今書いたらややこしいと思ってずっと書くのを控えていたのですが、2003年12月に東京・名古屋・大阪の3地区で地上波デジタル放送が始まって半年近く経ったので、そろそろ良いかなと思って書きます。
地上波デジタルが始まるに際して所謂Bチャンネル編成をやるかどうかについて激しい議論がありました。
ご存じない方のために書くと、デジタル放送においては1チャンネル分の帯域に3チャンネルまでの編成が可能なのです。もっと解りやすく書くと1局が同時に3つのチャンネルを放送することが可能なのです。
現実にはいきなり3チャンネルではなく2チャンネルが想定されているので、2つ目のチャンネルで別の番組を編成することを「Bチャンネル編成」と呼んでいます。
見るほうにすれば、チャンネルが増えることは大変良いことです。売るほうからすれば、チャンネルが増えればそれだけビジネスチャンスは増えそうに思えます。ところが、番組を作るほうからすればチャンネルが2倍や3倍に増えたりすると、アイデアの面から言っても予算の面から言っても、あるいは人繰りのことを考えてもかなり大変なことです。
また、「売るほうからしてもビジネスチャンスは増える」と書きましたが、それはさまざまな調整がついて初めて可能になることなのです。
例えば、元からの番組を提供していたスポンサーが、「Bチャンネルで別の番組がかかって別のスポンサーがつく」などと聞くと怒り出すのではないか、等々。詳しくは書きませんが、ほかにも技術的な問題とセールス上の問題、さらに法規的な問題までがさまざまに絡み合って却々整理のつかない状態なのです。
そういう状態でいよいよデジタル放送を始めるにあたって、Bチャンネル編成をするのかしないのか、するならどういう形でするのか、さらに、視聴率はどういう形で発表しどういう形でセールスのシステムに取り込むのか等々を巡って、東名阪それぞれの地区で激しく熱い議論が戦わされました(あまりにも専門的なのでここでは割愛しますが…)。
ところが、その議論も酣のころ、ビデオリサーチから意外な報告が──なんと、暫くの間は1局が2チャンネル・3チャンネルの編成をしても番組ごと・チャンネルごとの視聴率は出せなくて、存在するのは局ごとの合計視聴率だけだと言うのです。
今度は東名阪の各局が東京に集まってビデオリサーチを呼びつけ、激しい応酬がありました。しかし、技術的にできないものはできないのです。
視聴率が出ない番組はセールスできません。そういう訳でBチャンネル編成は大きく後退し、ビデオリサーチの設備投資と研究開発が追いつくまでは凍結という形になってしまいました。
ことさらビデオリサーチを非難しようという気はありません。彼らだって私企業なのです。しかし、視聴率がデジタル編成を縛ってしまったのは確かであって、これは本末転倒も甚だしいと私は思うのです。
皆さん、よく憶えておいてください。今の地上波デジタル放送の編成は視聴率システムの不備に縛られてしまっているのです。
もちろんBチャンネル編成は全く行われていない訳ではなくて、ごく一部の番組でまさに実験的に放送されています(でも、気がついてないでしょ?)。しかし、視聴率システムの問題が解決しない限り、Bチャンネル編成に抜本的に取り組むTV局はありません。これが解決しない限り、新しいTVのあり方は議論のしようがないのです。
Copyright(c)yama-a May.2004
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