第18回 使えない「特別分析」

ビデオリサーチiNEXの特別分析と言えば、流入流出、R&F、重複視聴の3点セットですが、番組の分析という意味では意外に使いにくいんですよね。

その中で言えば、流入流出は割合役に立ちます。

──直前の番組からこの番組にどれくらい流れてきたか、直前の他局の番組からこの番組にどれくらい流れてきたか、直前までテレビを見ていなかった(OFF)世帯がどれくらいこの番組を見てくれたか、などというその日の流れの分析。
先週に引き続いて今週も見てくれた世帯はどれくらいか(継続視聴)、先週裏番組を見ていた世帯のうちどれくらいが今週ウチの番組を見てくれたか、またその逆はどのくらいか、あるいは先週のOFFからの流入、逆に先週の視聴から今週のOFFへの流出、などの週ごとの比較。

──そういった手法を僕らはよく使います。裏番組とのライバル関係が明確化されることが主な利点ですね。上記は世帯単位で書きましたが、もちろん個人ベースの分析も可能です。
ただ、あくまで点と点の比較しかできないので、長期の傾向を見るのは大変面倒臭いという欠点があります(下註)

R&Fは「リーチ&フリークエンシー」の略で、リーチは視聴者層の広がりを、フリークエンシーは視聴の深まり(視聴頻度)を表わします。

「見た/見ない」は例によって「視聴判定1/3」を適用することが多いのですが、例えばある番組の初回を見た世帯が10%、第2回を見た世帯が12%、両方見た世帯が6%だったとすれば、2回の放送のうち少なくとも1回見た世帯は10+12-6=16%ということになって、これがこの番組の第2回終了時点でのリーチです。現実にはもっと回数を重ねて、この数値の上昇カーブの形を分析して行きます。個人ベースでの比較も可能です。

フリークエンシーのほうは、見てくれた世帯(個人)が平均何回見てくれているかという数値をはじき出すもので、これが高いほど何度も見てくれている世帯(個人)が多いということになります。

例えばCMの効果を考える場合であれば、リーチ重視が良いのかフリークエンシー重視で臨むのかという基本方針の問題に関わって来ますし、GRPがどれくらいあればリーチはどれくらいに達するのか、フリークエンシーがどのレベルになれば商品が認知され更にどのレベルまで行けば購入に繋がるのか、など一応確立した理論体系があるので有効な指標だと言えます。

ところが、番組の場合はなかなか有効に使えないものなのです。

つまり、Rが高くてFが低い番組は「一応いろんな人が1回は見てくれているのだが何度も見てもらうに至っていない番組」、その逆の場合は「固定ファンはしっかりいるのだけれど一般には広がっていない番組」ということになるのですが、僕らが低迷している番組を分析すると、たいていの場合「RもFも一様に低い」という結果が得られるからです。

そうなると手の打ちようがありません。
僕らがプロデューサーに言えるのは結局「もっと面白い番組作ってよ」ということになってしまうのです。

R&F分析にはもうひとつ欠陥があって、それは長期比較ができないということです。

関東・関西の調査サンプル世帯数はともに600で、契約期間は2年です。これは2年経ったら一斉に600世帯が入れ替わるのではなく、1ヶ月ごとに全体の1/24ずつ、つまり25世帯ずつ入れ替わって行きます。だから、R&F調査が2ヶ月目に及ぶと、その1/24は継続性を失ってしまう、つまり、25世帯は捨てることになってしまう訳です。3ヶ月目に入ると使えないサンプルは50世帯、つまりサンプル数は550世帯に減ってしまうのです。だから、この条件下では、調査期間を延ばせば延ばすほど精度は低くなってしまうという恨みがある訳です。

さて、最後に重複視聴ですが、これは「はて、こんなもの誰が使うの?」という代物です。

文字通り番組Aと番組Bを重複して見た世帯(個人)がどれくらいいるかをはじき出すものなのですが、「そんなもの知ってどうするの?」という感じで、私の調査マン時代には一度も使ったことはありません(試しにやってみたことはありますが)。

そもそも番組の内容を考えれば重複視聴率が高いか低いかは容易に想像がつくし、実際はじき出してみて意外な結果が得られることもあまりありません。思うにこれは単独で成立する分析ではなく、例えば重複視聴の多寡で番組をグループ分けするなどして、それを基に次の分析に進むためのツールなのではないでしょうか。

さて、流入流出とR&Fについてはまあまあ使われてはいるのですが、使い勝手から言うと実は上に述べたような色々な問題点があります。そして、色々な問題点があるにも拘らず、この「特別分析3点セット」に日本の放送局はそこそこ多額のオプション料金を払っています。

全国全民放の分析屋の皆さん、番組の分析という観点からすれば、僕はこれらの3点セットよりは「視聴分数分布」のほうがはるかに有効だと思うのですが、果たしていかがなもんでしょうか?
(すいません、今回の話は完全にプロ仕様でした)

Copyright(c)yama-a May.2003


[註]

なんて言ってたら遂に完成されましたねえ、iNEX2 の新メニュー『毎分の流入・流出』。これで長期の比較こそまだできませんが、点と点の比較というレベルからは一歩抜け出して、番組を通しての視聴者の出入りがひと目で確認できるようになりました。
いやあ、技術の進歩・アプリケーションのバージョンアップ万歳!!

ただ、僕自身はまだ見てないんですけどね。

Copyright(c)yama-a Aug.2003

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