より1%上がった」とか「裏番組に2%負けた」などと一喜一憂しているのです。
「放送を重ねているうちに毎回少しずつ視聴率が上がってきた」というような長期的な比較なら意味があるものの、点と点の比較をしていても意味がないということを、一日も早く我々業界の人間が肝に銘じる必要があると思います。
Copyright(c)yama-a Jan.2003
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