最近噂を聞かないのでどうしておられるのか知らないのですが、昔ビデオリサーチに脅威のスーパー分析男・K氏という人がいました。
「スーパー分析男」というのは僕の命名で、「スーパー・アナライザー」とか「超分析士」などと言ったほうが恰好が良いのでしょうが、僕自身は「すーぱーぶんせきおとこ」という片仮名・音読み・訓読みが混じった表現が、いかにもK氏らしくて良いなあと独りで悦に入っています。
僕が東京支社で営業をしていた時代には、スポンサーへのプレゼンになると、よく電通が助っ人として彼を連れてきました。僕が本社に戻って調査担当をしていた時期に、ちょうどK氏も大阪勤務になり、一度だけ直接教えを請うたことがあります。
その話の面白いの何の! そして何と話のくどいこと!
話を聞いていると次から次へと全く飽きさせることなく果てしなく続きます。「ああ面白い!」と思いながら「しかし、長いなあ」と腕時計を横目で眺め、「いつまで続くんだろう」と少しうんざりしながら「でも、いつまでも聞いていたい」という不思議な気持ちになったものです。
K氏独特の理論があるのです。例えば、クイズ・バラエティにおける「おや・へえ・なるほど」理論。
クイズ・バラエティにおいては大切なことが3つあって、まずチャンネルを合わせた人に「おやっ?」と思わせる──注意を喚起すること。そして、新奇な情報を与えて「へえ」と思わせる──驚かせること。そして、その新奇な情報をもっと掘り下げて、その情報の背景にあるものを明らかにしたり、それがそうである理由を示したりすることによって、「なーるほど」と思わせる──納得させること。以上3つだそうです。
どうです? この理論自体が「おや・へえ・なるほど」でしょ?
そして、バラエティにおけるキャラクターの分類。
このタレントは「毒」、このタレントは「薬」、このタレントは「中和剤」などと分類して行くのです。
毒と薬はすぐに解ります。例えばビートたけしが毒で、石坂浩二が薬です。
中和剤という分類がすごいですね。極端なことを言ってふざけまわって笑いを取る訳でもなし、かといって豊富な知識や良識を披露して視聴者を唸らせるでもなし、でも、ただそこにいるだけのタレントではなく、毒のタレントを中和するという意味で番組にとって必要なタレント。
今までこういう位置づけをした分析マンがいたでしょうか?
K氏の頭の中には膨大なデータベースが詰まっています。K氏はそのデータベースに基づいて、次々に「定説」を繰り出してきます。
曰く、
19時・20時台の新番組は春ではなく秋に開始すること。
クイズ番組は他の番組に比べて視聴率が上がってくるまでに長い期間を要する。
そして、ここでは具体的には述べませんが、「この枠にはこのジャンルの番組が当たる」という傾向がK氏の頭の中に一覧表になって納まっていて、いちいち聞くと大変見事なものです。
僕の調査担当としての原点はK氏にあると言って良いでしょう。
このリポートにもK氏からの受け売りに近いこともたくさん書きました。
僕は会社の歴代調査担当者としては優秀なほうだったと自画自賛しています。
しかし、では現在の調査担当と伍することができるかと言えばその可能性はゼロで、全く勝ち目がありません。
何故かと言えば、それは普段眺めているデータの量が(現職と元では)圧倒的に違うということなのです。見ているデータの量が違えば構築されるデータベースの信頼性には雲泥の差があります。だから、現職ではない僕は現職の担当者に全く太刀打ちできないのです。
全国TV局の調査担当者の皆さん、大事なことはまず分析の技法を知ることではなく、とにかくたくさんの視聴率データを眺めて傾向を読み取り、確かなデータベースを構築することだということを忘れないで下さい。
プロデューサーを説得できるのは理屈ではなく事実の積み重ねなのです。
そういう裏づけがあってこそ、日々の分析が単なる数字遊びにならずに済むのです。
Copyright(c)yama-a Aug.2003
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